発言者の氏名が特定できる議事録を公開させ、人権擁護推進審議会の透明性と公開性と説明責任を実現させよう!


(2001年8月1日)

● 本年4月より、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(いわゆる情報公開法)が施行された。同第1条はその目的を次のように定めている。
 「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」
 人権フォーラム21では、政府の人権擁護推進審議会に対して、21世紀日本の人権政策の審議にあたっては、人権侵害当事者の声に耳を傾け、密室審議を廃しその公開性と透明性の確保をはかるようねばり強く求めてきた。しかしながら人権擁護推進審議会は、1号諮問(教育・啓発のあり方)の当時と比べると、若干の改善点はあるものの、依然として非公開の密室審議を続け、情報公開度は政府の審議会の中でも最低ランクの水準にある。

● そこで人権フォーラム21では、さる5月2日に、情報公開法にもとづき、人権擁護推進審議会の発言者氏名が特定できる議事録および会議配布資料の開示を求めて「行政文書開示請求」を行ってきた。その内容は、1)人権擁護推進審議会に関わる発言者氏名入りの議事録(第54〜56回)、2)4月27日に審議会で配布された「答申たたき台」、の2項目である。
 これに対し、法務省は、さる5月29日、前者については「不開示決定」を、後者については「開示決定」を通告してきた。なんと不開示の理由は、当初われわれもその内容に眼を疑ったが、「開示請求に係わる行政文書が実際に存在しないため」、すなわち人権擁護推進審議会に関わる発言者氏名入りの議事録やその草稿があたかも存在しないかのような全く許すことのできない不当な理由づけである。<資料@:「行政文書不開示決定通知書」(法務省総第294号)>

● 人権フォーラム21では、さる6月29日に企画運営委員会を開催し、この決定を受け入れることはできないとして、異議申立てを行うことを決定し、7月4日に「行政文書不開示決定に対する異議申立て」をおこなった<資料A>。
 同時に、人権擁護推進審議会の透明性と公開性を拡大させるため、新たな「行政文書公開請求」として、1)人権擁護推進審議会第62回会議議事録作成にかかわる発言者氏名の特定できる事務局作成メモまたは磁気ディスク(フロッピーディスク)の公開、2)審議会付属の小委員会の審議経過と付属資料の公開、をあらためて法務省に要求した。

● およそ政府の審議会は、国民に開かれたものであるべきである。それは先の情報公開法第1条が明記するように「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする」ためである。この法律の対象となる政府の審議会においては、その公開性と透明性の確保のため、議事録や配布資料が公開されるべきである。
 例えば、去る6月12日に「21世紀の日本を支える司法制度」を答申した司法制度改革審議会では、毎回、発言者氏名入りの詳細な「議事録」を公表し、審議会での「配布資料」も全て公表し、司法制度改革論議への国民の参加を呼びかけてきた。
 しかるに同じく法務省が事務局を担当する人権擁護推進審議会においては、「議事録」や「配布資料」の公開には、極めて消極的である。しかも公開されている人権擁護推進審議会の「議事録」は、司法制度改革審議会では「議事概要」程度の分量で、発言者の氏名も明記されていない。また、会議での「配布資料」も「海外調査報告書」も「小委員会報告」も、そのほとんどが非公開であった。

● 人権擁護推進審議会の透明性と公開性をより拡大させる取り組みは、今や情報公開審査会が主舞台となっている。人権フォーラム21の異議申立を受け、内閣府の設置された情報公開審査会は、さる7月26日に、法務省が7月24日付けで内閣府の情報公開審査会に諮問した旨の通知が届けられた(諮問番号は「平成13年諮問第37号」)。
 続く7月28日、情報公開審査会は、法務省が情報審査会に提出した「理由書」の写しを送付してきた<資料B>。その内容は、ひどいもので、「審議会においては、発言者氏名入りの議事録を作成の上で、発言者氏名のみを非公開の扱いにしているのではなく、そもそも、議事録としては、発言者氏名を匿名としたもののみを作成しており、発言者氏名が入った議事録は存在しない。そこで、開示請求に係る文書が実際に存在しないという理由で不開示決定を行ったところである。」と、居直り姿勢を見せている。
 8月1日、情報公開審査会から「意見書叉は資料の提出について」の通知が届き、人権フォーラム21の意見を8月15日までに提出するよう求めてきた。人権フォーラム21では、規制・救済部会の作業部会を中心に、意見書を作成の予定である。

資料一覧:
資料@:「行政文書不開示決定通知書」(法務省総第294号) <こちら
資料A:「行政文書不開示決定に対する異議申立て」(7・3)  <こちら
資料B:法務省が情報審査会に提出した「理由書」  <こちら


 

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