第145回 衆議院本会議 1999年5月13日

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案


○議長(伊藤宗一郎君) 伊藤英成君。  

  〔伊藤英成君登壇〕

○伊藤英成君 私は、民主党を代表して、ただいまの地方分権一括法案の趣旨説明に対して、総理及び関係大臣に質問いたします。

 豊かな成熟社会の到来とともに、市民と地域の自律的なネットワークが社会の活力を形成する時代を迎えております。また、都市や地方の住民が国境を越えて直接世界と結びつく時代でもあります。このような新しい時代には、地域の自主性と市民自治のエネルギーが、社会のソフト面での重要な基盤を構成することとなります。二十一世紀の新しい国づくりの基本は、このような観点に立った分権改革を大胆に進めることにあると私は考えます。

 分権改革とは、単なる制度改革や行政システムの再編を意味するものではありません。国民、住民の納める税金の使い道や行政サービスのあり方について、住民の監視が行き届き、住民がその決定に関与できる仕組みや環境をつくり上げることこそ重要であります。

 つまり、分権改革の目的は、地域の自己決定と自己責任という自治の基盤をつくり出すことにあります。これらの視点を欠いたまま国、地方の形をあれこれといじり回してみたり、効率優先の画一的な制度改革を上から押しつけるような議論は、見せかけの分権あって自治なしという状況をもたらすだけであって、今日求められている分権改革とは、全く異質のものと言わなければなりません。

 さて、地方分権改革のための取り組みは、周知のように、一九九五年の地方分権推進法の制定によって新たな一歩をしるしました。この法律によって発足した政府の地方分権推進委員会は、九六年十二月に提出された第一次勧告で、機関委任事務の廃止と、国と地方との間の対等、協力関係の確立を高らかにうたい上げました。これはまさに明治近代化以来の中央集権システムを根底から変革する可能性を秘めた改革の始まりである、我々は、そのように大いに期待をしながら、委員会の取り組みに注目し、これを積極的に応援してまいりました。

 しかしながら、今般提出されましたいわゆる地方分権一括法案の内容は、余りにも期待外れのできばえと言わざるを得ません。

 そこで、まず、総理の姿勢についてお尋ねいたします。総理は、今回の分権一括法案の取りまとめについて、一体何かイニシアチブを発揮してこられたのでしょうか。

 昨年秋に提出された公共事業見直しについての委員会第五次勧告は、中央省庁がこぞって見直しに強く抵抗したために、国の直轄事業の縮減などについては具体的な改革案を盛り込むことができないという無残な結果に終わりました。この第五次勧告は、分権を通じて国の省庁をスリム化したいという橋本前総理の指示を受けて、急遽検討に着手したものでしたが、後を受けた小渕総理が中央省庁の役人や与党議員の抵抗を抑えようとしなかったために、このような結果を招いたと言われております。

 また、委員会で中心的役割を果たしてきた東大教授の西尾勝委員が、このことに抗議して昨年暮れに行政関係検討グループの座長を辞任するという事態も招きました。

 私は、総理が昨年夏に就任して以来、この分権改革について何か積極的な役割を果たしたという事実を、寡聞にして存じ上げません。私は、冒頭申し上げましたような地方分権の意義、改革のビジョン、本法案の到達点、残された課題について、総理がどのように認識をしておられるか、まずお聞きしておきたいと思います。

 次に、具体的に法案の内容についてお尋ねします。 本法案の主な柱の一つは、機関委任事務制度の廃止と、それに伴う事務の再編成であります。

 一八八八年の市制、町村制に端を発し、中央集権型行政システムの象徴となってきた機関委任事務制度を廃止し、それらのほとんどを、いわゆる現住所主義に基づいて自治体の事務と位置づけたことは、それだけでも百年ぶりの大転換であり、自治の時代への大きな一歩と評価したいと思います。

 しかし、その自治体の事務の自治事務と法定受託事務への区分については、省庁の頑強な抵抗によって、原則として自治事務という考え方からは著しく後退を余儀なくされ、半分近い事務が法定受託事務と区分され、また国の直接執行事務と区分されたものも少なくありません。総理は、このように半分近い事務が法定受託事務に区分されたことについて、どのようにお考えでしょうか。

 仮に、ひとまず法定受託事務に区分するとしても、数年間の期限を付し、その時点で引き続き法定受託事務に区分する必要があるか否かを再度国会で審議するというような形にして、できるだけ法定受託事務を減らして自治事務にしていくという努力をすべきではありませんか。

 法定受託事務の定義そのものについても、法案に規定された内容は、委員会の勧告や政府の計画から大きく変更されております。勧告では、法定受託事務とは、「事務の性質上、その実施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきではあるが、国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から、地方公共団体が受託して行うこととされる事務」と定義されていましたが、法案では、そうした文言がどこかに消え去り、かわって、「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」という文言が挿入されました。これは、引き続き国が、自治体の処する事務に対して広範に関与することを予定する定義にほかなりません。

 このように、法定受託事務の定義を後ろ向きに変更したことについて、自治大臣はどのようにお考えでしょうか。

 また、法案中、法定受託事務の指定を政令にゆだねているものが、条文数にして二百五十件近くにも上ります。法案を見ても、それが国の事務なのか自治体の事務なのか、自治事務なのか法定受託事務なのかがさっぱりわからないということでは、これからすぐに多数の条例を制定しなければならない自治体も困るのではないかと思いますが、自治大臣、いかがでございましょうか。

 次に、法案の二番目の柱である、国の自治体に対する関与のあり方についてお尋ねいたします。

 法案は、機関委任事務の廃止に伴って、これまでの国から自治体に対する包括的な指揮監督を見直し、国から自治体への関与を地方自治法に一般ルールとして規定するとともに、自治事務に対する国の権力的関与を原則として否定することとしております。

 ところが、その地方自治法自体が、自治事務の処理について各大臣から是正の要求があった場合に、自治体に是正改善の措置を講ずることを義務づけることとしております。このような自治事務についての自治体の是正改善義務は、現行法上存在せず、委員会の勧告等にも、もちろん何ら盛り込まれていなかったものであります。

 今回新設されようとしている地方自治法のこの規定は、明らかに自治事務に対する国の関与を現状よりも強化するものであり、地方分権推進の趣旨に全く逆行するものと考えますが、自治大臣の見解をお尋ねします。

 また、法案は、関与の基本原則の中に、個別法上の関与の規定を必要最小限度のものにするために限定を設けておりますが、自治事務についての国による代執行については、できる限り自治体が代執行を受けることとすることのないようにしなければならないと、極めてあいまいなルールゆえ、例えば建築基準法改正部分では、現行法上も存在しなかった国の直接執行制度が新たに設けられることとなっております。

 このような自治事務に対する過度の関与規定や、これを許すあいまいな一般ルールは改めるべきと考えますが、自治大臣の見解をお尋ねします。

 さらに、法案では、国の自治体に対する関与について、自治体の執行機関が、新たに創設される第三者機関である国地方係争処理委員会に審査の申し出を行い、勧告等を受けることができることとされております。しかし、法案のような内容では、この機関の位置づけは十分な独立性を持つものとは言えず、またその権限も、勧告という権威を欠くものにとどまっていることは否定できません。

 私は、この機関を少なくとも国家行政組織法の三条委員会に格上げするとともに、分権推進委員会で検討されていたように、勧告ではなく裁定を行う権限を持たせるなど、組織、権限の強化を図ることが必要と考えますが、自治大臣の見解をお尋ねいたします。

 次に、権限移譲、税財源移譲問題についてお尋ねします。

 法案では、本来、地方分権の大きな柱の一つであるはずの、国から都道府県、都道府県から市町村への権限移譲については、狂犬病予防法などわずか三十五法律の改正にとどまっております。

 とりわけ大きな問題は、冒頭でも述べましたように、委員会の第五次勧告で検討課題となった国の直轄公共事業の範囲の限定について、著しい後退を余儀なくされていることであります。今回の法案では、わずかに運輸省関係の港湾法改正部分で第五次勧告関連の改正項目が盛り込まれたにとどまっており、それとても、直轄事業を明確に限定したものとは必ずしも読めません。

 国は、全国的な規模でもしくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施等を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねるとした今回の地方自治法改正の趣旨との間に、著しい乖離があると言わざるを得ません。

 国のひもつきでない統合補助金制度の創設などを含め、国の公共事業の大幅な見直しを速やかに行うべきと考えますが、この点について総理の御見解をお尋ねいたします。(拍手)

 国から地方への税財源の移譲については、これまた大蔵省などの抵抗が強く、今回の法案では全く触れられておりません。国、自治体間の租税収入と歳出総額の乖離を縮小する方向で、個人所得課税を初めとする基幹税目について税源配分を抜本的に見直しし、地方の充実した自主財源の確保を図ることが今後の大きな課題であると考えますが、自治大臣の見解をお尋ねいたします。

 最後に、地方事務官問題についてお尋ねします。

 法案では、戦後五十年以上にわたって暫定的に地方事務官が従事するとされてきた社会保険と職業安定に関する機関委任事務を廃止し、これらを国の直接執行事務とすること、そして地方事務官を廃止し、国の職員とするとしています。

 しかし、これらを国の直接執行事務とすることは、地方分権の推進に逆行し、中央省庁のスリム化に反するものと考えます。社会保険行政など住民に身近な行政サービスは、地域住民の利便性向上を一番に考えれば、身近な自治体で行うべきと考えます。

 現在、全国三千三百の自治体の窓口と三百十二の社会保険事務所で行われている社会保険事務を、専ら社会保険事務所だけで行うとすれば、結局、国の出先機関を拡大しないと対応できないのではないでしょうか。また、保険料未納や制度未加入による国民年金の空洞化が、一層進むことも大いに懸念されます。

 行政サービスの低下や住民の利便性が著しく後退することが心配される今回の国の直接執行事務について、果たしてどこが地方分権の推進で行政改革なのか、総理の御見解を伺います。

 また、国の直接執行事務により、具体的にどのように行政サービスが向上し、住民にとってどのような利点があるとお考えか、厚生大臣の答弁を求めます。

 以上申し上げましたとおり、本法案は、地方分権推進にとって半歩前進をもたらすものであることは率直に評価申し上げますが、いずれにせよ、その内容は、本来の分権改革という目で見れば、著しく不十分と言わざるを得ません。今後、その個別法改正部分も含めて十分な国会審議を行い、よりよいものに仕上げていくことが国会の使命であることを申し上げて、私の質問を終わります。

(拍手)

〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

○内閣総理大臣(小渕恵三君) 伊藤英成議員にお答え申し上げます。

 まず、地方分権改革の推進のための私のイニシアチブについてお尋ねがありました。

 地方分権は、二十一世紀にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築するものであります。私は、地方分権は今や実行の段階を迎えていると認識をいたしており、就任以来、積極的にこれに取り組んできたところであります。本法案は今国会においてぜひとも成立させていただき、地方分権を具体的な形で進めてまいりたいと考えております。

 地方分権の意義及び改良のビジョン、本法案の到達点及び残された課題についてお尋ねがありました。

 地方分権の推進は、二十一世紀を迎えるに当たって新しい時代にふさわしい我が国の基本的行政システムを構築しようとするものでございます。国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方にゆだねるとともに、地方公共団体の自主性、自立性が十分に発揮されるようにすることが必要であると思います。

 このため、本法案におきましては、国と地方の役割分担のあり方を規定するとともに、これまで我が国の中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度の廃止や、国の関与のあり方の見直し等の抜本的な改革を行うことといたしております。

 この法案を平成五年の国会決議以来の一つの到達点ととらえた上で、引き続き、地方分権推進計画等を踏まえた事務権限の移譲や税財源の充実確保など、地方分権の推進に積極的に取り組んでまいります。

 法定受託事務の区分についてお尋ねでしたが、地方分権推進委員会におきまして、法定受託事務となるべき事務についてのメルクマールを定め、地方分権推進の観点に立って精力的に御審議をいただいたものであります。今回の法案作成に当たりましては、地方分権推進委員会の勧告を最大限尊重して閣議決定いたしました地方分権推進計画に即して事務の区分を行ったところでありますが、将来にわたりまして、法定受託事務の創設は厳に抑制してまいりたいと考えております。

 第五次勧告に関するお尋ねでしたが、本法案は、地方分権推進委員会の第一次から第四次までの勧告を踏まえたものでありまして、直轄事業の範囲の見直しや統合的な補助金の創設等、第五次勧告に盛り込まれた事項については、先般閣議決定をいたしました第二次地方分権推進計画に沿って、今後、着実に実施してまいる所存でございます。

 地方事務官が従事する事務についてお尋ねでありました。

 そもそも、国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じて事務分担することが、責任の所在を明確にし、ひいては地方分権に資するものと考えられます。社会保険関係事務は国が経営責任を負う保険事業であり、一体的な事務処理による効率的な運営が要請されるものであることから、また、職業安定関係事務は国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、国の直接執行事務とすることとしたものであります。

 また、今後とも、事務の執行に当たりましては、効率的な事務処理体制の整備に努めるとともに、行政サービスの水準や住民の利便性に十分配慮してまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

〔国務大臣野田毅君登壇〕

○国務大臣(野田毅君) 法定受託事務の定義についてのお尋ねでございます。

 今回の法案における定義は、法定受託事務が、その適正な処理を確保することに国として相対的に高い責任と関心を有する事務であるという性格を、文言上、より明確に表現したものであり、実質的な内容の変更を伴うものではありません。したがって、この定義により、法定受託事務に対する国の関与のあり方が変わるものではありません。

 次に、地方公共団体の条例制定作業についてのお尋ねであります。

 政令による事務の区分もまた、地方分権推進計画に即して行われるものであり、自治事務であるか法定受託事務であるかは、実際上は既にほとんどが明らかになっておるものであります。したがって、政令の改正は本法案の成立後となりますが、このことが直ちに条例制定作業に影響を与えるものではないと考えております。なお、今回の法改正に伴う政省令の改正等所要の作業を速やかに進め、条例制定作業に影響を与えないよう努力してまいりたいと考えております。

 次に、自治事務に対する是正の要求についてのお尋ねであります。

 地方公共団体の違法な事務処理等が自主的に是正されることが期待できないような場合には、国等が何らかの形で関与することも必要と考えております。是正の要求は、このような意味で設けられた規定でありますが、自治事務に対する関与であることを考慮して、是正改善の具体的措置内容については、地方公共団体の裁量にゆだねるなど、必要最小限のものとするとともに、係争処理手続の対象としているところであります。

 次に、代執行についてのお尋ねであります。

 地方自治法上の一般的な根拠規定は、法定受託事務のみを対象とするものであります。自治事務に関しては、関与の基本原則として、できる限り代執行の制度を設けることのないようにしなければならないことを規定しているところであり、今後の個別法の制定や改正も、この基本原則に沿って行われることとなるものであります。

 なお、御質問の建築基準法については、地方分権推進委員会の議論を踏まえて、国の利害に重大な関係がある場合に限定する形で今回設けることとしたものと承知いたしております。

 次に、国地方係争処理委員会の組織及び権限についてのお尋ねでございます。

 委員の任命に国会の同意が必要であることや、委員の身分保障があることなどにより、組織としての独立性や職権行使の公平中立性は十分に確保することができるものと考えております。また、関与を行った国の行政庁は、勧告に即して必要な措置を講ずることが制度上強く期待されており、最終的には司法判断による解決が図られることになっておりますことから、係争処理手続としての実効性は高いものと考えております。

 最後に、地方税財源の充実についてのお尋ねでございます。

 地方分権の進展に応じて、地方団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要であることは、御指摘のとおりでございます。

 地方分権推進計画においては、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという視点に立って、地方税の充実確保を図ることとされ、また、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図ることとされているところであります。

 今後、地方分権推進計画を踏まえ、所得、消費、資産等の間におけるバランスのとれた地方税体系や、税源の偏在性が少なく税収の安定性を備えた地方税体系の構築などに努め、地方税源の充実確保を図ってまいりたいと考えております。(拍手) 

   〔国務大臣宮下創平君登壇〕

○国務大臣(宮下創平君) 社会保険に関する機関委任事務を国の直接執行事務にすることについてのお尋ねでございますが、地方事務官が行っておる政府管掌健康保険や厚生年金保険等の事務につきましては、国の直接執行事務となっても、社会保険事務所で事務を行う方式は従来と変わらないため、事業主、受給者等の利便性は、引き続き確保されるものと考えております。

 また、地方事務官は、現在、国家公務員試験の合格者から採用された国家公務員であり、その定員も国家公務員の総数に算入されており、地方事務官制度を廃止して厚生事務官といたしましても、国家公務員の総数が増加するわけではございません。したがって、地方事務官制度を廃止した場合においても、行政サービスの水準や住民の方々の利便性は十分確保されるものと考えております。

 国民年金事務につきましては、現在、年金手帳の作成等都道府県知事に機関委任されている事務を除き、市町村の機関委任事務とされておりますが、市町村に機関委任されている事務につきましては、今回の改正で市町村の法定受託事務とすることといたしております。

 ただし、保険料の納付方法につきましては、現在印紙納付方式をとっておりますが、被保険者の保険料納付方法の実態にかんがみ、保険料の印紙納付方式を廃止いたしまして、金融機関を通じて直接国に納付することに改め、保険料の納付方式の改善を図ることといたしております。これに伴い、保険料を取り扱うことのできる金融機関の窓口を拡大するなど、被保険者の一層の便宜を図る措置をあわせ講ずることといたしております。

 以上、御答弁申し上げました。(拍手) 

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○議長(伊藤宗一郎君) 桝屋敬悟君。

    〔桝屋敬悟君登壇〕

○桝屋敬悟君 私は、ただいま議題となりましたいわゆる地方分権推進一括法案に対し、公明党・改革クラブを代表して質問を行います。

 地方分権の一番の課題は、国あっての地方ではなく、地域の集まりが国であるという、つまり、国と地方を対等、協力関係に転換することにあると私どもは考えております。すなわち、産業や雇用などの政策権限や、それに伴う財源を地方へ移譲することで、地域から国をつくり直すことが求められているわけであります。

 個性豊かで活力あふれる地域づくりの第一歩は、住民に身近な行政はできる限り身近な地方自治体が処理することにあります。この哲学のもと、諸井委員長を初めとする地方分権推進委員会の皆様が、血のにじむような御努力をされて、第五次にわたる勧告を取りまとめられたことに対しましては、心から敬意を表したいと思います。

 しかし、この勧告を受けて作成されたはずの地方分権推進計画、そしてこの計画に基づいて作成されました今回の法案の内容を見ますと、国から地方への権限移譲は少ないというのが実感であります。機関委任事務も法定受託事務という名称で事実上残っておりますし、一番肝心な財源移譲の道筋も示されておりません。地方分権とは名ばかりだったとの汚点を後世に残さないためにも、そしてこの法案が実効性ある内容になるようにとの思いを込めまして、以下、順次質問を行います。

 本法律案は、地方分権推進委員会の第一次から第四次までの勧告をもとに地方分権推進計画を作成し、その計画において四百七十五の法律にわたる改正を一括法として取りまとめたものであります。一括法案の問題点として、第一に、個別根拠法の中身にわたる審議は不可能に近い、第二は、審査の目が粗くならざるを得ない等の問題点が指摘されています。一括法とした理由について、まず総理大臣にお尋ねをいたします。

 平成八年三月に発表されました地方分権推進委員会の中間報告では、今回の地方分権は、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革が成就できると記述されております。総理は、今回の地方分権一括法の意義についてどのように認識されているのか、また、本案によって住民にどのようなメリットがあると認識されているのか、お伺いをいたします。

 次に、今回の法案の柱である機関委任事務の廃止について質問いたします。

 そもそも、機関委任事務の廃止の大きな目的は、国と自治体が上下、主従関係にあるものを対等、協力関係にすることがねらいとされていました。今回の措置で、国と自治体の関係が本当に大きく変わるのかどうか、総理の認識をお伺いいたします。

 機関委任事務を廃止して自治事務と法定受託事務に整理したことにより、地方自治体の事務処理体制はどのように変わり、さらには、国民の地方自治体における窓口手続はより簡易になり、利便性も向上するのかどうか、国民にわかりやすく御説明願いたいと存じます。

 機関委任事務から自治事務とされた事務について、今後は地方自治体が独自の判断で行うことは当然であります。そこで、省庁の関与についても、この関与の基本原則が額面どおりに実施されるとすれば、従来各省庁が機関委任事務に関して行っていた業務はほとんどなくなるため、これらの事務について人員を常置する必要はなくなるはずであります。

 したがって、行政改革によるスリム化の一環として、自治事務とされた機関委任事務に携わっていた職員分の定員を、計画的に削減するべきであると思いますが、総務庁長官の御見解をお伺いしたいと思います。

 次に、自治事務と法定受託事務について質問いたします。

 当初は八割が自治事務になると見込まれていましたが、結局六割以下になってしまいました。この原因はどこにあると認識しているのか。また、地方分権推進委員会が自治事務とすべきであると考えたものが、各省庁の同意を得られずに法定受託事務とされたものはどのぐらいあるのか。それらについては、改めて国会の場において、いずれに区分するべきかを議論すべきであると私は考えます。これらの点について、あわせて自治大臣の答弁を求めます。

 また、法定受託事務については、国が事務処理基準を作成することになっていますが、どういう基準で、いつまでに作成するのか。また、事務基準を余り細かく作成すると自治体の条例の自由度の範囲が狭められるので、余り細かいことまで規定すべきでないという意見もありますが、自治大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

 法定受託事務は、国が助言または勧告、協議、同意、指示等の関与をできることから、国は、従来の機関委任事務のように、地方をコントロールすることになるのではないかとの懸念があります。さらには、この法定受託事務が、法律で規定されているものはともかく、政令でも定めることができるようになっていれば、幾らでもふやせることが可能であります。原則として政令では定めないようにするべきですが、これらの点についてどのように対処されようとしているのか、自治大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、地方事務官制度の廃止について質問いたします。

 地方事務官制度は、昭和二十二年の地方自治法制定の際に置かれました同法附則第八条にその法的根拠があり、同条は、「政令で定める事務に従事する都道府県の職員は、当分の間、なお、これを官吏とする。」と規定をしているわけであります。以来、この附則第八条は順次改正され、今日、国と地方の密接な連携を要する事務である社会保険関係事務及び職業安定関係事務の二つが残っているわけであります。

 今回の一括法においては、地方分権推進委員会第三次勧告に基づき、ともに国の直接執行事務として、厚生事務官、労働事務官とすることとされています。しかしながら、先ほども話がありましたが、行政改革の観点から、政府は、行政の減量、効率化を図る上で、国家公務員の削減の方針を打ち出しているわけでありまして、このことに逆行しないのかどうか、総務庁長官の答弁を求めたいと思います。

 特に、社会保険関係事務につきましては、地方自治体の医療、年金、福祉、介護等の政策と密接にかかわるものでありまして、国民年金の空洞化が言われている中で、国民の利便、効率性の観点から、都道府県の法定受託事務とし、その事務は地方公務員が処理する方が好ましいとの強い意見があります。

 どちらにしても、国、地方の連携は必要となるわけであり、地方分権の精神からしても、国民生活に直結する事務は、できるだけ住民に身近な地方団体が事務を行うことが求められているのではないかと考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。

 なお、地方事務官制度をどうするかという議論を行う場合、現状の地方事務官の執行体制をつぶさに考えますと、社会保険関係事務と職業安定関係事務とでは、一律に議論できない点もあるのではないかと考えますが、あわせて総理の御見解を伺いたいと思います。

 次に、国地方係争処理委員会についてお伺いをいたします。

 国の地方公共団体に対する関与に、係争を処理する第三者機関として、国地方係争処理委員会が設置されることとなりますが、この委員会を総理府に置くとしていますが、内閣の外部に設置しないで、なぜ総理府に置くことにしたのか。また、その委員会の位置づけは、国家行政組織法の三条機関、八条機関のどちらとして設置するのか。自治体側から見れば、国の行政機関として置かれること自体が非中立に映るのではないでしょうか。これらの点について、総理の見解を承りたいと存じます。

 また、国地方係争処理委員会の権限としては、当初、国の行政機関の長または地方公共団体の長等からの裁定の申し立てに対して裁定するという案でありました。しかし、何ら法的拘束力のない勧告にとどまりました。裁定から勧告になった理由と、権限の弱い委員会が係争処理に力を発揮できるのか、その効果が本当に期待できるのか、率直な所感を総理にお伺いしたいと思います。

 次に、市町村合併についてお伺いいたします。

 今回の法案では、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進める、その具体策として、自主的な市町村合併を推進することとしています。過日発表されました経済戦略会議の答申においては、全国三千二百の市町村を少なくとも千以下に減らすことを目標に、国は市町村合併を促進するための有効なインセンティブシステムの拡充について積極的に進めるとしているわけであります。

 言うまでもなく、経済戦略会議は、小渕総理のもとで創設されました諮問機関であります。この戦略会議の内容と今回の法案の内容を比較すると、余りにも乖離があると思いますが、国は本気でリーダーシップをとって積極的に市町村合併を進めるのか、あるいは市町村同士の話し合いを第一義とするのかどうか、その基本方針について総理にお伺いしたいと存じます。

 地方財源の充実についてお伺いします。

 平成十年五月二十九日に閣議決定されました地方分権推進計画には、地方財源の充実確保について盛り込まれていました。しかし、今回の法案には入っておりません。地方財源に関する部分が法案化が見送られてしまえば、まさに仏つくって魂入れずで、幾ら権限を移譲しても、それに見合った財源が伴わなければ、地方自治体は、現実に住民サービスの向上を目指す仕事ができません。政府に地方分権を真剣に推進する意思のない証左であるとの厳しい声もあります。 総理、財源の部分について、いつ法案化するのでしょうか。その時期についてお尋ねいたします。

 また、私ども公明党・改革クラブとしましては、こうした観点から、かねてより、総理のもとで内閣府に地方行財政改革会議を設置し、検討を進めるべきであることを主張しているわけでありますが、あわせて総理の御見解をお伺いいたします。

 財源問題の一番のネックになっている、国庫補助金の整理合理化について質問いたします。

 補助金交付は中央省庁の裁量の余地が大きく、地方自治体は、補助金を獲得するため、中央省庁への陳情合戦、いわゆる天下りの受け入れなどを行っている実態は、かねてから指摘されているところであります。補助金は、機関委任事務以上に、中央による地方統制の手段になっているのが実態であります。

 そこで、お伺いいたします。

 第一に、今後、政府として、どのように補助金の整理合理化を進めていくのか。

 第二に、地方分権推進計画では、国庫補助金については五年を期限とするサンセット方式の導入、国庫負担金についてはおおむね十年ごとの基本的な見直しを行うとされましたが、これらの点については早急に法制化すべきではないか。

 第三は、毎年補助金を整理しても、新たに補助金が創設されれば、ネットでは補助金は減らないことになります。この新規の補助金の抑制策について、政府はどのような方針を検討しておられるのか。

 以上三点について、大蔵大臣及び総理の見解を承りたいと思います。

 経済戦略会議の指摘にもあるように、現在の日本経済の不振の原因の一つは、地方経済の低迷に求められます。地方が中央政府依存から脱却することによって自立性を回復し、独自の産業、独自の地方文化がさまざまな地域から次々に生まれてくることができなければ、日本の将来展望はないと考えるものであります。このため、地方主権を確立するための改革の大きな第一歩に今回の法案がなることを強く期待し、質問を終わります。 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

○内閣総理大臣(小渕恵三君) 桝屋敬悟議員にお答え申し上げます。

 議員からは、本法律案につきまして、地方自治、とりわけ福祉の第一線で御尽力された御経験を踏まえまして、種々の御質問があったものと拝察をいたしております。

 そこで、まず、本法案の形式をなぜ一括法にしたかというお尋ねでありましたが、今回の地方分権一括法は、第一次から第四次までの地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して作成した地方分権推進計画に基づくものであり、同一の趣旨、目的を有するものであること、また、改正の大宗を占める機関委任事務の廃止及びこれに伴う事務区分の再構成や関与の見直しについては、地方自治法で新たに規定される通則との整合性に配慮した関係法律の整備が必要であり、これらの法律が相互に関連していて一つの体系を形づくっているものであることなどの理由で、一括法として立案したものであります。

 本一括法の意義及び住民メリットについてのお尋ねでありました。

 地方分権は、今や実行の段階を迎えており、本法案を今国会においてぜひとも成立させていただくことによりまして、新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムが構築されるものと考えております。また、地方公共団体の自主性、自立性が高まることによりまして、地方公共団体が住民の意向を踏まえて行政を進めることができるようになり、住民にとっても大きなメリットがあるものと考えております。

 機関委任事務の廃止により、国と地方公共団体の関係が変わるのかとのお尋ねでありましたが、今回の改正によりまして、我が国の中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度が廃止をされ、国の包括的な指揮監督権にかわって、新たな関与のルールが定められることになります。この新しいシステムのもとでは、地方公共団体の自主性、自立性が大幅に高められ、国と地方公共団体との関係は、上下、主従の関係から大きく転換されるものと考えております。

 機関委任事務の廃止による、地方自治体の事務処理体制の変化、国民負担の緩和、利便性の向上についてのお尋ねがありました。

 機関委任事務制度の廃止によりまして、地方公共団体が自己決定できる分野が拡大し、地方公共団体の事務処理の迅速化が図られます。これによって、住民の負担も軽減されるとともに、行政に住民ニーズが的確かつ迅速に反映されるようになるものと考えております。

 地方事務官が従事する事務についてお尋ねですが、そもそも、国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じて事務分担することが、責任の所在を明確にし、ひいては地方分権に資するものと考えられます。この点、社会保険関係事務につきましては、地方分権推進委員会第三次勧告のとおり、国が経営責任を負う事業として、財政収支の均衡確保の観点、効率的な事業運営の確保の観点から、国の直接執行事務と整理することが適当と考えております。

 社会保険関係事務及び職業安定関係事務につきましては、それぞれ、社会保険関係事務は国が経営責任を負う保険事業であることから、また、職業安定関係事務は国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、国の直接執行事務とすべきものと考えております。

 国地方係争処理委員会の組織についてのお尋ねですが、その役割と性格にかんがみれば、内閣の外部に、独立した機関として置くという考えもありますが、行政機関の肥大化を極力抑制するという行政改革の要請をも踏まえ、国家行政組織法第八条に基づく審議会等として、総理府に置くことといたしたものであります。職権行使の公平中立性は、委員の任命に国会の同意が必要であることや、委員の身分保障があることなどによりまして、確保することができるものと考えております。

 国地方係争処理委員会の権限についてのお尋ねですが、国の行政事務は各省大臣が分担管理することが原則とされておりまして、強力な裁定権限を国地方係争処理委員会に与えることは、この原則に対する重大な例外となることから、これを勧告機関といたしたものでございます。

 しかしながら、関与を行った国の行政庁は、勧告に即して必要な措置を講ずることが制度上強く期待されており、また、最終的には司法判断による解決が図られることになっていることから、係争処理手続としての実効性は高いものと考えております。

 市町村合併に係る基本方針についてお尋ねがありました。

 地方分権の成果を生かし、住民サービスの向上を図るためには、市町村みずからが、自主的、積極的に合併の推進に取り組むべきと考えております。その上で、国は、市町村の合併に関する地方公共団体の取り組みを積極的に支援していく必要があると考えており、本法案に思い切った支援措置を盛り込むことといたしたところであります。

 地方財源の充実確保についてのお尋ねがありましたが、地方分権推進計画に沿いまして、国と地方の役割分担を踏まえ、国庫補助負担金の積極的な整理合理化や、事務権限の移譲などを推進し、地方税、地方交付税等の必要な地方一般財源の確保を図ることといたしており、今後とも、この具体的内容に応じて、法律改正等、所要の措置を講じてまいることといたしております。

 また、地方財源の充実確保を積極的に進める観点から、地方行財政改革会議を設置いたしまして、検討すべきとの御提言でありました。

 政府といたしましては、地方分権推進計画に沿いまして、地方財源の充実確保に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣太田誠一君登壇〕

○国務大臣(太田誠一君) 機関委任事務制度の廃止に伴う定員削減についてのお尋ねがございました。

 地方分権の推進は、国の事務及び事業の減量、効率化にも資するものであり、政府としては、積極的にこれを推進してまいる所存であります。機関委任事務の自治事務化に伴い、国の関与の縮小などにより国の事務量が減少することがあれば、可能な限り、これを国家公務員の定員の削減に結びつけていきたいと考えております。

 地方事務官制度の廃止が国家公務員の削減の方針に逆行しないかとのお尋ねでございますが、現在、地方事務官が従事している事務については、地方分権推進委員会の勧告を受けて、事務の性格にかんがみ、国の直接執行事務にすることとしたものであります。また、現行の地方事務官も国家公務員であり、今回の措置により、全体として国家公務員数の増加につながるものではありません。

 いずれにせよ、政府としては、国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画に基づいて、改革努力を通じまして、地方事務官でありました定員も含めまして、国家公務員の十年二五%削減に最大限努力してまいります。(拍手) 

   〔国務大臣野田毅君登壇〕

○国務大臣(野田毅君) 機関委任事務のうち、六割以下しか自治事務になっていないことについてのお尋ねがございました。

 地方分権推進委員会においては、法定受託事務となるべき事務についてのメルクマールを定め、地方分権推進の観点に立って、精力的に御審議をいただいたものであります。今回の法案は、この地方分権推進委員会の勧告を最大限尊重して閣議決定した地方分権推進計画に従って作成したものであります。

 次に、法定受託事務の区分についてのお尋ねでありますが、地方分権推進委員会が個々の事務の区分を検討される過程において、各省庁との間でどのような意見の交換があったかについては、その詳細を承知はいたしておりません。今回の法案作成に当たりましては、地方分権推進委員会の勧告を最大限尊重して閣議決定した地方分権推進計画に即して事務の区分を行ったところであり、最終的に、地方分権推進委員会の御了解もいただいたものでございます。

 次に、法定受託事務の処理基準に関するお尋ねでありますが、今回の分権一括法による改正は、原則として、来年四月の施行を予定いたしております。また、施行までには地方公共団体における条例、規則の改正も必要となるものでありまして、それらに間に合うように、法定受託事務を規定する法令を所管する各省庁において、必要最小限度の範囲で処理基準を定めることになるものと考えております。

 次に、法定受託事務について、機関委任事務のように、国がコントロールするのではないかとのお尋ねでありますが、今回の分権一括法による改正により、機関委任事務に係る包括的な指揮監督の規定は削除されます。それにかわって、関与について、法定主義などの基本原則を定めるとともに、手続ルール、係争処理手続などを新しく設けることといたしておりまして、これにより、国と地方公共団体の新しい関係が構築されるものと考えております。

 次に、法定受託事務を政令で定めることについてのお尋ねでありますが、今後、法定受託事務の新設は厳に抑制されるべきと考えております。仮に政令で法定受託事務を創設する場合には、法律の委任の範囲内でのみ定められることとなるものであります。また、その場合にも、法定受託事務の定義に該当する必要があり、さらに、地方分権推進計画に定めたメルクマールに従うこととなりますから、法定受託事務が政令において無限定に創設されるということにはならないものと考えております。

 次に、国庫補助負担金の整理合理化についてのお尋ねでありますが、地方分権を推進していくためには、財政面での地方公共団体の自主性、自立性を高める見地から、国と地方との役割分担の見直しに合わせて、国庫補助負担金を真に必要なものに限定するとともに、一般財源の充実確保を図る必要があると考えております。

 これまでも、地方分権推進計画等を踏まえ、地方公共団体の事務として同化、定着、定型化しているもの、国庫補助負担金が少額なものなどについて、一般財源化や廃止縮減などの整理合理化を進めてきておるところでありますが、今後とも、地方分権の推進の観点から、国庫補助負担金の整理合理化を積極的に推進してまいりたいと考えております。

 次に、国庫補助負担金のサンセット方式の導入及び国庫負担金の見直し等についてのお尋ねでありますが、自治省としては、地方分権推進計画に基づき、これらの措置が着実に実施されることなどによって、国庫補助負担金の整理合理化が積極的に推進されるよう、引き続き関係省庁に要請をいたしてまいります。

 最後に、新規の国庫補助金の抑制策についてのお尋ねでありますが、地方分権推進計画において、新規の国庫補助金の設定は厳に抑制するとともに、行政需要の変化等に即応して真にやむを得ず新設する場合には、件数及び金額の両面において、スクラップ・アンド・ビルド原則を徹底することとされております。自治省としては、地方分権推進計画に基づき、国庫補助負担金の整理合理化を積極的に推進するよう、引き続き関係省庁に要請をいたしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

○国務大臣(宮澤喜一君) 補助金の中には、例えば生活保護費等の負担金あるいは義務教育国庫負担等、国の政策の重要な部分に関するものも幾つかございますが、同時に、しかし、社会経済情勢は絶えず変化をいたしますし、また、国と地方の関係のあり方も変わっていかなければなりませんので、それらを含めまして、絶えず新しい見直しをしていくことが必要であるというふうに心がけております。その中には、仰せになりましたように、いわゆる一般財源化を図るということも、一つの整理合理化の方法であろうというふうに考えております。

 したがいまして、補助金は、社会の需要の変化に応じまして絶えず検討していかなければならない問題でございますが、今自治大臣がおっしゃいました、必ずしも一律にサンセット方式を法制化することが適当であるかどうかはともかくといたしまして、従来から、新しく補助金を設定いたしますときには、原則として五年以内に終期を設定いたしております。また、終期設定の現実にないものについては、サンセット化の推進を、期限を設けまして、現実の行政としてはいたしております。

 それから、新規の補助金の抑制につきましても、ただいま自治大臣の言われましたとおり、なるべくもう新規のものは行いたくない、やむを得ず必要があります場合にはスクラップ・アンド・ビルド等の原則を貫きまして、今後とも補助金の整理合理化を推進してまいりたいと考えております。(拍手) 


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 出典:国会議事録検索システム


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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック