沖縄の米軍基地の現状と課題

1998年2月

沖縄県


目次

  1. 概 要
    ・施設数・面積・軍人の数等
  2. 沖縄の米軍基地の特徴
    ・基地の占める割合・歴史的背景等
  3. 米軍基地による社会的・経済的影響
    ・基地被害(航空磯事故、騒音、県道104号線越実弾砲撃演習、パラシュート降下訓練、原子力潜水濫の寄港、米軍人等よる犯罪、赤土、油流出等)
    ・県経済に占める基地収入
  4. 返還の状況
    ・返還の状況、本土との比較
  5. 軍転特措法の制定
  6. 米軍基地返還及び地位協定の見直しについて
    ・3事案・日米地位協定の見直し ・訪米要請括動 ・SACOの最終報告(基本的事項、土地の返還、訓練及び運用の方法の調整、騷音軽減、地位協定運用の改善)・国際都市形成構想と基地返還アクション・プログラム
  7. 普天間飛行場の返還に伴う代替海上へリポート基地建設問題について
    ・普天間飛行場の現状とSAC0の最終報告・海上ヘリポート建設の動き
    ・地元の動き・県の基本的な立場


沖縄の米軍基地の現状と課題

1. 概要

(1)施設数          39   (1997.3 現在)

(2)施設面積      24,286 ha (1997.3 現在)

(3)軍人・軍属・家族数 50,893 人 (1997.12 現在)

2. 沖縄の米軍基地の特徴

(1)広大かつ過密な米軍基地

    市町村面積に占める基地面積割合が40%以上の市町村

1. 嘉手納町 82.8%    2. 金武町  59.8%
3. 北谷町  56.4%    5. 宜野座村 51.5%
5. 読谷村  46.9%    6. 東村   41.5%

(2)沖縄に基地が集中・安保の過大な負担

(3)私有地の占める割合が高い

(4)歴史的背景

  1. 戦時における日本軍の接収(1941〜1945年)
     北飛行場(読谷)、中飛行場(嘉手納)等
  2. 占領下の土地接収(1945−1952年、講和条約発効まで)
     「へ一グ陸戦法規」による接取
  3. 布令・布告による土地接収(講和発効後、1952〜1972年)
  4. 沖縄返還協定による在沖米軍基地の継続使用(1972〜現在)

3. 米軍基地による社会的・経済的影響

(1)地域振興を図る上で障害

  1. 健全な都市形成を図る上での制約
    那覇港湾施設、牧港補給地区、普天間飛行場、キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧等
  2. 産業振興上の制約
    那覇港湾施設、牧港補給地区、読谷補助飛行場、奥間レスト・センター、キャンプ瑞慶覧等
  3. 交通通信体系上の制約
    普天間飛行場、牧港補給地区、キャンブ瑞慶覧、嘉手納飛行場等
    制限水域(29か所)・空域(15か所)

(2)復帰後も変わらぬ演習、あとを断たない基地被害

1. 演習等関連事故の多発
復帰(1972年)後25年間に……(平成9年12月末現在)
 航空機事故180件(うち墜落36件)
 山林火災154件(焼失延面積約1,731 ha)
※最近における主な航空機関連事故

1994年4月4日

離陸しようとしたF-15戦闘機が、嘉手納弾薬庫地区内に墜落・炎上

4月6日

CH-46ヘリコプターが不時着訓練中に施設内滑走路に墜落

8月17日

AV-8Bハリアー攻撃機が嘉手納飛行場から発進後、粟国島近海に墜落

11月16日

UH-1Nヘリコプターがキャンプ・シユワブにおいて着陸を試みたところ失敗し墜落

1995年9月1日

AV-8Bハリアー攻撃機が、訓練中、鳥島近海に墜落

10月18日

嘉手納基地所属F-15C戦闘機が沖縄本島の南南東海上約65マイル(約104km)に墜落

1996年5月25日

飛行中の在沖米海軍所属のP-3C機から、重さ約11Kgのソノブイが、糸満市の中学校付近の路上に落下

12月10日

岩国基地所属のFA-18ホーネット機が、訓練中に爆弾投下に失敗し、その後、本島々、本島から約10kmの提供水域外の海上に爆弾を投棄

1995年12月〜
1996年1月

烏島射爆撃場において、訓練中のハリアー機が計1,520発の劣化ウランを含有する徹甲焼夷弾を誤って訓練に使用し発射した

2. 航空機騒音(嘉手納飛行場・普天間飛行場)

3. 県道104号線越え実弾砲撃演習

4. パラシユート降下訓練(読谷補助飛行場)

5. 原子力潜水艦の寄港(ホワイト・ビーチ地区)

 1994年、復帰前後を通じて最高の18回寄港を記録した。1997年の寄港回数は9回となっている。

6. 米軍人、軍属等による犯罪

 米軍人、軍属等による復帰後の刑法犯罪は、1997年12月未までに4,867件に達し、基地から派生する事件・事故が跡を絶たない。

7. その他赤土流出・基地からの油流出等環境に及ぼす影響

 (3)県経済に占める基地収入

1972年度

1995年度

軍人・軍属消費支出

414億円

477億円

軍雇用者所得

240億円

523億円

軍用地料

126億円

670億円

軍関係受取(合計)

780億円

1,670億円

基地依存度
(県民総支出に占める割合) 

15.6%

4.9%

基地従業員数

19,980人
(1972年5月末)

8,349人
(1997年3月末)

                

4. 返還の状況

(1)基地の返還が進展していない(返還率15.2%)

【返還状況】

復帰時(1972年5月)  87施設  28,661 ha

現 在(1997年3月)  39施設  24,286 ha

 (参考)

  米軍専用施設の返還状況(施設面積)

本土

沖縄

復帰時
(1972年5月)

19,699 ha

27,850 ha

現 在
(1997年3月)

7,902 ha

23,498 ha

返還率

59.9%

15.6%

 

(2) 基地の返還を妨げている移設条件付き返還合意
   → 
    狭い県土に移設は困難

5. 軍転特措法の制定

 沖縄県内における駐留軍用地は、沖縄戦終結後、米軍が農地、宅地等を強制接収して建設した経緯がある。そのため駐留軍用地の地主は、駐留軍用地の賃借料を主な収入源として生計を立てざるを得なかった。

 しかし、駐留軍用地は返還される場合は、30日前の返還通知、細切れ返還、返還後の利活用が配慮されていない返還等のために、駐留軍用地跡地は広範、かつ長期間にわたって遊休化し、駐留軍用地の地主は、経済的に困難な状況に陥るものが多かった。

 このようなことを背景に県は、1978年以来、「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律」(以下「軍転特措法」という。)の早期制定を国に要望した。

 その結果、軍転特措法は、議員立法として1994年6月に4回目の国会提案がなされ、「国の負担又は補助の割合の特例等」を削除する等法案の一部を修正のうえ可決きれ、1995年6月20日に施行きれた。

 【沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律の概要】


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