米軍用地収用特措法改悪は「有事立法」の制定である

一坪反戦地主会   

 米軍用地収用特措法の「改悪」は単なる「改悪」にとどまらず、土地収用法体系そのものを抜本的に変更するものであって、「有事立法」の新たな制定に他ならない。

(条文の内容)

  1.  使用認定のあった土地について、裁決申請がなされ、使用期間末日前までに裁決が認められない場合にも、裁決において定められる期間まで引き続き継続して使用することが出来る。(使用期間が過ぎても、継続して使用することが出来る)
  2.  その際には、地代ではなく、六ヶ月毎に自分の見積もった損失補償額を当該土地所在の供託所に供託する。(地代相当の損失補償の支払いではなく、いきなり供託する)
  3.  裁決申請が却下された場合も、直ちに継続使用できなくなるのではなく、防衛施設局長から建設大臣に対して審査請求がなされ、審査請求が却下されるまでは、継続して使用することが出来る。
     建設大臣が、「却下」と取り消せば、裁決申請中となり、継続使用することが出来ることになる。(県収用委員会が裁決申請を却下し、土地取り上げが出来ないことになっても、土地を返さず、継続使用することが出来る)
  4.  供託した金額は、地主が請求するまでは支払う必要がない。
    請求があった時は、損失の補償の内払いとして、供託金の全部又は一部を支払う。
  5.  暫定使用による損失補償は、地主と防衛施設局長が話し合って決める。決まらないときは、収用委員会が裁決する。
  6.  改正法施行前に裁決申立をしていた土地で、施行期日に従前の使用期間が満了しているのに権利取得のための手続きが済まない土地(象のオリ)についても本法を適用する。従前の使用期間満了から暫定使用期間までの損失補償は、損失を受けた者と施設局長が話し合う。決まらないときは、収用委員会が裁決する。

(問題点)

  1.  米軍用地収用特措法は、土地収用法の一法体系であって、使用認定、使用裁決とそれぞれ手続きが法定され、補償金の支払いを完了してはじめて使用権限を取得することになっている。その理由から、反戦地主には長期使用の対価を一括払いし、過大な負担を強いてきた。
  2.  現行法では、決定に不服があれば、審査請求、裁決取消訴訟等司法的、行政的救済手段が補償されている。
  3.  ところが、暫定使用では、収用のための法的手続きは何ら必要でない。内閣総理大臣が、強制使用の対象となる事業であると「事業認定」をし、裁決申請手続きさえすれば、使用期間が過ぎても、「暫定」ということで使用することが出来る。収用法上の法定手続きは保障されず、憲法の保障する適正手続き原則に反する。
  4.  県収用委員会が裁決を却下しても、防衛施設局長が建設大臣に審査請求をして却下を取り消せと争えば、その結論が出るまでは、継続的に使用することが出来る。
     審査請求には、決定を中断させる効力がないので、使用裁決が出て、これに対して審査請求をしても、土地は取り上げられてしまう。
     これに対して、却下を争えば、継続して使用できることになる。
     建設大臣は国の意向を受けて取り消すことになるのであって、収用委員会の権限は全く形骸化されてしまう。
     一坪反戦地主会では五年前の裁決に対して、審査請求をしたが、未だに手続きが進んでいない。
     防衛施設局が審査請求をし、その審査手続きが進まなければ、長期にわたって、暫定使用されるということになる。
  5.  その場合の司法的、行政的救済手段はない。
  6.  使用することによる損失補償は、いきなり供託すれば足りることになっている。
     損失補償金の支払いをしないで、使用権限を取得することになり、適正補償の原則に反する。憲法の財産権保障に反する。
  7.  法律を遡及して財産を取り上げることになる。
     不利益処分に関する不遡及の原則に反する。

 結局、今回の法改悪は、単に条文を追加し暫定使用を認めたというのではなく、法的手続きを経ることなく、また、その使用を争うための法的救済手段も認めない「有無をいわさず土地を取り上げる」法律であり、新たな「有事立法」である。

 収用委員会制度そのものの否定であり、憲法の瓦解である。

 法「改悪」は、沖縄に対する差別立法に止まらず、有事立法の新設であり、ファシズム国家への突入を意味するものである。


 出典:一坪反戦地主会 > 沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
 沖縄差別立法への反撃(反戦地主会)
 米軍用地特措法改正案要綱(案)
 法律案参照条文
 米軍用地特措法改悪案(全文)(沖縄タイムスへリンク)
 沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック