今回の強制収用手続きに関する補足説明


【強制収用手続き開始】

 1995年3月3日 那覇防衛施設局は以下の地主に対して使用認定申請に必要な意見書を3月24日までに提出するように求めた


【土地物件調書の正否確認】

 50年以上にわたって米軍により専有されている土地について土地所有者は正確な状況がわからない。土地所有者はあらかじめ「土地調書及び物件調書を作成する場合において」は、土地所有者を「立ち会わせ」、土地の現況を確認させること、すなわち、基地立ち入りを認めることを要求した。だが、那覇防衛施設局は、この要求を拒否し、一方的に作成した土地物件調書への署名押印を迫った。
 土地物件調書の内容が正確か否かを確認すす方法がない以上、反戦地主や一坪反戦地主は、土地物件調書に異議を付すか、土地物件調書への署名押印を拒否するしかない。  今回反戦地主の半数が異議を付して土地物件調書に署名押印している。これは太田知事が代理署名をした場合(可能性は高かった)に土地物件調書がそのまま正しいものとして記録されてしまうからである。


【代理署名】

 今回は、前回まで代理署名も公告縦覧も拒否してきた宜野湾市長と北谷町長が、基地周辺整備事業や新庁舎予定地の部分返還といった問題を有利に運ぶため、代理署名に応じた。(注:桃原・宜野湾市長は公告縦覧には応じない予定
 那覇市、沖縄市、読谷村は、今回も代理署名を拒否した。


【一坪反戦地主会の声明(10月3日)】

大田知事の代理署名拒否に対し、10月3日、一坪反戦地主会は以下の声明を発表した。


 私たちはこれまで、国の不当な強制使用手続きに協力し、反戦地主の意思を踏みにじる結果となる土地調書・物件調書への代理署名を拒否するよう知事に強く要請してきました。したがって知事が、代理署名拒否の方針を明確にし、その意思を国に通知されたとを心から歓迎します。
 日米両政府は、東西冷戦時代の違物である日米安保体制を、国民的論議に付すこともなく、一方的に「再定義し、その拡大・強化を図ろうとしています。知事も懸念を表明しているように、この再定義が、日米安保の軍事的要である沖縄基地の強化をもたらし、沖縄民衆に、よりいっそうの重圧をもたらすのみならず、第三世界の民衆にも大きな犠牲を強いるであろうことは容易に想像できます。
 私たちは、行政と大衆運動がそれぞれの立場を尊重し合いながら、協カしてこうした重圧をはね返すために全力を尽くさなけれぱならないと考えます。平和行政を支えるのは平和運動ですが、平和運動を盛り上げるのは平和行政です。
 五年前の知事の公告・縦覧代行は、反戦地主の運動に大きなダメージを与えましたが、今回の知事の代理署名拒否は、反戦地主の運動を強く力づけ、反戦平和の運動を大きく前進させることに貢献するでしょう。
 代理署名拒否は、地方分権が強調される現在、地方自治の問題にも大きな一石を投ずることになりました。一部には、「機関委任事務は政治的判断を入れず執行すべき」という声がありますが、これは、地方自治体を国の下部機関視するものにほかなりません。代理署名拒否は、日本国憲法にいう地方自治の本旨を根底的に考え直す機会にもなるでしょう。
 私たちは、「若い人たちが希望をもてる沖縄」をつくりたいとする知事の決断が、長い年月、経済的社会的圧力に耐えつつ孤塁を守ってきた反戦地主の願いと共通するものだと考えます。
 代理署名拒否が、苦難の歴史を経てきた沖縄社会が明るい未来へ踏み出す歴史的転換点になることを願って、私たち一坪反戦地主会は、反戦地主を始め平和を求める広範な人々と共に反戦平和運動の新たなる展開をめざして努力したいと思います。


【緊急使用】

ASAHIネット・朝日新聞ニュースの記事から(要約)
=== <951224-7> news.asahi/politics, -(-), 95/12/24 19:20, 24行
標題: 使用期限にらみ、困惑深まる

   米軍用地強制使用手続きをめぐる職務執行命令訴訟で、県側が 「平和的生存権」の侵害を主張するなど本格的な憲法論争も含めて、国と正面から争う姿勢を示したことに、政府は困惑を深めている。一部用地の使用期限が来年三月末に迫っているため、政府としては憲法論争を回避し、行政手続きの一環として、年度内に判決にこぎつけたい考え。しかし、県側の出方によっては、裁判が長期化しかねず、対応に苦慮する可能性もある。 防衛施設庁は「(今後の見通しは)予想できない」(諸冨増夫長官)と不安を募らせる。

 政府にとっては、来年三月中旬までに判決を得て、首相が署名を代行し、同月末までに県収用委員会への強制使用裁決申請にこぎつけるのが理想的な展開。そこまで行きつけば、駐留軍用地特別措置法に基づき、使用期限が切れる土地の六カ月間の「緊急使用」を同委員会に申し立てることができ、米軍に用地を提供するまで時間を稼げるからだ。


『新版 沖縄・反戦地主(新崎盛暉)』などをもとまとめた。
米軍用地強制収用までの流れ][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック