沖縄県収用委員 第8回会審理記録
吉澤弘明
当山会長:
みなさん、こんにちは。これより第8回公開審理をはじめたいと思います。
はじめに、わたくしより収用委員の紹介をいたします。わたくしが会長の当山尚幸です。よろしくお願いします。わたくしの右側から、西賢祐委員、比嘉堅委員。わたくしの左側から大城宏子委員、浦崎尚彦委員です。
なお渡久地政美会長代理および上間瑞穂委員につきましては、去る10月14日の事前協議の際に、起業者から除斥についての申しでがありまして、本日審理をします嘉手納飛行場の土地所有者の四親等以内の親族に当たりますので、土地収用法の61条により除斥しております
審理進行についてご協力についてお願いがあります。意見陳述者はわたくしから指名いたしますので、指名された方のみ意見を述べてください。勝手に意見を述べないようにしていただきたいと思います。審理記録作成のため意見陳述者はマイクを使用して、起業者那覇防衛施設局の方は職名および氏名、土地所有者等は自己の権利に係る施設名および氏名を言ってから意見陳述を行ってください。代理人の方は、誰の代理人かを明示してから意見をおっしゃってください。
本日の審理がスムーズに進行でき、多くの方が意見陳述できるよう、審理に参加しているみなさんのご協力をお願いいたします。
本日の審理の進め方ですが、まず最初に、現地立ち入り調査についての意見陳述がございます。そして嘉手納飛行場に関する意見陳述となります。
ではまず最初に、基地内立ち入り拒否に関する意見陳述。吉澤弘明さん、お願いいたします。
吉澤弘明:
地主本人であり、かつ代理人であります吉澤弘明です。
基地内立ち入りにつきましては、いろいろな経過がありましたが、地主代理人が自ら自主的に入ることは、断念せざるを得ない理由がありました。そこで、現地立ち入り調査の申し入れ書を収用委員会に法律に基づいて提出いたしました。
県収用委員会はわたしたちの申し入れを受けて、「現地調査の立ち入りについて」と題する公文を平成9年7月30日付けをもって起業者に渡しました。この文書には調査のために必要がある、そこで地権者を同行する旨よろしく取り計らうようにとされていました。
本年8月22日、防衛施設局は県収用委員会に対して、「米軍施設区域への立ち入りについては、防衛施設庁を通じ、日米合同委員会に申請しましたところ、収用委員および事務局員については認められましたが、地権者およびその代理人については、施設の管理運用上の理由から認められないとの旨の回答があった」を通知しました。わたしどもは、もちろん抗議をしました。そして収用委員会に対して、地権者を同行しない立ち入り調査は控えて欲しいと申し入れ、収用委員会はその通りされました。収用委員会に対しては敬意を表します。
そして収用委員会は立ち入り調査の日程を改めて10月7日、10月16日と指定しました。そして、今度はそれぞれの施設に地権者、代理人に出頭命令を発送しました。そして防衛施設局に対しては、詳細な理由を付して、地権者代理人の立ち入りが不可欠である旨を通知されました。
収用委員会が出しました調査を必要とする理由の要旨は次の通りであります。当収用委員会が、次の事項を現地で確認することは適正な審理を遂行する上で必須不可欠である。そのためには、現地に土地所有者を立ち会わせ、その趣旨説明を聴取することがもっとも有効適切である。一つ、申請書添付書類に記載されている使用の方法。二つ、使用する土地及び補償金算定のための近隣地の状況。三つ、地籍不明地域内に存する申請書の位置、形態及び面積等。四、土地物件調書に記載されている異議の内容。
収用委員会は心証形成のため、現地において土地所有者および起業者から意見を聞く必要があると判断して、法第65条第1項1号の規定によって、出頭を命じたと付記されております。
調査事項は、土地の使用状況の確認、申請どおりか否か、土地の状況の確認、地勢、形状、調査の異議内容との照合、地上物件の状況、建物、立木等の確認、付近の状況でありました。
この立ち入り要求に対する国・防衛施設局はどのように対応したか。この問題について去る9月24日の第7回公開審理の冒頭、所有者代理人の阿波根昌秀弁護士が起業者側を厳しく追及しました。これに対する坂本憲一総務部長の証言は、要旨次の通りでありました。
収用委員会からきた7月31日付けの文書、これにもとづいて、現地米軍に立ち入りの申請をしたこと。現地米軍は日米合同委員会の事務局を通じて、在日米軍基地司令部にやるとということのようです。これは原文のままです。議事録から??ということだったので、本庁を通じて日米合同委員会を通じて、日米合同委員会事務局に提出した。地権者代理人が立ち入る必要性についての説明は付けていない。淡々とやったまでだからと。収用委員会の文書を英訳した形で施設本庁のほうに上げて、本庁のほうが日米合同委員会事務局にどういう形で出しているかはこれは承知しておりませんと答えました。
収用委員会の9月5日付けの文書については、これを日米合同委員会に提出したが、那覇防衛施設局として地権者代理人の基地立ち入りの必要性についての意見書は出していない。そのようなのは、今後とも特に上げる必要はないと思いますと議事録にあります。
右に見たとおり、起業者側は県収用委員会の文書をただ右から左に防衛施設本庁を通じて、日米合同委員会事務局に上げただけで、起業者としての特段の意見は具申しておりません。すなわち、地権者代理人の基地内立ち入り調査実現のための努力はなにもしていないのであります。なぜなんでしょう。それは後ほど、有銘政夫、真栄城玄徳・両地主、河内謙策弁護士が述べる通り、地権者とその代理人が現地において趣旨説明したのでは都合の悪いことがあるからであります。
裁判の場合、裁判所は相対する双方当事者の言い分を十分に聞いた上で判断を示します。県収用委員会は、裁判所に準ずる機関、すなわち準司法機関であります。その審理手続きの一環である基地内立ち入り調査において、土地を取り上げられようとしている地権者とその代理人の立ち会いが妨げられては公正な審理は担保されません。起業者である防衛施設局が真実、審理を促進し、自己に有利な裁決を引き出したいと思うのであれば、防衛施設庁本庁のみならず防衛庁、外務省をも動かして、アメリカ政府に働きかけるなど、地権者、代理人の基地内立ち入りが実現されるように具体的な努力をすべきであります。ここにきてなお、坂本憲一部長は、今後とも意見書を上にあげる必要はないといわれるのでしょうか。もしそうであるならば、起業者たる申請人の怠慢ですから、本申請はすべからく却下されるべきものと思います。
次に、アメリカ政府と在日米軍は、土地所有者と代理人の基地内立ち入りを認めるべきです。さきほどの文書によりますと、立ち入りが認められないのは、施設の管理運用上の理由からということであります。そのようです。そうらしいです。らしいと言わざるを得ないのは、米軍が出した回答文のオリジナルに私どもは接していないからです。仮に、真実、米軍が施設の管理運用上の理由から立ち入りを認めないと言うのであれば、なにゆえに、また管理運用上どのような支障があるので認められないのか、その具体的な理由を示すべきであります。
かつて楚辺通信所に知花さんが立ち入ろうとした時に、敷地内の付設されているメッシュシート等への影響があるから、立ち入り人数は30名以下、立ち入り回数は1回に限ると主張していたことを収用委員会の先生方はご記憶と思います。また、緊急使用の審理に際して、収用委員が現地調査を実施されましたが、米軍は通信施設への影響を理由に、通路にはベニア板を敷きました。そして、各委員の体重まではかって申告させました。これは後に根拠がないことが明らかになりましたけれども、一応それなりの理屈らしい体裁は整えています。わたしたちが10名の地主と代理人が入ることが基地の運用に支障があるのでしょうか。私たちがサリンや爆弾でも持ち込もうとしてると思うんですか。このような態度は、理不尽であり、不当であります。
まず、日米安保条約と地位協定が如何に対米従属的なものであっても、日本に駐留する米軍は国内法に基づくこの収用手続きを経てはじめて、その土地の使用ができ、そこに施設を置くことができる。その肝心な法律が要求する手続きに必要な立ち入りを認めないと言うことは、日本の法律をないがしろにするものである。
地位協定第14条は米軍に法律を遵守する条約上の義務を負わせています。代行して立ち入り調査をしようという収用委員会、それを認めないと言うのは、収用委員会の厳正なる権限を否定することになり、日本の法律を踏みにじるものである。それはすなわち日本の主権を侵害することであり、まさに国際的にも重大な問題であります。
最後に、SACOの合意が昨年の10月になされました。地位協定の運用上の改善等の一つとして、米軍の施設および区域の立ち入りについて、日米合同委員会により発表された合衆国の施設および区域への立ち入りの許可手続きを実施すると、このSACO報告は述べております。この立ち入りの手続きには、合衆国軍隊は地域社会との友好関係を維持する必要性を認識し、立ち入りが軍の運用をさまたげることなく、部隊防護を危うくすることなく、かつ合衆国の施設および区域の運用をさまたげることなく行われる限りにおいて、立ち入り申請に対してすべての妥当な考慮を払うと明記されています。
この申請の手続きの一環としてなされる地主のあるいは代理人が基地に立ち入ることが、軍の運用を妨げるものではないこと、部隊防護を危うくするものではないことは明らかでありす。
しかも県収用委員会の審理指揮のもとで、当山会長の指揮のもとで、調査、趣旨説明等が行われるわけでありますから、われわれの行為が合衆国の施設および区域の運用を妨げることなく行われることが、これまた明らかであります。
そうでないと言うならば、収用委員会の指揮能力を否定することで、大変失礼なこと、著しい冒涜であると私は思います。
したがって、今回の立ち入り拒否は、米軍自らがSACOの合意さえも、――さえもと言うのは、SACOをわれわれは全面承認しているわけではないからです――、踏みにじるものであって許されない。このように米軍が法の基づく収用委員会の調査権限を否定しつづけるならば、収用委員会としてもかかる状況においては、強制使用は認められないということを内外に表明すべきではないでしょうか。
すなわち地主代理人の基地立ち入り抜きの調査結果では、本件申請の可否を決することはできない、心証が取れないと収用委員会みずから公文で示したとおりです。可否を決することはできないものとして、請求を却下すべきであります。
最近においては、日弁連、あるいは県議会、あるいは県庁議会の立ち入り要請、これらもことごとく拒否しています。まさに、常軌を逸しているといわなければなりません。わたくしはここであらためて、このような米軍の暴挙に強く抗議するものであります。
またこのような米軍の暴挙に対して、手をこまねいて、唯々諾々とかしずいている日本政府と防衛施設庁に対しても強い怒りを表明して意見陳述を終わります。
当山会長:ありがとうございます。それでは、次に平良悦美さん。