沖縄県収用委員 第5回会審理記録

石川ハル 伊江島反戦地主(石川清敬)の配偶者


石川ハル:

 わたくしは反戦地主ではありません、代理です。主人の。主人はちょっと言語障害で、言葉が不自由なもんですから、わたしが来たんですけれど。

 わたしはなぜ契約を拒否しているかというと、わたしたち、小さいときから戦争に、あれされて、とっても苦しい思いをしたもんですから。

 もう、6才の時から、戦争当時は6才でした。それからずっと、53年、足掛けですかね、ずっと、戦争はまだ終わっていないという、ことで、もう、あの、この戦争のために、軍用地にこの演習場、あの、利用させた場合は、また戦争が起きるから、この、あの、軍用地は早く解放しなさいといって、いつも言っているんですけど。この防衛庁は、聞かずに、いつも契約しなさい、しなさいって、毎年来るんですけれども、家の主人は、あんたがた、いくら通ってきても、絶対契約はしないから、もう来ないように、経費を使ってなんでこっちに、毎年来るか。この経費はどこから出るのか、みんなの税金じゃないんですか、ということを聞いたんですよ。それでも、もう、わたしたちも仕事ですから、ということで。

 また、この防衛庁から来る人たちはみんな若い子どもたちで、入って、あの、来たばかりの青年たちで、なんの話をしてもわからないんです。で、あんたがたの上司は、と言ったら、わたしたちだけ来た、と言う、あれでしたけど、車の中には、年いった人たちがいるみたいですよって、わたしがいったんです。あの人たちですか、っていったら、いや、誰もいないよ、僕たちだけで来たよって、2人来ていたんですけど。

 もう、もう絶対契約はしない、帰りなさいといったら、一言も言わないで帰っていったんですよ。で、もう、あれからは、去年、一昨年だったんですよ、来たのは。もうあれからは来ないですけど。

 わたしたちは、親から受け継いだこの土地は、また、家の主人のおとうさんの遺言でもあります。絶対契約してはいけない。契約したら最後、もう何の権利もない。あんた方、意見言う権利もない、なくなるから、契約はしていけないということを、聞かされていたそうです。

 軍用地問題で、家の主人のおとうさんは、戦争に敗けて、政府いって、座り込みやいろんなことをやって、きましたけれども、もう亡くなって、いないんですけど。

 それで主人は親からの受け継いだ土地は絶対演習地には、もう、戦争のために貸すことはできないといって、一点ばりでいままで。

 隣近所は、隣の人は、もう、兄弟なんかで、もう、やったほうがいいよ、やらないと、もう取り残されるよ、といったもんですから、隣はやったんですよ、一昨年。もう、あんまりしつこいもんですから、やったんですけど。

 あなた方はがんばってね、若いから、というあれで、隣から言われているんですけどね。もう隣はみんな契約地主で、わたしたちだけ、反戦地主ですけど、前は嫌みも言われたんですけど、もう、この嫌みも通り越して、もう何とも隣近所は言いはしませんけれども。

 でも、もう、親からの受け継いだ土地ですから、もう最後まで守り抜きたいと思います。お願いします。

当山会長:はい、ありがとうございました。それでは次に謝花(じゃはな)悦子さん。


  出典:第5回公開審理の録音から(テープおこしは比嘉

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