沖縄県収用委員会 第10回審理記録

吉田正司(土地所有者)


 土地所有者(吉田正司):

 普天間基地の地主の吉田です。

 起業者の方に申し上げたい。あなた方は、米軍が道路はまっすぐにブルドーザーを使って、フェンスで囲い込んで、米軍基地に使っているのに、復帰後になってそれに手を貸して強制使用を続けている。どうしていつまでも軍事基地を沖縄に維持しようとしているんですか。しかも、しかもです。安保条約の条文上から言えば、陸軍、海軍、空軍、3軍が使うことになっているのに、海兵隊がどうしているんですか。つじつまを合わせるためだけに、海兵隊は3軍に含まれるようなことをあなた方は言っていますが、元海兵隊の人が、アレン・ネルソンという方ですが、これは新しく出た本で、本人が違うと言っています。

 海兵隊というのは、海兵隊の出撃は議会の承認を必要としない、大統領命令だけで可能である。この点が他の軍と違う点ですねと言っています。米軍の説明をするときにも、空軍基地ではユニフォームを着た紳士で、礼儀正しく云々と、空軍のことを説明するんだそうですが、海兵隊の施設の前で説明するときは、何とビースト(獣です)という説明を使っているそうです。海兵隊はなぐり込み部隊だとよく言われていますけれども、そういう海兵隊を沖縄に師団規模で駐留させておいて、嫌がるのをむりやり強制使用しているのは、やめてください。

 私は、関東地方に在住している地主として、私の気持ちを申し上げます。今言いましたように、アメリカ人であっても、元海兵隊、本人が言うんですから間違いありません、元海兵隊も沖縄に基地は必要がない、やめてほしいと言っています。今の発言にもありましたように、有機的一体性などとは全く形ばかりです。有機的一体性なんかないんです。普天間基地は一日も早く返還させる必要があるし、基地はなくす必要があります。形ばかり有機的一体性などと言っていますが、うそです。うそは泥棒の始まりと何度も言われておりますが、起業者の方はうそをつくのはやめてください。しかも、思いやり予算と称して、頼まれもしないことをさらにサービスするというのはとんでもない話です。どうしてそのようなことをするんですか。それならば地主のうことを多少でも聞いてもらいたいものです。

 私は関東地方におります。日本人は醜い日本人ばかりではありません。そうではないという、心では違うと言って、醜い日本人にさせられている人もいます。私は醜い日本人になるまいと努力はしておりますが、やはり醜い日本人の一人として、基地がなくなる日まで、私は自分の主張を曲げまいと思って、きょうここに立っております。

 アメリカの海兵隊でも、自分が言うんだから間違いない。沖縄の基地はやっぱりいらない、しかも軍隊というのは人を殺すものであって、そういう人を殺すようなやり方、人を抑圧するようなやり方はやめるべきだという主張もあるんです。日本人の中でも、大和の人はみんな抑圧する人たちではありません。心ある人たちもいるんです。そのことを委員の方もぜひ知ってください。

 思いやり予算などという、何の根拠もないのに、しかも地位協定にも、米軍が駐留軍については負担すると明記してあるのに、さっきの3軍もそうですけど、条約に明 記してあって、地位協定に明記してあって、なおかつそれを踏みにじるというのは、一体どういうことでしょうか。こういうことは一日も早く終わらせるようにしてもらいたいものだと思います。

 大和では沖縄のことは関係ないかのように言われます。一坪地主というのは、座ぶとんだとかハンカチだとか、小さいことのように言われます。しかし、沖縄がよくて兵庫県から来た大学生が、米軍に轢き殺されて死んでおります。きょう判決がありまして、実質的な勝訴判決があったようです。民事裁判ですけど。そのように、大和でも沖縄のことは全く別のことではありません。沖縄では日常的に政治と関わらざるを得ないんですが、大和でもそれに手を貸している人たち、そしてそれを許すまいとする人たちもいるんです。そのことをぜひ知っていただきたいと思います。

 収用委員の皆さん、名誉にかけて実質審理に努力されてきた収用委員の皆さん、名誉にかけて普天間基地については却下の裁決を出してくださるように、私も在関東で意見を今後も述べていきたいと思いますが、委員の方にもぜひ努力していただきたいと思います。

 私は、那覇防衛施設局が地主に対してまるでポロ雑巾扱いするようなことをするのに対して、本庁である防衛施設庁に行って何度か抗議を行いました。首相官邸にも行きました。那覇防衛施設局はそんなことはしてないみたいなことを防衛施設庁も首相官邸も言っていますが、事実はそうではありません。地主の言うことを踏みにじって、聞こうともしない姿勢、そして、うそをつき続けているその姿勢、それを私たちは東京においても、関東地方においても、声を大にしてやっていきたいと思います。

 ぜひぜひ、委員の方々は、そういう人たちもいるということをお考えになって、賢明なる裁決を名誉にかけて出していただきたいと思います。

 以上です。

 当山会長:

 はい、ご苦労様でした。 では、次に上原成信さん。


  出典:第10回公開審理の議事録から(テキスト化は仲田


 注:『沖縄に基地はいらない 元海兵隊員が本当の戦争を語る
    アレン・ネルソン著 国弘正雄(くにひろ・まさお)著 岩波書店
   (岩波ブックレットNo.444 ) 4-00-003384-0/1997.12


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