沖縄県収用委員会 第10回審理記録

臼田和雄(土地所有者代理人)


 土地所有者代理人(臼田和雄):

 陸軍貯油施設の土地所有者、與儀和雄外の代理人の弁護士の臼田和雄でございます。陸軍貯油施設について意見を申し述べます。陸軍貯油施設と申しますのは、金武湾とホワイトビーチに陸揚げいたしました石油類を貯蔵するタンクと、そこから送油いたしますパイプライン、そして送油されました石油を貯蔵するタンク、そして油圧を上げるブースター、これらを全部結んで一つのシステムとしておると、こういうふうでございます。それで今回問題となっておりますのは、その一部でございます。スライド1をお願い申し上げます。

 これが概略図でございますけれども、左のほうが東シナ海でありまして、右のほうに細長く映っておりますのは、国道58号、これは東でありまして、大体この図は、ほぼ上が北であります。今、申請地となっていますのは、ここに1から8と番号がついておりますこの土地でございます。これ概略図の番号は、土地調書の概略図番号でございますけれども、今後、この土地を申し上げるときに、番号で申し上げますので、よろしくお願いいたします。

 この土地は、全部北谷町の砂辺差久原という土地にあります。海岸べりのほうは兼久原という名がついております。南端に供用道路がございまして、その南のほうは、昔から砂辺の人たちの集落となっております村内原と申します。

 この土地は、別称スナビヌ浜というふうに申しておりますようで、昔から美しいところとして知られているようでございますが、それが今、結局米軍の基地となっているということでございます。スライド2をお願いいたします。

 これは、誰かが写してくれましたので、どのあたりか分かりませんが、おそらく国道58号側の先ほどの供用道路の少し北側から東シナ海のほうに向けて写したものというふうに思います。そこに黙認耕作地が見えております。その向こうにちょっと高い小山のように見えるのが、タンクが埋没しているところというふうに考えられます。

 スライド結構でございます。

 この基地は1945年4月1日の米軍の侵攻上陸以来、米軍の占領下にあったということであります。米軍が4月1日に上陸いたします。その前からもちろん、3月下旬から空 襲艦砲射撃がありまして、砂辺は直接海岸から米軍の上陸地点となっております。砂辺の住民は、今は名護市の中になっておりますが、羽地村の疎開先にいた者も含めて、山原の山の中に逃げ込んだということになります。そこでの苦労というのは、皆さん十分ご承知のとおりでありまして、不潔・不衛生からくる病気、マラリア、そして食糧不足による栄養不良というそういう中で、非常に悲惨な状態であったということであります。南に逃れた人も一部いたようでございますが、その方々の惨状は、運命といいますか、これもまた周知のところであると思います。

 与儀一家は北へ逃れまして、かろうじて一命をとりとめて戦争は終わりました。ところが、先ほど照屋さんが意見で申されましたように、北谷村丸々一帯、米軍の基地となっておりまして、北谷村に帰還するのは、ほかのところよりも約1年移動許可が 遅れているということで、しかも指定地は桃原とかああいう山の中でございました。それで、与儀一家は当時お父さんの時代でございまして、今の差久原の土地で耕作をいたしまして、村内原に住んでいたということですが、どこにも帰ることができませんで、よそに住んで、そのままふるさとに帰れなかったということでございます。

 もうそのときから陸軍貯留施設の今のあるところには貯油タンクがございまして、最初のタンクは先ほどのように埋没しておりませんで、昔皆さんご存じのような、円筒形のものが丘の上のところにちょっと建っていたと、そういうようなことでございます。

 こういうことで、そのように陸軍貯油施設の土地は、もう戦後の当初から住民から有無を言わさぬ形で取り上げて、その意思にかかわらず、今日まで占拠され続け、軍用地とされているわけであります。与儀一家の本件申請地である差久原の畑がまだその一部であるということになります。

 もともと平和の民であった沖縄の人々の、この戦争惨禍による苦しみが土地所有者の契約を拒否し、基地に自分の土地を提供したくないという気持ちのその根底にあるというふうに私たちは理解いたしました。

 この陸軍貯油施設から出てきます害悪について申し上げます。パイプラインからの環境汚染事故も、既にもうパイプラインが撤去されたところも含めまして、相当多数発生が報告されてきました。浦添市、宜野湾市、那覇市、具志川市、北谷町等であります。砂辺の施設でも、ガソリンの流出が去年というだけでなくて実際に1950年後半、パイプからガソリンが流れ出しているというのを住民が目撃しております。ちょうど現在の砂辺の陸軍貯油施設の南側付近の海岸寄りのパイプから、グリーン色のガソリンが漏れているということだったそうです。グリーン色のガソリンというのは、航空機用の燃料だそうでございます。当時は占領下でありましたので、皆さん、ただなす術もなく、心配していたという状態だったと言っております。別に瑞慶覧などからと思われる油漏れもございまして、土地の漁業協同組合では、始終見回っているという状態であります。

 このように住民への不安と環境への悪影響などを伴う使用というのは、特別措置法の3条に定める土地の適正かつ合理的な使用とは言えないと考えております。なお、1980年、この付近で工事がありましたときに、砂辺差久原貝塚というのが発見されま した。ここから北の嘉手納町の基地内は、遺跡がとりわけ多い地域と見られております。また、施設の南側の先ほどの供用道路に沿って、街灯工事の予定でトレンチ掘りの試掘がなされましたが、遺物が発見されました。85年の調査で、これがグスク時代の砂辺差久原遺跡とされております。こうした遺跡の多い土地の軍用地としての使用が、やはり同じように適正かつ合理的な使用ということは到底言えないというふうに思っております。

 それから、次に、先ほど出ておりました陸軍貯油施設の概略図の番号の1、2、6、8が輿儀和雄の所有地でございますが、それをはじめ申請地上には貯油タンクそのものは存在していないように見えます。また、その1、2の土地は、先ほど写真でも出ていましたような黙認耕作地とさえなっております。

 防衛施設局長の申請理由説明によりますと、これらの土地は貯油タンク用地として使用するということであります。しかし、これらの土地には貯油タンクは存在いたしません。かえって耕作地が存在する。ということは、申請そのものが実際の用途とも一致しないし、やはり特措法3条の必要性の要件を満たしていない違法な使用という ことになると思います。

 ところで、スライド1をお願いします。

                

 まず、スライド出る前から話を続けますが、1の7番の国道58号に接している、上のほうに三角のように見える土地があります。あの土地は、概略図で見ますと、国道58号に接しているように見えるわけです。ところが、この土地の土地所有者の方にお目にかかる機会がありまして、話を聞いてみますと、この土地は申請地としては先ほど砂辺差久原889番の3というふうになっております。枝番3なんですけど、国道のほうが沖縄開発庁の買収地でありまして、枝番の2でございます。その枝番2と枝番3の間 に、開発庁の土地でない枝番1の土地がございまして、それがその同じ土地所有者の 土地でありますが、ここは申請地になっていないということであります。一応、公図を見ますと、ほかの土地は大体国道に接して、防衛施設局の管理地と開発庁の管理地の間に何か土地が入っているというふうなところがないように見えるわけです。公図で見た限りは。それで、その土地所有者の方もそういうことであります。ところが、ここだけが土地が一部後退するということであります。

 この方の話では、お父さんが亡くなられまして、防衛施設局のほうから初七日にもうさっそく契約を強要してきたと。49日も過ぎない間に、複数回、契約が強要されると。未だ何にも手がついてないという状態で、しつこく契約などと言われたので、契約を拒否したと。そうすると、その次に、当局の手によって土地が勝手に枝番3と1に分筆にされて、細長い土地が残されまして、後だけが強制的に使用されるということになったということです。今回のここが申請地になっている。これは合筆してくれという要求をしたそうでございますが、その要求は入れられないままで、したがって契約もそのままになっているということなんだそうです。

 地主さんの話はここまでなんですけれども、私がここで思いますに、ほかの土地は国道いっぱいまで必要だというのに、地主さんが変わると必要な土地は後退してしまうというのはこれは一体どういうわけかと。何かそこに合理的な理由があるとは思えないと。必要性というのは結構、恣意的なんじやないかと。防衛施設局長は必要、必要と言うんですけど、必要性について全然立証しないということです。

 こういうことは、やっぱりこれは陸軍貯油施設のタンクのある土地以外、相当広くとっているわけですが、本当に必要性というのは十分検討されているのかというと、されていないんじやないかと。あるいはタンクのために必要だというところがありましても、その範囲という、区域というのは十分慎重にご判断いただく必要があるんじやないかと。特に、土地収用委員会は、特措法に準用されます土地収用法48条1項1号の区域について裁決しなければならない。やっぱり区域を決めることができるわけでありますから、本当に必要な区域かどうかということは、十分慎重にご判断いただきたいというふうに考えるわけでございます。

 ところで、最後に陸軍貯油施設のシステムで扱われております石油類は、4軍全部 の用に供するものであります。陸軍という名前がついていますが、これは管理が陸軍の第505品質管理大隊が管理しているというだけのことでありまして、すべての航空 機・軍艦の燃料を供給するものであります。

 今までも出てきておりましたように、これまでの米軍の海外での戦闘行為に陸軍貯油施設が直接間接に寄与してきたということは言われております。最近でも、この11月に対イラク作戦が行われました。そのときに米国本土からB52戦略爆撃機が出動い たしております。その給油は沖縄からの空中給油機、これによってなされたということは米空軍当局によって発表されておりますけれども、この燃料が当然ここの施設を含むシステムから供給されていることは疑いないところだと思うわけです。この対イラク戦は、武力による威嚇でありますし、日本の自衛とも関係がないということであります。陸軍貯油施設のこのような使用は、日本国憲法が許していいはずがない違憲な使用であります。

 こうした違憲な、あるいは違法な使用を許すような裁決はなされるべきでないことは明らかでありますから、本件の裁決申請を却下されるように意見する次第でございます。

 終わります。

当山会長:

 はい、ご苦労様でした。では、次に牧港補給地区に入りたいと思います。内間清子さんお願いします。


 出典:第10回公開審理の議事録から(テキスト化は仲田

 スライド写真提供:違憲共闘会議


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