41 いま必要とされているのは新しい構造と市民的不服従――ベトナム反戦世代からのイラク攻撃NO!!
(『ACT』2002年12月9日号) (2002/12/10新規搭載)
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辛口レビュー
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ベトナム反戦世代からのイラク攻撃NO!!
吉川 勇一さん
市民の意見30の会・東京
1931年東京生まれ。東大学生自治会中央委員会、全学連、日本平和委員会など活躍。63〜64年の原水禁運動方針の相違で日本共産党から除名。その後、ぺ平連に参加し、66〜74年まで事務局長役を務める。それ以降も、予備校教師をしながら市民運動家として活躍。80年、小田実らと「日本はこれでいいのか市民連合」を、88年、「市民の意見30の会」を結成。 |
【構成・写真:加田斎】
いま必要とされているのは
新しい構造と市民的不服従
来年には3万人規模の大集会を
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ついに、国連によるイラクへの査察が始まった。その一方で、アメリカは着々とイラクへの攻撃準備を進めていると伝えられる。この切迫した状況のなかで、私たちはなにをすべきなのか。旧べ平連(ベトナムに平和を!市民文化団体連合)の一員で、現在も広範な平和運動を展開している「市民の意見30の会・東京」の吉川勇一さんにお話を伺った。
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――やっと日本でも少しずつ、イラク攻撃反対の声が挙がってきていますね。
もちろん、各地域ではいろいろとやっていたと思うけど、全体をカバーする枠がなかったんですよ。それが、いま、二つの大きな動きが出てきています。
一つは、十二月十三日に渋谷でおこなわれる集会。これは、小田実さんが九月十一日に発表した「9・11声明」に賛同する知識人・著名人が呼びかけている集まりです【2面参照】。各野党にも参加を申し入れているので、うまくいけば、さまざまな分野の人たちとも連動できると思います。
もちろん私もこの声明には大賛成だから、一緒に賛同者を集めました。実務は、関西の事務局だけど、実際の集会は東京でやるので、いま、いろいろと手伝っています。
もう一つは市民運動の主導で来年初めにおこなわれる予定の大集会。これは一月十五日から十八日までアメリカを中心に実施される国際的な反戦行動への呼びかけに応えるものです。
私としては、できれば、この二つの動きをドッキングさせて、三万人くらいの市民が集まるようになれば、と思ってるんですけど。十数万人を集めたローマに一歩でも近づければ、ってね。
――ベトナム戦争のときのように、運動が広がっていけばいいのですが。
もちろん、あのころのようにはいかないでしょう。あの戦争で、私たちはいろいろな教訓を得たんだけど、アメリカの政府や軍はもっと学んだんです。
徹底的にマスコミを統制し、徹底的に殺人現場を見せない。そしてアメリカ人の戦死者を出さない。私たちが見ることができるのはアメリカ政府が発表したニュースだけ。そんな状況のなか、当時の反戦運動を再現するなんてことは容易ではありません。
あの当時は、血だらけの生首を持った米兵の動く姿が茶の間に流れたわけだから、即座に「これはひどいよ」ってことになったんだけど、いまは、ゲーム見てるようなもんだからね。
――やはり、一朝一夕にはいかないんですね……。となると、いま私たちはどういうことを考えていくべきなんでしょうか。
いま、必要な方向性として二つあると思います。
一つは市民がイニシアチブをとって新しい構造を創っていくということ。たとえば、小田さんたちがやっている「良心的軍事拒否国家日本実現の会」の主張(※ドイツなど西欧諸国で実施されている、兵役を拒否する代わりに社会的弱者救済、緊急活動、平和教育などに従事する制度=良心的兵役拒否の思想に習い、日本を「平和主義」の実践をおこなう「良心的軍事拒否国家」にしようというもの)や、市民の意見30の会で提唱している「日米平和友好条約」なんかがそうです。また、中国・モンゴル・ロシア・日本・韓国・朝鮮・台湾をカバーした東北アジア非核武装地帯を実現しようという動きもありますよね。現在の閉塞状況をうち破るには、そういう今までとはまったく異なるシステムを市民の手で構築することが重要だと思います。
そしてもう一つは個人の問題。個人としての生き方をそれぞれがどう設定するのか、ということです。
いまアメリカでは政府が個人管理、情報管理を進めています。日本も、住基ネッ卜にしろ、個人情報保護法にしろ情勢は同じ。「日の丸・君が代」強制など思相や管理も強化されている。そんな社会のなかで、市民的不服従、つまりいかなる国家・政府の命令であろうと、良心の自由に従い、場合によってはそれを拒否する姿勢、それがいま私たち一人一人に問われています。
この二つの方向性がかみ合えば、次につながるんじゃないかと私は考えています。
――そういえば、ペ平連をはじめとしたベトナム戦争反対の運動に携わった人たちが中心になって今度、シンポジウムを開催するとか。
そう。ACTが出る頃には終わってるんだろうけれど、「殺すな!――ベトナム・アフガン・パレスチナ・イラク……と私たち」という講演&シンポジウムを十二月八日にやるんですよ。
きっかけは、今年の初め、日本でのベトナム反戦市民運動の資料を贈るためにホーチミン市にある戦争証跡博物館を訪問したことです。ここに、べトナム戦争当時、日本の市民運動がどういう反戦活動をやってきたかという資料を贈ったんですね。DVDやパネルなどを作成しました。向こうでこのDVDを上映したときは、みんな感動して泣いてましたねぇ。
そのあと、夏に、相模原の戦車輸送阻止闘争(※一九七二年、相模原にある米軍補給廠からべトナムに送られる米軍の戦車を市民の力で百日間にわたって阻止した闘争/本紙177号6面で紹介した『戦争は止まった』(アゴラさがみはら〉参照)の三十周年集会で、べトナムからその博物館の館長ほか三人を呼んだんです。それが、ちょうどイラク攻撃の話が現実味を帯びてきたころだったので、これを阻止するために当時の反戦市民運動とは何だったのか問い直そう、そしてその立場からいまどうすべきかを行動で示したい、ということになったんです。
シンポジウムでは私たちより下の世代なども交えて、当時どうだったのか、そして今とどうつながるのかをいろいろな角度から検証し、議論を深めたいと思っています。
(『ACT』は毎月第2、第4月曜日発行のタブロイド版6ページの新聞。発行は 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町3-11 望月ビル4F アクト新聞社 電話:03-3264-5965 E-mail:
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