『全国FAX通信』 1998. 10. 29.
「自衛隊のなくなる日」具体的構想を
吉 川 勇 一
『
Fax通信』No.25の天野恵一さんの問題提起に全面的に賛同する。彼はこう書いている。=軍事社会」化をストップさせ、反対に「非武装国家=非軍事社会」化させる方向に押しもどす。こういう運動的なうねりを現実のものにしなければならないはずである。…………法案攻防で終い(り?)というのではなく、実質的に進行する「戦争国家
国会(権力の動き)への受動的対応という運動のスタイルをこえて、新しい政治運動を積極的に構想する必要が……今こそ私たちに必要なのではないだろうか。……
確かに、当面の最重要課題は新ガイドラインとその関連法案を阻止するということだ。11・3の全国行動には、以前のものを上回る参加者を期待したい。また、それ以後は、これまで別個にあったいくつかのイニシアティブが提携して、さらに高いレベルの共同行動が実現する可能性も大きくなってきた。明年の国会に向けて、さらに行動は規模を広げて行くだろう。
しかし、それと同時に、この国を「非武装国家=非軍事社会」化するための具体的構想がそれぞれの立場から提起され、交流されることがどうしても必要だと思う。
なんらかのありうる政治状況下で、一夜にして自衛隊が解体されることは可能なのか。可能でないとすれば、どのようなプロセスをたどる(いや、われわれがつくりだす)のか、その現実的日程表はどのようなものになるのか、5年でできるのか、10年かかると思っているのか、そういうことを議論したい。私たち「市民の意見30の会」が「日米平和友好条約」の構想を提起したのも、安保条約を廃棄するための具体的アプローチの一つとしてであった。今、メンバーの小田実さんが、アメリカの反戦グループや活動家とそれをさらにステップアップするための相談に訪米中だ。これは安保体制の問題だが、あわせて、来年には、日本の軍備をなくすためのプログラムも構想してゆく計画だ。それぞれのグループが、こういう青写真をつくって議論しあえないだろうか。
かつて京都の「反戦井戸端会議」の青木雅彦さんが「ハーフオプション」論を提唱したことがあった。これは和田春樹さんらの悪名高い「平和基本法」提案と同系列のものとみなす向きがあり、私の周辺ではあまり評判がよくなかった。しかし、そういう意見もどうも陰にこもったレベルであって、議論が公になされ、実り多い成果を生むというふうにはならなかったと思う。また、憲法学者の水島朝穂さんらが、ユニークな「サンダーバード国際救助隊」構想を提起し、そのための法案まで立案した(日本評論社)し、また、昨年は、今年の沖縄5月行動の準備の中で、『基地のなくなる日』というシミュレーション小説もだされた(冒険社)が、残念ながら、これらも運動の中ではあまり議論にならなかった。内容については賛否がいろいろあっていい。だがそういう構想をきちんと議論し会う機会を、反ガイドラインの運動の中でつくれればいいと私は望んでいる。
アメリカでは、「戦争抵抗者連盟(WRL)」の呼びかけで、10月19日、ポトマック河畔の米国防総省前で、「ペンタゴンのなくなる日」(A Day Without the Pentagon)という全国行動が行なわれた。「PENTA-B-GON」という文字をいれたカラーのポスター(ペンタゴンの間に“B”を入れ、”Be Gone!”「なくなってしまえ」とひっかけてしゃれたもの)やTシャツを作るなど、かなりの事前準備がなされていた。
インターネット上のWRLのホームページによると、高速道路上からペンタゴンに向けて旗を投下するなどの市民的不服従行動もかなり予定されていたようで、その結果を注目していたのだが、『赤旗』(10月21日号)の報道によると参加者は500名ほどだったようだ。
それにしても、日本の防衛庁と大企業の癒着という大スキャンダルとか、ガイドラインのような当面の目立つイッシューがとくにない時期に、アメリカの運動が、「軍事が紛争解決の手段ではない。軍事費を住宅、福祉、教育、環境保護に回せ」と主張する行動を国防総省に向けて起こしたことは注目に値する。日本でこそ、「自衛隊のなくなる日」行動が必要なはずなのだ。
先日出された反ガイドラインの『提言』の英訳が今進んでいると聞く。アメリカの多くのグループにこれを送って、日米間でも活発な討論と、行動の提携ができるように進めたい。(市民の意見30の会・東京、吉川勇一)