戦争と平和を考えるお奨め本 (『市民の意見30の会・東京ニュース』より)
「市民の意見30の会・東京」の発行する『ニュース』の第55号(8月1日発行)には、戦争と平和について考える上で、「ぜひ若者に薦めたい書籍」を、8人の識者から推薦してもらった記事が載っています。それを以下にご紹介します。
戦争を伝える本 紹介 (1)
日本の侵賂戦争を正当化し「個」から「公」(国)への犠牲を鼓舞する「新ゴーマニズム宣言スペシャル戦争論」(小林よしのり著)が多くの若者に読まれ、戦争を考える一つのスタンダードになりつつあることは、大変困ったことであります。私達は、政治的社会的背景も含めて戦争にかかわる大切なことを正確に若者達に伝えなければならないと考え、ぜひ若者に薦めたい書籍を『ニュース』に紹介する企画をしました。知識人、著名人の方々に、「戦争論」でない若者達に是非推薦したい本を一冊〜二冊挙げていただき、簡単なコメントをいただきました。ここに、その一部を紹介します。若者達へのお薦め本として参考にされるとともに、秋の夜長の読書にご活用ください。
永六輔さんのお薦め
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光陽出版社 戦争が現実に人間に対して何をもたらすかを激しく刻んだ詩集。感動的! ただし、字が読めない若者にはムリ…。 |
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淡々と事実をイラスト付で伝えるすごい本。入手は自費出版協会もしくは花林舎(中山オフイス)へ。これもマンガ本の一種なのに、こういうのはメジャーから出ない…。 |
水島朝穂さんのお薦め
1 『神聖喜劇』 大西巨人 ちくま文庫 「睾丸は袴下の左方に入れるるを可とす」。陸軍被服規則の規定である。なぜ左なのか、という疑問を出してはいけない組織のおかしさと怖さ。軍隊のもつ構造的な問題をユーモアを交えて鋭くえぐる。軍事の論理と向き合わねばならない時代。この大著に挑戦してみてはいかが。 |
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2 『戦略爆撃の思想』 前田哲男
現代教養文庫 中国の重慶、スペインのゲルニカ、ドイツのドレスデン、東京・広島・長崎、ベトナム戦争まで。一般市民を巻き込む「戦争のかたち」を作った「戦略爆撃の思想」。膨大な資料で明らかにされる沈着冷静な非人間的思想は、現代の戦争にも貫かれている。戦争を伝える名著の一つ。 |
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3 『戦争とたたかう……憲法学者のルソン島戦場体験』 久田栄正・水島朝穂 日本評論社 |
鎌田慧さんのお薦め 1 『黒い雨』 井伏鱒二 新潮文庫 原爆が市民の生活をどのように破壊したか 2 『鉄の暴風』 沖縄タイムス社 「本土決戦」の楯にされた沖縄の悲惨 |
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3 『森と魚の激戦地』 北斗出版 |
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加納実紀代さんのお薦め |
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1 『俘虜記』 |
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2 『戦争と罪責』 野田正彰 岩波書店 |
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3 『女たちの〈銃後〉』 |
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福富節男さんのお薦め |
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2 『私の平和論』 日高六郎 |
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3 『戦争 一〜三』 朝日新聞社編 |
河辺岸三さんのお薦め
1 『城下の人』『曠野の花』『望郷の歌』『誰のために』 石光真清 中公文庫
日露戦争を前に軍籍を退いて大陸に渡り、諜報活動に投じた陸軍将校の回想録四部作。国家存亡の危機に一身をなげうって戦つた日露の戦勝、第二次大戦に向かってに独善的な官僚的抑圧機構に変質して行く軍部への失望感。民衆の気持ちもまた流れ動いて行く。そうした様子が見事に書き留められている。戦後、石光はノートを密かに焼き捨てようとしたが、手記の存在を知った家族の手によって保存され、後の世代に伝えられる所となった。
2 『秋山清詩集』 現代思潮社
厳しい思想統制の下で、戦争を批判する知識人たちは出版物の発行禁止や、執筆禁止の処分さえ受けるようにてなった。一切の「主張」を封じられた詩人は、どんな方法によって戦争に対する思いを歌ったか。淡々と事実を書き連ねる緊張に満ちた詩句の中に、若き読者は何を読み取るだろうか。静かな反戦の意志か、戦争への讃歌か、あるいはまた…
3 『黒い雨』 井伏鱒二 新潮文庫
誰でも知っているこの有名な作品には、もう説明の必要もないだろう。まだ読んでいない人は是非読んでみて欲しい、そして感想を話し合ってみたい。あなたもきっとそんな気持ちになると思います。
渡辺勉さんのお薦め
1 『ナヌムの家のハルモニたち』 慧眞 人文書院
ナヌム(分かち合い)の家に住む元日本軍慰安婦の日々を描いたこの本は、植民地支配と戦争とが分かちがたくむすびついていたこと、五〇年後にようやく戦後補償へと立ちあがったハルモニたちの共同生活を描く。カラー口絵として掲載されているハルモニたちの絵画が、言葉を超えて彼女達の記憶を私達に訴えている。
2 『ある日韓歴史の旅』 竹園友康 朝日選書
日韓併合に先だって日本海軍の軍港として白羽の矢をたてられ、最大規模の海外根拠地として建設された朝鮮鎮生軍港の五〇年の歴史を通して、植民地支配としての日韓併合と、戦争へ動員される朝鮮民衆を描く。
3 『サハリンヘの旅』 李恢成 講談社文芸文庫
樺太=サハリン生まれの「引揚者」である在日朝鮮人李恢成の引き裂かれた同胞・肉親訪問記である。朝鮮半島から引き離され、サハリンに置き去りにされ、帰るべき故郷を喪失したまま生き抜いてきた同胞の歴史を辿る。
私にとってあの戦争をもう一度振り返る作業は、被害を受けた多くの人々の歴史、その多くは植民地支配と戦争による二重の犠牲を押し付けられたアジアの人々だが、その人々の歴史を自分の歴史と重ね合わせて把握してみることと考えている。
(次号にも、ほかの方の推薦図書が続くそうですので、また掲載します。)