1968
年3月16日、アメリカ軍の一部隊がソンミ村に入り、一気に504人の無辜の村民を虐殺した。その大部分は、老人、女性、子どもだった。それから18ヵ月のち、米国内でこの虐殺が明るみに出され、全世界と人間の良心とに強烈な衝撃を与えることになった。世界のあらゆるところで、人びとは怒りの声を上げ、第二次世界大戦中のオラドゥール、ゲルニカ、シェイプヴィル、カチン、リディチェ、広島、等々にも比肩すべきこの野蛮な行為を非難した。事実、ソンミの事件は、ベトナムの人民のみならず、人類がこうむった鋭い痛みとして歴史に留められている。
しかし、古くから寛大であり、慈悲の心を持つベトナム人民は、今なお疼く痛みであるにもかかわらず、ソンミを過去のものとして考えている。現在、ベトナムとアメリカとの間には、正常な国交が回復されているが、しかし冷戦終了後の世界は、いまだ十分に安定したものとはなっていない。今、過去の心痛む事件であるソンミを振り返えろうとすることは、決して憎しみをかきたてるためではなく、歴史上の忘れられぬ事件を理解するためであり、さらに重要なことは、世界がソンミのような出来事を二度と目にすることがないよう、警戒心を緩めぬため、そして平和のために祈り、闘うためなのである。
このためにこそ、われわれは本書を読者に提供し、その平和と幸福を祈りたいと思う次第である。
ファム・ミン・トアン〔Pham Minh Toan〕
(クァンガイ〔
Quang Ngai〕省文化情報局長)