news-button.gif (992 バイト) 194 燐光群『サザン・アイランズ』を観劇してきました。 (2008/09/15掲載)

 久しく観劇などしてこなかったのですが、9月1日、燐光群の公演『サザン・アイランズ』を見てきました。フィリピン国際交流プログラムとの共演で、『虎の杖』(作・演出 竹内一郎〉、『雪を知らない』(作 坂手洋二 演出 山元清多)、『コレヒドール』(作・演出 山元清多)の三部作の連続上演でした。
 劇場は神楽坂そばの「シアターイワト」。 中央の舞台を四方から観客席が取り囲む設営で、したがって背景や大道具などない演出でした。フィリピンと沖縄の基地問題、あるいは戦争責任、差別などの問題を描く意欲的な問題作でした。フィリピンからも4人の俳優が来日、出演して おり、舞台では、日本語、英語、タガログ語が飛び交うのですが、日本人俳優も、フィリピン人俳優も、それぞれ三つの言語をかなり自由に操るのに感心しました。 ただ、『コレヒドール』の中で、いくつか出てくる出演俳優による英日の同時通訳は、声が重なって両方がよく聞き取れませんでした。今後の工夫がいるでしょう。
 
『コレヒドール』は実に様々なテーマを訴えようとしていることはわかりますが、盛り込みすぎで、また時空を超越して次々展開する舞台がかなり慌ただしく、ついてゆくのが容易ではなかったという思いがします。
 
『虎の杖』では、フィリピンがオロンガポ、クラークなどの米軍基地をすべて返還させ、しかし、それに生活を依存していた人びとが 、基地がなくなった後も、破綻せずに暮らしている状況と沖縄の基地問題を重ね合わせて描いています。これを見ていながら、もう40年ほど前に、一人でこれらの基地をバスを乗り継いで回った時のことを思い出しました。「ジャパ行きさん」という言葉が この舞台でも使われていましたが、この表現は、あるいは私が日本で一番最初に使ったのではないかな、という思いもしています。この演劇とは直接、関係ないのですが、 フィリピンから帰った直後、『アサヒグラフ』に描いた文章 「ポストオノダ フィリピン印象記」を思い出しました。これはアルヒーフに再録してありますので、興味のある方はご覧になってみてください。40年前のフィリピンの米軍基地周辺の雰囲気がわかってもらえると思います。