東京平和運動センター62-1

TKOPEACENEWS

　1面　NO.62　06.5発行

第18回東京平和運動センター定期総会報告

80名が結集

　東京平和運動センター第18回定期総会を４月24日、午後２時から総評会館で開催しました。森本副議長の司会で始まり、議長に東交の木谷常任幹事を選出しました。主催者を代表して遠藤議長が挨拶し、小泉首相の進める市場万能主義や競争主義が日本の格差社会を作りだしていると批判し、靖国参拝や歴史認識でも小泉首相は、あいも変わらず心の問題とし、東アジアでの協調や共生に難色を示している。さらに、イラクへの自衛隊派遣や在日米軍再編、ＢＳＥなど小泉首相は米国一辺倒の政治路線を進んでいると厳しく批判しました。また、４月23日の千葉７区の補選と岩国市長選、沖縄市長選が勝利したことに触れ、平和運動も厳しい中で明るい気配が出てきていると述べました。さらに、今年はチェルノブイリ事故20周年のスタディーツアーや平和コンサートを行い、狭山第３次再審勝利に向けた独自行動を強化し、狭山再審勝利を勝ち取ろうと述べました。
　福山真劫中央フォーラム事務局長と加藤泉神奈川平和運動センター事務局長が来賓として出席し、挨拶をいただきました。また、栃木、山梨、群馬、埼玉の各平和運動センターのメッセージも紹介されました。
　議事は第１号議案（活動報告･決算報告･監査報告）、第２号議案(2006年度活動方針･予算)、第３号議案（役員選出）は満場の拍手で承認されました。総会アピールを採択し、今回で役員を退任する森本副議長から挨拶をいただきました。これまで16年間にわたり東京平和運動センターの結成、黎明期、そして現在まで活動を続けた同氏に、参加者80名から大きな感謝の気持ちを表しました。

第18回　総　会　宣　言

　小泉自公政権は解散総選挙で、三分の二を上回る議席を獲得しました。臨時国会でテロ特措法延長を決め、イラク復興支援法は閣議決定のみで延長を決めるという暴挙を行いました。日本経済は、政府の手厚い法人税減税や高額所得者優遇策、ゼロ金利政策などで、輸出基幹産業や金融・銀行など最高の利益を上げている一方、労働者・国民はリストラや賃金抑制、増税などで窮乏の状態にあり、「格差社会」が益々強まっています。
　他方、小泉内閣は「戦争のできる国」をめざし、在日米軍再編、自民党憲法改正草案、国民投票法案、教育基本法改正案、現代版治安維持法の「共謀罪法案」など推し進めようとしています。同時に、靖国参拝や教科書問題等で「中国脅威論」「朝鮮民主議人民共和国（北朝鮮）核疑惑」、「韓国との領土問題」など煽り、東アジア各国との協調や共生を図るのではなく、日米同盟の強化こそが東アジアの安定をはかるとする米国一辺倒の間違った外交路線を進めています。　　
　また、横須賀への原子力空母の母港化や六ケ所村核燃料再処理工場のアクティブ試験開始、ＢＳＥ、耐震偽装、ライブドア問題などは、私たちの「安心・安全な生活、公正な社会」を著しく阻害するものです。
　普天間飛行場のキャンプ･シュワブのＶ字型新沿岸案に対する沖縄県民の世論調査では、７割が「反対」、岩国の住民投票でも圧倒的な艦載機移転反対の結果、横須賀では母港化反対署名が50万筆を超え、横田も含め各地でのたたかいはこれからが本番です。
　政府は、在日米軍再編の最終報告を今月の24日の審議官級協議でまとめ、日米安全保障協議委員会（２プラス２）　で合意を図ろうとしています。さらに６月の小泉首相の訪米で新たな日米関係を作ろうとしています。
私たちは、小泉内閣の進める規制緩和、行革、市場原理主義の「小さな政府論」に対し、福祉や教育の充実、公正な社会の建設に向けた運動が求められています。また、再び戦争の道を突き進まぬよう、日米同盟強化に反対し、自衛隊のイラク即時撤退、憲法改悪に反対し、前文や９条の憲法理念の実現をめざし、共にがんばることを宣言します。

2006年４月24日

第18回東京平和運動センター定期総会

2006年度役員体制

役職名	氏　名	所属団体
議　長	遠藤幹夫	自治労東京
副議長	勝島一博	三多摩平和運動センター
〃	中嶋弘通	私鉄関東地連
事務局長	関　　久	東交
〃　次長	出田光男	三多摩運動平和センター
常任幹事	若林克俊	自治労東京
〃	中里省三	ＪＰＵ東京
〃	木谷利教	東交
〃	吉田一徳	東京教組
〃	小林和彦	全農林関東
〃	山下晴樹	全自交東京
〃	大塚優子	Ｉ女性会議
〃	星　逸郎	社青同東京地本
〃	長谷川三郎	部落解放同盟
幹　　事	常幹以外	各団体より１名
会計監査	大森直史	東京一般
〃	阿川貴之	日放労系列
顧　問	菅谷八重子	元副議長

講演記録「憲法９条と私たちの可能性」…高田　健

　総会の特別企画として「許すな！憲法改悪･市民連絡会」代表の高田健氏から「憲法９条と私たちの可能性」と題する講演を行いました。高田氏は、まずフランスやタイ、ネパールなどの大衆運動に触れ、世界の若者たちが怒りの行動を繰り広げているが、国内では若者や労働組合も元気がないと話しました。
現在開催されている164通常国会で、教育基本法改悪、国民投票法案、共謀罪新設、入管法改悪法案など審議や上程が予想され、過去に例を見ない最悪の国会になる可能性があり、国会内外での大きな運動が必要であると述べられました。
　講演では「自民党の新憲法草案に見る改憲論とその特徴」に触れ、第１に「新憲法案」は現行憲法の否定で、一種の「クーデター」綱領案であると指摘しました。今度の草案は「新憲法」ということで前文、憲法第１条（天皇の地位、国民主権）から憲法第99条（憲法尊重擁護義務）まで全取替えであり、世界でもこのようなケースは連邦制導入や王政復活、クーデターなど以外に考えられないと述べました。第２に「前文にみる重要問題点」として戦争に対する反省や現憲法にいたる歴史についてまったく触れていないことであると指摘しました。第３は憲法９条改憲であり、集団的自衛権について書いてないが、自衛軍という「軍」と文字が入ったことが重要である。憲法に集団自衛権を書かなくとも自衛「軍」という文字が入れば日米安保のなかで集団的自衛権は行使され、９条は変わったと述べました。第４は第３章「国民の権利と義務」が大幅に変わり憲法の意味の転換をしているということだ。立憲主義、即ち権力制限規範としての憲法を国民が守る憲法に変えていることです。最後に96条（改正）の改憲で発議は各議院の３分の２以上の賛成を２分の１の賛成に変えたことです。与党は２分の１以上の議席を持つことが常識ですから、いつでもは次ができるということを意味した恐ろしい改憲であると述べられました。今後ありうる改憲案は2005年１月に日本経団連が発表した「わが国の基本問題を考える～これからの日本を展望して」の９条と96条に的を絞って改憲し、新しい人権項目を加えるというものです。最後に現在進められている在日米軍再編の米軍新戦略と９条を掲げた市民とのたたかいが21世紀の対抗戦略であると述べ、共にがんばることを確認しました。

自民党新憲法草案の前文

　日本国民は自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定する。象徴天皇制は、これを維持する。また、国民主権と民主主義、自由主義と基本的人権の尊重及び平和主義と国際協調主義の基本原則は、普遍の価値として継承する。
　日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、自由かつ公正で活力のある社会の発展と国民福祉の充実を図り、教育の振興と文化の創造及び地方自治の発展を重視する。
　日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う。国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う。
　日本国民は、自然との共生を信条に、自国のみならずかけがえのない地球の環境を守るため、力を尽くす。

現憲法の前文

　日本国民は、政党に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し国民の代表がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
　日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
　われらは、いずれの国家も、自国ことのみに専念して他国を無視してならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。

　日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。

＊　憲法には、国家の統治の基本を定めた法という意味がある。この意味での憲法は、国家あるところには必ず存在する。だが、近代市民革命の経験は、憲法に明確な方向付けを与えた。人々の自由や権利の実現のために国家権力を拘束する法という意味である。この意味での憲法を「近代的（立憲的）意味での憲法」と言う。憲法はまた、法律に優位し、議会や国民自身に対しても優位する。「自由にとって憲法は、言語にとっての文法のようなものである」。　憲法なしには自由はありえない。権利・自由の保障と国家権力の制限のありようとは密接不可分の関係にある。憲法の性質は、普通の法律よりも上位に立つ。憲法に違反する法律は存在しえない（最高規範性）。憲法はまた、他の法律に対して、その内容や権限を授け、方向性を行う（受験規範制）。憲法によって権限を授けられた機関は、憲法による枠の範囲内でしか行動できない（制限規範性）。とくに「近代的な意味での憲法」の場合には、国家権力の発動を枠づけ、制限することで、市民の自由を確保するという点に最大の眼目がある。

　日本の憲法の核心的な原則には、概ね４つある。ひとつは、基本的人権の尊重である。二つめは、国民主権であり、三つめは、三権分立であり、四つめは、戦争の放棄と戦力不保持・交戦権否認の平和主義である。そもそも憲法とは、国家権力を制限し拘束する規範である。憲法99条には憲法尊重義務の主体として、国民が含まれていない。憲法を破る可能性のあるものたちが列挙されている。当の憲法によって縛られている権力担当者が、自らに対する「規制緩和」求めて憲法改正を主張するとき、私たちは冷静に慎重にその根本に立ち返り、判断をしなければならない。憲法改悪につながる国民投票法案に反対しましょう。

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