TKOPEACENEWS
 2面 NO.29/02.8.1発行

朝鮮民主主義人民共和国を旅して

東京平和運動センター事務局長 森本 一雄


 6月23日から27日まで、東京平和運動センター本郷議長を団長としセンター加盟の労働組合、団体14人が日本との国交正常化、朝鮮半島の平和的統一実現するために朝鮮民主主義人民共和国を訪問しました。共和国においては職業総同盟の幹部の皆さんとの交流、中高学校、繊維工場、軍事境界線・板門店の視察、そしてすでに56カ国700団体100万人以上が見学したとされるアリラン祭など短期間でありましたが非常に充実した5日間であった思います。ただ残念であったのが平和センターの海外視察の目的である、日本の植民地支配の実態や、侵略日本軍の犯罪などについて戦争記念館(?)などへの訪問ができなかったことであります。
 平和センターは、日本軍の戦争犯罪を調査し今後の平和運動を強めるため、96年1月タイ・クワイ川鉄橋建設工事などでイギリス、オランダ人(連合軍捕虜)虐殺現場の視察、シンガポールに於いては、3万人をこえる中国系住民が日本に敵対していると疑われただけで虐殺された現場(血債の塔・慰霊碑)の視察と証言など、98年3月中国・南京大虐殺の実態。99年6月ハルピン市731部隊の身の毛もよだつ人体実験の現場。00年韓国においては40年間の植民地支配と侵略による実態が展示されている独立記念館などを尋ねてきました。こうした活動により歴史的事実をねじまげ侵略戦争を美化する偏狭なナショナリズムの台頭を許さない運動を強化してきてると思います。
 今年の訪問は、01年4月に連合東京とともに行く予定でしたが直前にアメリカ・ブッシュ政権による北朝鮮に対して「ならず者国家」と直接批判しテロ支援国家として軍事的攻撃もありうるなど一夜にして非常に緊迫した情勢になり、小泉政権もアメリカに追随し国内においては歴史教科書を歪曲し朝鮮侵略を正当化するなどにより、共和国訪問が直前になって中止なったため独自で計画し訪問を実現させました。その思いは、北東アジアの平和と非核地帯の実現と朝鮮半島の平和的統一にほかならないと考えているからです。
 かつて日本の労働組合は、72年中国との国交が回復して以降積極的に社会主義国との交流を実現し産業別の定期交流などを通じて労働者との連帯の強化、世界平和の実現など多くの成果を上げていきたいと思います。その連帯こそが今一番求められているのが北朝鮮労働者・市民ではないかと思います。世界190カ国のなかで日本が国交がないのは北朝鮮だけであり、その国が今、アメリカからテロ支援国家と名指しで批判されアフガン後の攻撃もありうるのではないかと朝鮮半島情勢は緊迫しています。職業総同盟の皆さんとの交流の場で韓国の4万人の米軍と配置されている核兵器にこの50年間脅かされているし、日本の沖縄には米軍の核兵器が我国に向けられている。また、日米韓軍事演習が頻繁に行われ市民の不安は計り知れないものがあると発言されていました。
 最近においては、自衛隊のインド洋派遣、有事法制の国会審議、小泉政権の幹部による非核三原則の見直しにみられるように、アメリカの戦争に積極的に参戦し協力し軍事力の拡大によって平和の力とする時代に逆行する政治が横行し、朝鮮半島情勢が緊張しアジア太平洋諸国に大きな不安と不信を増長してると思います。今こそ、アメリカの戦争には協力をしないことを明言する政治家の実現が望まれます。
 共和国を訪問してみて韓国やアメリカに対する批判や、国民に敵対する国に対して軍事的にあおる表現の看板など一切なし、平壌市内の労働者はたんたんとその勤務すべきところに通勤し、農村においては田植えが終了しホット一息といったところであったと思います。のどかな農村の風景を車窓からみながらかって猛威をふるつた寒波や洪水が発生しないことを願うものでありましたた。アリラン祭などにおいては2000年6月15日の南北首脳会談の共同宣言を高く評価し、「朝鮮は一つ平和的祖国の統一は自分たちの手で」というこの目標は国民に深く浸透し、けっして自ら平和を破壊するような考えのないことがあらゆる所で表明されていました。2000年6月韓国を訪問したとき、空港から市内に入る道路において戦車を阻止するブロックの石、境界線においての有刺鉄線、北からの侵略を阻止する目的で建設されたとするアパート群、高速道路は戦争時には滑走路になるなど戦争の匂いがプンプンしていたが、共和国においては少なくとも私たちが5日間平壌市内、開城市内に滞在しましたが一切戦争の匂いは無かったと明言ができます。ブッシュ政権の動向、小泉政権の共和国への敵対政策などを考えると国をあげて戦争の準備があってもおかしくないとおもいましたが…、日本国内にあっては、テポドン騒動、不審船、拉致問題などにより冷戦後の敵は北朝鮮であるがのごとき、自民党など一部の偏狭なナシヨナリズムの台頭を考えている政治家に踊らされている向きもあるが、けっして朝鮮民主主義人民共和国の国民は戦争より平和のためを真剣に考えていることが、学校の教育や子どもたちのサークル活動などでも表現され、日本人として恥ずかしい思いもしたところです。
 しかし、冷戦が終焉したのにもかかわらず南北が分断され、板門店の軍事境界線は今もって国連軍(韓国)と共和国の軍隊が対峙し平和ボケした私もその緊張に身がひき締まる思いだったし、休戦をしているにすぎない危なかしい今日の平和を本当の意味での平和に一日も早く実現できないものかと真剣に考えさせられました。
 その平和のため、労働者、市民レベルの平和外交、かって中国やソ連(ロシア)がそうであったように東京平和運動センター加盟の団体や労働組合はもっと積極的に交流をしてもらいたいと思います。日本に帰国して一番の質問は「どうだった、あの国は怖くなかったか」という間違った理解をしていることに大きなショックでもありました。農村では田植えをし、水の少ない土地はトウモロコシを植え日本の農村の風景と変わらないものであるし、突然の天災におびえているのも日本と同じであり、都市部の労働者は日本円にして100円で毎月の生活をし、その労働者が日本やアメリカの市場に輸出する紳士服や婦人服を生産しているし、そうした人件費の安い国で生産されている実態を見聞し、日本の企業のすざましい利益追及にただ唖然としたのは私だけではなかったと思います。
 新ガイドライン関連法、テロ特措法、有事関連3法など小泉政権は、アメリカの起こす戦争に積極的に参戦し日本がいつ戦争に巻き込まれるのではないかと国民の不安は増大しています。なかでも、原子力発電所が攻撃をうけた場合の不安は周辺市民だけのものでなく全国に広がっています。米軍基地の75%が集中する沖縄県民の不安、横須賀、佐世保など核兵器の搭載が疑われている米原子力潜水艦の寄港する周辺の市民は核攻撃の標的にされるのではとの不安など、これ以上アメリカに追随した外交ではこうした不安の解消はできないと考えます。軍事同盟である日米安保条約を日米平和友好条約に変え沖縄を初め全国の米軍基地を撤去し、ロシアとの平和条約の締結をするなど日本が積極的に平和外交に転換し、そのうえで朝鮮民主主義人民共和国との国交を正常化し朝鮮半島の平和的統一を実現しなければならないと考えます。こうした努力こそが北東アジアの平和や非核地帯の実現に大きく貢献し世界の平和に前進するものと確信します。

▲6・15共同宣言に賛成する団体著名を手交する本郷、川村議長
▲板門店に向かう途中バスから田植えの終わった農村の風景をみる
▲板門店・軍事境界線(一階建て3棟)
 むこうからは韓国の望遠カメラがむけられている(大きい建物)
▲アリラン祭りのマスゲーム
▲軍事境界線内の建物の中で北朝鮮の軍曹から説明をうける
▲平壌市内の風景チェチェ思想塔展望台から
▲私たちが宿泊したホテル(中央の高い建物)
▲学校を訪問した際、私たちを歌や踊りで歓迎していただいた
▲日本に輸出する紳士服製造工場
▲職業総同盟の幹部の皆さんから記念品を贈呈される

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