TKOPEACENEWS
  1面 NO.21/01.10.27発行

同時多発テロおよび米国の軍事的報復などへの対応について

★フォーラム平和・人権・環境
★東京平和運動センター

■米国への同時多発テロに関する声明
 ・2001年9月14日
 ・平和フォーラム

炎上する世界貿易センタービルと突っ込む飛行機(2001.9.11)



 米国のニューヨークやワシントンなど3都市4ケ所で9月11日午前(日本時間午後)、同時多発テロが起き、同国の政治・経済の中枢である国防総省(ペンタゴン)や世界貿易センタービル(ツインタワー)が壊滅的な打撃をうけました。ハイジャックされた4機の旅客機の乗員・乗客、倒壊したビルや救急隊を含めその付近にいた人々など、数千人規模の死傷者を出したと見られています。
 私たちは、犠牲者の方々に深い哀悼の意を表するとともに、今なお倒壊したビルの中にいる方々の生存と、一刻も早い救出を願います。そして、多くのむこの民を殺傷し、大規模な被害と破壊をもたらしたテロ行為を怒りをもって糾弾します。
 このテロ行為という凶悪犯罪について、米国の警察・司法当局が捜査と真相究明を進め、法の裁きを加えることは当然ながら必要です。しかし、ブッシュ米大統領が、これは「戦争」であるとし、軍事的報復に向けての準備を進めていることは、きわめて危険な行為であるといわざるをえません。報復的軍事行動は一般市民を含めた被害を拡大・拡散し、新たな憎悪と報復行動を生み出すことはあっても、事態を何ら解決に向けません。あくまで司法当局による捜査と真相究明に徹するよう自制を求めます。すでに米国内ではアラブ系住民に対する迫害行為が始まっていると報じられています。これも新たな被害の拡大です。
「軍事的報復ではない司法当局による捜査と真相究明」というのは、本来、日本政府もとるべき立場です。しかし、小泉首相は「報復は当然」「ブッシュ政権にいかなる協力も惜しまない」と発言し、自衛隊の派遣をはじめ、実質的な集団的自衛権の行使を検討しています。これに私たちは強く反対します。それどころか、小泉内閣は今回の事件を通じて、テロ行為を再発させない取り組みではなく、これまでも画策されてきた集団的自衛権の導入を正当化し、有事法制の制定を一気にはかろうと動きを見せています。いわば、事件を利用して軍拡をはかろうとするものであり、私たちは容認することはできません。
 今回のテロ事件によってあきらかになった点は数多くありますが、一つに、国家による戦争、軍事行動とはまったく異質のはるかに小人数のグループによる犯行が、航空機や高層建築物などを利用・攻撃対象とすることで、多大な被害をもたらすということです。今回は対象とならなかった原子力施設などの存在も踏まえれば、私たちの社会は数え切れないほどの被害を生み出しかねない状況にあります。テロ行為にいたる原因の究明をせずに報復を目的化しても、新たな被害をもたらすだけです。
 すでに多くの論者が指摘しているとおり、今回のテロ行為をもたらした背景、遠因には、米国もまた、これまで多くの戦争、紛争に関与し、多くのむこの民を犠牲にしてきた歴史があります。とりわけブッシュ政権になってから、地球温暖化問題での離脱、ミサイル防衛構想の推進の一方、CTBTの死文化の画策をはじめ、多くの点で地球規模の平和を確保し、人々の生命と生活を保障することを軽視する動きを強めてきたことは重大な問題点です。唯一の超強大な軍事国家である米国に対する憎悪を生み出す構造があることを米国の当局者は踏まえなければ、テロの再発・拡大を抑えることはできません。
 その意味でも、もはや安全保障という名にも値しない軍事的報復ではなく、地球規模での環境破壊や貧困、差別の問題を克服する「人間の安全保障」の取り組みに、世界の人々とともに歩むことが重要です。時間がかかるようでも、この取り組みが憎悪の悪環境を止め、強いてはテロ行為を撲滅させることになります。
 日本政府は、「軍事的報復」への協力ではなく、憲法の理念に立ち返って災害救助など市民の生命を守る活動に全面的な協力を推し進めるよう求めます。

■同時多発テロおよび米国の軍事的報復などへの対応について


 9月11日の米国のニューヨークやワシントンなどで同時多発テロは、6,000人もの死者・行方不明者を出し、世界を震撼させました。平和フォーラムは14日付の事務局見解で、今回のテロ行為を糾弾するとともに、ブッシュ米大統領が軍事的報復することに反対し、司法当局による捜査と真相究明に徹するよう自制を求めました。また、小泉内閣に対しては、軍事的協力ではなく、憲法の理念に立ち返って市民の生命を守る活動に協力を推し進めるよう求めました。しかし、ブッシュ政権は「軍事的報復」準備に邁進し、小泉首相は、「報復は当然」「ブッシュ政権にいかなる協力も惜しまない」とし、軍事支援態勢を築こうとしています。このもとで、日本国内でも厚木基地などでNLP訓練が無通告で行われ、原潜寄港も未公表の扱いとされるに至るなど、従来の取決めすら反古にされ、テロ対策に名を借りた無法事態が生み出されてきました。さらに19日には7項目のテロ対応措置を発表。25日に訪米し対米支援を公約しました。
 その内容は、
 @米軍等への医療、輸送・補給などを目的に自衛隊を派遣するために所要措置を講じる。
 A国内の米軍施設や、わが国の重要施設の警備強化。
 B情報収集のため自衛隊艦艇の派遣。
 C出入国管理で国際的な情報交換の強化。
 Dパキスタンやインドへの緊急経済援助。
 E自衛隊による人道支援の可能性を含めた避難民支援。
 F経済システムの混乱を生じさせないための各国との強調。
 の7点です。そのための新法と自衛隊法改定案を27日開会の臨時国会に提出するとしています。
 @は軍事上の「後方支援」であり、周辺事態法制定時には「後方地域支援」という言葉を捻出して戦闘行為と一線を画すと称していたものをあからさまに踏み込んだものです。
 Aは米軍基地だけでなく原発や国会などの施設警備を含み、
 BやEも明らかな海外での軍事行動であり、米軍の支援のなかで、従来企図・画策されながら憲法上できないできた集団的自衛権の行使や有事法制の制定、海外での軍事行動・武器使用などを一挙に実現にむけるものばかりです。
 まさに日本の軍拡をはかるものであり、憲法はもとより、安保条約の枠組みからも、周辺事態法さえからも大きく逸脱・転換するものにほかありません。このような重大な法律をどさくさにまぎれに短期間で成立させるようなことを許してはなりません。
 ブッシュ政権の軍事的報復に対し、米国内でも1万人参加集会されるなど、反戦行動が国際的に広がっています。日本でも、市民グループや各地での反戦行動が日に日に強まってきました。平和フォーラムもfax・打電行動をおこなってきましたが、より目に見える行動を求める声は組織内外から起きています。こうした状況をうけて、当面する焦点(米軍の戦闘行動の開始、日本の国会状況)を10月半ばと設定し、短期・中期の取り組みをつぎのように進めることとします。


◆具体的な活動について
「テロ・軍事的報復・日本の戦争支援に反対する中央集会」の開催などについて
1.米国のアフガン軍事攻撃開始緊急抗議院内集会
 ・日 時  10月10日(水)11:00〜12:00
 ・会 場  衆議院第1議員会館会議室
 ・主 催  平和フォーラム
 ・規 模  100〜150人

2.テロ・軍事的報復・日本の戦争支援に反対する緊急集会とデモ
 ・日 時  10月12日(金)18:30〜
 ・会 場  三河台公園(港区六本木4―2)
 ・主 催  平和フォーラム
 ・内 容  抗議集会と米国大使館へデモ行進
 ・規 模  500名

3.報復戦争を許さない!「報復戦争支援法」制定に反対デモ
 ・日 時  10月15日(月)18:30〜
 ・会 場  桧町公園(港区赤坂9―7)
 ・主 催  平和フォーラム
 ・内 容  米大使館と国会コースデモ
 ・規 模  1,000名

4.10・15〜17報復戦争を許さない「報復戦争支援法」制定に反対国会連続デモ
 ・日 時  10月15日(月)〜17日(水)18:00〜
 ・会 場  10月15日桧町公園
       10月16日、17日三河台公園
 ・主 催  テロにも報復戦争にも反対市民緊急行動
 ・内 容  集会と米国大使館・国会コースデモ

5.戦争支援新法反対、「人間の安全保障」の確立を求める院内集会
 ・日 時  10月18日(木)15:00〜
 ・会 場  衆議院会館第1会議室
 ・主 催  平和フォーラム
 ・内 容  講演と問題提起
 ・規 模  150人

6.テロ・軍事的報復・日本の戦争支援に反対する中央集会
 ・日 時  10月18日(木)18:30〜
 ・会 場  日比谷野外音楽堂
 ・主 催  集会実行委員会(平和フォーラム呼びかけ)
 ・内 容  米国大使館・国会コースデモ
 ・規 模  5,000人

7.全国各地でも都道府県単位の集会、地域集会を開催し、全国連鎖行動とします。国際反戦デー(10・21)、国連軍縮行動(10・24〜1週間)を従来からおこなっているところは本年のテーマとして具体化して下さい。(九州は県ごとの他に10月21日にブロック規模集会を熊本で開催)未計画のところは、10月中のできるかぎり早い時期に実現するように計画して下さい。

軍事的報復、日本の国会状況などに応じた緊急行動について
1.戦争支援の新法制定・自衛隊法改定に反対して緊急署名を開始します。清刷りをメールと郵送で大至急送付します。(10月18日第1次集約)

2.前記の集会とは別に、米国による最初の軍事報復が実施されたときには、緊急抗議FAX・打電の他、3日以内の緊急行動を各地で行います。東京では3日後のデモを米国大使館にむけて行います。その後も、重要ポイントで行います。

3.臨時国会の動向に応じて、10月上旬から新法・自衛隊法改定案反対の議会対策・要請行動を、首相・外務・防衛、委員会関係議員、政党に対して行います。法案採決時には、院内もしくは議面集会などの緊急行動を実施します。

4.法案成立前後を問わず自衛隊が戦争支援行動したときにも緊急行動します。


◆東京平和運動センター独自行動
1.テロにも、報復にも反対、戦争支援新法を許さない街頭宣伝行動
 ・日 時  10月26日(金)17:30〜
 ・場 所  JR新橋駅機関車口
 ・主 催  東京平和運動センター
 ・内 容  ビラ撒き宣伝
 ・規 模  50人

2.テロにも、報復にも反対、戦争支援法を許さない東京集会
 ・日 時  11月29日(木)18:00〜
 ・会 場  総評会館2F
 ・主 催  東京平和運動センター
 ・内 容  講演を中心に計画
 ・規 模  300人

■11月以後の取り組みについて
1.米軍の動き、国会状況と10月期の取り組みを踏まえ、第38回護憲大会時にその後の行動を提起できるように準備します。秋季開始予定の軍縮署名もその一環とします。
  また、沖縄の基地県内移設反対行動(12月予定)、日時延期された神奈川県の厚木基地包囲行動なども関連した反戦行動として参加・連帯・協力します。また、長期的な取り組みとなる可能性も高いので、機動性を持った対策本部を設置するよう検討を進めます。

■米英両国のアフガン軍事報復攻撃に抗議し、即時中止を求める声明
 ・2001年10月8日
 ・平和フォーラム代表 江橋 崇
 10月7日午後9時(現地時間、日本時間8日午前1時半)、米英両国は「不朽の自由」作戦という名のアフガニスタンへの巡航ミサイルや空爆による攻撃を開始しました。
 私たちは、数千人もの罪なき人を犠牲にした9月11日の同時多発テロ事件に対して、犠牲になられた方々とその家族に心から哀悼の意を表しています。テロ行為を断じて許さず、犯人に法の裁きを加えるのも当然です。私たちは、米国に対して再三にわたり、軍事的手段でなく、司法当局による捜査と真相究明に徹し、国外犯である場合には国際法廷にかけるなどの方法をとるよう求めてきました。
 しかし、ブッシュ米大統領は、当初からこれは「戦争」であるとし、軍事的行動にむけて邁進してきましたが、ついに軍事力の行使を強行しました。攻撃対象は、アフガニスタンを実効支配しているタリバン政権の軍事拠点や、同時多発テロの「主犯」とされているイスラム過激派指導者オサマ・ビンラディン氏の訓練拠点とされています。しかし、最近のイラクやコソボの空爆攻撃をはじめ、これまでのほとんどの戦争、軍事攻撃は一般市民に大きな被害をもたらすものであり、今回の攻撃も例外とならないということはいうまでもありません。
 しかも、テロ撲滅という目的からすれば、軍事的報復は、攻撃対象とされた国や組織はもとより、被害をうけた一般市民まで、新たな憎悪を生み出すだけであり、かえって新たなテロと軍事報復の応酬をもたらすだけです。
 私たちは、米英両国が「軍事的報復」を開始したことに対して、断固抗議するとともに、攻撃を即時中止するよう強く求めます。
 その上で、米国は「主犯」特定の証拠などを国連の場をはじめ広く開示し、国際法廷開催の道を追求することを改めて求めます。また、テロ撲滅に向けては、平和的な国際協調と、地球規模での環境破壊や貧困、差別の問題を克服する「人間の安全保障」の確立に努めることを求めます。
 また、これは憲法に基ずく日本の立場でもあるにもかかわらず、小泉首相は「報復は当然」とし、米国の軍事行動支持と支援を表明しました。そして、国会に上程している「テロ対策支援法案」は、2年間と期限を区切りながらも、テロ対策とは名ばかりで、国会すら無視して、米軍の報復戦争を支援するもので、憲法の禁じた集団的自衛権を行使するものにほかなりません。同時に上程された自衛隊法改定案にいたっては、市民に銃口をむける治安出動や防衛秘密保護規定まで盛り込むものでありながら、時限立法ですらありません。まさしく機に乗じて有事法制づくりを果たすものであり、断じて許せないものです。
 私たちは、これらの問題が解決するまで、テロにも報復戦争にも、そして日本の戦争支援にも反対する立場から、緊急行動をはじめ、一連の取り組みを進めていく決意であることを表明します。


<特 集>
集団的自衛権とテロ対策特措法案・自衛隊法改定案の問題点

◇テロ対策法案の問題点
@自衛隊派遣の根拠に乏しく、戦闘に巻き込まれるおそれがある。

 1991年の湾岸戦争以降、日本では泥縄式にPKO法や周辺事態法などが制定され、憲法の平和主義が骨抜きにされてきた。しかし、悪法といわざるを得ないPKO法でさえ、自衛隊の派遣には個別の国連決議が必要とされ、かつ停戦合意がなければならないという一応の歯止めが存在している。これに対して今回のテロ対策法案では、自衛隊派遣の直接の根拠と新たな国連決議を必要とせず、また派遣に際して当事者間の停戦が成立している必要もない。これでは自衛隊の海外派兵を無制約に認めるのも同然であり、また派遣された自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性も極めて高くなる。法案では、自衛隊が派遣されるのは、「現に戦闘が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の機関を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」であるとされているが、今回のような前線のない紛争地域で、何を持って「戦闘行為が行われることがない」と判断できるのか、はなはだ疑問である。

A国会による事前承認を必要としない
 法案では、自衛隊の派遣について国会の事前承認を必要とせず、活動について定めた政府の基本計画を国会に報告すれば済むことになっている。政府はその理由について、テロ対策法案は今回のアフガン攻撃を個別対象とした時限立法であり、法律が可決された段階で、自衛隊派遣に対する包括的な国会の承認が得られたと見なすことができるとしている。しかし、法案の可決と自衛隊派遣の事前承認は別次元の問題である。法案の可決は国会の法律制定権の行使であるのに対して、事前承認は行政監督権に属する行為であり、両者は同一のものとみるべきではない。さらに、法案は原則を定めるだけであり、実際の派遣部隊の規模や活動内容は、法律制定後に決定される基本計画で定められることになっている。その計画に国会のチェックが及ばなければ、シビリアンコントロールをはかることはできない。自衛隊派遣に国会の承認を必要としないテロ対策法は、政府に対して自衛隊運営の白紙委任状を与えるものであり、既存の自衛隊法やPKO法などで定められたシビリアンコントロールの水準を大幅に逸脱するものである。


◇自衛隊法改正案の問題点
@「警護出動」の危険性

 自衛隊法改正案では、テロ発生時などに自衛隊が米軍施設などを警護するために出動できることになっている。これはこれまで自衛隊に許されていた「治安出動」と「防衛出動」という出動形態の他に、新たな出動の根拠と権限を認めるものであるが、本来は警察が行うべきこうした活動を安易に新設し、武器を携行した自衛隊が国民を対象に警察類似の活動を行うことは、自由な市民生活を脅かす恐れが大きい。 

A治安出動に先立つ「情報収集」活動のあいまいさ
 今回の改正法案では、テロ活動などが予想される場合に、武器を携行した自衛隊の部隊が情報収集活動を行えることになっている。これは戦時における「偵察」と同様の行為であり、このような行為を明確な歯止めもなく許せば、市民生活に重大な影響を及ぼすことになる。この「情報収集」活動は、実質的にはテロ発生時などにおける警察の捜査活動を自衛隊に肩代わりさせるためのものであり、これも本来であれば、@の「警護活動」同様、警察が行うべき活動である。自衛隊をこのような形で利用することは許されるべきでなく、かつそれを「情報収集」という名目で覆い隠すのは姑息な手段であるといわざるを得ない。

B事実上の「防衛秘密法」の制定
 改正案では「防衛秘密」という新たな概念を創設し、それを漏らした者に対し5年以下の懲役を科すという「防衛秘密漏洩罪」を規定している。かって自民党などが画策した「スパイ防止法」が、国民の圧倒的な反対をうけて挫折したことがあるが、今回の自衛隊法改正案では、テロ対策の陰に隠れて、それと同様の規定を盛り込もうとしている。政府による「秘密」の定義が曖昧模糊としたものであり、かつそれが悪用されていることは周知の事実である。にもかかわらず、この改正案を許せば、それはまさしく「スパイ防止法」の制定に他ならず、政府によって濫用される危険性が高い。個別法の制定ではなく、自衛隊法の改正によってこのような重大な罪を新設することは、法治主義に対する重大な侵害行為であるといえる。

◇テロ対策法案と自衛隊法改正案の本質
 以上見てきたように、今回のテロ対策法案や自衛隊法改正案は、「非常事態法」とも呼べる内実を備えており、緊急時に9条をはじめとする基本的な憲法秩序を停止するための「憲法停止法」である。憲法上の明確な根拠もないままに、法律レベルでこのような事項を定めることは当然許されず、明らかな違憲立法と断じざるを得ない。

◇集団的自衛権とは?
 外国から急迫または現実の不正な侵害に対して、自国を防衛するために必要な一定の実力を行使する権利を自衛権というが、自衛権は更に個別的自衛権と集団的自衛権に分類することができる。個別的自衛権とは、外国からの不正な攻撃を受けた国自身が行使する自衛権のことであり、一方、集団的自衛権とは、同盟関係にある他国に対する攻撃を自国に対する攻撃と同一視して、自国が攻撃を受けていないにもかかわらず、反撃を行う権利のことを指す。

◇集団的自衛権の法的根拠
 自衛権は国家が有する固有の権利であり、明文上の根拠を必要としない自然権的な権利であると解されている。しかし、歴史上多くの侵略行為が「自衛」の名の下に行われたことに鑑み、国際法は自衛権の行使に一定の枠をはめている。例えば、国連憲章51条は個別的または集団的自衛権を行使できるのは、国連加盟国に対する「武力攻撃が発生した場合」であるとし、先制攻撃は自衛権の範疇から除外している。また、国際法上は、自衛権の行使には、@急迫不正な侵害があること、A他に代わるべき手段がないこと、Bとられた措置が被害と均衡していること、という三つの要件が備わっていなければならないとされてきている。(自衛権の3要件)

◇日本国憲法と集団的自衛権
 政府見解では、日本も個別的自衛権と共に集団的自衛権を有するものの、憲法上日本が行使できる自衛権は、自国防衛のための必要最小限度のものでなければならないとされている。この点、集団的自衛権の行使は、自国防衛のための必要最小限度のものとは言えないので、日本は集団的自衛権を保有するものの、その行使は認められないというのが政府の有権解釈である。

◇アメリカのアフガン攻撃に法的正当性はあるか
 今回のアフガニスタンに対するアメリカの攻撃は、国連憲章51条に基づく個別的自衛権の行使であり、NATO諸国などによる支援は、集団的自衛権の行使であると説明されている。しかし、先に述べたように個別的・集団的自衛権行使には「武力攻撃が発生した」ことが必要であり、また自衛権の3要件が満たされなければならない。何をもって「武力攻撃」とみるかについては定説はないが、一般には「正規軍による攻撃」が「武力攻撃」の必須の要素であると考えられている。アメリカによるアフガン攻撃は、ニューヨークなどにおけるテロ攻撃に対する反撃であるとされるが、そもそもテロが「武力攻撃」に該当するかは判然としない。小泉首相は国会での答弁で、アメリカが戦争状態と認識しているのだから、自衛権による反撃が可能だと述べたが、テロを「武力攻撃」とみなす根拠や、自衛権の3要件の充足性については不透明なままである。

◇解釈改憲による集団的自衛権の容認の是非
 かねてより政府・自民党の中では、集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈の変更を求める声があり、今時のアフガン攻撃に際して、その声はますます高まっている。また最近では、宮沢元首相が、米軍が日本の安全保障に明確にかかわる場合に限定して、日本の集団的自衛権の行使を認めることを提言している。
 しかし、これまでの政府見解では、日本の自衛権の行使は必要最小限度に限られるとし、それゆえ必要最小限度の実力部隊である自衛隊は合憲であると説明されてきた。解釈改憲によって集団的自衛権の行使を認めれば、政府によるこうした憲法解釈の枠組みが崩れることになり、許される自衛権の範囲が際限なく広がるおそれがある。それにともなって、「最小限度の実力」であるはずの自衛隊の装備・編成も野放図に増強される危険性があり、そうした事態を迎えれば、自衛隊は憲法が禁止する「戦力」には当たらないとする政府のこれまでの詭弁ももはや通用しなくなるであろう。
 言うまでもなく、憲法解釈は時の政府が都合よく変えられるものではない。これは立憲主義の基本であり、法の支配の大原則である。憲法解釈の一貫性・体系性を無視して、その場しのぎの解釈改憲を行うのであれば、それは憲法秩序の崩壊であり、立憲主義の放棄に他ならない。

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