三多摩平和運動センター 2001年度運動方針(草案) |
1.はじめに
戦争と殺戮の時代20世紀が終わり、21世紀を迎えています。21世紀をどのような時代にしていくのかが問われています。21世紀の構想は20世紀と切り離してできるものではありません。20世紀の反省の上に立って21世紀のあり様が決まります。
私たちの大目標は21世紀を「核も戦争もない時代」にしていくことです。その出発点が20世紀の遺産ともいうべき「憲法」です。ところが、自民党は憲法前文や9条を改悪し、平和主義を否定しようとしています。平和は人類生存の基盤であり、自民党の野望を阻止し、21世紀にこそ真の平和を実現し、安心・安全な社会をつくりあげることが私たちの課題です。
憲法と私たちの生活とのかかわりを見直し、平和・人権・環境のすべてにわたって憲法の理念がどのように生かされているかを見極めながら、憲法理念の発展よって21世紀を未来に展望のもてる時代とするよう努力していかねばなりません。
国連をはじめ世界的な取組となっている「人間の安全保障」を確立する活動は、とりもなおさず憲法の理念を発展させることであり、あらためて憲法の理念を再確認し、活動の強化に努めねばなりません。
2.平和運動をめぐる情勢の特徴
(1)昨年1月、国会に設置された憲法調査会は、衆議院では、制定過程や「21世紀日本のあるべき姿」などについて論議され、現在憲法9条をめぐる論議が進められようとしています。今後公聴会などが予定されていますが、憲法の平和主義をめぐる論争はさらに厳しくなることが想定されます。自民党などの狙いは、憲法前文や9条を改訂し、「集団的自衛権」の導入に踏み込み、有事立法を制定し、アメリカへの戦争協力体制を万全のものにしようとすることにあります。
私たちは、このような策動を許さず、憲法の平和主義を擁護し、その先進性は、21世紀にも通用するものであることが国際的にも評価されていることをもとに、内外にアピールしていくことが課題となっています。
(2)自民党政治は日本を崩壊に導くだけです。小泉総裁が誕生しましたが、議員が変わらず、総裁が変わっただけで自民党が変わることなどあり得ようがありません。新総裁は派閥を否定していますが、何をするにも自民党は派閥が基礎構造となっており、その解体なしに自民党政治の転換を期待することはできず、日本の将来を展望することはできません。政権交代によってしか21世紀を希望のもてる時代にすることができないのです。
今後予定される全ての選挙戦を政権交代を可能にさせる体制作りと一体のものとし、全力をあげて闘うことが求められています。
(3)「20世紀中に核兵器の廃絶を」という私たちの願いは実現できませんでしたが、世界的には、南半球を中心に非核地帯が拡大し、国際司法裁判所による「核兵器の使用は国際法に違反する」との判断、CTBT(包括的核実験禁止条約)の締結など成果も上がっています。また、昨年5月のNPT再検討会議では、新アジェンダ連合やNGOの活動等により、核保有国に「核兵器廃絶の明確な約束」をさせ、その期限が明示されていないにしても今後に展望を切り開くものとなっています。
他方、米・ロによる相次ぐ未臨界核実験の強行、ABM制限条約に違反するNMDやTMD計画の推進による核拡散の危険性の増大、アメリカのCTBT批准の否決など様々な問題も残っています。しかも日本は、アメリカの「核の傘」に依存し、「核の先制不使用」に踏み込もうとしていません。日本は核軍縮で曖昧な態度をとっているとみられる要因ともなっています。
当面の共通要求は「核兵器禁止条約の締結」です。これをステップとして核兵器廃絶への道を現実化していかねばなりません。そのためには、新アジェンダ連合や世界のNGOと連携した取組の強化が必要となっています。
日本は、アメリカの「核の傘」から離脱し、非核三原則を法制化して「非核法」を制定し、北東アジアの非核地帯化の実現など、核軍縮にイニシアチブを発揮していくことが求められています。とりわけ朝鮮半島の緊張緩和が進もうとしている今日、北東アジアにおける多国間協調による「集団的安全保障」を実現することはアジアの平和と安定にとって重要な課題となっています。そのためにも日朝国交正常化は不可欠であり、早急に実現しなければなりません。
(4)ヨーロッパや台湾にみられるように核社会から脱却し脱原発への潮流が世界的な動きになろうとしています。ところが日本は、もんじゅのナトリウム漏れ事故、東海村の再処理施設の爆発、JCOの臨界事故など相次ぐ核施設の事故の反省もなく、新たな原子力長期計画のもとに核燃料サイクルを強行実施していく動きを再開しました。東海再処理施設につづいて、「もんじゅ再開」、プルサーマル計画の実施の動きをつよめ、欧米諸国と比べ原子力利用推進国として際立った動きとなっています。
プルサーマル計画に反対し、プルトニウム利用計画の中止を求めるなどこれ以上核利用を増大させない取組を進め、脱原発社会の実現をめざし活動の強化に努めねばなりません。
(5)新ガイドラインに基づく国内法の整備は、周辺事態法につづき「船舶検査法」の成立のよってほぼ終了し、有事立法の制定が日程に上ろうとしています。新ガイドライン関連法に基づき準備や訓練の名で「集団的自衛権」行使の準備が進められています。アメリカの艦船や航空機が各地の民間の港や空港を頻繁に利用するようになっているのも、その表れでもあります。
沖縄では米兵による少女ワイセツ事件、婦女暴行・傷害事件、放火事件などの犯罪が多発する事態になっていますが、日米地位協定が米兵の犯罪をうやむやにすることにもなっています。私たちは日米安保や地位協定の見直しを求めることは勿論のこと、「周辺事態法」など新ガイドライン関連法の発動や準備を許さず、特に、自治体や民間協力については非協力の取組を進めねばなりません。
またアメリカの進めるNMDへの協力やTMD構想への参加、専守防衛と縁のない空中給油機や軽空母の導入、有事立法の制定などは北東アジアの不安定要因を増大させるものであり、これらの動きに反対し、日本の軍縮を求める取組を進めねばなりません。
また、沖縄県民の意向を無視して、政府は「普天間代替施設協議会」での協議や環境調査を進め、ジュゴンがどうなろうと何がなんでも名護市辺野古への基地移設を強行しようとしています。普天間や浦添市への那覇軍港移転は今年が山場であり、現地沖縄平和運動センターと連携し反対の取組を進めます。
(6)偏狭なナショナリズムに基づく国家主義的な逆流の動きが急速に強まっています。森首相の「日本は天皇を中心とした神の国」発言に始まり、石原都知事の「三国人」による騒じょう事件を想定した自衛隊の治安出動発言や侵略戦争を否定した野呂田衆院予算委員長発言など要人の問題発言がつづいています。さらに、教育の分野では、「自由主義史観」をもとに、日本の戦争責任や憲法の理念、核廃絶をも否定する「新しい教科書をつくる会」による歴史の事実をねじ曲げた教科書の発行、その問題の教科書を文部科学省は検定合格にし、近隣諸国から激しい批判がおこっています。このような教科書が実際に使われることのないよう、教育委員の選定や教科書採用の在り方に留意し必要な対策を進めねばなりません。
また、昨年末、「教育改革国民会議」が教育基本法の見直しや「奉仕活動の義務化」などを打ち出しました。奉仕活動の義務化は徴兵制に結び付くとして批判が出ています。奉仕活動は本来自主的なものです。奉仕活動の義務化に反対するとともに、教育基本法の改悪に反対していきます。
(7)21世紀最大の課題のひとつである環境問題は、地球温暖化、大気汚染、廃棄物問題、環境ホルモンなど多岐にわたり、市場経済優先政策のもとで環境破壊が進行しています。地球環境を守るためには、自然のサイクルと調和した第一次産業の維持・再生が重要となっています。日本では、大量の農林水産物の輸入によって採算性が悪くなり、森林や田畑の荒廃が続き、それらが持つ環境保全を含む多面的機能が損なわれています。さらに、大規模公共事業の名によるダム建設などの開発が環境破壊をもたらしています。
私たちは自然環境を守り「持続可能な循環型社会」をめざし活動を進めます。
また、不況や社会不安を背景に司法制度をはじめ人権軽視や治安警察強化の動きも進んでいます。盗聴法、住民基本台帳法、少年法改定などが相次いで強行されました。法務省・公安調査庁による破壊活動防止法や「有事法制」など人権抑圧法制が準備されており、人権にかかわる課題は山積しています。
3.活動の基調
三多摩平和運動センターは、三多摩地区の平和・人権・環境などの運動課題の発展をめざして活動することを目的に発足しました。
情勢でも明らかなように、私たちの直面している諸課題は、すべて21世紀のできるだけ早い時期に一定の展望を切り開かねばならない課題であり、その実現のため、東京平和運動センター、平和フォーラムと連携し活動の強化に努めることを活動の基調とします。
4.運動課題と具体的活動
1.憲法の三大原則を守るために
@、憲法調査会の動向を注視し、前文や第9条の改悪を許さず、憲法の三大原則である主権在民・平和主義・基本的人権の尊重を擁護し、日常生活のレベルで憲法理念を広めることが何より重要です。
東京平和運動センターや平和フォーラムとの連携を強め、憲法の先進性をアピールするなど憲法擁護の活動を進めます。
昨年度地区憲法集会の開催を確認し、実施してきましたが、平和フォーラムの1,000箇所憲法討論集会の開催方針を受け、今年度も三多摩的に、地区的に憲法集会を具体化していきます。
A、11月(3〜5)の第38回護憲大会(伊勢市で開催)に積極的に参加します。
B、靖国神社国家管理、昭和の日制定、教育基本法の改悪、新しい教科書をつくる会発行の教科書採択に反対するなど偏狭なナショナリズを許さない取組を進めます。
2.反核・原水禁運動について
私たちは今日まで「核と人類は共存できない」「いかなる国のいかなる核開発にも反対する」という原水禁運動の原則をもとに活動を進めてきました。
21世紀を迎えた今日、この原則はますます重要となっているように思います。
「核も戦争もない21世紀」は人類共通の目標となっています。ところが、アメリカのブッシュ政権発足後、NMD(本土ミサイル防衛)やTMD(戦域ミサイル防衛)などミサイル防衛の強化を重視しようとしています。この延長上には、核軍拡競争の激化しか想定できず、しかも、日本がTMDの共同開発を進めており、世界の流れに逆行するものであり容認する事はできません。
昨年5月のNPT再検討会議における「核廃絶の明確な約束」が現実のものとなるよう反核運動の強化に努めていかねばなりません。
また、今年の原水禁大会では、21世紀最初の大会であることから、子供たちの手による「核のない21世紀に!メッセージfromヒロシマ」という子供原水禁大会を全国から3,000名を集めて行うことになり、すでに子供の実行委員会も発足しています。子供派遣団の取組を例年以上に重視していきます。
核兵器廃絶とともに脱原発をめざす闘いも重要です。ヨーロッパ諸国では脱原発に大きく動き出そうとしています。ドイツでは、原発の耐用年数を32年とし、順次廃炉にしていくことが政府と電力会社で合意しました。世界的には脱原発に着実に進んでいます。ところが日本だけは、プルトニュウム利用路線を強化しようとしています。これもまた世界の流れに逆行するものといわねばなりません。
私たちは「核廃絶」のため、具体的には次のような活動を進めていきます。@、被爆56周年原水禁世界体への三多摩代表団の派遣・子供原水禁大会への子供団の編成と派遣、そのためのカンパ活動の推進
A、6の日、9の日「反核座り込み」活動の継続
B、反核平和の火リレーの取組の強化
C、未臨界核実験をはじめすべての核実験に反対し、CTBTの早期発効を求める活動、核兵器禁止条約の交渉開始を求める活動、核兵器の削減とSTRAT。の開始を求める活動、カットオフ条約の早期締結を求める活動の推進。
D、非核三原則を法制化し、非核法を制定を求める活動、すべての自治体で非核平和都市宣言を、非核・平和条例制定運動の推進。
E、プルサーマル計画に反対し、もんじゅ運転再開中止などプルトニウム利用路線からの撤退を求めるなど脱原発の活動を強めます。
F、核軍拡をもたらすNMD、TMDに反対し、アジア・太平洋地域の非核化、北東アジアの非核地帯条約の実現をめざす活動の推進。
北東アジアの非核化には朝鮮半島の緊張緩和が不可欠であり、日朝国交正常化が重要であることに留意し活動します。
3.反戦・反基地運動について
新ガイドラインに基づく「周辺事態法」は、安保条約の日本防衛と「極東有事」の際の基地提供という枠組みから大きく逸脱しており、憲法違反の集団的自衛権行使に道を開き、「有事立法」制定の動きを強めています。
アメリカへの戦争協力はしない事を基本方針とし、日米安保の見直し、地位協定の改定、思いやり予算の削減、日本の軍縮や米軍基地の縮小・撤去を求め、沖縄平和運動センターをはじめ「全国基地問題ネットワーク」と連携し、具体的には次の諸活動を進めます。
@、横田基地の軍民共用空港化に反対し、無条件全面変換、跡地の平和利用を要求します。
NLP訓練については硫黄島で行うよう要求し、横田基地の利用には反対します。また、「横田基地飛行差止め訴訟団」の闘いに対する支援・連帯の活動を進めます。
沖縄では、米海兵隊の犯罪が多発しているにもかかわらず、一端基地に入れば警察の追及が及ばなくなるということは大きな問題です。日米地位協定の見直しと改定を要求し、沖縄平和運動センターとも連携し活動を進めます。
今年度も10・21横田集会を具体化します。
A、普天間基地の名護移設に反対し、海兵隊の撤退と普天間基地の撤去を要求します。また浦添市への那覇軍港の移設も具体化されようとしています。名護市への基地建設はジュゴンやヤンバルクイナなどの生息地を破壊するなど自然環境を破壊して進めれようとしており、容認することはできません。県内移設が強行されるようなことないよう全国の仲間と連帯し必要な闘いに参加していきます。
また、5月の平和行進に参加し、沖縄との連帯を深めます。
B、新ガイドラインと周辺事態法の成立を前後し、アメリカ軍の艦船が民間港を利用したり民間空港を利用する事態が増大しています。平時からアメリカへの戦争協力を日常化しようとするものとみなければなりません。アメリカへの戦争協力の強制に反対し、自治体対策や職場の軍事化に反対する取組を進めます。
C、12・8不戦を誓う三多摩集会の開催を継続して進めます。
4.人権、環境に関する取り組み
@、国際人権条約の国内批准、在日外国人の権利確立を求め、また盗聴法などによ人権の侵害・抑圧に反対し、人権を守るための諸活動を東京平和運動センターと連携し進めます。
A、地球温暖化や環境ホルモン、ダイオキシンなど有害物質対策や、森や川、湖、海などの環境破壊に対する活動についても、東京平和運動センターと連携し進めます。
また、食の安全確保やきれいな水を守るために「食とみどり、水を守る都民会議」と連携した取組を進めます。
この組織が行っているあきる野市での「アジア・アフリカ飢餓救援米作付け・送付」の活動については、地元でもありますので積極的に協力していきます。
5.組織態勢について
@、地区平和運動センター未結成地区に対する対策を進め、三多摩全地区に平和運動センターの確立をめざします。特に、多摩中央、多摩北部の平和運動センターの確立に向けた対策を進めます。
A、個人会員を含め組織の拡大をめざします。
B、平和運動講座を地区や三多摩段階で具体化していきます。
6.財政について
別紙2001年度予算案参照
総会宣言(案)
三多摩平和運動センターは三多摩地区における反戦・平和・反基地・人権・環境などの直面する諸活動の発展・強化をめざし結成した。
この1年様々な活動を進めてきたが、「核も戦争もない21世紀」を実現するためにはなお多くの課題が山積している。
第一の課題は、「憲法調査会」の動向を注視し、憲法前文や9条など憲法の平和主義を守り、集団的自衛権の導入や有事立法の制定に反対する闘いを強化し、憲法の理念を内外にアピールすることである。
第二の課題は、日本の平和と安全にとって、北東アジアの緊張緩和を促進し、平和環境を醸成することが重要であり、そのためには、日朝国交正常化や北東アジアの非核地帯化実現に向けた闘いの強化に努めねばならない。
第三の課題は、いかなる国の核開発にも反対し、CTBTの早期発行を実現し、核廃絶への展望を切り開くことである。ブッシュ政権のもとで強力に進められようとしているミサイル防衛重視のNMDやTMDは核拡散・核軍拡の危険性を拡大させるだけあり、核の先制不使用や核兵器禁止条約の締結を求める活動を進めねばならない。
第四の課題は、新ガイドライン関連法による戦争協力に反対するとともに、沖縄基地の県内移設に反対し、日米地位協定の見直し、すべての米軍基地の整理・縮小・撤去を求める闘いや日本の軍縮を求める闘いの強化に努めることである。
第五の課題は、歴史をねじ曲げる偏狭なナショナリズムを許さないために、自由主義史観を基にした「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書の教育現場への導入に反対するなど教育基本法による教育の民主化を守る活動を強化することである。など多くの課題に直面している。
我々は、本日の総会で確認した諸課題実現のための闘いを強化し、真に平和な21世紀の実現をめざし全力をあげることを宣言する。
上宣言する。
2001年5月15日
三多摩平和運動センター第3回定期総会
【三多摩平和運動センター役員の選出】
4月15日に開催した拡大幹事会の確認にもとづき、各組織との協議の結果次の役員の選出を確認いたしました。
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