要望書
千葉県教育委員会 委員長宛
提出:2001年2月21日(水)

(Web管理者記)
 千葉県の国府台、小金、東葛飾高校の生徒が千葉県教育委員会委員長宛に請願書を
提出しました。これを踏まえて、2月21日、弁護士21人を含む市民有志26人が
要望書を提出しました。
 生徒たちの請願書は、2月23日の教育委員会会議には取り上げられなかった、と
のことです。
 末尾記載の請願法によると、「これを受理し誠実に処理しなければならない。」と
なっております。

千葉県教育委員会 委員長殿       小金高校等3校の高校生からの請願に関する要望書  私達は、子供の人権が保証され、子供の権利条約の内容が実現される社会を目指し て活動している市民です。  千葉県立小金高等学校・同東葛飾高等学校・同国府台高等学校の3校では、子供の 権利条約施行以前から、生徒と教師と保護者が対等な関係で話し合いによって学校運 営をする民主的なルールと校風が育まれ、卒業式等の学校行事についても、生徒・生 徒会の意向を職員会議が尊重し、生徒主体の卒業式が行われてきたと聞いておりま す。これは、子供の権利条約の保障する子供の意思表明権や学校運営への参加権を認 める素晴らしい伝統であり、私達も高い評価と関心をもつところです。  今年の卒業式についても、国府台高校では各ホームルームで議論・採決、小金・東 葛飾高校では生徒会で審議・可決して、3校とも日の丸・君が代のない生徒主体の卒 業式を求める「要望書」職員会議に提出し、職員会議もこれを可決したと聞いており ます。ところが、貴委員長が3校の学校長宛に卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱実施を 命じる職務命令を発したことによって、学校内に混乱が生じ、学校長がいわば職務命 令と学校内の民主的ルールの板ばさみになっていることは、誠に遺憾です。  私達は、このことを本年2月14日に貴3校の生徒たちが教育委員会宛に請願書を 出したとの新聞記事で知りました。請願書で、子供達は次のように言っています。  「命令より話し合いを」、「3校の『自主自律』『自由選択と自己責任』の尊重 を」、「重要なのは『国旗国歌を実施するか、しないか』ではなく、学校自治の仕組 みを無視して、重要な問題が命令によって決められてしまうということなので す。」、「学習指導要領では、『その意義を踏まえ』国旗を掲げ国歌を斉唱するよう に指導するとなっておりますが、命令という形では生徒にその意義が伝わるはずがあ りませんし、国旗国歌への愛着も深まるはずはありません。」  誠に正論であり、私達は、貴委員会や各校の学校長が、子供達のこのような純粋で 素直な意見を正面から誠実に受け止め、子供達が求めるように「命令ではなく話し合 いによって」解決してくださることを願わずにはいられません。  ところで、本年1月26日、日本弁護士連合会は、埼玉県立所沢高等学校の生徒・ 卒業生89人が本件と類似の事案で人権救済申し立てをしていた事件で、生徒の「意 思表明権」・学校運営への「参加権」を認めたうえで、所沢高等学校学校長宛に、こ れらの人権に対する侵害があったことを指摘し、「今後、卒業式等の学校行事の運営 にあったっては生徒や生徒会を決定過程の重要な参加メンバーとして、意見表明や参 加の機会を与え、生徒や生徒会の意見と校長の意見とが異なる場合には、生徒や生徒 会と誠実に話し合い、十分な説明と協議を行って生徒の納得を得られるように努力 し、さらにはできる限り生徒会との間でも合意を目指して努力されるように要望す る」旨の「要望書」を発しました。また同時に、埼玉県教育委員会に対しても、同委 員会が、「98年度に所沢高等学校に入学する生徒及び保護者に対して、所沢高等学 校学校長をして、入学式に参加しなければ入学が許可されないかのような誤解を与え る記載をした1998年3月31日付け埼玉県教育委員会名の文書を送付させ、もっ て新入生に対して入学式に出席するよう心理的に強制したことは、所沢高等学校の生 徒会活動を支持する、あるいは、日の丸・君が代に反対する等の考えから入学式の出 席を拒否しようとしていた新入生の思想・良心の自由の侵害にあたり、憲法19条、 子供の権利条約14条1項に違反するものである」として、「今後二度と同様の行為 を繰り返さないよう要望する」旨の「要望書」を発しました。  私達は、上記「要望書」が具体的には所沢高等学校学校長ならびに埼玉県教育委員 会宛に出されたものとはいえ、その内容は子供達の権利に関する国際的動向と国際的 な法解釈に則ったものであって、全国の学校及び教育委員会で尊重されるべきものと 考えます。  そこで、貴委員会が、子供の権利条約によって保障された生徒・生徒会の「意見表 明権」・学校運営への「参加権」ならびに生徒の思想・良心の自由を尊重され、上記 3校が、卒業式のあり方を、貴委員会の職務命令という学校外からの強制力によって ではなく、学校内における学校長と生徒・生徒会との誠実な話し合いによって決定で きるよう、今後十二分な配慮をされるよう要望する次第です。  また、子供の権利条約12条2項は、「子供は、・・・自己に影響を与えるいかな る司法的および行政的手続きにおいても、・・・聴聞される機会を与えられる」と規 定しています。私達は、3校の高校生達の請願が卒業式以前に開かれる教育委員会で 慎重に審議され、その場において請願人たる高校生に聴聞される機会(口頭による意 見陳述と質問を受ける機会)が与えられることを重ねて要望します。 2001年2月21日 〔26名の署名が続く〕
(Web管理者記)  埼玉県立所沢高等学校の生徒・卒業生が日弁連に人権救済申し立てをしましたが、 その人数は「189人」です。「百」が欠落していますね。  ところで、「請願法」を下記に記載いたします。1969年版の有斐閣「小六法」 からの引用ですが、多分変更されてはいないでしょう。 ============================================================================   請願法           (昭和二二・三・一三 法一三)   施行 昭和二二・五・三(附則参照) 第一条【目的】     請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるとこ    ろによる。 第二条【請願の方式】     請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合    は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。 第三条【請願書の提出】   (1) 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。    天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。   (2) 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣    に提出することができる。 第四条【提出先を誤った請願書の処理】     請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、そ    の官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書    を送付しなければならない。 第五条【請願の処理】     この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しな    ければならない。 第六条【差別待遇の禁止】     何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。   附 則  この法律は、日本国憲法施行の日(昭和二二・五・三)から、これを施行する。 ============================================================================
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