準備書面(3)

請求人 竹永公一

1999年10月26日(火)


(Web管理者記)

------------------------------------(01)------------------------------------                準備書面(3)                           請求人 竹 永 公 一                           処分者 埼玉県教育委員会  標記請求人及び処分者にかかる平成10年(不)第3号不利益処分審査請求事案に ついて、請求人は次のとおり、準備書面を提出する。      1999年(平成11年)10月26日                     上記請求人主任代理人 桜 井 和 人 埼玉県人事委員会  委 員 長   坂 巻 幸 次 殿                   記 第1 本準備書面の目的    請求人は、事実誤認をはじめとする本件処分における重大な問題点を指摘した   うえで、これまで主張立証を重ねてきた。なかでも、本件処分当時の内田達雄校   長に対する証人尋問は4回の口頭審理を費やしたが、その結果所沢高校における   生徒の自主性を尊童した学校運営のあり方を全く理解しようとしない内田校長の   姿勢が浮き彫りになり、また請求人の入学説明会における発言が全く正当であり、   本件処分がおよそ理由のないものであることが明らかになっている。    とりわけ、処分事由に掲げられた事実は存在せず、そもそも事実を誤認したう   えでの処分であることが明らかになっている。    そこで本準備書面において、これまでの審理、とりわけ内田校長に対する尋問   を通じて明らかになった本件処分事由についての事実誤認を強調しておきたい。 第2 事実誤認について  1 処分事由    処分者は、請求人に対する処分事由説明書において、請求人が入学説明会にお   いて佼長の説明に反した発言を行ったが、このことは、地方公務員法第33条に   違反するものであり、教育公務員としての信用を著しく傷つけるものであり、誠   に許し難いとしている。    要するに、請求人の発言が校長の説明に反したという事実を前提として、地公   法違反という判断を加えているので、その前提たる事実認定が正しいかどうかを ------------------------------------(02)------------------------------------   吟味する必要がある。    処分事由説明書の処分事由には、校長が「「入学式」及ぴ「入学を祝う会」の   ご案内」という印刷物を配布したうえ、      「入学には校長が行う入学許可を受けることが必要であり、「入学を祝う       会」は入学式の終了後に実施する」(A)   と、説明したのに対し、請求人は、校長の了解を得ることなく      「4月9日は「入学を祝う会」のみを行い、教職員も校長の行う「入学式」       に反対する」(B)   という「主旨」の発言をしたとされ、(B)が(A)に「反し」たとされている。    そこで以下において、まず請求人の当日の発言の「主旨」が何であったかを証   拠に基づき述べ、次いで請求人の発言の主旨が校長の説明に反していたかどうか   について述ぺる。  2 処分事由についての検討  (1)請求人の発言の「主旨」     内田校長の証言及び録音反訳書によれぱ、校長が(A)と説明したことは疑    いない。     そこでまず請求人が(B)の「主旨」の発言をしたかどうかを検討する。     「主旨」とは、「(文章・言説などの)おもな意味。中心となる意味。」と    されている(「広辞苑」第三版)。     内田校長の証言、同人作成の事故報告書(乙第1号証)並びに同人録音テー    プの反訳書、いずれからも、請求人の当日の発言の「主旨」は(B)では断じ    てない。     請求人の発言を、あえて録音反訳書から引用してみる。     (1) 「生徒の皆さんにとって自主自立というのはどういうふうに考えてほし        いかということなんですが、・・・・学校生活の中で自分の身の回り        にあるいろいろなものに興味を持って、いろいろなことを考え、場合        によっては高校生の学校生活まるごとを通してですね、え一主体的に        物事を考え、判断し、そして成長していってほしいという、そういう        ことに考えていただければ・・・所沢高校に入学して、入学した後で        すね、一人一人が本当に先程言いました主体的に学校生活を送って欲        しいと考えています。」     (2) 「私たち教職員は生徒の自主活動というのを非常に大切に大事に考えて        います。・・・例えぱ、6月にやる体育祭、9月にやる文化祭にあた        る所高祭と言っていますが・・・できるだけ生徒の手で作り上げてい ------------------------------------(03)------------------------------------        く。見えない面では・・・生徒規則ですね、それもやはり、生徒の側        からちょっとおかしいんじやないかという声が上がってくれぱ、それ        を教職員が受けてですね、生徒と教職員がやはり一緒に学校を作って        いこう、もちろん、その立場は違いますから、私たち教職員は教職員        なりに生徒似いろんなことを言ったりしなけれぱならない場合もあり        ますが、基本的な考え方はそういうふうに自主活動をとにかく大事に        していこう、という主旨でやつています。」     (3) 「3月9日の・・・・さまざまなことが卒業式、卒業記念祭という新聞        報道等があったので、いろいろその興味や関心をもたれている方が多        いのではないかと思います。この後、その映像とか生徒会の方からも        生徒の説明もありますが、え一教職員の方として概要をきちっと抑え        ておきたいというふうに思います。生徒の側は・・咋年の8月から・        ・準備を始めまして・・各クラスの討議を経て11月の生徒総会で卒        業式に代わる卒業記念祭を行おうと・・・生徒の自主活動として体育        祭や文化祭だけではなくて学校全般の行事を考えた時に、学校生活の        入口である入学式、そして最終の門出である卒業式、それに代わるも        のを生徒主体でやってこそ本当の意味の生徒の自主活動なのではない        か、そういう思いが込められていたとそう思います。・・・教職員も        ・・・生徒の決定にただただ従ってきたわけではありません。例えば        卒業式を行わないということが可能なのかどつなのか。もちろん職員        会議でもずいぷん議論しました。で、その中で・・・職員会議でもそ        れに代わる卒業記念祭でやっていこうと決めたんですね。・・・残念        ながら何度にもわたって・・・(校長)との話し合いをしましたが、        最終的には3月9日、最終最後の日まで平行線になってしまいまして、        ・・・非常に残念に思っております。」     (4) 「あと3週間後の4月9日にですね。やはり皆さんも非常に心配してい        るのではないかと思いますが、現在私ども教職員も・・・生徒も、4        月9日が入学を祝う会のみで行いたいというふうに考えております。        ・・・私たち教職員はこれから4月9日に向けて、学校長に今事での        生徒の取り組み、教職員の考え方、そしてもちろん1年学年団の教員        の考え方を、できるだけ理解していただいてね、4月9日には祝う会        のみでできれぱいいなというふうに考えています。そのためには最大        限努力をしてゆくつもりです。・・・最終的に、折り合いがつかない        ことも万一あるかもしれません。で、その場合はですね、この点だけ ------------------------------------(04)------------------------------------        はお約束しておきたいと思うのですが、4月9日、えー皆さんみえて、        迷ったり、混乱したりするような事態は1年の学年団としては絶対に        避けたいというふうに思っています。・・・決してその日に混乱はあ        りませんので、そのへんは御安心をして4月9日を迎えていただきた     (5) 「入学許可・卒業の認定これは校長がやることになっています。・・・        入学許可候補者から新入生になる入学許可については・・・4月9日        をもって、当然所沢高校の新入生となります。ただ、その・・・けじ        めとして・・・全体で合意をして・・・これこれの生徒は合格なのだ        ・・・その代表として・・・校長が入学許可をするということですか        ら、・・・入学許可を与えないから、出られないから・・所沢高校に        入学できないというようなことはありません。」     以上のとおりであり、この15分間程の請求人の発言の「主旨」はどうみて    も(B)ではない。     請求人は、本件当日、新一学年を担当する教員団代表として、合格者と保護    者に対し、所沢高校における学校運営が生徒の自主性を最大限尊重する方向で    なされてきたこと、そうした学校運営への生徒の参加という伝統の中で3月9    日の卒業記念察が計画され開かれたこと、さらに4月9日の入学を祝う会及び    入学式についての、生徒・教職員・校長、それぞれの考えと相互に話し合いが    なされていることなどの経過を説明したうえで、さらに話し合いを続けるが、    いずれにしても混乱のないよう最大限努力しているので安心して当日を迎えて    欲しいと述べたのである。     これが請求人の発言の「主旨」であり、そうである以上、だれが間いても極    めて時宜にかなった適切妥当なものと評価できるはずである。MK証言によれ    ぱ、そもそも請求人は本件発言を独断で行ったのではなく、学年会で慎重に討    議したうえ総意で発言内容を決め、その通り発言したのであるから尚更である。     したがって処分者は請求人の発言の「主旨」を(B)と誤認したか、意識的    に歪曲したとしか考えられない。いずれにせよ処分の前提たる処分事由の事実    に誤認がある以上、請求人に対する処分はその根拠を失うのであり取り消され    るべきである。  (2)請求人の発言は校長の説明に反していない。     処分事由によると、請求人の発言の「主旨」を故意にねじ曲げて(B)とし    たうえで、これが校長の説明である(A)に「反し」たとしている。しかし、    請求人の発言の「主旨」は上記の通りであり、これは校長の説明に何ら「反し」 ------------------------------------(05)------------------------------------    たものではない。請求人の発言の中には「「入学を祝う会」のみで行いたい」    という言葉は出てくるが、それは一連の経過説明の中で請求人ら教職員と生徒    の考えを紹介した言葉であって、校長の説明に何ら反するものではない。     いったい請求人の発言のどこが校長の説明に「反し」たというのであろうか。    「入学式」と「入学を祝う会」の両方をやるといった校長に対し、「入学を祝    う会」のみで行いたいとの教職員らと生徒の考えを述べたこと自体が、校長の    説明に反し、懲戒処分の理由になるというのであろうか。それでは余りに乱暴    というほかない。ましてや請求人は単に教職員や生徒の考えを述べたのではな    く、それまでの経過を述べ、あわせて今後も校長と話し合いを統け、万一折り    合いがつかなくとも当日混乱だけは絶対にないようにするので安心してきて下    さいと述べているのである。加えて録音反訳書によれば、当日何時に来たらよ    いのかとの保護者の質問に対しても、丁寧に応答し、きちんと時刻を答えてい    るのは請求人であって校長ではない。それどころか校長はその後質問をしよう    とする新一年生の保護者に対して「いつまでやるの」などと不規則発言をして    おり、不誠実かつ不真面目な姿勢を露わにしている。     入学説明会における校長のかかる不真面目な態度こそ非難に値するのであり、    請求人の真勢な発言をとらえ、校長の説明に反したなどとこじつけて懲戒処分    の対象とすることは到底許されない。 第3 結論    以上の次第であり、これまでの審理を通じて、処分者が処分事由について事実   誤認をおかしており、請求人の発言が全く正当なものであって、これこそ「全体   の奉仕者たるにふさわしい」ものであって、信用失墜行為などとはおよそかけ離   れたものであったことが明白になった以上、本件処分はすみやかに取り消される   べきである。    なお、一般的に教職員が校長の意思もしくは表明した内容と「異なる」あるい   は「反した」と評価される発言をしたとしても、それが地公法の懲戒処分事由と   なるか否かについては表現の自由、内心の自由とのかかわり及び発言の機会、性   格、発言内容等によって慎垂に検討されるべき間題であるが、本準備書面ではそ   の点については触れない。本準備書面は処分者が事実誤認をおかしている点に限   定するものであることを念のため付言する。 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