所高生の自由と教育を考える委員会だより

発行:所沢高校PTA・所高生の自由と教育を考える委員会

発行日:1999年10月15日(金)

所高生の自由と教育を考える委員会だより

                    所沢高校PTA
  1999.10.15        所高生の自由と教育を考える委員会発行

10月2日開催「法制化された日の丸・君が代を           考えて見ませんか」学習会報告  10月2日、公開で行いましたが、参加者はおよそ30人ほどでした。委員長から の、できるだけたくさんの新聞記事を集めて資料集を作ったこと、どちらかの立場に 立ってではなく客観的な姿勢でやりたいので、委員で分け合って説明をすることにし た、みんなでいっしょに考えましょう、という挨拶で始まりました。司会はMMさん が担当しました。 1・歴史的な背景から     OKさん(1年保護者) 2・法制化までの経緯     IBさん(3年保護者) 3・教育現場への影響について SMさん(2年保護者) 1.歴史的背景  資料集と参考にした文献によって進めていく。  君が代は教育現場に1893(M.26)唱歌として入った。1945敗戦まで、 御真影への敬礼、教育勅語の奉読とセットで、1900(M.33)から三大節に 小学校で歌われていた。  今の「君が代」の前に違う「君が代」があった(曲がテープで紹介された)が、 1880(M.13)詞はそのまま使い新しい曲ができた。これが今の「君が代」。  国の印としての「日の丸」が決まったのは、1853(徳川13代家定)以降。 1854「日本国総船印」と決まり、1858(家定)に修好条約を結んだ各国に 通報した。各国では国旗と受け取っており、1860(14代家茂)咸臨丸が「日 の丸」を揚げてアメリカに行った時には、現地では「日の丸」での大歓迎を受けて いる。  国内に「御国総標」として触書が1859(家茂)だされたが、官庁の掲揚が徹 底されたのは、1924(T.13)。その後、時代は軍国主義へと向かっていき 日本軍の先頭には「日の丸」の旗があった。  「日の丸」を国旗にという法案が、1931(S.6)帝国議会に国旗法案が出 され衆議院では可決されたが、貴族院では議題にも上らず廃案になった。  1945(S.20)敗戦で、「日の丸」は軍国主義の象徴としてGHQが掲揚 禁止を通達。しかし、「君が代」は禁止されなかった。それについては文献により 説明が違う。戦時中はあまり歌われず、「海ゆかば」の方が歌われていたからとい うもの、学校行事からは消えていたからというもの、国歌ではなかったからという ものなど。また、天皇には国民をまとめる作用があり、そのためにも天皇崇拝に結 びつく「君が代」は残すというアメリカの意図があったという記述もあった。  1949には日本をうまく利用しようという対日政策の転換により、全面的に 「日の丸」掲揚が許可された。  地域に住む70歳以上の人から、戦時中は「日の丸」と「君が代」はセットでは なかった。セットになっているのは、「日の丸」と「海ゆかば」であり、「君が代」 と「御真影」だった。  「君が代」を歌うことはめったになかったという話を聞くことができた。 質問:1936の国旗法案を貴族院が「日本には天皇旗がある。それを越えて    日の丸を国旗にはできない」といって廃案にした件だが、日の丸は天皇    旗ではなかったのか。 回答:天皇旗は菊の紋章だった。しかし古くは錦の御旗を天皇旗としており、    いつ変わったのか調べきれなかった。 2.法制化までの経緯と法制化後の動き  日の丸の位置付け   自衛隊旗には、現在も旧陸軍、旧海軍の旭日旗が使われている。過去には天皇   旗、連隊旗、軍艦旗などに比べて、日の丸の位置付けは低くされていた。  最近でも法案が   1993、自民党中山議員を中心に義務規定を盛り込んだ国旗法案を作られた   が、成立しなかった。  今年になってからの動き   広島県立世羅高校校長の自殺により、それまで法制化は考えていないと発言し   ていた小渕首相が、検討する時期に来ていると発言(3月)。日の丸・君が代   を実施しなかったことにより、広島県で校長135名の処分があった(4月)。   政府与党が、尊重規定をはずした法案提出を決定(5月)。政府が法案を国会   に提出(6月)。衆議院で可決(7.22付)。8月9日参議完で可決し成立。   野中官房長官は、法制化で国民生活に何ら変化や義務を生じるものではないと   7月2日に発言。  議論はし尽くされたのか   各地で公聴会が開かれたが、中央公聴会は参議院の採決当日だった。   法制化に至るまでの審議日数は、これまでの「建国記念の日」や元号の法制化   のそれと比ベ、とても短かった。世論調査では「日の丸」を国旗、「君が代」   を国歌と認識している人の割合は高いものの、法制化には慎重姿勢が強いとい   う結果が出ており、野中官房長官は国民に十分理解されていないことを認めて   いる。  これからどうなっていくのか   11月12日の天皇在位十年記念式典の日には、一般家庭でも国旗掲揚をとの   政府発表(9月)。   小渕首相の弁(9月)によると、次は教育基本法の改正をすすめるようだ。   最後に、法制化前後には「日の丸・君が代」問題をとりあげた雑誌などが、多   く見られる。   その中でも異色のものとしては次の2冊の雑誌あると紹介がありました。     文芸ポスト 秋号 赤川次郎「日の丸あげて」(短編ミステリー)     アサヒグラフ 9月17日号 石川真生「『日の丸』を視る目」           (日の丸に思いを込めてポーズをとった人々の写真を掲載。) 3.教育現爆への影響について   用意したレジュメと資料集で進める。   どんな影響を及ぼすのか。どのような事を考えなければならないか。  「国旗・国歌」には他国との識別機能と自国での統合機能がある。   「日の丸」の規格は不確定、序列も低かった。1931年国旗法案の廃案の裏   には、国家と天皇との関係をめぐる特殊な問題がある。  「法制化」の意味は何か。   「法的根拠がない」という反対論に対し成文法の根拠を与え、これを封じるね   らい。   「法制化するが強制しない」というのは論理矛盾している。法とはもともと強   制力をもつもの。あえて尊重規定をはずしたのは、憲法の思想信条の自由に抵   触する部分があることを政府自身も分かっているから。法案を通すために尊重   親定をはずしたが、本音は強制したいから。国民生活には何ら影響はないといっ   ているが、資料集p38、41、50、51を見れば影響は必至である。  学校現場への影響と論点   明治以来、国民統合の手段として学校教育は最高に使える道具だった。   儀式的行事に細かくスタイルまで強制して、従わないものは処分する。形を重   視する、実施率を重視する、そこには官僚の業績主義しか見えてこない。   生徒に対しての強制について文部省解釈が出ている。心理的苦痛を与えてはな   らない、無理強いはしない、内申書に反映させてはならないとあるが、言葉通   りに事が運ぶ保障はない。すでに高松市教育長の発言(p45)、和歌山県教   委の発言(p40)には「強制」がある。   起立・斉昌しない自由もあることも明示しないと、内心の自由を侵さないとい   う保障はない。内心の自由には「沈黙の自由」も含まれる。   政府は、教師に対しては事実上の強制を言明している。掲揚・斉唱を拒否する   抵抗者の摘発・処分が法制化のポイントだとp30の広田論文その他から読み   取れる。 意見交換から(紙面の都合上、発言の趣旨を変えない程度に編集しました) ● 文部省・教育委員会といった教育行攻は、教育条件整備のための機関であるは   ずなのに、教育の内面にまで立ち入っている。 ● 教師には歌うように指導する義務がありながら、起立・斉唱しなくてもいい自   由を教えることも大事。自分の中に葛藤がある。 ● 思想信条の自由が保障されているはずなのに、それが侵害されているときに公   務員はどうするか。クビを覚悟の内部告発しかないのだろうか。 ● (教員にとっては)人事院、教育委員がオンブズマンの役割を果たすべきなの   に、違ってきている。 ● 子どもたちの未来を考えたとき、なにができるか。 ● 何が問題かと子どもに尋ねられたときにどうするか。親なりに問題意識をもて   ば子どもももつ。 ● 法制化により、もし教師の行動が変わったとき、生徒はどう見るかと思うとや   るせない。   これまでと同じように行動できるように職場でも考えたい。 ● このまま流されていくと、良心が消えていく。そうならないようにしたい。 ● これまで避けてきたが、一人一人が思いを持って声を出していかなけれぱ悪い   方へと行きそうだ。 ● (君が代が)ごく自然に入っていくことで物言わぬ国民を作ることにならない   か。 ● 起立斉昌しない人がいても、それを暖かく見守ることができる社会でありたい。 ● 日の丸は学校だけではなく生活の中にもある。今まで自分の中でもタブーとし   ていたが、問題を地域でも語りたい。未来のことを考えて語っていきたい。勉   強していく。 ● 今より明治時代の方が自由だったように思える。君が代の曲がおかしいという   声が若者からあって変わったり、いろいろな日の丸が出て来たり。 ● 先生を守るシステムが必要ではないか。内心の自由を守るアピールを。 ● 思想信条の自由がある。先生が歌わない自由があること、子どもたちにも圧力   をかけないで欲しい。 ● PTAには、いろいろな考えの人がいるということを第一に考えると、慎重に   扱いたい。 ● 理事会にこんな提起があったと報告はする。ただ、今日は学習会なのでアピー   ル云々はそちらにおまかせしたい。 編集者から  中曽根新文部大臣が就任の挨拶で、「21世紀に向けてどんな日本人を作ってい くか」と話していました。想像以上に国旗・国歌がかかわってくるかもしれません。 一人一人がしっかりと考えを持ち、子どもたちに伝える必要があるのではないかと 思います。                           (K.○)  当日の資料集、レジュメ、参考文献一覧表が若干数あります。入手を希望される方 はSDまでご連絡ください。          SD 042−XXX−XXXX  ┌──────────────────────────────────┐  │ 12月18日(土)14:00〜長野県立辰野高校の宮下与兵衛先生を │  │ お迎えして、「子ども参加の学校づくり」(仮題)をテーマに語り合い │  │ たいと思います。                         │  │ 皆さんのご参加をお待ちしています。                │  └──────────────────────────────────┘
(Web管理者記)
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