所高生の自由と教育を考える委員会だより
発行:所沢高校PTA・所高生の自由と教育を考える委員会
発行日:1998年12月24日(木)
所高生の自由と教育を考える委員会だより
所沢高校PTA
1998.12.24 所高生の自由と教育を考える委員会発行
学習会『生徒たちは何を訴えたの?
〜人権救済申し立てを知ろう〜』 報告
所沢高校生徒・卒業生が10月15日に日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を
申し立てました。そこで、PTAとしても人権救済について学ぼうと、11月4日に
学習会を開きました。当日は、保護者をはじめとして、生徒やPTA・OBなども加
わり20数名が参加しました。以下、その概要を報告致します。
なお、当日は、生徒達の人権救済申し立てを応援して下さっている弁護団より、伊
藤律子弁護士、小原千代弁護士を講師としてお呼びしました。
1.申し立てまでの経緯(PTA副会長より説明)
子どもの人権相談室を通じて弁護土との交流が始まった。1月23日と2月4日に
東京弁護士会の津田玄児弁護士、伊藤和子弁護土を所沢高校にお招きして、保護者・
生徒・先生が参加して、所高問題について法律的にどうなのかを学んだ。
3月26日に日弁連・子どもの権利委員会の弁護士の方々と生徒たちが、弁護士会
館にて懇談会をもった。そこで人権救済という方法もあることを聞いた。
3月31日に、竹永先生の処分撤回を求める記者会見席上で、在校生が日弁連に人
権救済申し立てをする予定があることを明らかにした。生徒が実施したアンケートに
より、4月8日に在校生813名中517名、4月23日に新入生398名中317
名が人権救済をしたいと回答した。
7月に何について人権侵害されたかについて、および、申し立て人になるか、賛同
者になるかが再度アンケートされ、在校生の申し立て人は128名、賛同者を合わせ
ると約500名となった。今春の卒業生が有志の会を作り、卒業生有志による申し立
て人60名を募った。
7月以降、学者の方々も弁護団とともに申し立てについての論議に加わって下さっ
た。
2.人権救済申し立てについての説明(伊藤・小原両弁護士により)
(1)人権救済申し立て手続きとは
[申し立て]……人権侵奪をされたり、その恐れのあるとき、日弁連に申し立て
ができる。
↓
[予備審査]……日弁連は申し立てを受理するとまず予備審査をする。これは、
人権擁護委員会でやると思う。この事査で、許しい審査を始め
| るかどうかを決める。
↓
[本審査]……予備審査で侵害がありそうとなると、本審査つまり「調査の開
始」となる。所高の場合、子どもの権利委員会で調査すること
| になるだろう。本審査では、事実調査を行い、法律構成等も検
| 討し、結果を人権擁護委員会に報告、それを受けて人権擁護委
| 員会としての意志決定がされ、さらに日弁連の理事会で議論さ
| れて、日弁連としての最終決定となる。
↓
[最終決定]……最終決定には、「警告」「勧告」「要望」その他「助言」「協力」
「調査中止」などがある。
「警告」は加害者などに通告して反省を求める。
「勧告」「要望」は加害者などに被侵害者救済や人権侵害の予
防について適当な措置を取ることを要求するというもの。
「警告」「勧告」「要望」が出ると法的拘束力はないものの、事
実上それを「尊重する」ということを望める。
(2)申し立てから決定までの期間
申し立てから決定までは事実関係の調査段階で、学校・県・文部省がすんなり協力
しないと時間を費やしてしまう。事実調査への協力は強制力はなく、「協力を求める
ことができる」としかなっていない。相手から直接聞けなくても状況証拠から積み重
ねていくことはできる。しかし、所高のケースは子どもの権利条約の意見表明権を中
核にした初めての申し出であり、「新しい権利」なので、認定まで時間が掛かりそう
だ。一年位かかるかもしれない。
(3)今回の申し立て手の中味について
(1) 校長先生の行為について
今回の卒業・入学式に関する校長の行為は、「生徒は指導される立場であり、対等
な協議はしない」ということで生徒の意見を正当な重みをもって重視していないし、
生徒の意見を拒否する理由をきちんと説明していないので、生徒の意見表明権を侵害
している。また、所高の生徒と先生方との話し合いのシステムは、自己に影響を及ぼ
す事実についての決定過程への「参加の権利」を制度的に具体化したものであるとい
える。しかし、校長先生が卒業・入学行事に関する生徒総会と職員会議での決定を独
断でひっくり返したのは、生徒の学校運営参加権の侵害になる。
(2) 1998年度の入学式に関する県と校長の文書について
「入学式に出て入学許可を受けなければならない」との県と校長の文書は式に出る
ことを強要している。これは式への出欠についての生徒の自由な選択という内心の自
由の侵害である。また、今回の場合、式への欠席は新入生の「意見表明」だが、手紙
があることで、生徒はその行動を抑制されてしまう。だから、意見表明や表現の自由
の侵害になる。
(3) 文部大臣の人権侵害について
当時の町村文部大臣の所高問題への98年4月7日、10日、5月31日の発言は
生徒の名誉、信用の毀損である。事実をきちんと確認した上ですべき発言であるのに、
それをしないまま生徒が悪いという発言を繰り返した。
4月7日の発言(生徒が意見を持つのはいいが、通らないからといって実力行使に
出るのは民主主義の根本をゆるがすもの)は新入生の入学式の出欠への意志決定の自
由を抑圧し、内心の自由の侵害である。
(4) 学習指導要領の法的拘束力について
・卒業式・入学式を必ずやらなければならないという規定はない。また、卒業式・
入学式をやらず、生徒主催の行事のみを行うと決定された場合は、学習指導要領
の国家・国旗に関する規定の適用場面ではない。
・学習指導要領の法的拘束力を認めた判例はあるが、「大網的基準」として是認し
たにとどまる。日の丸・君が代の是非は思想・良心の問題であり、卒業記念祭・
入学を祝う会は、旭川学テ最高裁判決のいう「創造的かつ弾力的な教育の余地」
の適応の場面である。
・学習指導要領より上位法である子どもの権利条約も批准されているので、学習指
導要領の内容も上位規範である子どもの権利条約に適合されるように解釈される
べきである。
(5) 校長の裁量権について
所高では慣習として子どもの意見表明権や参加の権利の重要性が確立されており、
校長の裁量は極めて狭いものである。すでに確立されている所高システムを後退させ
るような一方的な裁量権行使は許されない。
3.意見交換
*今回の人権救済申し立て書は、子どもの権利条約の意見表明権、参加権の積極的意
味を、日本の学校の中でどういう形で適応させることができるのか、いや、すでに
やっているじゃないか、ということを明らかにすることに重点を置いていると思う。
(保護者)
*生徒の日々の活動や思いの正当性を認めてあげたい。(保護者)
*申し立てをするかどうかの話をしているとき、生徒が自分達の手を離れたところで
大人だけでやられるのが、嫌だと言っていた。生徒自身が主役でどうしていきたい
かを基本に考えないといけない。今後もあくまで主役は生徒だ。保護者の皆さんは
生徒達の思いを支えればいい。(伊藤弁護上)
*この問題の難しいところは、生徒をどうとらえていくか、という立場が、学校側
(校長側)と私達というか生徒側で価値観がちがうということだ。だからすぐに結
論は出にくいと思うが、弁護士は生徒の代理人として法的にどうとは言えるが、価
値観として相手に伝えるのは“運動”である。それは生徒が主体となってやるもの。
それを保護者が支えるしかない。(小原弁護士)
*生徒や保護者の中には、こういう活動がイヤと思う人もいることを知って欲しい。
支援と同時に、この活動が正しいかどうか、はたから見た意見を教えて下さるのも
PTAだ。情報を出しても興味を持たない人やイヤだという人はいる、ということ
は知っておかないといけない。保護者の方が支援して下さるなら、根元的なところ
で支援して欲しい。家に帰ったときに「何でこんなことをやっているのかな」と子
どもに聞かれたときに「こういうこともいいと思うよ」と言うとか。こういう勉強
会なども必要だと思いますが。(申し立て有志の生徒)
*生徒会本部の子達は先輩からの伝統や、所高の良さを訴えながら行動し、発展させ
る立場にあり、苦労している。メッセージを発信しているからこそ伝統が守れてき
たはず。その層が厚いからこそ、この学校の伝統が潰されないでつながってきてい
る。ひとつの方法がだめなら次の方法がある。守るべきものがあるならトライアン
ドエラーでやっていこう。人権救済申し立ても一つの手段だ。(先生)
*生徒の言っていることが正しいということは確かだと思う。だけど常識として社会
的に受け入れられていない。その中でどうやっていくのがベストかを探りつつ、生
徒も保護者もやっていかなくてはいけないと思う。(保護者)
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人権救済申し立て後、現在、卒業生や生
徒への調査がすでに始まっています。お
宅のお子さんは申立人になっていますか。
賛同者ですか。それとも違う立場でしょ
うか。この報告を材料に親子で話し合っ
てみてはいかがでしょうか。
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