第1回口頭審理

意見陳述書

請求代理人 谷村勝彦

1998年10月6日(火)

第1回公開口頭審理 代理人意見陳述
                                 谷村 勝彦

 申し立て人側代理人の谷村といいます。今年の春まで子どもが所沢高校で竹永先生
を始め多くの先生方にお世話になったものです。私は、竹永先生への処分を、保護者、
生徒そしてその他多くの方々がどのように感じているかという点を中心に意見陳述を
行います。

 まず始めに、処分に対する保護者、とりわけ入学説明会に出席された方の感想です
が、「あの発言がなんで処分の対象になるの」と処分の理由が全く理解できないと口
をそろえて話をしています。入学説明会の様子は、先ほどの意見陳述にありましたが、
多くの保護者は、校長先生の発言に対して失望感と共に憤りを感じました。質疑応答
の場面ではそれが明確に現れました。それとは正反対に、生徒会の説明に対しては大
きな拍手が沸き起こりました。在校生の保護者や私のような今年卒業の保護者は「内
田校長が、昨年の入学式に引き続き今年の卒業式、そして入学説明会までも混乱を引
き起こした」と感じました。竹永先生の発言はその混乱を収拾し、新入生とその保護
者に対して安心感を与えるための発言でした。所沢高校への信用、ひいては埼玉県立
高等学校の信用を失わせたのは内田校長であり、信用を繋ぎ止めたのは竹永先生だっ
たのです。

 では、今年の卒業生を含め、生徒はこの処分をどのように考えているかということ
ですが。私の子どもは竹永先生を「もっとも信頼している先生」といいます。授業が
丁寧で分かりやすく、どの生徒に対しても分け隔てなく声をかけてくれ、生徒の思い
をきちっと受け止めてくれるからです。そういった先生が、自分達が企画し実行した
「卒業記念祭」と「入学を祝う会」のために処分されたことに、生徒は大きな悲しみ
を感じています。そして、自分達の行動がなぜいけないのかという思いとともに、学
校教育や教育委員会に対する不信感をつのらせています。ある卒業生は所沢高校につ
いてこう述べています。「僕は所沢高校が好きだし、誇りに思っている。みんなもそ
うだと思う。所高の校風は勉強だけでなく、いろいろなことを学ばせてくれる。何か
あるごとに、生徒どうしで放課後や休日も協力し、一つのことを達成する。個性の濃
い友だちは、僕に新しいものの見方を発見させてくれる。熱く語り合うこともできる。
そんな機会を与えてくれるのは、所高だからだと思う。いじめや非行などの行動もこ
の校風がなくしていると思う。だから僕が味わったすばらしい日々をこれから入学す
る後輩たちにも味わって欲しいと思う」、またある生徒は「私は所高が『自由・自主・
自立』の校風であって、しかも『学校が楽しい』と思えるのは先生の力があったこら
こそだと思います。もちろん所高は、生徒の手で行事も生活もつくりあげて行くもの
だけど、陰で私たちを温かく見守っていてくださった先生には本当に感謝します」と
述べています。こんな子どもたちの思いを踏みにじるような乱暴な行為がこの処分で
あります。

 私たちは、竹永先生の処分を撤回するための会を設立しました。現在1300名を
超える方々が加入しておられます。所沢高校の保護者はもとより、全国各地の方々か
ら支援のメッセージを寄せられています。その方々は、所沢高校の生徒たちに共感し
応援をしています。そして、この処分の本質が、単に一教員の問題でなく、所沢高校
の「自主・自立・自由」という校風を壊そうとするものであると感じています。なぜ、
埼玉県教育委員会は竹永先生を処分したのでしょうか。処分に至る経過と、その後の
経緯を見ると明らかです。校長主催の入学式になんとしても多くの新入生や保護者を
参加させたいが為と考えるより他ありません。4月3日、校長名文書を、3月31日
付け県教委発行の文書をつけ、新入生保護者宛てに発送しています。「お子様が埼玉
県立所沢高校の生徒となるためには、入学式に出席し、校長による入学許可を受けな
ければなりません」これが県教委の文書の一節です。校長名の文書もほぼ同様のもの
です。この文書を受け取ったあるお父さんは、「入学を喜んでいたのに、こんな脅か
しの文書が送られてきて、大変不愉快」と話しておられました。合格通知を受け取り
所定の手続をしたら、よほどの反社会的行為を行わない限り入学を取り消されること
はありません。一般常識では考えられない脅かしまでも使って、入学式参加を強要し
たわけです。

 さて、竹永先生に対する処分はいったいなんだったのでしょうか。昨年一年間の所
沢高校の出来事を振り返ってあらためて考えてみたいと思います。
 昨年の所沢高校の入学式は、校長の独断で、それまでに決定されていた式の形が変
更され、大混乱になりました。その後、このことに説明を求める保護者や生徒に対し
て、校長は不誠実な態度をとり続けました。PTAは臨時総会を行い、その決定に基
づいて「校長に対し、生徒の意見や、保護者の意向をきちっと受け止め、誠意ある対
応をするよう指導して欲しい」と県教委に要請しました。再三の要請の後、結果的に
校長・教育局・PTAの三者の話し合いも持たれました。一方生徒たちは混乱のない
卒業と入学の行事を求め議論し「卒業記念祭」「入学を祝う会」の実施を決定しまし
た。職員会議においても決定されました。しかし、内田校長は生徒、保護者の意向を
全く無視し、独断で卒業式実施を決定しました。そして、3月9日多くのマスコミが
注目する中でわずか20名の参加の卒業式が行われ、ほぼ全員参加の「卒業記念祭」
が行われました。そして、18日に入学説明会が行われ、26日その発言を理由に竹
永先生が処分されました。これが大まかな経過です。
 私は、先ほど言った三者の話し合いなどで、県教育局がいわば間に立って、PTA
との関係改善の努力をして頂けると期待をしていました。しかし、そうではありませ
んでした。第1回の会では、校長と指導主事との打ち合わせで長いこと待たされた挙
げ句、校長と並んで私どもと対峙する形で臨もうとしました。「何のために来たのか
と」思わざるを得ませんでした。そして第2回目の会では、会の終わりに「卒業式を
行いますので保護者の協力をお願いします」と一方的に言い放ち席を立っていきまし
た。それ以外のいくつかの場面でも疑問に思うことが多くありました。行政の役割は
何であろうかということです。教育行政は子供たちの教育をどう豊かにして行くのか
ということが一番大事な役目と認識しています。子供たちや保護者の期待にどう答え
るかが問われているのだと思います。しかしその実態は、生徒・親それに対立する校
長、そしてその校長を後押しするのが教育局でありました。先生方は、その狭間で大
変苦労されていたのだと思います。その先生に対しこのような戒告処分がされる、そ
んな理不尽なことはありません。
 教育委員会の皆さん。竹永先生への処分行為は県高校教育の重大な汚点であります。
県民からの教育への信頼を取り戻すために、県教育行政の基本を子供たちの幸せを第
一義的に考えるという姿勢に今すぐ転換し、処分が間違いであったこと認め、処分を
撤回することを強く訴えます。そして、人事委員会の方々。事実をきちっと審議し早
急に処分無効の決定をされるよう望んで、私の意見陳述を終了します。

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