第1回口頭審理
意見陳述書
請求代理人 岩下豊彦
1998年10月6日(火)
意見陳述書
98.10.6 第1回公開口頭審理
申立人側代理人 岩下豊彦
私は、申立人側代理人の岩下と申します。申立人の竹永教諭と同じ1学年の担任を
しています。竹永さんが学年代表に選出された学年会以降、3月26日の処分まで、
本件に関わる全ての場に居合わせていますので、事実に基づいて、本件処分の不当性
について意見を述べたいと思います。
まず第1に主張したいことは、処分対象になった竹永さんの入学説明会での発言は、
新入生と父母の不安を解こうとしたもので、新1年生の学年団代表として、当然で正
当なものであるということです。しかも、その発言は、竹永さん個人としてのもので
はなく、学年会で集団的に討議・決定した内容を学年代表として話したものなのです。
3月18日の入学説明会で、冒頭校長は、予定した次第にないにも関わらず、突然
「入学式・入学を祝う会の案内」を配布しました。もちろん、その文書は私たち教職
員が初めて目にするものでした。しかも、そこに記された日程は、「入学を祝う会」
と入学後のHRを予定通り行うのが不可能な日程でした。さらに重要なことは、その
中に、「入学式の中で入学を許可します」という一文が入っていたことです。
かつて、入学式の案内状に、式に出なければ入学を許可しないと受け取れる恫喝的
文言が入っていたことなどあるでしょうか。校長の挨拶には、合格おめでとうの一言
もありませんでした。「入学式で入学を許可します」の校長の言葉には、会場からど
よめきが上がりました。高校生活への期待と不安を胸にした新入生とその保護者に対
する、これが校長の取るべき態度でしょうか。
これに対し、学年代表の竹永さんの発言は、実に道理あるものでした。自主自立の
校風について、卒業記念祭が実施されるまでの経過、「入学を祝う会」に対する生徒・
教職員の思いを語った上で、今後も校長と粘り強く話し合い、当日混乱がないよう努
力を続けると約束したのです。
校長の発言と竹永さんの発言のどちらに道理があったかは、説明会に出席していた
800名の新入生とその父母に聞けば明白です。校長は、自分自身の文書と説明によっ
て新入生と保護者に混乱を与えておきながら、それを竹永さんの責任にすり替え、事
故報告書を提出したのです。そして、その事故報告書を唯一の根拠として出されたの
が今回の処分なのです。こんな不公正は、絶対許されてはなりません。
説明会の最後に質疑応答が行われましたが、入学許可についての質問と校長の教育
姿勢をただす意見ばかりでした。しかし、どの質問に対しても、「入学式の中で入学
を許可します」と繰り返すのみで、この誠意のない回答に会場からは溜息が漏れまし
た。挙げ句の果てに、「いったいいつまで続けるつもりなのか。ここは入学許可候補
者の説明会であって、PTA総会でも生徒総会でもない。」などと発言し、会場は色
めき立ちました。入学前から、父母・生徒を敵視する内田校長。この一事をとっても、
校長として不適格であることは明らかです。
第2に主張したいことは、この処分が極めて意図的な処分であるということです。
そもそも、事故発覚の経緯なるものに不審な点があります。県教委に保護者から苦
情の電話があったというのですが、当日の保護者の反応は学年団に好意的であり、説
明会終了後も学年団への苦情などただの一件もありませんでした。いかにも不自然で
す。
また、処分に至るまでの日数が異様に短い点も指摘しなければなりません。3月
24日に県教委が処分の起案をしているのですから、休日を除けば説明会の後、中3
日しかありませんでした。
県教委は、3月20日・23日の二度にわたって来校しましたが、「竹永先生から
話を聞きたい。」というばかりで、何のために、何の話しを聞こうというのかは、遂
に明らかにしませんでした。「何のために話しを聞くのか。答えることも職務命令な
のか。」とただしましたが、「職務命令に理由はいらない。」というのが答えでした。
竹永さんは、「私としては話しをするつもりがあるので、聞いてほしい。」と伝え
ましたが、「周りの人たちがいるうちは聞けない。」との態度で、結局何一つ聞かず
に帰っていったのです。
竹永さんは、教育の中心にいつも生徒を置いています。生徒のためには、時間と労
力を惜しみません。さらに、校務分掌など、実に献身的に仕事をする人です。そうい
う人柄ですから、生徒はもちろん、父母からも職場の仲間からも厚い信頼を集めてい
ます。県教委は、よりにもよって、所高で最も信頼厚い教員を信用失墜行為として処
分したのです。こんな不条理は絶対許せません。
県教委が、所高の生徒自治を支える先頭に立っていた竹永さんを意図的に処分し、
さらに、この処分によって職場の教職員を分断し、生徒を主人公にした学校作りをす
すめる所高をつぶそうとしているのは明白です。
私たちは、この公開口頭審理の中で、竹永先生への処分の不当性を明らかにすると
ともに、県教委・校長の姿勢を問いたいと思います。学校の主人公を校長にしようと
する前近代的教育観は、国際的にも特異なもので、歴史に逆行しています。そうした
逆流に対し、竹永さんは勇気ある戦いを挑みました。
私たちには道理があります。そして、生徒を主人公にした学校を願う多くの高校生
がいて、父母がいて、県民がいます。人事委員会のみなさんの教育の条理に立った判
断を期待して意見陳述を終わります。
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