人権だより
子どもの権利条約について 2
発行日 1998年10月 日
発行 人権教育係
人権だより
子どもの権利条約について 2
1998・10月 所沢高校 人権係
1989年11月20日、第44回国連総会は、無投票、全会一致で「子どもの権
利に関する条約」(Convention on the Rights of the Child)を採択しました。
子どもの権利、とりわけ権利を行使する主人公として、子どもを見直すことを目指し
た「子どもの権利条約」について、国連事務次長(人権担当)J・マーテンソン氏は、
この条約の採択が「人間の諸権利を一層豊かにするうえで、国際社会にとってもっと
も値打ちのある成果だ」と述べています。この言葉は、この条約が子どもたちのため
に大人たちが贈った最善のプレゼントというようなものではなく、大人たちも子ども
の立場に立って、既成の大人たちの社会のあり方を見直してゆく起点にしたいと言っ
ているのではないでしょうか。ですから、子どもたちはもちろん、大人たちにとって
もとても重要な条約なのです。
国連が採択した後、各国はそれぞれ批准(=条約を国家として認め、最終的に確定
すること)してゆきました。9番目という、工業先進国では最も早く批准したスウェー
デンでは、この条約が年齢に応じて翻訳され、わかりやすい言葉でパンフレットが作
られ、どこの学校でも配られています。日本は158番目という遅さで1994年に
批准しましたが(現在、批准していない国はアメリカだけです)、この条約は日本で
はすでに守られているという理由で予算はつけられませんでした。ですから、パンフ
レットも国の予算では作られていません。あるのは、難しい日本政府の訳文だけです
から、なんだかよくわからない条約、と思ってしまうのも当然でしょう。
この難しい条約文を子どもたちにもわかるように、という願いで、アムネスティ・
インターナショナル日本支部は、翻訳・創作コンテストを行いました。この紙面では、
94年コンテストで最優秀賞を受賞した小口尚子さん、福岡鮎美さん(当時14歳・
中学2年生)の作品を、紙面の都合上抜粋して紹介します。なお、参考のため、裏面
の右欄には日本政府による訳文を併載します。
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子どもによる子どものための『子どもの権利条約』
(小口尚子・福岡鮎美 協力/アムネスティ・I・日本支部+谷川俊太郎)
まえおきのまえおき
今からぼくが話すことっていうのは、
みんないっしょに住んでいるこの地球で
ぼくら子どもが幸せにくらすために、
“こういうことができるといいね”
“こんなふうになればいいかな?”
と、大人たちがいっしょうけんめい考えた、
そして決めた、
国と国との約束。
「ぜーったい守んなきゃいけない、やぶったらろうや行きなっ」
ってことにはなんないけど、
みんながいつもにこにこしていられるようになるには、
きっとこれを守ることが大事になると思う。
今も守っている人もいるし、
ぼくらが大人になったときには、
ぼくらが守るばんだから、
今から知っておいてもいいと思うよ。
“まっすぐに生きるために”
少々むつかしいかもしれないけれど、それじゃ、話を始めよう。
ほんとのまえおき
■みんな仲良くするためには、どうしたらいいだろう?
どうしたらいいとおもう?
まず、相手が「いやだなあ」と思うことを
言ったりするのはやめようよ。
これ、大事だよ。
だって、そしたらみんな「いやだなあ」って思わないでしょ。
どんな人にも、“いいところ”と“わるいところ”がある。
だから、その人の“わるいところ”ばっかり見て、
「あの人はわるい人だ、自分のほうがいいや」なんて思うのは、
やめてほしい。
「あの人はわるいから」って悪口を言ったり、ばかにしたり、
いじめたりするのは、
もう絶対やめてほしい。
これがひとつめ。
あと、何だろう?
自分もほかの人も、同じように、
いろんな“やっていいこと”があるってのを覚えておかなきゃ。
たとえば、
「ばくらはサッカーをしてもいいけど、
あいつはやっちゃいけない」ってことは、
絶対ないことなんだ。
でも、その子がケガをしていて、走りまわるとひどくなるから、
っていうときとかは、
やめたほうがいいかもしれないんだけどさ。
それでも、「やる」「やらない」って決められるのは、
その子自身なんだから、ね。
これ、ふたつめ。
これくらいかなあ?きっとこれくらいだよね。
こうすればみんなと仲良くできる。
学校の中でも、地球に住む人全員でも、きっと。
■べつに肌の色がうすくってもこくってもその中間くらいでも、
髪の毛が金色でも茶色でも白でも灰色でも黒でも赤くても
ほかの色でも(あるいはなくっても)、
どんな顔でもどんな大きさでも、
男でも女でも(どっちでもない人も)、
どんな言葉を話していても、
どんな神様を信じていても(信じていなくても)、
どんな性格でもどんな考え方をしても、
お金持ちでも貧しくても、
どんな仕事をしていても、どんな家に生まれても、
さっき言った“やっていいこと”ってのは
みんな生まれつき同じなんだ。忘れないでね。
■だけどさ、ぼくら子どもってのは、
やっぱり大人にくらべれば弱いから、
もっといろんなことをしてもらったり、
もっといろんなものから護ってもらったり、していいんだよ。
そうしなきゃ大人にはかなわない。
子どもは大人の“めしつかい”じゃないんだから、
ある程度まではさからったっていいはずなのに、
もし、弱くてそれができないのなら、
ぼくらは結局、大人のめしつかいになってしまう。
いやだよ、そんなの。
(中略)
■話はもどるけど、
ぼくら子どもは弱いから、大人よりもっといろんなことをしてもらえたり、
あるいはいろんなものから護ってもらえる、と言ったね。
「それはどうして?」と思った人、いるんじゃないかな?
それは、
子どもは子どもで弱いけど、やっぱり“社会”をつくっている、
大事なひとりひとりだから。
そして、
もう10年から20年もたてば
今度はぼくらが大人になって、
地球で生きていくばんだから。
そのときもみんなで仲良くくらしたいから、
今から“仲良くできる方法”を覚えておこう。
すこしずつ。
すこしずつ。
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Convention on the Rights of the Child
子どもの権利条約(正文・英語)
PREAMBLE
The States Parties to the present Convention,
Considering that in accordance with the principles proclaimed in the
Charter of the United Nations, recognition of the inherent dignity and of
the equal and inalienable rights of all members of the human family is the
foundation of freedom, justice and peace in the world,
Bearing in mind that the people of the United Nations have, in the Charter,
reaffirmed their faith in fundamental human rights and in the dignity and
worth of the human person, and have determind to promote social progrees
and better standares of life in larger freedom,
Recognizing that the United Nation has, in the Universal Declarations of
Human Rights and in the International Covenants on Human Rights, proclaimed
and agreed that everyone is entitled to all the rights and freedoms set
forth therein, without distinction of any kind, such as race, colour, sex,
language, religion, political or other opinion, national or social origin,
property, birth or other status,
Recalling that, in the Universal Declaration of Human Rights, the United
Nations has proclaimed that childhood is entitled to special care and
assistance,
Convinced that the family, as the fundamental group of society and the
natural environment for the growth and well-being of all its members and
particularly children, should be afforded the necessary protection and
assistance so that it can fully assume its responsibilities within the
community,
Recognizing that the child, for the full and harmonious development of his
or her personality, should grow up in a family environment,in an atmosphere
of happiness, love and understanding,
Considering that the child should be fully prepared to live an individual
life in society, and brought up in the spirit of the ideals proclaimed in
the Charter of the United Nations, and in particular in the spirit of
peace, dignity, tolerance, freedom, equality and solidarity,
Bearing in mind that the need to extend particular care to the child has
been stated in the Geneva Declaration of the Rights of the Child of 1924
and in the Declaration of the Rights of the Child adopted by the General
Assembly on 20 November l959 and recognized in the Universal Declaration of
Human Rights, in the International Covenant on Civil and Political Rights
(in particular in articles 23 and 24),in the International Covenant on
Economic, Social and Cultural Rights (in particular in its article 10) and
in the statutes and relevant instruments of specialized agencies and
international organizations concerned with the welfare of children,
Bearing in mind that,as indicated in the Declaration of the Rights of the
Child,"the child, by reason of his physical and mental immaturity, needs
special safeguards and care, including appropriate legal protection,before
as well as after birth",
Recalling the provisions of the Declaration on Social and Legal Principles
relating to the Protection and Welfare of Children, with Special Reference
to Foster Placement and Adoption Nationally and Internationally ; the
United Nations Standard Minimum Rules for the Administration of Juvenile
Justice (The Beijing Rules) ; and the Declaration on the Protection of
Women and Children in Emergency and Armed Conflict,
Recognizing that, in all countries in the world, there are children living
in exceptionally difficult conditions, and that such children need special
consideration,
Taking due account of the importance of the traditions and cultural values
of each people for the protection and harmonious development of the child,
Recognizing the importance of international co-operation for improving the
living conditions of children in every country, in particular in the
developing countries,
Have agreed as follows:
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児童の権利に関する条約
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児童の権利に関する条約
1989年11月20日国連採択 1994年5月22日発効
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前文
この条約の締約国は、国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会の
すべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界にお
ける自由、正義及び平和の基礎を成すものであることを考慮し、
国際連合加盟国の国民が、国際連合憲章において、基本的人権並びに人間の尊厳及
び価値に関する信念を改めて確認し、かつ、一層大きな自由の中で社会的進歩及び生
活水準の向上を促進することを決意したことに留意し、
国際連合が、世界人権宣及び人権に関する国際規約において、すべての人は人種、
皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、
財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしに同宣言及び同規約に掲げるす
べての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
国際連合が、世界人権宣言において、児童は特別な保護及び援助についての権利を
享有することができることを宣明したことを想起し、
家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員特に児童の成長
及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けること
児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛
情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、
児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、
かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神並びに特に平和、尊厳、寛容、自
由、平等及び連帯の精神に従って育てられるべきであることを考慮し、
児童に対して特別な保護を与えることの必要性が、千九百二十四年の児童の権利に
関するジュネーヴ宣言及び千九百五十九年十一月二十日に国際連合総会で採択された
児童の権利に関する宣言において述べられており、また、世界人権宣言、市民的及び
政治的権利に関する国際規約(特に第二十三条及び第二十四条)、経済的、社会的及
び文化的権利に関する国際規約(特に第十条)並びに児童の福祉に関係する専門機関
及び国際機関の規程及び関係文書において認められていることに留意し、
児童の権利に関する宣言において示されているとおり「児童は、身体的及び精神的
に未熟であるため、その出生の前後において、適当な法的保護を含む特別な保護及び
世話を必要とする。」ことに留意し、
国内の又は国際的な里親委託及び養子縁組を特に考慮した児童の保護及び福祉につ
いての社会的及び法的な原則に関する宣言、少年司法の運用のための国際連合最低基
準規則(北京規則)及び緊急事態及び武力紛争における女子及び児童の保護に関する
宣言の規定を想起し、
極めて困難な条件の下で生活している児童が世界のすべての国に存在すること、ま
た、このような児童が特別の配慮を必要としていることを認め、
児童の保護及び調和のとれた発達のために各人民の伝統及び文化的価値が有する重
要性を十分に考慮し、
あらゆる国特に開発途上国における児童の生活条件を改善するために国際協力が重
要であることを認めて、
次のとおり協定した。
(日本政府・訳)
(Web管理者記)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アムネスティ・インターナショナル日本支部については、website をご覧ください。
[正文・英語]/[日本政府訳]/[民間訳]については、セーブ・ザ・チルドレ
ン・ジャパン(SCJ)の website にあります。
尚、小口尚子さん・福岡鮎美さんの翻訳文「子どもによる子どものための『子ども
の権利条約』」は、小学館から出版されています。
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子どもによる子どものための「子どもの権利条約」
まっすぐに生きるために、大人に対して、ぼくは言う。アムネスティ日本支部主催の
子どもの権利条約翻訳・創作コンテスト最優秀賞受賞作を美しいカラー動物写真とと
もに収録。協力・アムネスティ/谷川俊太郎。
小学館。1,428円。子どもの権利条約
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