埼玉県議会

文教委員会

1998年8月3日(月) 傍聴記録

※文教委員会を傍聴した人からその記録を入手しましたので、本人の同意を得て掲載
します。
 尚、発言した議員の後の《議員氏名(所属会派)》は Web管理者が付け加えました。

■ 埼玉県議会・文教委員会(所沢高校問題) 傍聴記録  8月3日、埼玉県議会の文教委員会の傍聴に行ってきました。午前10時の開会を 前に、PTA関係者6名に組合関係者を含め、18名が傍聴を申請しました。当初、 傍聴席は5名程度しかないと言われていたのですが、全員の傍聴が認められました。 予定より少し遅れて、10時半過ぎに委員会室に入室しました。委員会室は予想した より広く、数十名の役人たちがびっしりと席に着いていました。午前中は、条例改正 案や請願に関する審議に費やし、午後、請願に関する続きの審議を終え、予定された 議事が終了した段階で、所沢高校問題について意見交換をしたいという動議が出され、 議論が始まりました。その後約1時間、この問題で議論されました。  ここであらかじめ経過を説明しておきます。卒業・入学をめぐる一連の出来事を受 けて開会された4月議会における文教委員会(4月23日)で、自民党など保守系議 員から所沢高校に対する非難が加えられ、「視察」を行なったうえで教育委員会に意 見書を出すべしとの主張がありました。そして、7月13日、文教委員会メンバーが 所沢高校に「視察」に訪れ、校長、教職員、PTAの三者から意見聴取をしました。 7月末の県議会を前に、文教委員長は、委員会としての見解をまとめて教育委員会に 「具申」を行ないたいという意向を表明していました(7.27付『埼玉新聞』)。議会 が始まると、本会議の一般質問で3人の自民党議員(宮澤博・武笠勇・大石忠之)か ら所沢高校問題に関して、次のような質問・意見が出されていました(この一部は、 新聞で報道されています)。  (1) 入学式、卒業式において「国旗・国歌」を完全実施すべきである。  (2) 生徒会は学習指導要領の範囲で行なわれるべきである。  (3) 校長を最高責任者とする学校運営を構築すべきだ。  (4) 教員が法令や学習指導要領に反した行動をした場合は、厳しく対応すべきであ   る。  (5) 埼玉県は東京都のように校長の権限強化に向けて規則を改正する意思があるか。  (6) 自分たちの主義・主張のみを繰り返し、義務や責任をないがしろにする若者の   風潮にどう対応していくのか。  (7) 国旗や国歌への理解は国際人としての基本的マナーであるが、これをどう指導   していくのか。  (8) 所沢高校の正常化のためには、人事異動方針の同一校10年という条件を取り   払い、教員の総入れ替えをするような思い切った人事異動を断行する必要がある。  つまり、本会議において、日の丸・君が代の完全実施、校長の権限強化、生徒会活 動への抑制、教員人事異動の思い切った断行、などをぶちあげた上での委員会審議と いうことでしたから、その成り行きが注目されたというわけです。  結論から先にいえば、自民党筋はこのような「具申」を断念せざるをえませんでし た。しっかりした反論もありましたし、委員数を上回る18人の傍聴者もいる中では、 あまり非常識な発言はできなかったのかもしれません。無論、まだまだ予断は許せま せんので、今後ともしっかりと監視していく必要があると思います。  前置きが長くなりました。文教委員会における審議のあらましは、次の通りです。 ちなみに発言者の所属会派は、石渡勲(委員長・自民)、長峰宏芳(自民)、田中千 裕(自民)、熊野巌(公明)、岡真智子(社民)、河村勝子(共産)、近藤義則(フ ロンティア)となっています。 ************************************** ●長峰議員:《長峰宏芳(自民)》   7月13日に所沢高校に視察に行き、関係者の意見を聞いたが、この際意見交換  をしたらどうか。 ●委員長:《石渡勲(委員長・自民)》   議題にしたいと思うが、異議はないか。それでは発言を求める。 ●長峰委員:《長峰宏芳(自民)》   (1) 学習指導要領、学校管理規則の意味を改めて説明して欲しい。   (2) 7月16日に校長と生徒の話し合いがあったというが、どんな内容だったか。   (3) その後はどうなっているか。 ○高校教育課長:   (1) 学習指導要領は学校教育法57条に基づき、高校の学習内容の基準を定めた    もので、最高裁判決でも合憲とされている。   (2) 校長が入学式を強行したことに対し、生徒から抗議があったとのこと。また    校長は、入学式を欠席した生徒に対し、これからしっかりやって欲しいと言い、    入学式・卒業式を実施することの意義を説明、さらに今後も話し合いをもちた    いと言ったようだ。   (3) 校長は普段でも毎朝校門に立って生徒に挨拶をしており、終業式の時にも卒    業式は全員参加でやれるようにしたい、儀式の意義を理解してほしいというこ    とを言った、  と聞いている。 ●田中委員:《田中千裕(自民)》   (1) 7月13日の視察でいろいろ話を聞いたが、校長が学習指導要領に基づいて    やったことが問題になっているのはおかしい。内田校長が来る前はどのように    やっていたのか。   (2) 今後も同じような混乱が起こるかも知れない。話し合いの接点があるのか。    県としてはどうするつもりか。 ○高校教育課長:   (1) それ以前は、国旗は会場ではなく玄関に掲揚していたが、国歌斉唱はできな    いでいた。もちろん校長は完全実施をしたいと考えていたが、理解が得られず    実施できずにいた。そういういきさつをふまえて、内田校長は実施した。   (2) 県は校長を指導する立場にあるので、学校責任者として年度始めにきちんと    教員に理解させるようアドバイスした。4月終わりから5月にかけて議論し、    学校要覧の年間行事計画に「卒業式」「卒業記念祭」の両方を記載した。今後    とも違う意見の教員・生徒がいれば話し合っていく。校長としては個人の意見    でやっているのではなく、あくまで法令に基づいてやっていることを理解させ    ていく。 ●熊野委員:《熊野巌(公明)》   生徒・PTA・教職員の考えを聞いていると、校長と全く違う。PTAの話は説  得力があり、所沢高校の入って子どもが良くなったと言っていた。問題は校長と組  合の信頼関係がないことにあるようだ。あそこまで行ってしまって、元通りに修復  できるかどうか心配。これから後、校長が代わっても、教職員や生徒が残っている  限り修復はできないのではないか。校長は教職員を指導する立場であって命令はで  きないだろう。校長は孤立無援状態。県はバックアップすると言うが、うまくいく  のか。向こうは数が多いから負けてしまう。 ○教育長:   なんとしてもうまくいかさなくてはいけない。校長は教職員に命令監督できる。  ただ100年の歴史のある学校なので、そう簡単には行かない。 ●岡 議員:《岡真智子(社民)》   3者の話を聞いたが、保護者と教員は一致している。子どもが自分の意見をきちっ  と言える、学校が楽しいと言っていること、先生が生徒をねばり強く指導している  ことなどがよくわかった。所沢高校が他校と違うのは、それに費やしてきた歴史が  長いこと。今経済界が求めているような人物を育てる教育をやっていると言える。  私は視察には反対だった。それは県議会が圧力をかけるようにみられると心配した  からだ。しかし行ってみて、子供たちは落ち着いているし、いい学校だと思った。  校長は、日の丸・君が代を入れようとするあまり、じっくり話し合いをしないで、  これまでのルールを破ってしまったことに原因があるのではないか。日の丸・君が  代には賛成者もいるはずだが、これまでのやり方を一方的に破ってしまったことが  問題だった。一般質問の内容も気になった。教員を異動させよという意見もあった  が、今は校内のルールが問題になっているのに、教育委員会が何かして新しい問題  を起こしたらそれこそ問題だ。 ○高校教育課長:   一般質問での意見も受け止めながら、ルールを定めて努力していきたい。 ●河村議員:《河村勝子(共産)》   一般質問の中で気になる発言があったので、聞きたい。   (1) 学習指導要領に則ってというが、教育の場が中立でなければならないという    原則からいえば、日の丸・君が代を押しつけることこそ問題ではないか。   (2) 生徒会活動は教職員の指導の下に行なわれており、その活動内容に何か問題    があるのか。   (3) 職員会議における校長の権限強化を図れというが、県の学校管理規則で決まっ    ていること以上に、校長の権限を強化するつもりなのか。   (4) 教職員の人事をいじって「正常化」を図れというが、先生方は何か不正常な    ことをやったのか。視察に行ったときも、先生方の努力がよくわかった。その    先生方をどうしようというのか。 ○教育長:   (1) 国際社会で信頼されるような人間になるためには、学習指導要領に則った指    導が必要。これを押しつけとは考えない。   (2) 生徒会活動は大事だが、それも校長なり教師の指導のもとでやられるべきも    の。   (3) 職員会議は校長の諮問機関となっている。これに従ってやるべきと考える。   (4) 入学説明会で校長と全く違うことを言った。これに類することがあれば、処    分するということだ。 ●河村議員:《河村勝子(共産)》   (1) 処分の話が出たが、本人に事情を聞いた上での処分だったのか。また処分す    るだけの内容だったのか。   (2) 学校の最終責任者が校長であるといっても、県の管理規則には「職員の意見    を十分に尊重する」と書いてある。この点に問題はなかったのか。   (3) 生徒会の自治について「逸脱してはいけない」という意見があるが、果たし    て逸脱していることがあるのか。 ○高校教育課長:   (1) 本人からの事情聴取は、しなかったのではなくできなかった。現在人事委員    会で審理中。   (2) 「職員の意見を尊重する」となっているが、しかし最終的には校長の責任に    おいて決定する。   (3) 生徒会活動は学習指導要領の特別活動の領域であり、学校の指導の下で実施    されるもの。高校では「自治」とは言わず、「自治的」活動と言い、これも勉    強の一環。そこから超えていると心配する面もある。かつての日の丸・君が代    に関する決議文は、学習指導要領を超えているのではないかと考えている。 ●河村議員:《河村勝子(共産)》   (1) 日の丸・君が代に関する決議文は、毎年の生徒会総会で図られ再確認され、    職員会議でも承認されていると聞いている。子供たちが自主的に討議し決定し    たことに対して、困ったことだと考えているのか。   (2) 処分について事情聴取ができなかったというが、そういう中でなぜ処分した    のか。 ○高校教育課長:   (1) 日の丸・君が代に関する決議文は平成2年度生徒総会で決まったが、それが    毎年確認されているとは聞いていない。時たま話題になる程度と聞いている。    それに則って生徒会活動がやられているとすると問題になる。   (2) 職員の処分については、緊急性のある問題については早くやることが必要だ    と考えている。 ●近藤委員:《近藤義則(フロンティア)》   職員会議の法的位置づけについて聞きたい。校長の諮問機関であるなら、校長が  諮問したことについてやられるはず。所沢高校では、校長の意向で職員会議がやら  れているのか。例えば、校長の罷免を求める決議をやったというが、そういうこと  は決められるのか。またその決議の効力はどうなのか。 ○高校教育課長:   所沢高校では、校長が「自分は諮問していない」と明言し、退室したこともある  と聞いている。当然ながら、校長が諮問していないことが決定されても、それは無  効である。 ●近藤議員:《近藤義則(フロンティア)》   そうすると、生徒総会で決定し、職員会議で決定したことだから、それが学校の  総意だと言って、校長にそれを聞けと言っていることになるのか。 ○高校教育課長:   そのとおり。 ●岡 議員:《岡真智子(社民)》   なぜ日の丸・君が代を学習指導要領に載せて指導するのかということについて、  生徒たちはいろいろ考え、また先生方の総意としてもこれを強制するやり方につい  ては反対している。本当に生徒たちに日の丸・君が代を教育しようとしているのか。  それを抜きに校長権限を強化しようとすることが問題。学校によっては日の丸・君  が代をやるところがあってもいいし、いろいろ議論し続けるところがあってもいい  と思う。そもそも、なぜ日の丸・君が代を強制するのか、それが国を愛することに  なるのかといったことについて、結論はともかく、その過程が大切になる。一人ひ  とりの教育像、今どんな子どもを育てるのかといったことを抜きにしてはいけない。 ○指導部長:   学習指導要領により押しつけるというが、国歌「君が代」は行なうようにとなっ  ている。法令に基づいてやっている。 ●岡 議員:《岡真智子(社民)》   教育目標を達成するには、いろいろな手段を用い、時間をかける必要がある。  「待つ」「育てる」ということが大事。事を急がないで、もっと待ってあげられな  いのか。 ○指導部長:   現在の学習指導要領は平成2年度から実施されている。他の学校ではほとんど実  施されている。この学校だけがやっていない状況になったので、強行とか押しつけ  にはならないと判断してやったのだと思う。 ●岡 議員:《岡真智子(社民)》   しばらく待ってあげたらどうか。 ●長峰委員:《長峰宏芳(自民)》   職員会議について、県の学校管理規則では「校長が召集し」とあるが、校長が召  集しないで開かれたことはあるのか。 ○高校教育課長:   一般的には、教員が順番制で議長や書記などをきめて議長団を務めるかたちが多  い。埼玉県では隔週の木曜日に行なわれているが、校長が召集といっても、一般的  には教頭が各種委員会などから議題を確認し、校長に図って開くというかたちが多  い。先ほど、校長が退席したことがあるといったのは、校長罷免要求決議の時で、  所沢高校でも普通は校長が召集している。 ●委員長:《石渡勲(委員長・自民)》   以上で、所沢高校問題について終了する。 (午後2時35分)
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