日の丸・君が代問題への意見表明文
発行日 1997年2月 日
発行 卒業準備委員会
日の丸・君が代問題への意見表明文
私達は、生徒自らが話し合いのうちに重要な学校行事を計画し、実行していける所
沢高校で生活できることを非常に貴重な事とみなしている。所沢高校を含め「学校」
は生徒のために存在する教育機関である。ゆえに、学校における行事も、すべて生徒
の最善の益を図った上で行われるべきであり、その主役は生徒である。入学式、卒業
式も決して例外ではなく、生徒が主役となって展開される重要な文化活動であること
を、ここに確認する。よって、私達は、卒業式においても、所高生一人一人の意志が
十分尊重される事を期待し、不当な強制と抑圧によって生徒の人権が脅かされる事が
ないよう、強く求める。
学校をあげて生徒の門出を祝う「卒業式」には単に「卒業証書授与」以上の意味が
ある。すなわち、卒業生にとっては、3年間を振り返ることで自己をとらえ直し、高
校生活に決別し、新しい出発への決意を抱ける式でなければならない。私達は、将来
卒業式を思い出した時に、心から所沢高校の卒業生であることを誇りに思えるような
行事を目指している。1、2年生にとっては、卒業式は、卒業生を感謝をこめて送り
出すと同時に、自分自身にとっての高校生活とは何かを再び考え、有意義な学校生活
を送る助けとできるものであるべきである。
1989年3月15日に改定され1990年4月から実施された文部省の学部旨導
要領では、入学式と卒業式で日の丸掲揚と君が代斉唱を行うよう強く学校に求めてい
る。日の丸・君が代に関する各人の考え方は様々であり、それらは私達に思想の自由
がある限り侵害されない。しかし、私達が求める「生徒が主役であり、生徒のために
行われる卒業式」の場で、日の丸掲揚と君が代斉唱を強制的に行うことに対して、私
達は断固として反対する。この生徒の反対姿勢は、以前所高生の運動で作られた「日
の丸、君が代に関する決議文」中にも明記されている上、毎年の生徒総会では必ず、
生徒会活動方針の議案により、所高生の意志としてこの決議文を尊重して活動するこ
とが承認されているにもかかわらず、日の丸・君が代を行うかという問題が起こった
事に、私達は強い不満を覚える。ここに、再度生徒としての意志を表すのは、私達所
高生が1990年11月の生徒総会で制定した生徒会権利章典を論拠としている。
<生徒会権利章典>
1.学校は生徒と教職員によって構成されており、その構成員一人一人の個性は
認められ一人一人の主張は尊重される。
2.生活向上のための自治的かつ民主的な活動の自由は保障される。
生徒会権利章典は、所高生が自らの権利の価値を認識し、再確認したことを生徒の
立場で形にしたものである。生徒の自由を守るための権利章典の精神を学校生活に生
かし、次の世代に受け継いでいくのは特に重要なことであり、それゆえに、私達は日
の丸、君が代に関する生徒の主張が尊重されることを要望する。
さらに、法的根拠としては次のようなものがある。
<子どもの権利条約>:日本は1994生5月批准(第14条)
1 諦約国は、子どもの思想、良心および宗教の自由への権利を尊重する。
2 締約国は、親および適当な場合には法的保護者は、子どもが自己の権利を行
使するにあたって、子どもの能力の発達と一致する方法で子どもに指示を与え
る権利および義務を尊重する。
3 (略)
日の丸掲揚、君が代斉唱の強制は、明らかに本条の1、2項に違反する。
<日本国憲法>
第19条[思想および良心の自由]思想および良心の自由は、これを侵してはなら
ない。
憲法によっても、日の丸掲揚、君が代斉唱の強制はできないことが定められている。
例えば、卒業式などにおいて、「一同起立、国歌斉唱」と促すことは実質的に命令で
あり、私達の良心の自由をも侵したことになると考える。
私達は、自分たちの自由と権利を生徒が熱心に守っていこうとする所沢高校の伝統
を大切にしたい。その所沢高校で学び、自主的に行動した経験を基礎として、誰から
も尊敬され信頼を得ることのできる人間性を身に付けたいと願う。そのために、学校
という教育の場で、子どもをターゲットにして日の丸掲揚、君が代斉唱を強制する必
要は全くない。そして、「子どもの権利条約」という国際条約を日本も批准している
にも関わらず、条約の精神に反した思想の押しつけを行うならば、国際社会での信頼
を築くことはできないと考える。また、私達は、日の丸・君が代が戦前の日本の軍国
主義の象徴であって、現在も日の丸・君が代に対し激しい嫌悪感を感じる人々が、ア
ジア人をはじめ多く存在することを知った。彼らの心情に全く理解を示さない行為は、
相互理解に基づく国際的な信頼関係を目指しているものとはとても言えないのである。
私達は以上の理由によって、所沢高校の主投である所高生の立場から、卒業式を含
む学校教育の場における日の丸掲揚、君が代斉唱の強制に反対し、意見の表明とする。
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