バーバラ・リーさん日本講演会に参加して


ピース・ニュースでも事前に紹介しました、8月2日のバーバラ・リー議員日本講演会を聞いてきましたので、当夜の様子を、感想を含めて簡単に報告します。

講演は選挙区の紹介から始まりました。彼女が住んでいるのはカリフォルニア州のオークランド (Oakland)。選挙区はこのオークランド市と北側のバークレイ市 (Barkley) など6自治体で、60万人の人口だそうです。

 下院議員の前は、カリフォルニア州議会(California State Assembly)議員を6年(1990-1996)、州上院( California State Senate) 議員を2年(1996-1998)経験。1998年から下院議員。米国の下院議員は任期が2年だそうですから、現在2期目、もうすぐ中間選挙を控えての来日ということになります。今回が初の来日だそうです。

選挙区の特徴として、貧富の差はかなりあるということですが、アメリカの中でも伝統的にリベラルな地域、平和(運動)のセンターでもあるという地域だそうです。9.11テロ後の彼女の主張に対しても選挙区の多くの人たちが支持してくれたそうです。

最初にマハトマ・ガンジーとキング牧師 (Martin Luther King Jr.) の言葉を引用。キング牧師の言葉はたびたび出てきたので、やはり彼女自身、公民権運動の流れを受け継いでいると思われます。ちなみに彼女は黒人(アフリカ系アメリカ人)です。以下、講演内容をかいつまんで紹介します。

■報復攻撃決議に対して一人反対票を投じたことについて
この決議は大統領に戦争を行う権限を与えるもので、合衆国憲法では議会だけに戦争行使の決定権があり、賛成できない。(反対が一人だったことについては)民主主義は質問と議論、自由な意見の交換で成り立つのです。これこそがアメリカのやり方なのです。テロの犯人を法で裁くことは必要だが、だからといって(報復戦争で)多くの人を攻撃することは許せません。

■平和を創るための持続的な運動が必要
多面的 ( multi dimensional ) な努力が必要です。米の一方的な行動は同盟国に受け入れられません。
キング牧師は「平和とは単に緊張がないということではなく、正義が行われているということである」といっています。
"Business Leaders for Sensibilities" というグループが政治のひずみを指摘しています。たとえば、アメリカの軍事予算は世界1位だが、教育に関しては10位でしかないこと。2003年度予算の軍事費が4000億ドルもあるのに対し、国際関係の予算は240億ドルしかないことなどです。

米の一方的な軍事行動はテロと闘うことになりません。たとえばHIVの問題、地球温暖化などの環境問題、兵器の拡散防止などに取り組むべきです。ABM条約を維持し、兵器の撤廃に向けて行動をすべきです。ミサイルディフェンス(MD)は何十億ドルもの費用がかかり、また新たな軍拡競争をもたらすことになります。生物・化学兵器禁止に向けた行動にも加担すべきです。
一国主義でなくて多国主義が問題を解決します。平和のための世界的な運動を創ることが必要です。また、市民運動など、草の根の力とともに闘うことが必要です。

 以上がバーバラ・リー議員の講演内容です。事前にスピーチは短いと聞いていたのですが、終わってみたら1時間を超す長さでした。通訳が入るからどうしても長くなるのですが、それでも目いっぱい、言うべきことを言ったという感じでした。講演の後は落合恵子さんとの対談でしたが、時間が少なかったことと、あまり日本の問題には触れないようにしていたのか、内容的には突っ込んだものではありませんでした。それでも、彼女自身が産まれるときに母親がなかなか病院に入れてもらえなかったエピソードで、人種差別のことに触れるなど、リー議員の原点に少し触れることができたように感じました。
 それにしても、あのアメリカの、しかも国会議員の講演とは思えない内容で、救われた気がしました。一人で反対票というとかなり絶望的に聞こえるのですが、少なくも彼女を支持する選挙区の人々が存在することを考えれば、まだまだ反戦平和運動もがんばれるということではないでしょうか。
(M 2002.8.10)

*バーバラ・リー ( Barbara Lee) 議員のHPは http://www.house.gov/lee/index.htm 



 リー議員は当初の予定をはるかに超えて1時間以上講演を行った。リー議員のベースは黒人解放、公民権運動にあるようだ。M.R.キングの言葉が何回も出てくる。自らをアフリカ系アメリカ人としてルーツを問題にした。またアメリカ西海岸ベイエリアのバークレーを中心とした反戦・平和・環境などリベラルな土地柄を反映した運動をバックにしている。このことを彼女は誇りを持って訴えていたように思う。

 ブッシュのMD推進やABM離脱をも批判した。軍拡予算の拡大の一方での米国内の階級格差の拡大や福祉の切り捨てなども問題にした。(当然のことかもしれないが)表面的な運動やリベラルではなく、きちんとした平和運動・軍縮の視点、そればかりか米国内における貧富の格差の問題や環境問題、人種差別問題等々、さまざまな問題と平和の問題がしっかりつながった見解を持ち運動をしていることの一端が良く分かった。

どうやって無関心層を意識改革するのかという質問に対して躊躇なく"HARD WARK,HARD WARK(とにかく一生懸命やること)"、"ORGANAIZE,ORGANAIZE,ORGANAIZE!(組織化)"と述べたことは非常に印象的であった。
(A)