米国内でのブッシュ政権批判の勢いは急速に拡大しています。 ここに紹介するのはニューヨーク・タイムズ7月31日付け社説です。 N.Y.タイムズの姿勢はイラクを米兵が殺される「射撃場」と例えているように、 侵略され、多数の市民が殺戮されているイラク民衆の立場は全く念頭にありません。 しかし、そのような立場からさえ、このイラク侵略と占領が何の大儀もないこと、アメリカの安全保障にも国内の諸矛盾の解決に何も役立たないことを述べ、ブッシュとその取り巻きのネオコンを痛烈に批判しています。 |
Dying in Iraq イラクでの戦死 By BOB HERBERT ボブ・ハーバート The New York Times 社説 7月31日 http://www.nytimes.com/2003/07/31/opinion/31HERB.html?ex=1060657977&ei=1&en=d4a2a89360aed9d6より翻訳 ピース・ニュース |
イラクと呼ばれる射撃場に私たちが送っているのは良い子供たちだ。ブッシュ、ラムズフェルド、ベクテル、ハリバートンのような連中と同じ確信を持っているのでなければ、それぞれの死は悲惨な浪費で、この闘争はベトナム戦争と同じようにバカで無駄な任務だというむかつくような感情が高まることになるだけだ。
ワシントンのリーダたちのペテンと偽善者ぶりにもかかわらず、そしてイラクの地上のひどい状態にもかかわらず、若い男女の兵士は勇敢に戦っている。それゆえ、ジョージ・パタキ州知事は今週の初め、いやいやながらもニューヨークの北、クリフトンスプリングス出身の29歳の州兵、ヒース・マクミラン軍曹に対して黙祷を捧げることを求めたのだった。
マクミラン軍曹は彼の部隊が南バグダッドでパトロール中に攻撃され殺された。週末に、ニューヨークタイムズはポートランド出身の21歳の海兵隊員トラビス・J・ブラダックナールの強い絆で結びついた家族の記事を載せた。彼は7月1日イラク中南部で地雷除去中に死亡した。海兵隊兵長の彼は刺青が好きで、お気に入りの映画は「ゴースト・バスターズ」であった。記事には彼の弟と3人のいとこが思い出の「ゴーストバスターズ」の刺青をしているところを見せている写真が載っていた。
なぜ兵士達は死ぬのか?
合衆国は2001年9月11日に攻撃された。しかしオサマ・ビン・ラディンとアルカイダを追い詰めて破滅させるための全ての可能な手段をとる代わりに、ブッシュ政権はサダム・フセインを放逐し、イラクを乗っ取ることに取り付かれ始めた。なんとも奇妙な優先順序が決められたものである。
連邦政府は今週、米国内あるいは海外におけるハイジャックの可能性を含む、アルカイダによるアメリカ人に対する新たなテロ攻撃の警告を発した。ブッシュ大統領は昨日、「我々は諸外国政府と航空会社にたいし脅威は本当のものだと説明している」と語った。
しかし大統領がこのような話をしているというのに、安全輸送行政局は金を節約するために航空指令官の計画を削減しようとしているという話が聞こえてきていたのである。イラクでの戦争は、毎月何十億ドルもの資金がかかり、大統領の減税は非常に大きくなってしまっているので次の世代に暗い影を落としている。しかしアメリカの航空路線の乗客を保護するための計画に充分な予算を投入することができないのである。
「予算が割り当てられている項目よりももっと優先度の高いものがある場合にはもっとも緊急度の高いものに取り組むことが出来るようにしなければならない」と安全局のスポークスマンは語った。
ブッシュ政権の威信はメルトダウンしたに等しい。ホワイトハウスは、戦争のコストについても、本当に必要な軍隊の数についても、イラク再建のための白紙委任状を与えられた政治的にコネのある企業に集中した納税者の金の量についても、アメリカ国民と腹を割って話そうとはしない。
ブッシュの仲間が喜んで、サダムフセインが9月11日の攻撃に何らかの形で関係していたと大衆を信じさせている限りは、サウジとアルカイダ間の本当のつながりは明らかにならないだろう。そして幻の大量破壊兵器は決して戦争の本当の理由ではなく、単なる口実にすぎなかったということを、政権からは聞くことができないだろう。本当の狙いはイラクに軍事的足場を確立することであり、中東を作り直し、イラクのワクワクするような油田の支配権を握ることにあったのだ。
現時点でイラクに平和を保障する実行可能な計画はなく、退去する戦略もない。アルカイダとアルカイダがアメリカ人の安全保障に対して及ぼしている真の脅威を破壊しようとする現実的なプランは何もない。(同様に、本国においても、経済を動かし、数百万人のアメリカの失業者に職をあたえる計画もない)。
イラクは58,000人以上が死んだベトナムではない。しかし人を欺くリーダ達が国を操縦し悲劇的な状態に追い込んだという点では、まさにベトナムのようだといえる。この悲劇的な状態をアメリカ国民が長く支持することはまずないだろう。
ブッシュとラムズフェルドにとっては、これは、航空母艦エイブラハム・リンカーンの甲板上での大統領の「トップ・ガン」の瞬間のような、記者会見でのポーズと素晴らしいシャッターチャンス付きの雄大な帝国の冒険であう。
射撃場に追いやられた若者にとっては、決して適切には説明されたことのない闘争での生死を賭けた恐ろしい訓練なのである。