■ピース・ニュースではアメリカの平和運動の高揚について、既に紹介しました。
■新年早々、アメリカの COMON DREAMSに、より詳細にアメリカの反戦運動の高揚を伝える記事が紹介されました。個々の記述や評価では疑問点もありますが、アメリカの多面的な運動の高揚の実態が良く分かります。
■米の運動に連帯して、世界中でブッシュ政権のイラク侵略戦争反対の運動を強化することがますます重要になっています。それを再確認するために、そして日本での運動強化のために急遽訳出しました。

無数の平和運動が花開く
エスター・カプラン
2003年1月3日付けネーション紙記事


A Hundred Peace Movements Bloom
by Esther Kaplan

Published in the January 3, 2003 issue of The Nation
http://www.commondreams.org/views02/1220-01.htm
見出しはピース・ニュース


強さは単一性にあるのでなく、その多様性に

 ブッシュ政権の対イラク戦争計画は、サダム・フセインほど憎むのがたやすい敵と戦う場合でさえ、アメリカの大衆の中の「不安の巨大な貯水池」を目覚めさせてしまったのです、とピース・アクションのスポークスマン、スコット・リンチは述べている。
ブッシュ政権のこの秋の弱い者いじめと言えるほどの戦争への邁進や、先制攻撃と体制転換についてのあからさまな議論、エネルギーと石油に関する明白に企業を代弁する議論、国連は言うまでもなく議会での承認もなしに早期に傲慢な戦争を行おうとしたことなどが、国中の戦争反対の感情と行動の奔流を解き放ったのである。
 この戦争反対の完全な広がりは、アメリカの歴史において最も巨大な戦争反対運動を生み出す助けになるかもしれない。すなわち、もしもこの政治的には雑多な戦争反対の噴出がひとつの運動に結合することになれば。
 今までのところ、この反対運動の強さは確かにその単一性にあるのではなく多様性にある。たとえば11月末のニューヨークでの戦争反対運動の状況では−山の手では、12月14日のハーレムでの「戦争ではなく学校と仕事に」というデモにどのようにして雑貨店主やタクシードライバーを動員するかについて、黒人とラテン系の若い活動家や借家人のオーガナイザーが裏部屋でひしめき合って議論していた。またダウンタウンでは「軍隊のためのパンの売り出し」をやる街頭教化団(レクレイム・ザ・ストリーツ)のようなglobal justice(地球的正義)の一団から、戦争反対のメーリングリストを運営するような宣伝の離れ業をやるようなグループまで、エプロンを着た活動家の集まりが活動していた。
 Not in Our Name(「我々の名で戦争をするな」という名のグループ)という戦争反対の連合に組織され、反戦のためにクラスから行進に出かけた約2000人の高校生たち。そしてその1週間後には、もうひとつの国家的連合であるInternational ANSWER が主催する反戦タウンミィーティングに、ブルックリンのハウス・オブ・ロード・チャーチを基礎として、千人のアフリカ系アメリカ人の集団が参加した。一方では、組織を嫌う芸術家、インテリア・デコレータ、レストラン経営者、自分たちをGlamericansと名のるイケイケのお兄ちゃんたちが、いつも見ているMTVニュースに報道されるよう狙った反戦のどんちゃん騒ぎ計画するために集まった。

アメリカ人の数百万人を代表する組織が動き出す

 国中を一瞥すると、この多様性が更に何倍にもなっていることが分かる:サウスダコタ、アンカレッジ、アラスカなどの保守の砦ようなところでも平和行進や徹夜集会に人々が参加している。
 ワシントン行進には10万人が参加したと見込まれている。NOW,NAACP,National Council of Churches、カソリック司教会議、カリフォルニア労働者連合など国際的な運動の大黒柱・・アメリカ人の数百万人を代表するような組織が約30の市議会がやったように、強い反戦の決議を求めた。
異議・・あるいは少なくとも不快感・・が保守的な部署からも露出している。戦争は「賢くない」と言っている自由主義者のCato Institute(カトー協会);前の軍事・安全保障の顧問のなかで、一国至上主義的な行動に反対して奮闘したブレント・スコウクロフトのような人;そして最も印象的には、政権自身の中のコリン・パウエル、ジョージ・テネットのような人からも。
 国際的な反対と、選挙人名簿の中の戦争に対して不熱心な支持者が結合したこの抵抗は、既に侵略を遅らせ、政権を議会と国際連合との話し合いに戻らせている。

旧来からの平和運動組織は全国的な運動を担えなかった

 前SDS( Student for a Democratic Society民主社会のための学生連合)のリーダーのトム・ハイデンは、ベトナム戦争における同様な時期に、興奮のレベルが想像できないくらいのものだったことを思い浮かべた。つまり1965年にワシントン行進に参加したのははたった7000人だけだった。
 しかしながら、この時の戦争反対の世論はどんなリーダーシップよりも先行していた。ブッシュが戦争拡大をはじめたとき熱烈な選挙区民に急き立てられた民主党のリーダー達は反対でまとめられたかもしれないが、結局後退してしまった。
 SANE/Freezeの流れを継ぐピース・アクションは国中に100の支部を持っており、自身で「国の最大の平和組織」と称していた。「しかしこの秋、我々は」、大衆行動を組織する「力量を持っていなかった」とリンチは言う。
その他の長年活動してきている平和組織・・Pax Christi,クエーカー教徒、戦争抵抗同盟・・のネットワークはアメリカ中央部での多くの小さな徹夜集会の基盤を提供してきた。しかし全国的な組織化については何もしなかった。
 1982年のセントラルパークでの反核集会の中心的な組織者であったレスリー・ケーガンは言う。「歴史的な平和組織は常にある。しかし、それらは新しい戦争がくるたびに、いつも再編成されなければならない」。これらの分野で再編成が行われている間に極左グループは分裂した。

ANSWERが呼び掛け、アラブ系アメリカ人が動き出した

 インターナショナル・アクションセンターは1991年のイラク戦争から経済制裁反対の運動を通じて結成され、9月11日の後、新しい反戦連合体であるInternational ANSWERを数日のうちに召集し運営するにふさわしくなっていた。サンフランシスコとワシントンで驚くほど大きな10月26日の集会を、ピース・アクションのような共闘組織と共に組織したのは、ANSWERであった。
 戦線の中でANSWERの次に位置する、より大衆的なオルタナティブはNot in Our Nameであった。その抵抗のスタイルは、小さな町の新聞を再生することを国中に思い出させた。たとえばアリゾナの基地の町を支えるシエラ・ビスタ・ヘラルドのような。そして10月のはじめに全国行動日を設定した。
 最近、これらの同盟の左派と主流の新聞の多くが、ワーカーズ・ワールド党や革命的共産党とそれぞれつながりを作り上げてきた。しかしこれらのグループによって見せ掛けられるリスクに関するジャーナリストの警告は、巷での会話からはるかに遅れるものであった。
 平和運動の活動家は、1991年湾岸戦争の間に強いられた二重の行進の初期の外観があるので、インターナショナル・アクション・センターの戦略を練ってきた。:その未解決の問題は、イラクのクウェートに対する侵略に対する批判についての拒絶と、戦争の代替としての経済制裁の支持という点についてである。
 そして若い組織者のエリカ・スマイリー(22歳)のような新参者は、4月のDCでのデモについてのくだらない口論の苦痛による洗礼を受けた。・・ANSWERのパレスチナ問題のデモが全国の学生の平和デモと一致するため、日付を動かすことで、後者が「自国で、そして海外で戦争を止めろ」と言うのをほとんど覆い隠すようにしたことで。
 しかし、学生たち、反グローバリズムの街頭活動家、古い世代の平和ネットワークなどは、ANSWERがつながりの無かった層を動員するため呼びかけ、アラブ系アメリカ人コミュニティが動き出したことを評価している。それは、ANSWER連合の中の自由パレスチナ同盟のようにグループのリーダーシップにとって真に重大な部分となっている。
 ヘイデンは1960年の反戦運動にも「同様の不和、ライバル組織、党派」があったと言う。しかし、それらには「エコロジー」があった。つまりその中で「我々のほとんどは、他の陣営が確かに避けられないということを理解していた」と言うのである。「反戦活動家のある部分はANSWERを全く避けている一方、他のほとんどはこのエコロジカルな見方を採用して、いっしょに共闘しよう・・あるいは少なくとも連合の周辺にいよう・・と言う」。
 ほとんどはまた、こうしたセクト的なアプローチでは幅広い反戦運動を決して構築できないことを合意している。・・極左を孤立させようとする自由主義的セクト主義でさえも・・。
 戦争抵抗同盟の長年にわたる活動家であるダビッド・マクレイノルドは、彼らが「ANSWERの独占状態は打ち破られるべきであり、またそうなるだろう」という確信を共有している、と言う。

運動は、更に多様な広がりを見せている

 既にいろいろな方法でそれは切断されている。出演者の幅広いスペクトラム・・伝統的な平和グループ;学生、global justice(地球的正義)と人種差別反対の活動家;労働者の主流、環境保護派、人権と女性運動・・が野心的な新しい全国的連合組織であるUnited for Peace(平和への連合)を召集するためにANSWERの大きな行進に相乗りしているのである。
 12月10日、百人以上の著名人が、National Council of Churches(国民教会評議会)その他の自由主義的協会と共に、新しいWin Without War coalition(戦争なしで勝利する連合)を通して戦争反対を表明した。・・平和への連合によって呼びかけられた約150の反戦活動が参加したナショナルデーに。
 学生、労働者、女性の連合は作業中である。そして、どんな色合であろうと権威主義には不快感を示す、若い反資本主義者たちは、ANSWERと協力しながら一方で自治を維持する、創造的な戦略を磨いている。
 10月26日、地域的な同盟はDCの反資本主義者集合体(DC-ACC)が組織した彼らのデモ行進に先導された。それはANSWERの行進に先立ち、戦争の潜在的な国内的コストに注意を引くものであった。DA -ACCのザイン・エル・アミンはその行動が大きな成功だったと考えている。なぜなら「それはより大きな行動からの分裂主義者として行われたものではなく、我々自身の同盟を構築しかつ我々自身の考えを保存するものであった」からである。
 平和への連合の後についていった・・Caganのような;地球的正義のグルであるメデア・ベンジャミン、グローバル・エクスチェンジの基礎を作った指導者;AFL-CIOの前役員であったビル・フレッチャー、トランス・アフリカフォーラムの会長・・のような人々にとっては、平和運動の最大のテストはANSWERに対して何をするかではなく、伝統的な平和運動組織が近年の2つの最もダイナミックな社会的運動をいっしょに持っていけるかどうかであった。;その2つとは、シアトルにデビューし広がっている地球的正義の連合と、警察の野蛮な行為、人種的色分けと移民者の権利に関する活気のあるキャンペーンを展開している都市の人種平等運動である。彼らは、そのような合併が反戦運動に長続きする基礎を与えるものであろうと議論している
 「イベントはこれらのテーマが連結していることを示した」とフレッチャーは言う。「しかし、帝国の役割と国内の抑圧の危険性について語ることは反戦運動にとって挑戦であろう。外交問題を除外して国内の問題に焦点を当てている有色人種のコミュニティの組織者に対しても挑戦であろう」。
 反資本主義的な運動は「軍国主義による拳骨なしで市場を開放するためには、海外の市場作用の見えない手を持つことはできないということを常に理解している」。しかし地球的正義の運動にとって、そして多分、反資本主義的な運動を除く部分にとってもそれはたやすく受け入れられるものではない、とエル・アミンは言う。
 ベンジャミンは、この秋の早い時期に、他の地球的正義の集団から深い関心をもって聞いた。9月11日のあと、彼らは、戦争を持ち出すことが労働者を「チームスターズとタートルズ」同盟から遠ざける・・それは実質上、アフガニスタンへの侵略を支持することに同意することになったのだが・・ということを依然として再編成しようともがいている。
 しかし、アメリカの労働者の視点から見ればイラクはアフガニスタンとは異なるということは明らかである。前チームスターズの組織指導者のボブ・ムエレンカンプは言う。「イラクについては、組合は早くから、彼らの政府の戦争政策に疑問をもち始めている。それは、これまでの戦争の脅威の時よりも早い段階でより幅広く、そしてより深刻にそうなのである」。
 「それに加えて、11月はじめにフィレンツェでヨーロッパ社会フォーラムから爆発した大衆的な反戦運動は、アメリカの活動家に戦争を持ち出すことについての不安を和らげた」とベンジャミンは言う。「確かに戦争反対を言うことは地球的正義運動の一部であったとヨーロッパの人々に納得させるのに問題があるとは思われない」と彼女は言う。

運動を一体化させるキー・ワードは人種問題

 しかし、これら三つの運動を分け隔てていて、三つが結びつくと容易にそれらを転覆させることの出来る断層線こそがフレッチャーが"米国政治のわな"と呼んでいるもの、すなわち人種問題である。従来の平和運動、特に宗教的な色合いを帯びていた運動は国民教会評議会の初期の、力強いリーダーシップに支えられたが、反戦気分に道義的な合法性を与え、白人・中産階級からなるMiddle America (米国の中産階級)の中に深く浸透した。これは反企業を謳うグローバリゼーション運動にも影響を及ぼした。この白人主体の運動は、メッセージが幅広くアピールすると考えられるように、福祉政策から集会のスタイルにいたるまでのあらゆるものが形作られた。したがって、この運動がアフリカ系アメリカ人、イスラム教徒、及びラテン・アメリカ人の間での反戦気分を深く探るようになるにはある程度の騒動が起きることが必要となる。(最近の政治・経済研究センターの調査によればアフリカ系アメリカ人の戦争支持はわずか19%である)
 だからこそ、反戦運動家の中で最も良く語られるものの一つとして新しく同盟が出来たRacial Justice 9-11 (人種正義9-11)がある。これは有色人種コミュニティでの反戦運動を盛り上げるため特別に結成された同盟である。この同盟の結成大会が去る2月に行われたが全国から40におよぶコミュニティベースのグループが集まった。これらのグループは従来は、犯罪に関する公正のための改革などの国内戦線のアジェンダに取り組んで来ていた。コーディネータのハニー・カーリル氏によれば、大衆の金が外国での戦争に使われることと、自分達の祖国が攻撃の対象になるかもしれないという事実の狭間の間で、RJ9-11は優先すべきものの"慣例化"を打ち破りコミュニティの注意を戦争に向けることに集中するよう努めているという。

政治的信条の違いを尊重しアメリカの反動に立ち向かう

 こうした運動が一緒になることで、意見の相違が深刻になることは避けられない。平和への連合の結成大会において "イラクへの戦争を止めろ!"という範囲の狭いメッセージが多くの中産階級(Middle America)を捉えるだろうと訴える者もいたが、カーライルなどの人達は外国での戦争を国内での戦争と分けて考えることは、すなわち移民の一斉検挙から米国の構造再調整に至るものとの戦いと分けて考えることは有色人種の人民を動かすことはほとんどないと反論する。ジョイント・センターの世論調査によればアフリカ系アメリカ人のほとんどが戦争に反対しているのに対し、反戦を第一の関心事に挙げているのはわずか6%にすぎない。)
 同様に、パレスチナ人を支える第三のレールになることを避けるべきと訴える者もいる。戦争への反対の態度をほとんど示していないユダヤ人社会を疎外することになりかねないという理由よりも、重要なリベラルな組織をも疎外することを避けるように注意しなければならないという理由からである。例えば、NOWの副会長であるオルガ・ヴァイブスはイスラエルとパレスチナの紛争に対する"バランス"をNOWがより広い平和運動に関わるために必須としている。しかし、パレスチナの大義がこれまで学生を左翼化し、今後はパレスチナ地区で戦争が起きたら大きな影響を受けるということを考えると、反戦運動がこの問題を取り上げざるを得ないとカーライル氏は予測する。
 フレッチャー氏によれば、勝つための公式は、前線がこの戦争に反対するものであれば誰でも取り込み、拡大する運動の内部での政治的な信条の違いを尊重し将来のアメリカの軍事的な冒険行動と国内的な反動に立ち向かう運動を準備するための"より広い反帝国主義的政治分析"に向けて行動することだという。
 政治的に大きくなる困難に打ち勝ちながらも、運動には資源が必要である。しかし、必要なのは必ずしも金ではなく、何が優先するかを見極め、資源をそれに振り向けることの出来る幅広い組織体こそが必要である、とワシントンの左翼系のシンクタンクである政治研究所の所長のジョン・キャバナ氏は言う

個人レベルでも、組織レベルでも幅広い共闘の動きが

 このような事が個人レベルでも、また組織レベルでも始まったといえる兆しが見られる。例えばカリフォルニアで長年人種の正義のための活動を行ってきているボブ・ウイング氏は、世界貿易センターの惨事を知ってすぐに自分にとって何が最優先かを考え始め、フルタイムで反戦のパンフレットを作成するようになり、2カ国語のタブロイド新聞War Times を発行したが、この新聞は今では12万部もの発行部数を数えるまでになった。ピーター・ラーマン師は近年ニューヨークの歴史的なジャドソン・メモリアル教会の集団内部において労働者の団結を構築することに専念していたが、自らの注意を戦争に反対する聖職者を組織することに向けはじめ、12月の集団逮捕にもつながった国連での座り込みを組織した。政治研究所(IPS)はスタッフの半数をイラク関係の仕事に振り向けた。ピース・アクションは全国の反戦組織家を採用するための募金活動を行っている。また 世界交流(Global Exchange)はスタッフの時間を世界平和(United for Peace)を築き上げるために割いてきている。世界交流のメディア・ベンジャミン氏はコード・ピンク(Code Pink)の結成に尽力した。コード・ピンクは軍国主義と一国行動主義に対し女性の観点を取り入れている。また同氏は毎日のホワイトハウスでの徹夜行動も組織し反戦運動に女性の活動家を引き込もうとしている。
 主流の組織がどんどん反戦運動を拡大させようとしている。NOWは6月に相当過激な決議を採択し、"テロリズムとの戦いを口実に帝国主義を大規模に拡大しようとしている"と非難し、500の支部に対し、3月まで毎週コード・ピンクの徹夜行動のために女性を動員するよう要請した。米グリーン・ピースの代表のジョン・パッサカンタンド氏はジョージ・ブッシュ宛てに戦争に反対する公開の手紙を出し、米グリーン・ピースがエクソン・モービルを相手にした新たな国際的なキャンペーンに反戦のメッセージを組み込むことを明らかにした。同氏によれば、エクソン・モービルはイラクで体制が変われば最も大きな利益を得ることが出来る立場にあると考えられるという。NAACPは10月の反戦決議に続いてすべての大学の支部に対し戦争に対する市民集会を開催するよう呼びかけた。AFL-CIOの関係者は反戦をかかげる支部と労働委員会が一緒になり全国規模の集会を開く計画をしていることを明らかにした。また民主党で反戦を掲げる派が下院の少数民族のリーダーシップを巡る競争に打ち勝ったことにより、同党が再び優位に立つ可能性をもたらした。
 学生の活動も、いくつかの実績あるネットワークが活動の輪を広げ反戦のために力を合わせるようになったのに伴って、ますます活発化している。学生環境活動同盟は8月に軍国主義と環境キャンペーンを張った。労働搾取に反対する統一学生同盟は兵器製造業者を標的にすることを話し合っている。学生環境活動同盟も統一学生同盟も全国青年学生平和連合(NYSPC)のメンバーであり、この連合は既に20万もの学生を動員する力を持っており今年の春に全国規模のデモを計画している。しかもこれは我々の父による学生の反戦活動ではない。ワシントンの青年のリーダーであるエリカ・スマイリーは黒人ラディカル同盟に属し、NYSPCのステアリングコミッティのメンバーであるが、NYSPCはあらゆる種類の歴史的に十分に活動に参加できなかった青年がテーブルに就いていると語っているが、この事は"国内での戦争"に焦点を当てていることに反映されている。つまり職がなくまた教育が受けられないことにより、多くの若者が軍隊に入ることを考えざるを得ないという状況にあるのである。NYSPCはまた若い兵士が匿名で意見の相違を表明することが出来るチャットルームをウエッブ上に用意する計画を立てている
 今までのところは、宗教による動員が最も内容的にもまた幅の広さにおいても際立っている。組織化されたユダヤ人のコミュニティにおける沈黙ともいうべき状態や、イスラム徒の間での愛国心はもろいものだという気持ちにもかかわらず、勇気ある聖職者たちは11月に異教徒間に断食とこの戦争の危険性をよく考えようとの呼びかけを行い、同時にカトリック、プロテスタント、ユダヤ教、イスラム教の新聞に記事を掲載した。統一メソジスト教会は全国の信徒に対し反戦の教育教材を送った。また、全国協会連合は"平和を作り出す季節運動"の真っ只中にあり、その中にはラーマンが国連で組織した不服従運動も含まれているが、これは"共通の人間性"という考えを中心としてできた活動である。「中産階級が本当に先制攻撃戦争という前提を受け入れるとは思わないが、彼らがそれを受け入れるべく先導されているのは確かだ。我々宗教家はこの先導から彼らを解き放たなければならない。」とラーマン師は語る。

1968年ベトナム反戦−今、第二の地震が起きるかもしれない

 平和への連合(United for Peace)の創始者の一人であるカバナー氏は将来戦略は三つに分かれると見る。彼は「まず、9月と10月には数え切れないほどの質問を抱えた数百万ものアメリカ人がいることがわかった。今こそ教育が大いに牽引力になると言える。」と語る。第二に、ブッシュ政権が武器査察の過程を疑わしいものとしようとする中で、目に見えるようにすること、すなわち"平和運動を前面に出す"ことが重要である。そして第三に、この平和運動は反対に廻りそうにもない人達の声を宣伝していく必要がある。この反対に廻りそうもない人達の中にはかつて情報部員で危険信号を発信しアメリカ大衆の中に"緊張度指数を上げる"役割を果たしている人達も多くいる。カバナー氏は2004年の大統領選をにらんだホワイトハウスにとっては2000年の選挙後の大衆の意見が重くのしかかると言う。
 しかし、決定的な要素のいくつかは活動家の手に余るものとなっている。カバナー氏は「反対の声のほとんどは一国主義的な先制攻撃による戦争に対してあがっている」と言う。「イラクが明らかに挑発を行っており国際的に強力な後押しがあれば、すべての反対の声は消えてなくなるのだ」。IPSの専門家によれば、可能性の高いシナリオはブッシュ政権がでっちあげる根拠薄弱な戦争の口実、そして国連安全保障理事会で保留が数票でるか、もしくは無投票というような中途半端な国際的な支持ということになるであろう。この結果は反戦運動に対しまさしく挑戦となるであろう。ウイング氏が"やがて収まる所に収まる大プロパガンダマシーン"と呼ぶ代物に対して反対することを教えるとともに正当な戦争とは何かについて大衆の意見を勝ち取らなければならない。
しかし運動はヨーロッパ、イスラム世界での幅広い反対運動に助けられることになるであろう。
 それは危険をはらんだ瞬間となるであろう。すなわち反アメリカのテロリズムがエスカレートする危険である。しかし、と同時にチャンスの瞬間でもある。9月に40万の人々が参加したロンドンで反戦デモの組織化を行ったヨーロッパ駐在のジャーナリスト、マイク・マークシー氏は「この戦争は進行しながら崩壊してゆくという希望が持てる。我々ヨーロッパで平和運動に携わる者はアメリカにおける反戦の声を強化するためなら何でもやりたい、と思っているのです」と語る。またメディア・ベンジャミンは1月にブラジルのポルト・アレグレで開催される世界社会主義フォーラム(昨年は五万人が参加)では、反戦運動と反グローバリズム運動が大規模に、国際的な結合をみせ、アメリカの反戦運動を大いに勇気づけることになるだろうと予測している。 トム・ハイドン氏は「世界的に政治的な混乱の波が起きている。そしてこの波はアメリカの保守的な運動がピークに達したということに直接呼応するものだ。 1968年にも説明が困難な世界的な社会運動が起きたが、今まるで第二の地震がまさに同じ断層線に起きるかのようにその運動が戻ってきたのだ。引き続き注目しよう」と語っている。

Esther Kaplan is a print and radio journalist based in Brooklyn.
エサー・カプランはブルックリン駐在の新聞・放送記者。