【INTERVIEW】

インタビュー

インタビュアー:倉田あゆ子


●団体が集まって法人格をとるつもりです●
 高柳俊哉さん

(与野の水と緑を考える集い/埼玉環境保護団体協議会)


 「与野の水と緑を考える集い」の事務局長を務める高柳俊哉さんは、埼玉NPO連絡会世話人の中でも若い方ですが、この活動を始めてからもう10年になります。



  1988年に高柳さんたちが子どものころよく遊んだ近所の雑木林が、マンション建設のために伐採されそうになり、その保存を求めて署名活動を行ったことが「与野の水と緑を考える集い」(以下「集い」)設立のきっかけでした。この運動は、木の一部を市の公園に移植するという結果になりましたが、埼京線・新幹線の開通やさいたま新都心の開発などによって自然が失われていくなかで、「ふるさとの水辺と緑を子どもたちの世代に残していこう!」というスローガンのもと、活動は続けられることになりました。

 主な活動場所は高沼用水・霧敷(鴻沼)川とその周辺の緑地帯で、これは「見沼田圃と荒川河川敷という県南部の緑地帯を結ぶ“緑の回廊”として貴重な存在」です。春と秋の年に2回、この水辺を歩く「高沼用水ウオッチング」を行い、合わせて水質検査を行っています。またこうした身近な自然を市民に見直してもらうため、高沼用水付近の生きものや景色などの「絵はがき」も作製しています。

 そして象徴的な活動として、七夕の時に飾る馬飾りを作る「七夕馬づくり」があります。地元の児童館と共催で行っているこの活動は、「集い」のメンバーが刈り取ったマコモ(イネ科の植物)を、一週間ほど丁寧に乾燥させて材料のワラとし、それを地元のお年寄りの指導の下、子どもたちがいっしょになって編みあげて馬の形をした飾りものにしあげるものです。この伝統行事を通して身近な自然に親しみ、地域の人と人との交流も生みだしたいという願いが込められています。

 その他にも市民の立場からまちづくりを考えていくために「水と緑のまちづくり井戸端会議」を開催したり、学習会や見学会も行っています。

 一方、埼玉県には、「与野の水と緑を考える集い」をはじめ、環境に関する市民団体が多数参加している「埼玉環境保護団体協議会」(以下「協議会」)があります。これまでにも46団体が集まり、環境基本条例や環境基本計画に関する要望書を県に提出し、その実現を働きかけてきました。こちらの方では事務局(広報)を担当しているという高柳さんにNPO法についてうかがいました。

──「集い」「協議会」ではNPO法人格取得についてどう考えていますか?

高柳 「集い」では特に今、法人格を取得しようとは思っていません。恒常的な事業をやっているわけではないので、契約主体として法人である必要がないからです。ただ将来的に「集い」の活動に法人格が必要になれば、もちろん考えると思いますよ。「協議会」のほうは法人格を取得する方向で考えています。多数の団体が参加する全県的な活動ですし、「協議会」が法人格を取得することで、情報の開示など活動への社会的な信頼も高まり、活動の持続性の保障にもつながるでしょう。「協議会」に参加する個々の団体としても、法人格を取得した「協議会」の活動から得られるメリットがいきわたる可能性があるのではないでしょうか。

──法人格を取得するかしないかで、市民グループの間に溝ができる可能性を指摘する声もあるようですが…?

高柳 法人格を取得するか、しないかの問題ではなく、対行政、対権力に対する考え方の違いではないでしょうか。どちらがいい、悪いの問題ではなく、それぞれのグループが真剣に考えて活動しているからこそ、そうした違いも出てくると思います。行政とまともにぶつかりあっている団体があるからこそ、行政も変わり、市民団体とのパートナーシップも成り立つようになってきた。また行政と一緒にやっていこうとする団体も絶対に必要です。ですから、市民グループ自体が、役割分担の違いなんだと、お互いにどこまで認識できるのか、そこがとても大切なところだと思っています。ただ、市民グループのなかでも自分たちの活動と異分野の場合、少し距離をおいて見ることができるので、そうした考え方の違いを認めあえるように思います。逆に同じ分野の場合には、活動内容が近いがゆえに、相互理解が難しい面もあると感じています。いずれにせよ、それができるかどうかが、市民グループ相互にとって、これからの大きな課題でしょう。

──「行政や企業とのパートナーシップ」についてはどう考えていますか?

高柳 「集い」では何かイベントをやるときに行政といっしょにやっていくことはできています。しかし政策策定への提言・参加はまだできていないのが実状です。計画を固めた段階で、行政から説明があるのですが、計画作成段階から一緒にやっていきたい。それができてこそ本当のパートナーシップだと思う。行政が意識を変えることも必要だし、私たちの方も専従がいない、専門的な知識がまだ不十分といった現状です。対等性の確保をめざして今後とも成長していきたい。

──これからの課題はどんなことでしょうか?

高柳 これからはビジョンづくりをしていきたいと思っています。具体的には「市民の提案する高沼用水・鴻沼川グリーンベルト・プラン」(仮称)を策定する予定です。河川整備計画、緑の基本計画の策定への動きがありますので、私たちの提案をこれらの行政計画の中に具体的に組み込んでいきたいと思っています。「協議会」の方では同じ「環境」という分野でのネットワークを強め、市民運動全体のレベルアップをしていくことです。

 「与野の水と緑を考える集い」では、直接、自然保護に関心のない人々にも自分たちの思い・主張に関心を持ってもらえるように、いろいろな切り口を用意していきたいと考えているとのこと。そうした情報発信から広がってゆく今後の活動展開がとても楽しみです。


「埼玉環境保護団体協議会」の紹介とご案内
■連絡先埼玉県環境保護団体協議会事務局
       浦和市岸町6−5−22/102
       TEL 048−824−4099
       FAX 048−832−3303

■会 費:団体−4,000円/賛助会員−2,000円
     郵便振替:埼玉環境保護団体協議会(代表者 村上明夫)
     記号10320 番号54419031




●団体が集まって法人格をとるつもりです●

 井瀧佐智子さん

(ワーカーズ・コレクティブ旬/埼玉ワーカーズ・コレクティブ連絡会)
インタビュー●倉田あゆ子



ワーカーズ・コレクティブという働き方を知っていますか?

 それはみんなでお金を出し合い、経営を担い、雇う雇われるという関係が存在しない、新しい主体的な働き方です。地域や環境に貢献する仕事やコミュニティーワークなどに取組み、労働に対しての報酬は受けますが、利潤を目的としていません。



  埼玉県内に初めてワーカーズ・コレクティブができたのは1987年のこと。その後設立はつづき、「ワーカーズ・コレクティブ旬」(以下「旬」)は、1991年に誕生しました。現在では県内に20団体がさまざまな分野で活動しています。

 「旬」のメンバーは現在15人で、事業内容は仕出し弁当です。「作る手が見える安心・安全」「飽食の中で失ってしまった“旬”」をとりもどしたいという思いが、ワーカーズ・コレクティブを設立する原動力となりました。

 「旬」のお弁当はすべて手づくり、毎日すべてのメニューが変わります。お米は冬から春にかけてはササニシキ、夏から秋まではコシヒカリを使うというこだわりようです。一日に平均100食、多い時で300食を手掛け、活動を継続していくためには、「800円のお弁当を5個以上で配達」が妥当なラインということも、経験からうまれました。

 設立当初の時間給は200円くらいでしたが、次第に軌道に乗り、現在は700円くらいになりました。パート労働で同じ金額を得ることと比べるならば、自分たちのやりたい仕事を自分たちの方法でやれることは、ストレスのない、豊かな仕事ができる可能性を持っています。

 もちろん事業であるからこそ、市場とかわらない厳しさがあり、決して楽なことではありません。自分たちの持つ理念を事業として展開する運動であるからこそやっていけるのです。

 1991年に埼玉県内のワーカーズ・コレクティブのまとめ役として、正式に「埼玉ワーカーズ・コレクティブ連絡会」(以下「連絡会」)が発足しました。情報交換や学習会を行ったり、ワーカーズ開業講座を開いたりしています。またワーカーズ・コレクティブの全国組織W.N.J.(ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン)のメンバーとしてワーカーズ・コレクティブ法制化に向けた活動も行っています。

 「連絡会」では代表をつとめる井瀧さんにNPO法についてうかがいました。

──「旬」「連絡会」ではNPO法人格取得についてどう考えていますか?

井瀧 「旬」は中小企業等協同組合法の中の「企業組合」という法人格を持っています。法人格を取ろうとしたときに企業組合しかなかったのです。

 NPO法にはワーカーズ・コレクティブのような新しい働き方という視点が入っていないと感じています。ただ、今後はワーカーズ・コレクティブにも、法人格取得の選択肢の1つにNPOを入れるところもでてくるのではと思います。

 「連絡会」のほうは10月に「埼玉ワーカーズ・コレクティブ連合会」を立ち上げ、NPO法人格を取得しようと思っています。連合会を継続性のある運動にしていきたいので、専従を雇うことにもなるし、さまざまな契約関係もでてくるからです。個々のワーカーズ・コレクティブをつなぐ共通の理念としては、地域にとって必要なサービスをうみだし、まちを豊かにしたいということです。NPO法でいえば「まちづくりの推進を図る活動」にあてはまるのかなと思っています。

──法人格を取得するかしないかで、市民グループの間に溝ができる可能性を指摘する声もあるようですが…?

井瀧 NPO法人格を考えるなら、まず自分たちの団体をきちんと自分たちで分析するという過程が必要になるでしょう。問題は自分たちが何をやりたいかということにNPO法人格が必要かどうかという点です。その結果市民グループの中で溝ができてしまうなどと自分たちで意識する必要もない。

 ただ行政の方ではNPO法人格があるかないかを意識するでしょう。行政は法人と契約せざるを得ないので、行政と何かいっしょにやっていきたいという方向で運動をすすめる団体であれば、自分たちの判断で法人格を取得すればいい。行政を一段上のものと見て、行政が私たちを選別すると考えるのではなく、行政とは私たちの暮らしを良くするための道具と考えたい。行政と一緒にやっていく団体が意見をどんどん出していくことはプラスだと思います。

──NPO法ができたことやNPO法ができるようになった時代についてどうお考えですか?

井瀧 これまでは事業=営利というのが一般的な解釈でしたが、NPO法ができたことで事業=非営利というワーカーズ・コレクティブのようなケースもあるということが認知されたのはとても良かったと思います。

 現在のNPO法には問題点もありますが、できたものは大いに利用し、変えるべき点は変えていく力を市民グループがもたなければいけないし、そうでなければせっかくできたNPO法が育っていかないでしょう。

 WNJではワーカーズ法案を考えています。これを実現するのは難しいかもしれませんが、できそうもないからやらないのではなく、自分たちの意思表示は常にしていきたいと思っています。自分たちが描くワーカーズ法ができればNPO法以上に幅の広い市民活動が実現できるだろうということは自信を持って言えます。

──これからの活動予定を教えてください。

井瀧 「旬」では一人暮らしのお年寄りにもお弁当の宅配をしたいと思ってきました。そこで給食宅配サービスを専門に行うワーカーズ・コレクティブを構想しています。お弁当は「旬」への委託とし、これからますます進んでいく高齢社会に向けて、宅配サービスのネットワークを作りたいのです。

 “旬”の素材にこだわりながらも「お弁当は美味しいことが一番よ」という自然体な側面と、これまでの経験から地域に必要とされる新たな活動を生み出していく力強さの両面をみたように思いました。



「ワーカーズ・コレクティブ旬」の紹介とご案内
■連絡先
 〒336−0021 浦和市別所5−1−1 生活クラブ本部内
     
 TEL 048−839−5331


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(10月25日までは、上記「ワーカーズ・コレクティブ旬」が連絡会の窓口。10月26日以降下記が連合会の窓口になる予定)

 〒340−0015草加市高砂2−18−39−302 山本ビル


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