【INTERVIEW】

インタビュー

インタビュアー:倉田あゆ子


●法人格とるつもりです●
 西村美智代さん(生活介護ネットワーク)


 JR与野駅から徒歩5分ほどの静かな住宅街に、生活介護ネットワークの「陽だまりの家」があります。すっかり周りの住宅の中に溶け込んでいる少し古いふつうのおうちです。



 お話をうかがった西村美智代さんが、「安心して老後を迎えることができる福祉制度と地域社会を実現するために、自立して自分らしく生きられる老いのステージを準備したい」という目的を掲げて、仲間たちと「生活介護ネットワーク」を発足させたのは1992年5月。
 シンポジウムや講演会を開催したり、独自に行った「痴呆老人の介護状況調査」をもとに県知事あてに要望書を提出したりなどの活動を続ける中で、会員も次第に増え、現在約220人に達しています。
 1996年1月には、会員の方から無料で貸していただいた家を、「陽だまりの家」と名付けて、毎週土曜日に痴呆症の方が家族と離れて過ごす「ミニデイサービス」を始め、1997年9月からはさらにニーズに応えるため、ウィークデイにも拡大した「毎日型デイサービス」を開始しています。
 利用者は与野、大宮、浦和、川口、上尾にお住まいの60歳〜80歳代の13人。一日の利用者は6人までで、利用者1人にスタッフ1人がつき、利用料金は食事込みで 1日3,500円です。
 財政的には決して楽ではありませんが、一口10,000円の賛助会員が予想以上に増えてきて、「皆さんからのd頑張ってくださいeという気持ちが感じられて嬉しい」と言う西村さんに、NPO法人格取得についてうかがいました。

──「生活介護ネットワーク」が、NPO法人格を取得したいいちばん大きな理由はなんですか?
西村 これまで法人格がないことで、社会的な位置付けがない、契約が個人レベルになる、寄付を受けられない、補助金がない、ボランティアが法人格をもつ団体のほうへ流れてしまう、スタッフを雇っても保障がないため、なかなか常勤スタッフをおくことができないなどの問題があったけれど、こうした点が改善されてくると思ってます。

──NPO法人格の取得によるメリットとデメリットについては、どう考えていますか?
西村 法人格を取得することで、名簿公開などプライバシーに関わる問題もあるようですが、少々のデメリットがあってもそれを越えるものが必ずあるはずですよ。
 何かデメリットがあったときには、法人格を取得したパイオニアのグループが、もっとこうして欲しいとどんどん言っていけばいいし、いい点はほかのグループにどんどん教えていけばいい。

── 「行政や企業とのパートナーシップ」ということについては、どう考えていますか?
西村 生活介護ネットワークでは、もうすでに行っていることもあります。行政も企業も現場の声を聞かなければ、良いサービスを提供することはできないし、一方、現場でもいろいろな情報が欲しいわけで、いまのところお互いに情報交換をして、いい関係づくりが続いてます。
 もちろん情報だけを知りたがったり、利用者やその家族のプライバシーを知りたがる企業もあるので、これから先、生活介護ネットワークといっしょにやっていきたいと考えている人かどうか、しっかり顔を見ながら判断することが大切だと思っています。
 お互いを理解するためのコミュニケーションや情報交換を通じて、信頼関係をつくりあげてからパートナーシップが生まれます。パートナーシップとは、積みあげ、つくりあげていくものです。

──これからの課題はどんなことでしょうか。
西村 現在、「生活介護ネットワーク」では「陽だまりの家」の近くにもう一軒無料で家を借りるんですよ。法人格を取得したら、そこでいよいよ本格的なグループホームを始める予定です。
 現在の「陽だまりの家」ようなデイサービスに通ってきているお年寄りも、体の状態がもっと悪くなれば通ってこれなくなります。お年寄りがいっしょに暮らすグループホームがやっぱり必要だと痛感しています。

──「ネットワーク」という人と人とのつながりに、西村さんはどんなイメージをもっていますか?
西村 昔は、おうちに縁側があっていろいろな人がやってきて、座り込んで話をしていったでしょ。それが地域を作ってた。
 私たちの活動も、家を貸してくれる、手を貸してくれる、お金を出してくれると、「縁側」に座る人がだんだんふえて広がってきたんです。最初から、お金があったり、場所があったりしたら、これだけ多くの人が価値観で結ばれるということはなかったかもしれないと思いますね。ネットワークは価値観をもとにつながる「心の縁側」だと思ってます。
私が陽だまりの家を訪れた日は定例のデイサービス運営会議の日でした。会議は予定の時間を延長して行われていました。こんなふうに真剣な話し合いを積み重ねてきたことが、これまでの生活介護ネットワークを支え、これからも支えていくのだろうと、感じさせられました。


生活介護ネットワークの紹介とご案内
■連絡先:生活介護ネットワーク事務局
    
 338-0805 浦和市針ヶ谷3-16-2 陽だまりの家
       TEL&FAX 048-822-1633

■会 費:個人会員(年会費2,000円)
     賛助会員(個人・団体 1口10,000円)


■お知らせ

●フラメンコショー
 1998年9月4日(金)6:30〜 浦和市民会館ホール
 チケット3,000円(申込みは「生活介護ネットワーク」へ)
諮カ活介護ネットワークでは、資金確保と気持ちのよいひとときをお過ごしいただくために、毎年イベントを開催しています。今年は9月4日に舞踏&フラメンコショーを開きます。踊り、ギター、カンテをお楽しみください。

●シンポジウム「ぼけても普通に生きられるパートV」
 1998年11月1日(日)午後 埼玉県県民健康センター
'94年のパートT「スウェーデンのグループホーム」、'96年のパートU「日本のグループホーム」に続いて、パートVは「埼玉のグループホームと民間小規模デイサービス」と題してシンポジウムを行います。
●会食の会
 毎月第4火曜日 午後12:00から 陽だまりの家
 食事代500円
獅ィいしいものを食べながら、おしゃべりをする会です。出会いから関わりへ、そしてネットワークへ。「安心の地域社会」はここから始まります。参加希望の方は第3金曜日までに、お電話でお申込みください。

■好評発売中
 「痴呆老人の介護状況調査」1,000円
 「ぼけても普通に生きられるパートT」報告集 500円
 「ぼけても普通に生きられるパートU」報告集 800円





●法人格とるつもりありません●

 守利靭彦さん(外国人 119ネットワーク)

インタビュー●倉田あゆ子



 外国人 119ネットワークの運営委員長である守利靭彦さんにお話をうかがうため、年に1回行われる総会の後の懇親会におじゃましました。社会人1年目という青年が司会をつとめ、代表のシャールアンドレ・フロアラック神父の優しい笑顔があり、その他幅広い年代にわたり、さまざまな国の方々が集まった、とてもアットホームな懇親会でした。



 不法就労助長罪の罰則強化が行われた1989年の出入国管理法の改正により、埼玉YMCAに相談に訪れる外国人が急増し、その受け皿として、1990年に外国人 119ネットワークが発足しました。オーバーステイという弱みにつけ込まれ、人権が無視されている外国人たちの切実な問題を解決するためのお手伝いをしようという目的で、YMCA関係者、カトリック教会関係者、指紋押捺問題に取り組むグループなどが連携をとる形で始まり、毎週水曜日の定例相談を中心に活動しています。
 相談内容は、1990年代半ばまでは賃金不払いや労災などの労働問題中心でした。このころは不法就労であることと賃金の支払いを受ける労働者としての権利などとは、別問題だということが、行政をはじめ多くの人々になかなか理解されず、救済が困難なケースも多かったということです。
 1990年代後半からは長期定住化による結婚・離婚などの家庭問題や保険・医療・税金に関わる問題などに相談内容は変化してきました。
 最近では市内在住の外国人の呼称として行政側が「外国籍市民」という言葉を使うなど、外国人を取り巻く環境も少しずつ変わってきています。
 外国人 119ネットワークのスタッフは、仕事を持つ方がほとんどですので、ウイークデーの昼間に、役所、裁判所、法律事務所などへ相談者と同行する時間をとることがなかなか難しいという悩みを持っています。
 発足当初から長い間にわたり代表をつとめ、1997年にブランチとして発足した「外国人 119ネットワーク・大宮」の代表もつとめる守利さんに、NPO法人格取得についてうかがいました。


── 「外国人 119ネットワーク」ではNPO法人格取得についてどう考えていますか?
守利 現在とくに法人格を取得する必要性はないと思っているんです。事務所を (財)埼玉YMCA国際奉仕センター内においていますので、ほかの団体が抱えてしまうような事務所契約などの問題がないのです。逆に、認証を受けるための手続きが煩雑である、税金の優遇制度もないなどデメリットのほうを感じます。とくに名簿公開は会員のプライバシーに関わるので大きな問題です。以前には、不法就労の外国人を支援するということで、いやがらせや脅しを受けるなど、こちらがストレスを感じるような反応があることもあったからです。

── NPO法のメリットについてはどう考えていますか。
守利 NPO法ができた副次的効果は、任意団体も含めた市民活動の環境がよくなることだと思います。公民館で市民団体が活動を行う場合でも、活動の中身まで行政に干渉されたこともありました。そうしたことは少なくなるだろうし、NPOサポートセンターが公設民営でできて、市民が主体となってそれを使っていくことになればなおさらプラスの効果があるでしょう。

──法人格を取得するか、しないかということで市民グループ間に溝ができるということは考えられませんか?そうしたことは、どう克服すればよいと考えますか?
守利 行政や助成金を出す団体側からすれば、NPO法人格を持っているかどうかは、非常にわかりやすい目安になる。もともと行政側に近い、できれば外郭団体にでもなりたいと思っているようなところが、まず法人格をとるでしょう。そうした団体が由緒正しい市民活動の代表格と認識されるようになったらたいへん困る。そうならないためにも、法人格を取得する市民グループ自らが、法人格をとらない団体の活動も視野に入れ、市民団体同士の関係を強固にしていかなければならないし、埼玉NPO連絡会は、そういう雑居性を保障していくものであり続けたいですね。

──「行政や企業とのパートナーシップ」ということについては、どう考えていますか?
守利 これまでに保健所と共同主催という形で在日外国人の健康相談会を開いたことがあります。イコールパートナーのパートナーシップであることが大切でしょう。行政はお金があるし、給料つきのスタッフがいる。力関係でいったらイコールパートナーではない。それでも市民団体が行政に取り込まれるようなことは絶対に避けなければならない。行政のお墨付きをありがたいと思ってしまうような土壌をなくす、そうした法的基盤を整えることができるのがNPO法だろうと思っているんですがね。

 守利さんの一つひとつの言葉に、市民団体もこれからNPO法としっかり付き合っていくことが必要だとあらためて考えさせられました。



外国人119ネットワークの紹介とご案内
■連絡先
 336-0001 浦和市常盤9-20-3
     
 埼玉YMCA国際奉仕センター内
 TEL 048-834-0287/FAX 0429-23-8672(布施方)

■会費
 年会費 4,000円/学生年会費 1,200円(各2分割可)
 振込先 あさひ銀行北浦和支店 普通預金1458830
 郵便振替 00150-6-704309

■お知らせ
●活動日 毎週水曜日午後6:00〜9:00

●相談日(外国人119ネットワーク・大宮)
  
毎月第2・第4水曜日午後1:00〜4:00
  場  所:大宮公民館
     (大宮市桜木町1-118-1 JR大宮駅西口徒歩5分)
  相談言語:英語、タガログ語、ポルトガル語、
     スペイン語(中国語、台湾語、ヒンディベンガル語は予約が必要)
  問い合わせ:040-1725397
     (携帯電話/月曜〜金曜の午後1:00〜5:00)


●土曜セミナー
国人 119ネットワーク・大宮」では「国際化と人権〜埼玉出身・在住の経験者から聞く〜」をメインテーマに、8月を除く第3土曜日の午後下記のように『土曜セミナー』を開催します。多数のみなさまの参加をお待ちしています。
第1回 7月18日(土)午後2:00〜4:00 大宮公民館
 「ボートピープルから20年」
   シャールアンドレ・フロアラック(カリタス浦和代表)
 「滞日外国人の悩みとともに」
   小塚恵子(オープンハウス・シアター)

第2回 9月19日(土)
 「春日部のモスクより イスラムの教えとムスリムの生活」
   イブラヒーム 大久保賢(一ノ割モスク・イマーム)
第3回 10月17日(土)
 「知られざる日本 国際協力の現場から」
   武井秀雄(元JICA東京国際研修センター所長)
第4回 11月21日(土)
 「移り変わる難民問題 難民保護へのチャレンジ」
   近藤真智子(国連高等難民弁務官東京事務所副代表)
第5回 12月19日(土)
 「外国人相談の実例 行政の立場から」
   浦山不二子(埼玉県外国人相談員)
 「外国人相談の実例 民間の立場から」
   布施涛雄(移住労働者と連帯する全国ネット運営委員)


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