この記事は
ニューズウィーク日本版1996年4月3日号 に載ったものです。
なお僭越ながら、原文のタイプミスを修正しました。
兆候はずいぶん昔から表れていた。1947年にはフロリダ州で、交尾や巣作り をしないワシがいることが確認されていた。60年代には、ミシガン湖の魚をえ さに育った養殖ミンクの「不妊症」が報告された。
世界自然保護基金(WWF)のシオ・コルボーンは最近、その糸を突き止め
たと発表した。ホルモンと似た動きをする合成化学物質の仕業だというのである
。
現在までに、その種の化学物質は51種類が確認されている。これらの物質
はそれぞれ、細胞分裂や脳の発育、生殖機能などに大きな影響を及ぼしうる。
コルボーンは、ボストン・グローブ紙のダイアン・ドゥマノスキー通信員と
動物学者ジョン・ピーターソン・マイヤーズと共同で、自説を一冊の本にまとめ
た。二週間ほど前に発売された『奪われた未来』Our Stolen Future(ダットン
社刊)がそれで、マスコミの大きな注目を浴びている。
研究機関も本格的に動き出した。米国科学アカデミーはすでにこれらの化学
物質の研究に着手、米環境保護庁(EPA)も最優先の研究課題にする構えだ。
業界側は、こうした物質の危険性を否定する一方で、その代替物質を探すの
におおわらわだ。