●バリトン&オルガン 「 誓 い 」 曲:フランツ・リスト 詩:F.ボーデンシュテット 19世紀最大のピアニストにして作曲家であったリスト(1811〜1886)のドイツ語による歌曲。新ドイツ楽派・新ロマン主義の作風をもち、リストが1861年、僧籍に入ってからの作品(1878年作曲)で、敬虔な祈りを感じさせる曲である。 「 アヴェ・マリア 」 曲:C.サン=サーンス 作曲家であり、パリ・マドレーヌ大聖堂のオルガニストも務め、フォーレと共に近代フランス音楽の基礎を築いたサン=サーンス(1835〜1921)の宗教的歌曲。ワーグナーに傾倒したが、ドイツ音楽に対するフランス音楽の優位を確立するため1871年国民音楽協会を設立した以後の作品。 「 プロヴァンスの歌 」 曲:G.マスネ 詩:M.カレ 歌劇「マノン」の作曲家として知られるマスネ(1842〜1912)は、生涯に200曲余りの歌曲を作曲したが、その作風があまりにも叙情的な旋律に終始し、それ以上の深みに欠けるといわれ、そのため現在のフランスでもそのような作風を「マスネ的」という程であるが、1871年に作曲された「プロヴァンスの歌」は、サン=サーンスらの近代フランス音楽からみると、保守的ながら民謡風で牧歌的な歌曲である。 「 月あかり 」 曲:ガブリエル・フォーレ 詩:ポール・ヴェルレーヌ サン=サーンスに学び、ドビュッシーと共に近代フランス歌曲の最もすぐれた作曲家の一人であるフォーレ(1845〜1924)の傑作のひとつ。ヴェルレーヌの詩に作曲された歌曲は数こそ少ないが優れた作品が多く、この「月あかり」も歌のオブリガート付ピアノ曲といえる斬新な作風である。ワルトーの絵を彷彿とさせる曲で、今日はチェンバロとフルートと共に歌われる。 ( 鎌田 紳爾 ) |
●フルート&チェンバロ 「 スペインのフォリア 」 マラン・マレ マラン・マレ(1656〜1728)はバロック期のフランスのヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の名手・作曲家。オトマン、サント=コロンブにヴィオールを、リュリに作曲を学び、王宮楽団のメンバーとして、また独奏者として活躍。「フォリア」はイベリア半島が起源の、ゆったりとした3拍子の舞曲で、低音旋律と和声進行を基に、他にもコレッリ、スカルラッティ、ヴィヴァルディ、C.P.E.バッハなど多くの作曲家が変奏曲(シャコンヌ、パッサカリアと同様)形式で作品を残している。 元々ヴィオールの為に書かれた曲だが、前書きで「殆どの高音旋律楽器で奏せる」とマレ自身が綴っているように、現在ではフルートやヴァイオリンのレパートリーとしてもよく知られている。本日はF.マイケル編のチェンバロ伴奏付きのものを演奏。 ( 立花 千春 ) |
●オルガンソロ 「 プレリュード ハ短調 op.56」 A.ギルマン ギルマン(1837〜1911)はパリのトリニテ教会オルガニスト、1896年からはヴィドールの後継者として、パリ音楽院のオルガン科教授をつとめる。M.デュプレなど多くの弟子を育てた。また作曲家として、数多くのオルガン曲を残している。この曲は「ハーモニウム あるいは オルガンのために」と書かれているように、ハーモニウム(リードオルガン)でも演奏可能である(演奏者自身も、リードオルガンコンサートで何度か演奏をした)。小品ながら、オルガンらしいダイナミックな響きを味わうことの出来る作品である。 ( 竹佐古 真希 ) |
〜 PAUSE (休 憩) 〜 |
●フルート&チェンバロ 「 ハンブルク・ソナタ ト長調 Wq.133 」 C.P.E. バッハ 大バッハの次男であるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714〜88)はベルリンで長くフリードリッヒ大王に仕え、その後はテレマンの後任としてハンブルクの教会総監督として活躍。このフルート・ソナタは1786年に書かれた最晩年の作品であり、ハンブルクの盲目のフルート奏者F.L.ドゥロンの為に作曲されたと伝えられている。古典のスタイルを守りつつも非常に自由な音使いで進むアレグレット(第1楽章)、華やかでリズム感を要求されるロンド/プレストの第2楽章からなっている。 |
●フルートソロ 「無伴奏フルートの為の12のファンタジーより 第7番 ニ長調」 G.P.テレマン ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767)はバロック後期のドイツの大作曲家で、生前はバッハをしのぐ名声を博していた。非常に早熟、多作で、作品はあらゆる分野に数千曲ともいわれ、現存するのはその一部である。殆ど独学で作曲を身に付け、オルガン、チェンバロ、バロックフルート、リュートの名手でもあった彼は1721年ハンブルク音楽総監督に就任、終生その地位にあった。 この「12のファンタジー」は自由な構成、調性、拍子の様々な12曲からなっており、フランス、ドイツ、イタリアのバロック様式を使いこなす彼の独壇場である。“ア・ラ・フランチェーゼ(フランス風に)”と題された第7番は、フランス序曲の様式(宮廷風)によるゆったりとした出だし、アレグロ、そして終曲のロンド。 |
●フルート&オルガン 「 アダージョ ト短調 」 T.アルビノーニ トマーゾ・アルビノーニ(1671〜1750)は元はヴェネツィア貴族の出身でイタリア・バロックの作曲家。協奏曲に名作があり、50曲以上ものオペラも作曲したが、その殆どは伝えられていない。このアダージョは、第2次大戦中に破壊されたドレスデンの図書館から発見されたトリオ・ソナタの断片で、音楽史家R.ジャゾットが弦楽合奏とオルガン用に復元・補筆したもの。つまり偽作なのだが、オルガンの荘厳な響きと弦楽の深く哀愁を帯びた旋律がフランス映画「審判」(1963年)に用いられ、忽ち有名になった。 ( 立花 千春 ) |
< 委嘱作品 > 「 Miserere mei, Deus 」 笹森建英 June2001 神よ、我を憐れみたまえ (詩篇第51篇より) 「ああ神よ ねがわくは汝の慈悲によりて 我をあわれみ 汝の憐憫の多きによりて 我がもろもろのとがを消し給え 我が不義をことごとくあらいさり 我を我が罪よりきよめ給え」 竹佐古さんから、オルガン、フルート、バリトンの為の曲を委嘱されたとき、この聖句を考えました。ラテン語で作曲しようと思い、エノ神父にテキストの提供を依頼しました。エノ神父は親切に読み方を教えてくれたばかりでなく、この聖句は、ひつぎを家から出すときに詠まれる有名な個所であると説明してくれました。死者のための聖務や聖週間に用いられ、ジョスカン・デプレ、パレストリーナなどが作曲しています。 弘前学院大学のオルガンはマニュアル鍵盤が1段しかなく、ストップ6つだけの限界のある楽器です。私が学生時代に稽古したオルガンのように、多数のストップを自在に組み合わせ、ボタン一つで操作できるような機能をもっていません。そのように限界はあるのですが、楽器の可能性の極限に挑戦して、多様な音色や現代奏法を要求してみました。竹佐古さんの技量を信頼してのことです。バリトンの鎌田さんとはしばしば共演しているので、声の長所をいかして作曲したつもりです。フルーティストは未知の方ですので、冒険を避けました。勿論、技巧や語法が目的なのではなく、如何に聖句の精神を表現することが出来るかが問題でした。初演に期待しています。 (笹森 建英 記) |
< 演奏者プロフィール > 立花千春:フルート パリ国立高等音楽院、エコール・ノルマル音楽院、H・ベルリオーズ音楽院を全てプルミエプリ(第1位)にて卒業する。1994年パリ国際室内楽コンクール第3位、95年ルーマニア国際フルートコンクール第2位、第7回日本フルート・コンベンション・コンクール第1位、アルル国際室内楽コンクール(フランス)第1位、リヴァデルガルダ“シリンクス”国際フルートコンクール(イタリア)第1位ほか、内外多数のコンクールで上位入賞。フランスREM社より、CD「20世紀のフランス音楽〜アンサンブル・トリトン2」(Pf.山田武彦、Vo.小林真理、他)、「H.ソーゲの室内楽曲」(Pf.竹田静代)、また国内では東芝EMIより「CRYSTAL BREATH」(Pf.山田武彦)が、リリースされており、いずれもその“音色の明るさ”と“ダイナミックな演奏”が大変評価されている。 フルートを山元康生、佐久間由美子、R.ギヨー、A.マリオン、工藤重典、P-Y.アルトー、A.アドリアンの各氏に、室内楽をC.ドビュッシー、C.ラルデ、C.イヴァルディ、D.ワルターの各氏に師事。これまでに、仙台フィルハーモニー、東京フィルハーモニー、京都交響楽団、札幌交響楽団、新星日本交響楽団、東京室内オーケストラ等と共演。94年よりフランス・トロワ市立音楽院講師を勤めたあと、現在、上野学園大学短期大学部非常勤講師。 98年フルート四重奏「キャトル・クルール」を荒川洋(新日フィル)、戸田敦(仙台フィル)、前田綾子(東京佼成ウィンド)と共に結成。ソロ楽器としてのフルートの魅力を発揮しながら、アンサンブルの新しい可能性を追求する積極的な姿勢は、クラシックファンのみならず、広い層からの人気を得ている。 2001年は11/21(水)バリオホールにて「キャトル・クルール〜ソノリテ・カプリシューズ〜(仮)」、12/26オペラシティにて「立花千春フルートリサイタルシリーズVol.6」を、また、今秋2枚目のソロアルバムをリリース予定。 竹佐古真希:オルガン&チェンバロ 札幌生まれ。牧師の家庭に育ち、小さい頃から讃美歌や音楽に親しむ。宮城学院女子大学学芸学部音楽科(オルガン専攻)卒業。オルガンを佐々木しのぶ、松尾泰江、佐藤ミサ子、チェンバロを岩淵恵美子の各氏に師事。1992年日本オルガニスト協会主催「第19回オルガン新人演奏会」(東京都武蔵野市民文化会館)に出演。卒業後は松尾氏、小林英之氏、廣野嗣雄氏、チェンバロ・通奏低音を岩淵恵美子の各氏に師事。 大学卒業後、現在まで青森県浪岡町在住。日本基督教団浪岡伝道所オルガニスト。日本基督教団奥羽教区教育委員(教会音楽担当)、同北西地区教育委員(教会音楽担当)。学生YMCA東北地区共働スタッフ。2000年4月より、弘前学院大学礼拝堂オルガニスト。2001年後期より、弘前学院大学非常勤講師(「キリスト教音楽B」)。2001年1月〜東奥義塾高等学校非常勤講師(1年生聖書科「讃美歌」)。 これまでに宮城学院女子大学、仙台北教会、東奥義塾高等学校、弘前学院大学、秋田アトリオンホール、宮城・中新田バッハホール(Fl.立花千春、Pf.山田武彦)、早稲田教会、弘前Advent Hills(Vo.白岩 貢)等で演奏活動を行なっている。キリスト教界や東北地方を中心に、異なる楽器や会場のニーズにあった演奏活動を意欲的に展開中。東北地方の教会でリードオルガン・コンサート、学生のための音楽礼拝やお話、讃美歌21や奏楽者のための講習会講師として招かれる機会も増えている。2001年春には、心ある方々のサポートにより、初めてのヨーロッパ旅行「イングランド・スコットランド・フランス・韓国の教会めぐり」の機会を3週間与えられた。 鎌田紳爾:バリトン・レジェ 1979年洗足学園大学音楽学部声楽科卒業。築地文夫、村田健司の各氏に師事。 1985年私立学校研修福祉会海外研修員としてフランスに留学。パリ・エコ−ル・ノルマル音楽院声楽科演奏課程卒業。カミ−ユ・モラーヌ、カロリーヌ・デュマの各氏に師事。 1986年パリ市主催ガブリエル・フォーレ国際歌曲コンクール入選。 弘前オペラ公演「魔笛」のパパゲーノ、モノスタトス、「フィガロの結婚」のフィガロ、「こうもり」のアイゼンシュタイン、「天国と地獄」のオルフェ、「メリー・ウィドー」のダニロ党の役で出演。フランス歌曲、シャンソンのソロ・リサイタルを多数おこなう。 著書にシャンソン訳詞集「愛の唄」。現在、弘前学院聖愛高等学校教諭。弘前オペラ会員及び舞台監督。 |