2004年4月11日未明、イラクで日本人3名を人質に取っているグループが、アルジャジーラに、24時間以内に3名の人質を解放することを決めたと表明した。同時に、声明の中で、日本国民が日本政府に、自衛隊を撤退するよう圧力をかけ続けるよう求めた。
まだ、実際に人質が解放されているわけではないので、拙速かも知れない(いや、明らかに拙速です)。けれども、少しだけ、考えたことをまとめておこう。
この出来事が投げかけていることを、捕虜・人質の交換という立場から見ることができる。たとえば、拘束されている3人のかわりに、小泉首相・川口外相・石破防衛庁長官が人質になるべきだ、という見解も、あり得よう。そして、まったく日本がニュートラルな立場で、3人が拘束され、政治家として「日本国民」の安全を保つための「英雄的」行為として、そう言うことがあり得ないことは無いかも知れない。
けれども、今回の出来事をめぐる構図は違う。国際法に違反した米英のイラク侵略と不法占領、それに荷担し憲法に違反した自衛隊派遣、という事実が基調にあるのだから。イラクで日本人3人を人質に取ったグループは、人質を解放すると伝えた声明の中で、「日本国民が日本政府に、自衛隊を撤退するよう圧力をかけ続けるよう求めた」と言っていることを、思い起こそう。
そして、以下の2点も:
ファルージャでは、4月上旬、米軍が街を包囲封鎖し、攻撃を行なっており、既に400人のイラク市民が殺され、1000人が負傷した、と伝えられていること(これについては、「地獄の扉を開ける」と「ファルージャの犠牲者たち」も参照して下さい。ぜひお願いします)。そして、米軍を中心とした軍事占領下に置かれているイラクでは、これは特殊ファルージャ的な例ではなく、イラクの、どこででも起こりうること。
自衛隊は、給水活動等の復興人道支援をしている、と言われているが、「NGOに任せれば年間1億円以下の予算で10万人分の水が供給できる。自衛隊は年間300億を超える予算で、1万6000人分を供給しているにすぎない」こと。「その一方で自衛隊は武装したアメリカ兵を運んでいること」(池澤夏樹さんのページより、引用)。
これは、次のようなことを示している。すなわち、米軍主導の占領軍は、全イラク人を人質に取っていること。そして、劣化ウランのような毒を捕虜に盛り、また、今、その捕虜をファルージャなどで殺害していること。日本政府と自衛隊は、その人質を拘束する「犯人グループ」の一員となっていること。
3名が無事解放されることを、私は期待する。それ以上に大きく、米軍主導の占領軍のもとに人質となっているファルージャの人々、そしてイラクの人々が、無事解放されることを、私は期待し、要求する。その政府が「犯人グループ」を構成する国の市民権を持つものとして、日本政府に自衛隊の撤退をねばり強く働きかけていく責任への自覚(あるいはその情けない程の不在への認識)を新たにしつつ。
また、神経質過ぎるのかも知れないが、米国政府や日本政府が、「自衛隊撤退などは、我々の市民を人質に取るような野蛮なテロリストが主張していることだ。日本でも米国でも、自衛隊撤退、米占領軍の撤退を求める者たちは、テロリストの仲間だ」と叫び始めることを、危惧している。
ファルージャの人々、そしてイラク全土の人々が無事解放されることを実現するために、「犯人グループ」メンバーを政府に持つ国の市民は働きかける責任がある、というのは、カッコ付けて道徳的すぎる? 私自身は、単にこれは、侵略の経緯と偽ロジック、占領下での具体的な出来事、自衛隊派遣の経緯等から生じる、論理的な帰結だと考えている。
今、すべての人質の解放を。
川口外相が、この度拘束された3人の活動と自衛隊の活動とを等値するような談話を発表しました。恥知らずにも程があるような内容です。これに対して、3人の家族が声明を出しています。概略がP-navi infoに掲載されていますので、ぜひお読み下さい。