イラクの見解

ミラン・ライ
ZNet原文
2004年3月30日


イラクは占領を拒否している

イラクの大多数の人々は、米英の占領軍の駐留に反対しており、米英が治安回復に関与したり選挙を司ったりすべきではないと考えている。これは、戦争後に実施された二番目の全国世論調査が示していることである。この世論調査はBBCが依頼して、2004年2月に「オックスフォード・リサーチ・インターナショナル」が実施したものである(調査の結果全体はpdfでhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/3514504.stmから入手できる)。

51.2%のイラク人が米英の占領軍駐留に反対しており(31.3%は強く反対しており)、賛成しているのは39.5%に過ぎない。

66.3%の人々が米英占領軍を信用しておらず、信用しているのは25.3%に過ぎない。62.2%が、米英の暫定統治機構(CPA)を信頼しておらず、CPAを信頼しているというのは27.9%にすぎない。イラクで公共の治安を回復するために占領軍や米国が関与すべきと考えているのは12.7%に過ぎず、49.5%はイラク政府あるいはイラクの人々が治安の回復に当たるべきと考えている。

新たなイラク政府の選挙を占領軍/米国が実施すべきと考えているのは7.4%に過ぎず、8.7%は統治評議会が行うべきと考えている。23.9%はイラクの人々が行うべきであると考えており、18.2%が「イラク政府」がすべきと述べている。

イラクにどんな政権が必要かについては、CPAを選んでいるが、57.3%はイラクにはCPAは必要ないと述べている(そのうち36.9%は強くCPAの不要を述べている)。


イラク人は「米英軍は出ていけ、ただしただちにではなく」と言う

米英の占領軍(「連合軍」)を支持するかそれに反対するか問われたとき、31.3%は強く反対し、19.6%はそれなりに反対している。26.3%はそれなりに支持しており、13.2%は強く支持している。つまり、反対しているのは50.2%で賛成しているのは39.5%である。

けれども、JNVブリーフィング50で指摘したように、米英軍に対するイラクの人々の態度にはかなりの曖昧性が見られる。非常に多くのイラク人が、すぐさまの撤退を望んでいないのである。占領軍がどのくらい駐留すべきか問われたイラク人たちの答えは:「すぐ出て行け」(15.1%)、「数カ月のうち」(8.3%)、「6カ月から1年」(6.1%)、「1年以上」(4.3%)である。18.3%が「治安が回復するまで留まるべき」と述べている。けれども、多数の意見は「イラク政府ができるまで留まるべき」(35.8%)である(「決して撤退すべきではない」はたった1.5%で、10.6%は「わからない」)。

昨年夏に行われた二つの世論調査でも、即時撤退を支持しているイラク人は少数派である。チャネル4ニュースのために行われたバグダッドでの世論調査は7月19日に「スペクテータ」紙に発表されたが、米英軍の即時撤退を求めているのは13%である。76%が今のところは米英軍の駐留を望んでおり、56%が最低12カ月の駐留を望んでいるという(www.channel4.com/news/2003/07/week_3/16_poll.html

一方、バグダッド以外の4都市で米国が行なった調査では、向こう6カ月のうちに米英軍の撤退を望んでいる人々は31%に過ぎないことを示しているが、65.5%が1年のうちに撤退することを求めている(フィナンシャル・タイムズ紙・9月11日・p11)。この忍耐の少なさは、政治的状況の変化あるいはバグダッド以外で世論調査がなされたことによるかもしれない。

最新の世論調査で「イラク政府ができるまで」というのが何を意味するか不明確なため、昨年夏よりも現在の方が忍耐が少ない理由はわからない。「イラク政府ができるまで」というのは暫定政権を意味するのか、直接選挙で選ばれた政府を意味しているのか?米国の予定表では、暫定政権を6月末まで使って、2005年12月31には直接選挙で選ばれた政府を置くことになっている。人々は、投票をこんなに待つことができるだろうか?

治安問題

イラクの人々がそんなに強く占領に反対しているのだとすると、駐留をそれなりに支持しているのはなぜか?半年前のJNVブリーフィング49で、我々は、「治安のために、イラクの人々は外部の部隊に駐留してもらいたいと思っているようである」。今も、これが理由のように思える。

「最大の問題を一つ挙げて下さい」という問いに最も多くの答えとして(第二の答えの倍の人が答えている)挙げられたのは「治安/安定の欠如」である(22.1%)。次は「仕事がないこと」(11.8%)、「物価上昇」(9.5%)である。それから「電力供給の問題」(4.2%)、「住宅問題」(4.1%)、「公共サービス不足(水、道路等々)」(3.7%)、「貧しい生活水準」(3.8%)である。「占領」を挙げた人は1.1%だけだった。

けれども、自分が住む地域の治安状況についての質問には、50.1%が悪いと答え、48.9%が良いと答えている。

それにもかかわらず、次の1年で最重要な事項は何かと聞かれると、64.4%が「公共の治安を回復すること」と答えており、それ以外で最も多かった(政府のために選挙を実施すること)のは8.1%に過ぎない。

ちなみに、大差で二位につけた優先事項は経済的なものである:「インフラ再建」は28.6%、それから「経済回復」が14.7%。第三の優先事項として最も多かった二つは「インフラ再建」(19.2%)と「政府のために選挙を実施すること」(13.5%)である。

反戦運動に示唆すること

占領軍を嫌々ながら認めているのは、社会的カオスへの恐れによるもののようである。主流派メディアの報道も、この分析を確認している。

反戦運動が占領をできるだけ早く止めさせたがっていることを考えると、イラクの人々の見解と整合性の取れた反戦運動側からの要求は2つに限られることになる:イラク政府を設置して軍隊に出ていかせるか、できるだけ早く米英占領軍を撤退させ、米英に汚染されていない国際治安部隊で置き換えることである。

第一の選択肢の問題は---この選択肢は米英の政府が、これは実際に自分たちの政策だ(米英が完全撤退する意図はないという点を除けば)というであろうが---、占領下でできた政府は独立ではあり得ないことである。


米英は撤退、国連を

したがって、反戦運動がイラクの人々が表明した(いくつかの調査が示すような)希望を心に留めるならば、「即時占領軍撤退」を要求するかわりに、米英の占領軍への代替を求め、米英の政治的・経済的「顧問」の撤退を求めることである。


国連という選択肢

JNVは、イラクの政党が社会を変革するための支援を行うため、国連暫定行政機構がイラクに必要だと考えている。昨年末にイングランド・スコットランド・ウェールズで行われた数十の非公式な意見調査では、この見解が、一つの会合以外の全てで、多数派であった。

けれども、国連という選択肢はイラクでは不人気である:国連が治安回復に関与すべきと考えているのは0.6%にすぎず、イラク人によるイラクの統治を助けるために国連が関与すべきと考えているのは3.5%だけであり、全国選挙を実施するために国連が関与すべきと考えているのは6%に過ぎない---一方、イラクの統治評議会は8.7%の支持しか得ていないし、米国はたった5.3%の支持、CPAに至っては0.3%の支持である。

けれども、イラクの人々が、米英の占領か、米国の支配下にない国連暫定統治か、単なる米英の撤退のいずれを求めるかと問われるならば、撤退と治安に対する世論調査の結果を考えるならば、国連の選択肢を選ばないと考えることは難しい。

お終いに、BBCと主流派メディアが、オックスフォード・リサーチ・インスティチュートの世論調査の中で、占領に大多数のイラク人が反対しているという部分を強調しなかったことは言うまでもない。そのかわりに、多くのイラク人が向こう一年で状況が改善されるだろうと感じていることを強調していた(たとえば、 'Survey finds hope in occupied Iraq', BBC News Online, 16 Mar.; Simon Tisdall, Guardian, 19 Mar)。

JNVはJustice Not Vengeance(復讐ではなく正義を)の略で、ブリーフィングを発行している。


イラクのような状況下での世論調査の結果がどれだけ正確であるかは議論の余地のあるところですが、数値を示しているのは大切だと思い、紹介いたします。大多数のイラク人が占領に反対し、一方で治安を安定させたかたちでの撤退を求めているという結果の大枠は、理解できます。

1万人ものイラク人を殺したジョージ・W・ブッシュ大統領は、最近行われた、メディアを前にした年次報告で、「大量破壊兵器はどこだ? 大量破壊兵器はどこだ? 大量破壊兵器はどこだ」というおどけた(!)スライドを呈示したとのことです。石油支配と利権のために多くの人々を殺害し、劣化ウラン弾により大きな被害を引き起こした人物が、その言い訳につかった「大量破壊兵器」(大量破壊兵器の有無をめぐる主流メディアの議論の問題そのものの一部については、こちらをご覧下さい)。何よりも恐ろしいのは、少数のメディア関係者を除いて、このパフォーマンスに反吐が出るような嫌悪を持った者があまりいなかったばかりか、それを楽しみさえしたメディア関係者が多かったということ(その後いろいろな批判を浴びていますが)。人間がそうあるべき認識が、腐っていることを示しています。

つぎのような依頼が届きました。転載歓迎ということで、転載致します。

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┃強制連行・新潟訴訟 国は控訴するな!┃
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控訴断念のメール、ファックス、郵便等を送ってください。
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さる3月26日、新潟地方裁判所において、「中国人強制連行裁判・新潟訴訟」の判決が言い渡されました。

新潟地方裁判所は、被告国と企業の共同不法行為を認め、被告一人につき800万円、総額8800万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

国に対する責任を認めたのは今回初めてで、大変画期的な判決です。

すでに企業(リンコーコーポレーション)は控訴しましたが、現時点で国はまだ控訴していません。国に控訴断念を要請する行動を行います。

皆さんにお願いです。

日本政府に控訴断念のメール、ファックス、郵便等を送ってください。

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メール・FAX・郵便の宛て先です。 

◎内閣総理大臣 小泉純一郎様 
〒100-0014東京都千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣官邸
TEL03-3581-0101 FAX03-3581-3883
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
(首相官邸のホームページ。ここにメールを書き込めます)

◎内閣官房長官 福田康夫様 
〒100-8914東京都千代田区永田町1-6-1 内閣府
TEL03-5253-2111
http://www.iijnet.or.jp/cao/opinion.html
(内閣府のホームページ。ここにメールを書き込めます)

◎外務大臣 川口順子様
〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1
TEL03-3580-3311 FAX03-6404-2121
http://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/index.html
(外務省のホームページ。ここにメールを書き込めます)

◎法務大臣 野沢太三様
〒100-8977 東京都千代田区霞ヶ関1-1-1(中央合同庁舎6号館)法務省
TEL03-3580-4111 FAX03-3592-7393
メール webmaster@moj.go.jp
http://www.moj.go.jp/


■文例:

日本政府は「中国人強制連行裁判・新潟訴訟」の新潟地裁判決に対する控訴を断念し、 謝罪と賠償を行うよう、強く求めます。
(ひとこと) 
(年月日)
(名前)
(住所)


国際社会で信頼を得るには、過ちを真摯に受け止めることです。
日本政府は「中国人強制連行裁判・新潟訴訟」の判決に対する控訴を断念して下さい。
(ひとこと) 
(年月日)
(名前)
(住所)

問い合わせ:
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中国人戦争被害者の要求を支える会
〒170-0005東京都豊島区南大塚3-44-14村田第2ビル3階
TEL03-5396-6067 FAX03-5396-6068
http://www.suopei.org/index-j.html
suopei@tky.3web.ne.jp
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益岡賢 2004年3月30日 

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