コロンビアの泥沼

ジェイソン・ハーゲン
サン紙(米国ボルチモア)
2003年6月8日


米国の人々がもっぱら中東に関心を払っている中、米国政府は、密かに、何十年も渦巻いていた戦争をかき立てている。

1999年に「プラン・コロンビア」が始まって以来、コロンビアは米国の軍事援助受け取り手として、イスラエルとエジプトに次ぐ第三位となった。この援助は、もともと、コロンビアの多くの武装グループ---コロンビア革命軍(FARC)と民族解放軍(ELN)ゲリラ、そしてコロンビア軍と結びついた右翼準軍組織のコロンビア自警軍連合(AUC)---の資金源となっている麻薬貿易を減少させることを目的としていた。

ワシントンは、これら3集団---合計で3万5000人のメンバーを擁する---をテロ組織と見なし、コロンビアの民主主義とアンデス地域の治安、米州自由貿易の展望を脅かしているとしている。

「プラン・コロンビア」が始まって以来、米国は25億ドル以上を、コロンビアにおける軍事的・政治的キャンペーンに費やしており、この1年には7億ドル近くをさらに費やす予定である。

けれども、昨年以来、米国の軍事援助は対麻薬戦争を超えて広がっている。援助の一つは、ロサンゼルスに本社を置くオクシデンタル石油が使うカニョ・リモン−コベニャス石油パイプラインの防衛である。米軍特殊部隊が、現在、ゲリラによる爆破からパイプラインを守るために、コロンビア軍兵士に対ゲリラ戦略を訓練している。

石油パイプラインをはじめとする戦略的インフラを防衛しようとすることにより、米国は、ほとんどの米国政策立案者そしてコロンビアの政治家すら完全には知らないような複雑で深い根を持つ内戦に引きずり込まれていく危険を負っている。ビル・クリントン米大統領の時代に期限を切らずに麻薬を対象として始まったプラン・コロンビアは、ブッシュ政権により、明確な目的も成功の定義も終了の戦略もないさらに曖昧な作戦へと変換されることとなった。現在、援助をエスカレートさせるという選択をすることにより、将来の米・コロンビア両国の政策上の選択肢は狭まる。

コカインやヘロインと同様、石油も、武装グループの戦争遂行力を高める収入をもたらす。そして、戦争は、平和的状況では武装グループが手にすることができいような利益を得る機会を手にすることになる。ゲリラは、よく、東部平野で石油企業から資金を強請り、一方、中部マグダレナ地域では、準軍組織がガソリンを盗んでブラックマーケットで売却している。何年もの間、コロンビア軍は、限られた資源を、パイプラインと石油施設の防衛につぎ込み、地域の統制や武装グループによる攻撃から市民を守るといったことをしてこなかった[コロンビア軍は準軍組織と結びついて人権侵害を犯している]。

コロンビア北東部の、ベネスエラに隣接するアラウカ州は、オクシデンタル石油施設の中心であり、ますます、米国とコロンビアの軍事作戦の焦点となってきている。強硬派アレバロ・ウリベ大統領のもとで「平定」を行うショーケースとして、治安のプライオリティとされた結果、アラウカの状況はひどいことになっている。この地方では武装グループが派遣を争い、今年の殺人は10万人あたり160人で、1990年代後半の2倍となっている。米国では、10万人あたり6人以下である。

将来、米国の介入がどのような事態を引き起こすかについては、参考になる例がある。1998年12月、オクシデンタルのカニョ・リモン施設から30マイル南にあるサント・ドミンゴの町に、コロンビア空軍のヘリが、クラスター爆弾を投下し、17名を殺し(このうち6名は子供だった)、25名に重傷を負わせた(15名は子供だった)。この爆撃には、米国フロリダ州に本社を置く、航空偵察の契約をオクシデンタルと結んだエアースキャン社も参加していた。エアースキャン社で働く3人の米国人がこの事件に関与していた。その一人は、当時現役の米国沿岸警備隊員であった。これらの者たちは告訴されていない。

エアースキャン社のパイロットは、海外に本社を置くセキュリティ関係の私企業であり、海外の石油企業に雇われたものであるが、頻繁に、コロンビア軍を支援してきた。この事件の場合、対ゲリラ作戦に関与し、民間人を殺したのである。こうした企業の軍事的立場は不透明であるため、その行動もはっきりせず、米国市民さらにはコロンビア政府に対するこれらの者たちの責任も制限されている。

これは、事態が悪化する際にとりわけ問題である。過去5年に少なくとも11人の米国人契約社がコロンビアで死亡している(今年に入っては5人)。そして、他に3名が、FARCの捕虜となっている。けれども、これらの者たちとその行動に関する情報は、ほとんど明らかにされていない[コロンビア人は年間3500人から4000人が犠牲になっています]。

サント・ドミンゴでの出来事は、米国の対コロンビア政策のさらなる危険を象徴している。というのも、軍事私企業は今ブームであり、ペンタゴンはこれを雇ってコロンビアや他の紛争地域に投入しているからである。昨年、3つの軍事私企業が国務省と、17の私企業が国防省と、コロンビアにおける契約を結んだ。コロンビアで最も重要なニュース週刊誌セマナは、これらの契約し企業を「無法・無心のランボーたちからなるギャング」と読んでいる。こうした憂慮にもかかわらず、政治問題次官マーク・グロスマンは、「契約し企業は、[コロンビアで]我々の計画を遂行するにあたって非常に重要であることに変わりはない。これが、現代世界のやり方である」と述べている。

米国国務省と国防省は、自分たちの目的はコロンビアの人々に治安を提供することであり、カニョ・リモン・パイプラインの防衛は、安全で安定したコロンビアをもたらすための、コカやケシに対する空中薬剤散布や対ゲリラ作戦支援といった総合的な作戦の一部であるとますます強く主張している。米国議会がいっそうの透明性を求めているにもかかわらず、このミッションが何年かかり、総額どれだけの金を要するのかは不明である。

しかしながら、こうした定義の曖昧な作戦は、一部のコロンビア政府職員がまさに望むところである。これらの人々は、米国が、コロンビアの歴史的な社会政治問題を、軍事援助と、そしてさらには何万人もの米軍兵士の投入により、解決することを期待しているのである。

何十年も続いてきた扱いようのない紛争に手を出すかわりに、米国は、コロンビアの和平プロセスに対する外交的働きかけを重視すべきである。米国企業の資源を守るためにも、人権侵害で悪名高い軍への支援を止めることが必要である。

益岡賢 2003年6月11日

一つ上へ] [コロンビア・ページ] [トップ・ページ