コロンビア:化学戦争の拡大
ダニエル・リール&諸情報源
2005年6月10日
WW4原文
過去数カ月、コロンビアの太平洋岸チョコ州の州都キトの人々は、地元の空港に、プラン・コロンビアでコロンビアに来た「グリンゴ」たちとその仲間のコロンビア人たちを満載したヘリと小航空機が毎日着陸するのを目にしている。
彼らが来ている目的は一つ:チョコの膨大な土地にある不法作物に毒薬をスプレーすることにある。コロンビアのニュース誌『セマナ』の2月11日号に、チョコ州のジャーナリスト、アレホ・レストレポは、この化学攻撃により、地域の生物の多様性と分水界とが危機に晒されていると述べている。
何世紀にもわたって、先住民とアフリカ系コロンビア人は、コロンビアでも最も豊かな植物相と動物相を誇るチョコ州の自然環境を維持してきた。けれども、現在、漁労と小規模なユッカ芋とバナナ栽培によるこれらの人々の生活様式は危機に晒されている。セルトレポは、とりわけ、環境影響調査なしにグリフォサート散布を承認したことに抗議している。
チョコに本部を置く太平洋環境研究所のビスマルク・チャヴェラは、『セマナ』誌の同じ号でのインタビューで、チョコ州で、人々が急性の呼吸器・皮膚疾患にかかったケースが347件報告されており、その70%は3歳未満の子どもであると述べている。
チャヴェラのグループは、毒薬散布に反対するコロンビア及び国際的な環境団体・人権団体の連合に参加している。チョコ州での毒薬散布に反対して2月に行われた請願には、地球の友ラテンアメリカ、オープン・ソサイアティ・インスティチュート、ワシントン・オフィス・オン・ラテンアメリカ、生物的多様性の保護を行う組織グルポ・セミージャス、そしてコロンビアの7団体が署名した。
コロンビアの環境団体のネットワークであるエコロンビアによると、さらにとりわけ心配なのは、1000万ヘクタールにおよぶ50のコロンビア国立公園に対する潜在的なダメージである。エコロンビアはまた、この脅威が、「エコツーリズム」に対してこれら公園がますます開かれている中で訪れた皮肉を指摘している。エコロンビアは、この政策を、国立公園の「私有化」であるとして抗議している。エコロンビアは、「国立公園はコロンビアの遺伝子バンクである。これを私有化したり毒薬で爆撃したりすることは、「ナショナル・リバティー」に火を付けるよりもはるかに重大な問題である」と述べている。
2004年3月末、独立労働者革命運動(MOIR)の上院議員ホルヘ・エンリケ・ロブレドが率先して、かなりの数のコロンビア国会議員が賛同した毒薬散布に抗議する公式声明を発表した。活動家研究者からなる国際グループであるトランスナショナル・インスティチュートは、国立公園への毒薬散布は、生物多様性条約、先住民の権利に関するILO第169号条約、ラムサール湿地条約を含む、コロンビアが批准しているいくつかの条約、そして天然資源保護を謳うコロンビア憲法第97条と80条に違反していると指摘する。
こうした圧力のもと、アレヴァロ・ウリベ大統領の政府は、3月、さらなる調査が進むまで毒薬散布を停止することに合意した。アンデス地域対麻薬イニシアチヴのもとで米国議会が承認した2003年の対コロンビア援助パッケージでも、水資源と保護地域の保護、ダメージを受けた資産と合法作物の弁済という条件を課している。この規程はまた、一定の条件が満たされていることを米国国務省が議会に証明するときにのみ空中散布資金は提供されるとしている。2003年12月、米国国務省は議会に調査の結果報告書「コロンビアにおける不法コカの空中除去に関する問題の報告」を提出し、条件が満たされていると公式に保証した。ところが、2004年2月、環境法専門家からなる西半球の組織である米州環境保護協会(AIDA)は、この確証に疑問を呈する声明を発表し、議会に対し、「国務省が条件を完全に遵守することを示すまで化学的除去計画の資金を差し止める」よう議会に求めた。AIDAは次のように述べている:「国務省報告を綿密に読むならば・・・・・・条件が満足されていないことがわかる。たとえば、国務省は、散布は、環境に害を与えるような合理的範囲を超える危険を呈していないことを示しておらず、また、健康と合法的作物への危害の苦情が十分に評価され公正な賠償が提供されていることも示していない」。
けれども、議会は行動を起こさず、ウリベ政権は、3つの国立公園で散布を再開すると発表した。UNESCOが1986年に生物圏保護区に指定した北部の公園シエラ・ネヴァダ・デ・サンタ・マリアと、アンデス東部の斜面の密森にあるカタツンボとラ・マカレナである。
コロンビアの内務副大臣マリオ・イグアランはメキシコに本部を置く汎米的な環境誌『ティエラメリカ』のヤディラ・フェレル記者に、散布の再開は、コロンビア国家麻薬評議会(CNE)が2003年に発布した決議第0013号により許されると語った。この決議では、不法作物が栽培されているという証拠があり、かつ人手による麻薬作物の除去の可能性がほとんどないときには散布を認めている。
コロンビアの環境団体は、行政判断に関する最高司法府である国家評議会にこの決議を無効とするよう訴えたが、イグアランは、それは散布作戦を中止させる権限を持たないと主張する。5月14日付のフェレルの説明によれば、イグアランはまた、OASの組織である米州麻薬悪用統制委員会(CICAD)が3月に行なった調査で、グリフォサートは重大な環境的影響を及ぼすものではないとされていると指摘している。
米国とコロンビアそして英国の要請で作られたこの報告書は、コロンビアで麻薬根絶に使われているグリフォサート混合物が人間の健康と環境に及ぼす影響を調べている。この報告書は、散布される混合薬品----グリフォサートと表面活性剤コスモフラックスを混ぜたもの----に晒されることが人間の健康に引き起こす危険は「極めて小さく」、自然に対して直接の影響を及ぼす危険は「無視できる」と結論している。けれどもNGOの連合体である「コロンビアに関する米国オフィス」は、この121頁の報告では、散布が水生生物や両生類に及ぼす影響に関する憂慮が深く含まれていると述べる。報告書は、「グリフォサートとコスモフラックスの混合物の[環境上の]毒性は、グリフォサートそのものよりも大きい」と指摘している(これは混合物の人間に対する毒性とは対照的である。人間に対しては、グリフォサートだけのときと同じであるとされている)。報告書は、「水生生物と浅い水中の藻が」「水面への直接散布により危機に晒されているかもしれない」と述べている。報告書は、麻薬作物根絶プログラムに対し、「現在使われている混合物よりも水生生物に対する毒性の低い、グリフォサートと補助薬の混合物を見つける」よう勧告している。この勧告に対して米国政府もコロンビア政府もいまのところ何も応えていない。コロンビアはこの報告書を賞賛し、コロンビア内務相サバス・プレテルトは、「この科学的研究は我々に道を示した。我々は正しいことをやっており、散布計画を推進する」と述べた。
フェレルの報道は、この除草剤が環境に及ぼす危険が「重大ではない」という報告書の結論に疑問を呈している。エクアドルで外務省に対麻薬散布政策の助言を行なっているエクアドル環境省の評議会の調整官サンティアゴ・サラサール・コルドヴァは、この報告は何をもって「重大」な危機とするかを定義していないと、抗議の見解をフェレルに述べた。エクアドル国境に近いコロンビアの地域で散布することは、ウリベ政府に公式の抗議を表明したエクアドル政府との緊張の種である。
サラサールはまた、この研究が行われたのは9月から3月の間で、「たとえば癌を引き起こす影響について語るには時間が短すぎる」。
イグアランは、人手で麻薬作物を除去することが理想的であることを認め、政府は約3000ヘクタールの保護地域に対してそうしようと期待していると述べる。けれども、国立公園を含む約7万5000ヘクタールでは、武装グループが地上からのアクセスを妨害するために散布が必要であると言い張る。
国立公園に毒薬を散布する決定をしたことで、コロンビアはEU諸国からの開発援助を失うかも知れない。4月28日、コロンビアの日刊紙エル・エスペクタドールは、オランダが国立公園総監フリア・ミランダに、保護地域への散布を決定したかどうか確認するよう問い合わせたと報じた。というのも、それは「オランダ大使館が資金を提供している活動の中止を要請する理由となるかも知れない」ためである。
元環境相フアン・マイルは、フェレルに、2003年のCNEの決議は「コロンビアの環境に関して起こりうる最も深刻な状況の一つ」を引き起こしたもので、「コロンビアの人々全員の遺産に対する攻撃である」と語った。
散布に脅かされている地域に暮らす農民とバリ先住民たちもまた、計画されている毒薬散布に抗議している。ボゴタの日刊紙エル・ティエンポは5月16日、リオ・グアヤベロ地域とラ・マカレナ国立公園の11の農民組織が、散布ではなく人手による除去を求める声明を発表したことを報じた。「アリアリ川とグアヤベロ川の農民環境活動家協会」(ACARIGUA)のグスタヴォ・デル・リオ報道官は、散布しても農民は他の地域でコカ栽培を始めるだけであり、さらに森林が破壊されると述べた。彼は、政府が農民に生存の代替手段と公式には農業が禁止されている公園地域外への再定住の手段を提供するならば、農民たちは喜んで作物を手で取り除くと語っている。
散布はどうやらすでにシエラ・ネヴァア国立公園では始められているようである。シエラ・ネヴァダの斜面に位置するグアチャラ行政区のコミュニティ指導者エルベル・ディマスは、エル・ティエンポ紙に対し、毒薬に触れたために子どもたちは下痢や皮膚病を病んでおり、散布のためにコグイとウィワ先住民の一部が自分たちのコミュニティを放棄することを余儀なくされていると語った。対麻薬警察北部地域司令官オスカル・アテオルチュア大佐は、散布は国立公園や先住民保護区の外で行われていると確言した。
コカ現象の根に対処するためにコロンビアで何がなされるべきかについては二つの対立する国際的見解が存在する。一つは米国が命ずるもので、力づくで、そして化学薬品を散布することで、麻薬作物をただ根絶するというものである。第二は欧州共同体が推進するもので、コロンビア社会構造の不正に対処し、農民たちをコカ栽培に追いやる問題を解決するために投資するというものである。けれども、ウリベは、私有化と自由貿易そして不法作物の力による根絶を目指す国内政策を追求してEUとの関係を危機に陥れている。4月26日、ボゴタで米国国務長官コンドリーザ・ライスがウリベと5時間にわたり面会したとき、政策の最優先課題として持ち出されたのは、自由貿易とコカ根絶プログラムであった。
RESOURCES:
Alejo Restrepo Mosquera in Semana, Feb. 11
http://semana2.terra.com.co/archivo/articulosView.jsp?id=84740
Bismark Chaverra interview in Semana, Feb. 11
http://semana2.terra.com.co/archivo/articulosView.jsp?id=84735
"El Choco Tambien es Colombia," petition online at Rebelion
http://www.rebelion.org/noticia.php?id=11667
Ecolombia page on threat to national parks
http://www.ecolombia.org/parques.htm
TNI Drugs and Democracy program page on Colombia
http://www.tni.org/drugscolombia-docs/thedebate-e.htm
Interamerican Association for Environmental Defense (AIDA) statement
http://64.233.161.104/search?q=cache:Z8z58__oJ40J:www.aida-americas.org/templates/aida/uploads/docs/AIDA_on_DOS_2003_certification.pdf+Resolution+No.+0013+colombia&hl=en
AIDA homepage
http://www.aida-americas.org/aida.php
Yadira Ferrer in Tierramerica, May 14
http://www.tierramerica.net/2005/0514/iarticulo.shtml
US Office on Colombia Info-Brief on the CICAD report
http://usofficeoncolombia.org/InfoBrief/042505.htm
CountryWatch summary of article from El Tiempo, May 16
http://aol.countrywatch.com/aol_wire.asp?vCOUNTRY=54&UID=1521182
■テレビ番組のご案内
6月15日(水)、日本テレビ(系列を含む)午後10時54分〜の「きょうの出来事」にて、ジャーナリストの豊田直巳さんが、イラクとアメリカを結んでの劣化ウラン問題の現状をレポートするそうです。枠が小さいので、その日発生した事件・事故・災害などで延期になる場合もあるとのこと。
イラクのサマワの劣化ウラン、子どもたち、そしてサマワを訪れたアメリカ兵の劣化ウラン問題、そして現地に派遣された自衛隊員の被曝は大丈夫なのか?をテーマにしました8分半の特集番組を制作しました。03年4月、バグダッドで見たアメリカ軍攻撃機の劣化ウラン弾発射の瞬間04年3月のサマワの劣化ウラン汚染の実態、地元の子どもたちの爆発的な感染症の流行、劣化ウランに対して無防備な自衛隊そして今年4月のニューヨークでの帰還米兵から生まれた指のない赤ちゃん。豊田の劣化ウラン被害取材の中間報告です。
是非ご覧いただき、ご感想、ご意見を豊田までお寄せいただくと同時に、日本テレビ報道局の「きょうの出来事」にもお寄せいただきたく存じます。番組のHPはhttp://www.ntv.co.jp/kyodeki/です。
とのことです。
■自衛隊の撤退を求める国会請願署名
締め切りは7月15日。詳しくは、「イラクの声」署名連絡会ウェブサイトをご覧下さい。連絡先は:
「イラクの声」署名連絡会
FAX 06-6624-2835
e-mail iraq_action@hotmail.com
郵便振替口座 00990-7-296902 イラク署名運動