ヒューマンライツ・ウォッチなどの人権団体によると、ここ数年、コロンビアでの人権侵害の７０％〜８０％は、コロンビア軍と密接な関わりを持つ右派準軍組織「死の部隊」によるものとされています。一方、ＦＡＲＣなどのゲリラによるものが約１５％程度、残りが軍が直接関与する人権侵害です。ヒューマンライツ・ウォッチの報告The "Sixth Division": Military-Paramilitary Ties and U.S. Policy in Colombia（英語）もご覧ください。
コロンビア右派準軍組織、コロンビア自衛団連合（ＡＵＣ）のある地域ブロックが、最近、その兵士たちにクリスマス・カードを送った。カードに添付された手紙には、準軍組織の次のような宣言が書かれていた。「クリスマスの到来とともに、我々の来年に向けた新たな計画と希望が到来する。」不幸なことに、ＡＵＣの来年に向けた計画と希望は、これまでと同様、コロンビアの労働組合指導者たちの虐殺を意味することになりそうである。自分の兵士たちには挨拶状を送る一方、コロンビアの労働組合員に対しては弾丸を撃ち込んでいる。２００１年が終わりに近づいた今、この１年で記録的な数の労働運動指導者たちが殺害された。先週の、石油労働者組合指導者であるアウリ・サラ殺害により、２００１年に暗殺された労働組合員の数は１５２名と、２０００年の１２８名より多くなった。
過去１５年間にコロンビアでは４０００人以上の労働組合員が殺害されており、労働者の権利を求めるには、コロンビアは圧倒的に危険な国なのである。実際、２０００年に世界中で殺害された労働組合指導者の５人に３人はコロンビア人であった。最新の犠牲者アウリ・サラは、コロンビア北部で、ＡＵＣにより殺害された。このとき右派死の部隊は彼がＥＬＮと関係していると主張していた。２００１年２月、ＡＵＣは、「ゲリラの手先で国の裏切り者」として、１０４人の労働組合員を軍事標的とすると宣言していた。サラが殺害されたとき、準軍組織は、自ら宣言した殺害目標を大きく乗り越えたのである。
今年（２００１年）前半に、ヒューマンライツ・ウォッチの報告は、コロンビア軍の実働部隊の半分が、右派死の部隊と関係を持っていると述べた。こうした関係があるため、米国の全米鉄鋼労働者組合の代表であるレオ・ジェラルドが、コロンビア軍に対する米国の支援を批判したのであった。「我々は、コロンビア軍に送られる軍事援助に強く反対する。まさに我々が資金を提供しているこのコロンビア軍によって、労働組合員や罪のない人々が殺されているのである。」
ジェラルドの立場は、米国労働組合連盟ＡＦＬ−ＣＩＯの政策とは大きな対象をなしていた。ＡＦＬ−ＣＩＯは１９８０年代、労働組合活動家に対する残忍な弾圧を続ける中米諸国に対するレーガン大統領の軍事支援を公に指示したのである。全米鉄鋼労働者組合の立場はまた、ワシントンＤＣを拠点とする国際労働権利基金とともに、コロンビアの組合のために、米国連邦裁判所にコカコーラを訴えたことでもわかる。この訴訟によると、工場の一つにおける組合活動家の殺害を含む、コロンビアの関連瓶詰め工場での労働組合指導者たちに対する準軍組織の活動を、コカコーラは知りながら、それにより得をしていたというのである（コカコーラと「死の部隊」を参照）。
他の米国企業も、コロンビアにおける労働組合員弾圧により利益を得ている。特に、石油及び鉱山企業である。２００１年３月、アラバマに本社を置くドラモンド社（Drummond Corporation）の社員がコロンビア北部のロマ鉱山に向け会社のバスに乗っていたところを、準軍組織に止められた。労働者の２名、バルモレ・ロカルノ・ロドリゲスとヴィクトル・ウーゴ・オルカシタがバスから連れ出され、死の部隊に処刑された。この２名は、鉱山労働組合の組合長と副組合長であった。ドラモンド社は、準軍組織の脅迫があるので鉱山で寝泊まりしたいという労働者の要求を拒否していたのであった。
労働組合員が迫害されるため、コロンビアでは、賃上げと労働環境改善のために労働者が組織することが難しい。そして、労働組合の指導者たちを暗殺することにより、準軍組織は、多国籍企業に利益を与える一方でコロンビア労働者の何千という仕事を奪ったグローバル化に対する最も強行な反対者を黙らせているのである。コロンビアの労働人口の２０％近くが現在失業しており、これは、ラテンアメリカでも最高の失業率である。さらに２０％が半失業状態にある。一方、カルロス・カスタニョ（ＡＵＣのリーダー）の望みが実現するならば、経済の深刻化の中でコロンビア人労働者の苦悩を改善しようと試みる人々には、クリスマスの祝福も新年もないということを、右派死の部隊が明らかにしたということになるのである。