米国国務省は、過去4年間、コロンビアの左翼ゲリラグループ二つ、すなわち、コロンビア革命軍(FARC)と民族解放軍(ELN)を、海外テロリスト組織(FTO)のリストに入れてきた。今年、国務省は、右翼準軍組織であるコロンビア自衛軍連合(AUC)もテロリストであるとした。
しかしながら、FARC・ELNと異なり、AUCはFTOのリストには入れられておらず、第二リストに挙げられているのみである。国務省の対テロコーディネータエドムンド・J・ハルによると、これは、AUCの活動が「我々の注意を引き、この組織をもっと詳しく観察することになる」ことを示すものだという。このため、AUCは、FTOリストに挙げられているFARCやFLNのような法的制裁の対象とはなっていない。
先週(2001年4〜5月)、国務省の『グローバル・テロリズムのパターン2000』報告書が発表され、そこにAUCが含まれたことで、人権団体と国務相自身の人権報告が長年にわたって述べてきたこと、すなわち、コロンビアにおける市民虐殺と人権侵害の大多数はAUCによるものであるということがついに認められた。AUCはまた、誘拐と麻薬取引にも関与していると報告書に述べられることとなった。
FARCとELNがFTOリストに挙げられたのは、まさにこうした行為によってである。FTOリストに挙げられた団体には、資金や物資の提供が禁止され、米国への入国が拒否され、また、米国の金融機関はFTO組織とそのメンバーに対する資金を凍結することが要求される。ところが、AUCは同じテロリスト活動を行っているにも関わらず、二次リストに挙げられているだけなので、国務省の制裁はAUCにもそのメンバーにも適用されないことになる。
国務省によると、コロンビアのゲリラグループとAUCとの最大の違いは、「準軍組織は米国人に対する行動をとってこなかった」おとであるという。こう述べているのは、つまり、米国人を標的とするグループのみが完全なテロリストグループであり、それゆえ米国の制裁対象となるということだろうか?このような分類は、AUCをはじめとする、米国の政治経済利害と目的を一にする(手段は必ずしも同じではないかもしれないが)グループの犠牲となった何百万ものコロンビア及び世界の人々にとって薄ら寒いものである。
何故今年、コロンビアの準軍組織AUCが報告書に含まれたか聞かれた国務省のハル報道官は、「AUCについては、昨年、活動が劇的に活発になり、例えば誘拐や一般市民の殺害といったテロ行為の戦略へと戦略を変えていく傾向が見られたからだ」と述べた。けれども、既に述べたように、人権団体や国務省自身すら、AUCが長年にわたりテロ行為を続けてきたのであり、ハルが主張するような戦略の変更は特にない。
おそらく国務省がAUCを報告に含めた理由としてよりありそうなのは、AUCの軍事力が増大し、その虐殺を見て見ぬ振りをするのがワシントンにとって困難になってきたためであろう。けれども、AUCを二次的リストに載せることで、国務省は、コロンビアの主要なテロ組織がゲリラであると示唆し続けながら、準軍組織の行為を無視してきたという批判をかわすことができる。
AUCの資金の一部は、コロンビアの経済エリートたちから出ている。そして、このエリートたちの利害は、米国政府と米国企業の利害と一致しているのである。これらの人々は、コロンビアでの政治的・経済的現状を維持するために、ゲリラの反乱と戦っている。FARCもELNもともに、コロンビアで適用されている新自由主義経済モデルに反対している。この新自由主義モデルは、IMFが1999年12月に27億ドルの貸付を行う代わりにコロンビア政府に適用したものである。
FTOリストからAUCを除外することにより、米国国務省は、組織の暴力的行動によってよりも、その標的が誰であるかによって、テロリズムを判断するという点を自ら明らかにした。FARCとELNは米国人を標的にするだけでなく、コロンビアにおける米国の政治的・経済的利権に対しても闘っている。これらの組織は、それゆえ、FTOリストに挙げられる。その一方で、国務省リスト作成において適用された二重基準は、米国の利益にかなうテロリズムは、米国政府にとって、テロリズムではないことを今一度示したのである。