ドラモンド社はコロンビアで利益と悲惨を生み出している
ギャリー・リーチ
2006年10月2日
コロンビア・ジャーナル原文
2006年8月上旬、コロンビア北部の都市ブカラマンガとサンタ・マルタを結ぶ高速道路を車で走っていたとき、制服を着たオフィサが私たちに道路脇によって停車するよう手で信号を送ってきた。このオフィサはウォーキートーキーで誰かに話しながら私たちの車に近づいてきた。そのとき私は、彼の制服に「私設警備員」というマークが付いているのを目にした。胸ポケットから下がっていた名札は、彼がドラモンド社に雇われていることを示していた。私はコロンビア人運転手とともに、アラバマに本社を置くドラモンド社の、セサル州のラ・ロマ町近くにある露天掘りの石炭炭坑の入り口をちょうど過ぎたところだった。この警備員は、炭坑の警備担当主任が着くまで私たちを拘留するよう命ぜられていると述べた。10分後、ドラモンド社の警備担当主任が、トラック一杯のコロンビア軍兵士を連れて到着し、この地域で何をしているか私たちに質問し始めた。そのとき私は事態にはっきり気づいた。私たちは、公共の高速道路で、米国の鉱山会社の武装した私営警備員に拘留され尋問を受けているのだった。
1980年代後半、ドラモンド社は新自由主義的すなわち「自由市場」的なグローバル化のもとで行われていた規制緩和を利用し、ラ・ロマ近くの露天掘り炭坑および石炭を米国などの諸国に送るためにカリブ海に面した港を買い取った。その後、同社は、このプリベノウ炭坑の石炭生産を年鑑2000万トン以上に引き上げたため、この炭坑は世界でも最大の炭坑の一つとなり、ドラモンド社の年間収入17億ドルの中核を担う収入源となった。
安価なコロンビアの石炭----これは労働者の低賃金とコロンビア政府が与えた有利な操業許可のおかげでもある----が得られたため、ドラモンド社はアラバマ州の5つの炭坑を閉鎖し、より高い賃金を受け取っていた米国の炭坑労働者1700人を解雇した。1時間に18ドルを稼いでいたアラバマ州の炭鉱労働者が解雇され、1時間たった2ドル45セントしか払わなくてよいコロンビア人炭鉱労働者を雇うことができたため、ドラモンド社は相当の賃金を節約することができた。賃金の節約だけでドラモンド社は年間25万ドル以上の利益増を達成した。しかもこの数値には、米国の労働者を雇う場合には必要な高額の健康保険をはじめとする諸福利を提供しなくてよいことから得られる利益は入っていない。
しかしながら、コロンビアでビジネスを行うことにしたため、ドラモンド社は、コロンビアの左派ゲリラと、米国が支援するコロンビア軍およびその同盟者である準軍組織との間で数十年にわたって続いている内戦に巻き込まれることになった。2001年3月、右翼準軍組織の「死の部隊」がドラモンド社のプリベノウ炭坑に労働者を運ぶバスを止め、バルモレ・ロカルノ・ロドリゲスとビクトル・ウゴ・オルカシタをバスから引きずりおろして処刑した。犠牲者の二人は、コロンビアの労働組合シントラミエネルヘティカ----炭鉱労働者の組合である----の地方支部代表と副代表だった。ドラモンド社は、その直前、準軍組織の脅威があるためドラモンド社の炭坑で寝たいというこの二人----当時ドラモンド社と契約交渉にあたっていた----の要求を拒否したところだった。7カ月後、組合支部の新たな代表となったグスタボ・ソレル・モラもやはり準軍組織によって会社のバスから引きずり出され、殺された。
2002年、ドラモンド社は殺害を行った準軍組織の実行犯たちを「幇助し教唆した」として、シントラミエネルヘティカのために米国連邦裁判所への告訴がなされた。ドラモンド社はこれを否認しているが、コロンビアの元諜報士官ラファエル・ガルシアは、宣誓のもとに、組合の主張を支持する証言を行っている。ガルシアは、ドラモンド社のコロンビア操業を統括するアウグスト・ヒメネスが20万ドルの現金を詰めたブリーフケースを準軍組織指導者ロドリゴ・トバル・プポに届けるよう手渡した会議に自身も参加していたと証言している。ガルシアは、「その金は、ドラモンド社で働く特定の労働組合指導者を暗殺するためにトバル・プポに届けられることになっていた」と証言している。さらに元諜報士官ガルシアは、標的は2001年に殺された3人の組合指導者のうちの2人だったと述べている。
シントラミエネルヘティカの役員および地元住人によると、過去3年間に3万人の民兵兵士が動員を解かれたことになっているにもかかわらず、ドラモンド社の炭坑周辺では準軍組織が活動を続けているという。ある住民は、「準軍組織の動員解除はここでは何も事態を変えていない。すべて、いまだに前と同じだ」と語っている。この発言は、8月にコロンビアのNGOインデパスが発表した報告でも確認されている。この報告書では、動員を解かれた準軍組織兵士たちは、コロンビア全土の22州で少なくとも43の新たな準軍組織を作ったと述べている。6月、引き続く準軍組織の活動はまたもシントラミエネルヘティカを襲った。組合の執行委員の一人アレバロ・メルカドが自宅の外で二人の殺し屋に狙われ危うく暗殺を逃れたのである。
しかしながら、組合にとって脅威となっているのは準軍組織の殺し屋だけではない。ドラモンド社はプリベノウ炭坑での組合の力を削ぐために、今や同社が抱えるコロンビア人労働者の半数近くを占める契約労働者の組合参加を封じ込めようとしている。
プリベノウ炭坑の規模が大きくなるに従って、近くの町ラ・ロマでは社会的および健康上の問題が増加している。永年にわたり、ドラモンド社はコロンビアの他の地域からますます多くの労働者を迎え入れてきた。その多くは、ラ・ロマに数を増やしている安いホテルで7日間の労働機関を過ごし、3日間の休日には家族のもとに戻る。こうした労働者の大多数は男性で、予想されるように、以前は静かだったラ・ロマの町にはバーや売春が増えている。そして、ミゲル----身の安全のため名字は明かさないよう求めた----が恥ずかしそうに指摘するように、「そうした売春婦の中には子どもたちもいる」。シントラミエネルヘティカの委員長エステベンソン・アビラも、ラ・ロマの子ども買春に関する地元住民の心配を繰り返し、「ドラモンド社はこの問題を解決するために何一つしていない」と述べる。
ドラモンド社は、表通りを舗装するなどラ・ロマのインフラ改善に多少のことはした。けれども、その通りが町で唯一の舗装道路だという点は、道路全体を砂色の埃が覆ってしまうことがよくあるため、わからないこともある。ドラモンド社が操業する2万5000エーカーからなる巨大な露天掘り炭坑が生み出す埃は、ラ・ロマのあらゆるところに行き渡る:道路や車、家、服、人々など。ある地元住人は、「空中の埃のせいで呼吸器疾患を患う人の数は多い」と述べる。
アラバマでもコロンビアでもドラモンド社の社員はインタビュー依頼を断ってきたが、同社のウェブサイトには、誇らしげに、プリベノウ炭坑は地元経済に好影響を与えており、また、ドラモンド社は「操業地域周辺のコミュニティで学校や病院、教会に提供する支援を通して社員や地元住民の生活改善のための社会プログラムに貢献している」と述べている。けれども、地元住民の中には、同社の社会プログラムは炭坑操業が引き起こす負の社会的・健康上の影響を相殺してはいないと述べる人も少なくない。
ドラモンド社は、炭坑操業は環境に配慮したものであると主張しているが、拡大を続ける露天掘り炭坑は地元の環境に悪影響を与えていることも明らかになってきている。プリベノウ炭坑の入り口には大きな広告板があってくっきりと「私たちは環境の保全に心がけています」と書かれている。別の広告板には野生動物の美しいカラー写真が掲げられており、ドラモンド社の敷地でこれらの動物を殺すことは禁止されていると書かれている。しかしながら、世界最大の露天掘り炭坑の一つを運営する会社が、一方で地元の野生生物が暮らす生態系を構成する木々や植物を破壊して操業を拡大しながら、自らを環境に優しい野生動物の保護者であるように見せることの矛盾に目を向けずにいるのは難しい。
近年、ドラモンド社に対しては、コロンビアの操業をめぐる人権問題に対処するよう求める国際的な圧力が高まっている。アメリカ合衆国内でも、ボストンからロサンゼルスまで、ドラモンド社の人権記録に対して人々の関心を促し、同社からの石炭を地元の発電所が購入しないようにすためのコミュニティ・グループが組織されている。発電にコロンビアから輸入された石炭を使っているカナダの東武地域でも、同じようなキャンペーンが進められつつある。そうした中でもおそらくドラモンド社にとって最も大きな悩みの種となっているのは、デンマーク国営発電公社が、最近になって、米国での訴訟が解決するまでは同社からの石炭を購入しないと発表したことであろう。
ドラモンド社が引き起こしている多くの問題とそれに対する反対の声の増大は、まだ、同社がコロンビアで進めている炭坑操業のあり方を変えるには至っていない。実際、ドラモンド社は米国連邦裁判所で人権問題を告訴されているが、コロンビアでは通常通りの操業を続けている。ドラモンド社の利益を守るために炭坑操業地には200人以上のコロンビア軍兵士が依然として駐留している。右翼準軍組織は、ドラモンド社の労働者を代表する組合の指導者たちを標的とし続けている。地元の住民はドラモンド社の炭坑操業がもたらす社会的・健康上の負の影響に苦しみ続けており、その一方でドラモンド社はそこから毎年何千万ドルもの利益を得ている。そして露天掘りのプリベノウ炭坑は地元の環境を破壊し続けている。そうした中で、せんさく好きな米国人ジャーナリストとコロンビア人の運転手は、コロンビアの公道である高速道路で、米国企業の私営治安部隊の武装したメンバーに拘留され尋問を受ける。ドラモンド社が、コロンビアの主権とコロンビアの人々に対してほとんど何の敬意も示していないことは、明らかである。
石油生産が頭打ちとなり消費に追いつかない事態を見込んで、アメリカ合衆国や中国をはじめとする様々な国では石炭の利用に、改めて本格的に乗り出しつつあります。紹介した記事はそれがコロンビアでもたらしているローカルな問題ですが、グローバルな問題については、拙訳(共訳)『ピーク・オイル・パニック』をお読みいただけると幸いです。
■教育基本法改悪関係
安倍政権は、今国会で教育基本法の改悪を進めようとしています。それに関して、日本教育学会歴代会長が「教育基本法改正継続審議に向けての見解と要望」というのを出しているようで、それに誰もが署名できるような署名運動をやっているページが立ち上がったようです。日本教育学会歴代会長が「教育基本法改正継続審議に向けての見解と要望」に勝手に賛同するみんなの署名運動解説(pdf)と日本教育学会歴代会長が「教育基本法改正継続審議に向けての見解と要望」に勝手に賛同するみんなの署名運動の署名サイトがあります。
ビデオプレスが「君が代不起立?教員たちのレジスタンス(仮)」という映像ドキュメンタリーを制作しており、カンパおよびDVDの予約受付を行っています。
また、直前ですが、10月10日には、次のような集会があります。解説とともに転載します。
<国会をみんなで取り囲もう>
教育基本法の改悪をとめよう! 10・10国会前集会
国会がはじまって、教育基本法の議論も来週にははじまってしまうかも、という情勢です。でも私たちは、9月26日の国会前集会には雨の中750人集まり、10月3日の院内集会も会場ぎっしりの150人の参加で、やっぱりこの改悪は絶対ゆるせない! なんとかしなくちゃ! という気持ちでいます。
思いを同じくするみなさんと、一緒にやっていきたいです。国会前に集まってみませんか?
日 時 :10月10日(火)午後6時〜7時
場 所 :衆院第2議員会館前
(地下鉄千代田線・丸の内線「国会議事堂前」下車)
発 言 :国会議員
全国連絡会呼びかけ人
(大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子)
さまざまな立場から
参加のしかた :誰でもそこに行けば参加できます。
主 催 :教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会
連絡先:電話&FAX 03−3812−5510
メール info@kyokiren.net
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あんころブログ
■憲法改悪について
9条改憲阻止の会という会のHPができたようです。
■言論封じのあらゆるテロを許さない10・17集会(転載)
<私たちは「言論封じのあらゆるテロを許さない!」10.17集会>
日時 10月17日(火)午後6時半開会(6時開場)
会場 総評会館2階(東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅、B3出口すぐ、
丸の内線淡路町駅・都営地下鉄新宿線小川町B3出口〜徒歩で3〜5分)
発言 呼びかけ人各氏・石坂啓、上原公子、内田雅敏、小倉利丸、鎌田慧、
斎藤貴男、佐高信、西川重則さんほか(他の呼びかけ人も日程調整中)
参加費 1,000円
主催 「言論封じのあらゆるテロを許さない」共同アピール呼びかけ人(50音順)
呼びかけ人 石坂啓(漫画家)、上原公子(国立市長)、内田雅敏(平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動実行委員会事務局長・弁護士)、小倉利丸(ピープルズ・プラン研究所共同代表)、鎌田慧(ルポライター)、きくちゆみ(グローバルピースキャンペーン発起人)、木村庸五(弁護士)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、佐高信(評論家)、三瓶愼一(大学教員)、高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会)、富山洋子(日本消費者連盟代表)、外山雄三(音楽家)、西川重則(平和遺族会全国連絡会代表)、福山真劫(平和フォーラム事務局長)、横田耕一(憲法学者・九州大学名誉教授)
連絡先 03(5289)8222 (平和フォーラム気付)
03(3221)4668(許すな!憲法改悪・市民連絡会)
090(2302)4908 (白石)
FAX03(5289)8223
〒330-0061 さいたま市浦和区常盤3-18-20-803(市民じゃーなる気付)
日本の話ではありませんが、ロシアでチェチェンで何が起きているかなどを伝えてきた数少ないジャーナリストの一人アンナ・ポリトコフスカヤさんが殺されました。これについては、ファルージャ2004年4月ブログを一緒にやっているいけだよしこさんが訃報:アンナ・ポリトコフスカヤとして状況を簡単にまとめて下さっています。
これに対するモスクワの人々の抗議の写真が、mosdave's photosに掲載されています。
米国国務省は事態を明らかにするよう強くロシア政府に求めたとのことですが、その米国では、憲法を破棄して実質的に拷問を容認する法案が出来ています。日本でも、加藤鉱一氏宅放火事件や共謀罪成立を狙う与党など、同じ大きな流れが強まりつつあります。
■レバノン・ガザ緊急支援のための連続企画(転載)
第1回目は、関西では初公開となる、ガザを舞台にしたドキュメンタリー映画「レインボウ」の上映と、JVCスタッフとしてガザで活動され、このたび帰国された藤屋リカさんによるガザの現状についての講演を行います。ふるってご参加ください。
【レバノン・ガザ緊急支援のための連続企画 第1回】
藤屋リカさん講演会 ガザで今、何が起こっているのか?
イスラエルによるレバノン侵攻は日本でも報道されました。しかし、レバノンに耳目が集中する陰で、昨年のイスラエルの入植地撤退以降も占領が継続するガザの過酷な現実はマスメディアでもほとんど報道されていません。
長期にわたる占領とハマース政権発足に伴う国際援助の停止、さらに6月末以降はイスラエルの軍事侵攻にもみまわれ、物流が遮断され食糧不足の上、40%を超える失業率で一般家庭は貧困ライン以下の生活を強いられています。子どもたちは成長に必要な栄養さえ十分に摂ることができず、栄養失調児や貧血児が日に日に増えています。
爆撃による破壊という目に見える分かりやすい暴力とちがって、「占領」という構造的暴力はなかなか報じられません。
ガザで今、何が起こっているのか?
現地で長期にわたり支援活動を担い、このたび帰国されたJVC(日本国際ヴォランティアセンター)の藤屋リカさんをお招きし、緊急講演会を開催します。
最新の写真や映像を交えながら、マスメディアが報道しないガザの現状を語っていただきます。
日時 2006年10月14日(土) 午後6時半〜(6時開場、9時終了予定)
会場 京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟1階 1202教室
交通アクセス ↓
http://www.h.kyoto-u.ac.jp/soujin/welcome/access.html
キャンパス配置図 ↓
http://www.h.kyoto-u.ac.jp/soujin/welcome/map.html
参加費 500円
(参加費および会場収入は、JVCガザ緊急支援プロジェクトに寄付いたします。)
【プログラム】
第1部 映画「レインボウ」上映 6時35分〜
第2部 藤屋リカさん講演会 7時30分〜
【映画「レインボウ」】
イスラエル侵攻下のガザ。その過酷な現実を詩的かつ象徴性豊かな映像で表現し、今年3月、第14回地球環境映像祭でその芸術性が高く評価され、アース・ビジョン大賞を受賞。アブドゥッサラーム・シャハーダ監督作品(2004年/パレスチナ、41分)関西初上映!
【藤屋リカさん】
JVCパレスチナ事業担当。95年から02年、パレスチナで母子保健活動に携わる。さらに04年4月から今年8月までJVCパレスチナ事業現地調整員として、ガザ地区での子どもの栄養改善支援事業に従事。また、この間、緊急医療支援をはじめ家屋破壊に対するしさまざまな緊急支援にも携わってきた。
【主 催】 京都大学大学院人間・環境学研究科
岡 真理研究室
【特別協力】アース・ビジョン組織委員会事務局
http://www.earth-vision.jp
【お問い合わせ】 090-1599-1373(岡)