グローバル・サウスにおける武力闘争のジレンマ
ギャリー・リーチ
2006年1月23日
コロンビア・ジャーナル原文
デンマークの「ファイターズ・アンド・ラバーズ」というファッション会社が、グローバル・サウスの武装グループ2グループの宣伝をするTシャツを売り出している。コロンビア革命軍(FARC)とパレスチナ人民解放戦線(PFLP)。この会社は、これら二つの武装組織のロゴをプリントした服を生産しているだけではなく、シャツ一枚あたり6ドルをこれらのグループに寄付している。FARCのロゴ入りTシャツはFARCのラジオ局の資金に用いられ、PFLFのロゴ入りTシャツはパレスチナのグラフィックス・スタジオの支援に用いられる。両グループとも、米国とEUのテロリスト組織リストに名が載せられている。そのため、会社も顧客もテロリスト・グループを支援すると非難されてきた。しかしながら、同社の活動は、いったい誰が誰をテロリストと決めつけるのかについて、また、社会正義を実現するために人々が用いるべき手段について、より原理的な疑問を提起している。
1950年代から1980年代末まで、グローバル・サウスの諸国における武力闘争は、政治的社会的変革を求めるための正当な戦略として広く認められていた。一方、グローバル・ノースの多くの政府は、自国の市民がパレスチナ解放軍(PLA)やニカラグアのサンディニスタ、エルサルバドルのファラブンド・マルチ民族解放戦線(FMLN)などの武装解放グループに連帯することを容認する傾向があった。
武装闘争を政治社会的変革を達成するための合法的な戦略として認める立場は、ソ連式社会主義が崩壊し、冷戦が終結するとともに、消えていった。新たなグローバル規模の自由主義経済体制が、米国の「民主主義の促進」政策と同期した。その結果、市民は変革を実現するために投票に訴えることができるのだから、武装闘争は基本的に不法であるという議論が展開されることになった。
ここで言われる「民主主義」が、市場経済の基盤の上につくられた西洋式のリベラル・モデルであるのは当然である。現実には、投票が市民に提供したものと言えば、有権者に対してではなくグローバルな自由市場経済の運営にあたる国際組織----国際通貨基金や世界銀行、WTO----に仕える指導者のあいだから誰かに投票するといった程度のものに過ぎない。実質的に、選挙で選ばれた政府の代表は、自国の経済をこれら国際組織が定めた自由貿易のガイドラインに従って運営するよう余儀なくされる。
とりわけラテンアメリカ諸国をはじめとする多くの国で、1990年代を通して投票率が低下したのは驚くべきことではない。これらの国の市民は、「民主主義」が自分たちの最も基本的なニーズをめぐる問題に対処するものではないことに気づいた。貧困下に暮らすラテンアメリカの大多数の人々にとって、このことは、選ばれた指導者が自分たちの経済状況を改善することに失敗したことを意味する。アメリカ合州国に対する2001年9月11日のテロ攻撃は、ラテンアメリカ諸国の多くで民主主義と自由貿易ドクトリンへの信頼が大きく失われていたときに起きた。しかしながら、ブッシュ政権が新たに始めた「対テロ戦争」は、FARCのような反資本主義グループが米国のテロリスト・リストに載っており、したがって合法的な政治的アクターとは認められないという点を強調することで、武装闘争が国際的に容認された戦略には戻らないことを確実にした。
しかし、「民主主義の促進」と対テロ戦争も、すべてのラテンアメリカ諸国に、ワシントンのルールに従って従順にゲームを行わせることはできなかった。一例として、ベネズエラでは、1998年、市民の大多数が、伝統的な政党と自由貿易モデルを拒絶し、ウーゴ・チャベスを大統領に選出したのである。
アメリカ合州国は、民主的に選ばれたベネズエラの政府を孤立させようとし、さらにはゼネストやクーデター未遂を支援することで転覆しようとさえした。アメリカ合州国はベネズエラの指導者を非民主的な統治を行う権威主義者であると決めつけた。事実を見るならば、チャベスは、国際的な監視員が自由で公正だと判定した二度の大統領選挙と一度の国民投票で、圧勝しているのである。米国政府はまた、チャベスは地域の不安定か要因であると非難し、根拠もないのにFARCのような「テロリスト」集団を支持していると言い張った。米国政府の立場からは、ある国の市民がアメリカ合州国に従う指導者を選んだときのみ、民主主義が合法的なものと見なされることははっきりしている。
ベネズエラでチャベスが、ボリビアでエボ・モラレスが政権の座にいるこれからの数年間は、ラテンアメリカとグローバル・サウスの他の地域が真に政治的・経済的主権を達成できるかどうか、そして米国政府がそうした達成を受け入れ支援するかどうかを決する重要な時期である。それが達成できず、諸国の市民が、アメリカ合州国は自分たちが民主的に選んだ政府を妨害し転覆する立役者であると見なすならば、「民主的プロセス」に対する信頼を完全に失うことになるのも時間の問題となるだろう。
そうなれば、ラテンアメリカの市民の多くは、政治的・社会的・経済的正義を達成する唯一の手段は武装闘争であると結論するだろう。その結果、社会正義を達成しようと望む具ルー宇による武力闘争が再会されるだけでなく、自分たちの経済的利益だけを目的とした暴力的犯罪集団の武力闘争も始まるだろう。貧困にからめとられた個人やギャングが民主的プロセスへの信頼を失ったため、ラテンアメリカ銃で暴力犯罪が激増している事態が訪れつつあることはすでに目にしている。最終的に、起こりうる帰結は、ハイチやサハラ以南のアフリカのいくつかの国に見られるように、社会的構造が崩壊した失敗政府がラテンアメリカに増加することである。
一方、そうしたシナリオのもとでは、社会正義を達成しようと試みるグローバル・サウスの武装グループに対して、おそらくグローバル・ノースの市民からの支援が再び起こるだろう。この意味で、デンマークのファッション会社「ファイターズ・アンド・ラバーズ」は、ちょっと時代に先行しているだけなのかも知れない。
「郵政民営化はアメリカとの約束です」というコイズミ首相を選びだした日本は、アメリカ合州国にとってはとても好ましい民主主義国なのでしょう。危険な牛肉も買ってくれるし。
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