準軍組織の不正な解隊
ギャリー・リーチ
2005年6月20日
コロンビア・ジャーナル原文
先週、準軍組織の指導者ディエゴ・フェルナンド・ムリージョが、コロンビア北部で彼の部隊の400人以上の戦闘員の除隊式典を行なった。この式典で、たった2カ月前にコロンビア議員一人の殺害を命じたディエゴは、平然と、次のように宣言した:「平和的かつ建設的な対話だけが、調和のとれた豊かな国を創ることを可能にする」。彼はそれから、政府により「拘束」されている農場に戻って、政府主導の寛大な措置(実質上の恩赦)を認める法律に関する議会の検討結果を待っている。
4月に議員一名と二名の随伴者に対する暗殺を命じた罪でコロンビア政府がムリージョを逮捕したとき、アレヴァロ・ウリベ大統領は、被告の投獄は、パブロ・エスコバルの大失敗を繰り返すことにはならないと約束した。すなわち、彼が地方の邸宅に投獄されることにはならないということのはずだった。ところが、どうしたことか、その翌日、ムリージョは、コロンビア最大の準軍組織の拠点であるコロンビア北部コルドバ州の農園に移送されたのである。さらにとんでもないことに、コロンビア議会がムリージョと同僚の準軍組織指導者たちに政府の寛大措置法を適用すべきかどうか決めつつあるという理由で、彼は監獄にではなくその農園に拘置されたのである。
法案が採択されれば、ムリージョを含む準軍組織の指導者たちは、わずか22カ月の投獄(恐らくは農場での)で住む可能性があり、また、戦争犯罪を告白する必要もなく、麻薬取引からため込んだ富を手元に確保することが許される。コロンビアにおける人権侵害のほとんどを行なっている準軍組織指導者にこうした寛大な措置を適用することは、司法をいかなるように考えようとデタラメであり、とりわけムリージョにも適用されるとなると無法である。
ムリージョははるか以前から麻薬取引と犯罪暴力に関与してきた。彼は以前、パブロ・エスコバルのメデジン・カルテルで暗殺者として雇われていた。米国国務省は、彼のことを、「世界最大のコカイン・カルテルの一つにおけるトップ・リーダー」と読んでいた。実際、ごく最近まで、彼は麻薬取引の世界における犯罪者として活動しており、コロンビアの武力紛争には関与していなかった。
ムリージョは、ウリベ大統領が進める準軍組織の復員プロセスにおけるあらゆる不正を体現している。彼が準軍組織に参加したのは復員交渉が開始されるわずか1年前に過ぎないが、それにもかかわらず、復員プロセスの結果、彼が20年にわたって行なってきたコロンビアの武力紛争に無関係の暴力的な犯罪活動に対する重罰を逃れる可能性が高い。
さらに不穏なのは、コロンビア国会議員の暗殺を命令することであからさまに停戦に反したあとにも、ウリベ大統領はムリージョを準軍組織の交渉担当として認め続けたことである。彼が復員プロセス交渉の担当者たる資格をすぐに失うこともなく、犯罪行為で裁判を受けることも求められていないことは、ウリベ大統領がコロンビア最悪の人権侵害者たちをどれだけ受け入れる意志があるかを明確に示している。
ウリベ大統領が交渉に関係するほかの準軍組織指導者たちに送っているメッセージはいっそう不穏である:準軍組織指導者たちは、コロンビア人を殺してもまったく罰は受けなくてよい、というメッセージ。とはいえ、実際のところ、政府は、交渉を通して、準軍組織が民間人を標的にして停戦に繰り返し違反してもまったく処罰をしないことにより、同じメッセージを送り続けてきたのではあるが。
ヒューマンライツ・ウォッチは、準軍組織指導者が検証可能な告白をし、執行可能な条件のもとでのみ、刑期の軽減を認めるよう寛大措置法を偏向することを提案した。本質的に、寛大措置法は、それがいかなるものであれ、準軍組織が行う暴力行為に終止符を打つことが保証されなくてはならず、また、犠牲者とその家族に正義と事件の集結の感覚をもたらさなくてはならない。ヒューマンライツ・ウォッチが提唱した5つの根本的修正は、次のようなものである。
- まず、つぎの条項を完全に削除する。すなわち、(1)復員した個人から証言を得たあと24時間以内にすべての告発を行うよう検事に求める条項と、(2)告発がなされたのちの調査機関を30日に限定する条項。調査期間に関するこれらの制限は、実質的に不処罰を保証する。というのも、ほとんどの事件がうち切られるか無罪判決となることになるからである。
- 第二に、刑期の軽減のかわりに、準軍組織司令官たちは全面的かつ信頼のおける告発をすべきこと。また、自分たちのグループの活動構造、資金源、不法に入手した資産を全面的に告白すること。そうでなければ、政府が残虐行為の真実を明らかにしグループを解散させるに必要な情報を手に入れることは実質上不可能である。
- 第三に、法律は、準軍組織兵士たちが自分たちの犯罪や作戦や資金について当局に嘘をついていたり、不法に入手した資産を維持していたことがわかったときには、刑期軽減をすべて失うよう規定すべきこと。この条項は、資産の拠出や告白、情報提供の要件が意味のあるものであることを保証するために必要である。
- 第四に、準軍組織の上級司令官は、司令下にある兵士たちが完全に復員し残虐行為への関与を止めるまで、「個人的」な復員による刑期軽減の便益を受けることを禁じられるべきであること。この条項は、プロセスの信頼性を保証するために不可欠である。
- 第五に、準軍組織指導者たちが交渉に費やした時間を刑期を果たした時間の一部として考慮すべきでないこと。
ムリージョ事件が示すように、ウリベ大統領は、準軍組織指導者の犯罪行為や戦争犯罪の責任を追及する意思をほとんどまったく示していない。ドン・ベルナとしても知られるムリージョについて、寛大措置法に批判的なコロンビア上院議員ウィルソン・ボルハは、次のように言う:「ベルナは身柄を引き渡されないだろうし、誰かを暗殺していなかったときと同じ便益を手にするだろう」。ウリベ政権の不法武装集団に対する戦略をめぐってコロンビアに二重基準が存在することは明らかである。イデオロギー上政府に同盟している集団には不処罰、政府に反対する集団には法の全面的適用である。
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<おさそい>
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