ルイス・「ルチョ」・エルナンデスとの会話

ジョン・コヴェントリー
2004年12月6日
コロンビア・ジャーナル原文


コロンビア労働組合SINTRAEMCALIの委員長ルイス・「ルチョ」・エルナンデスは英国ブライトンの海辺のホテルで異彩を放っていた。発展途上国におけるサービスの私営化をめぐる問題について、連帯集会で講演をしたあと、コーヒーをすすりながら通訳にスペイン語で話しかけているところだった。ルチョは、生活必需サービスを公共のものにしておくための闘いについて一、二のことを知っていた。彼は仕事を失い、子どもたちにもほとんど会えず、身の安全のためにほとんど毎晩違う場所で寝ていた。自らの疲れを知らないキャンペーンのために、大きな代償を払ってきたのである。

「コロンビアで労働組合員であるということは、しばしば、死刑を意味するのです」とルチョは言う。彼は実際にそれを知っているのだ。この10年間で、1500人もの労働組合活動家が、政治的理由で命を落とした。「きつい仕事で、とても難しい仕事です」と彼は言う。極めて控えめな言葉である。「けれども、あらゆる仕事には危険な要素があります」。ルチョは4件の暗殺未遂にあっている。彼はまだ撃たれていないが、彼ほどラッキーではなかった人々もいる。「私の護衛たちが撃たれました」と彼は悲しそうに言う。「彼らは、そこから先は失敗しましたが」。一番最近の暗殺未遂は、昨年末、アレヴァロ・ウリベ大統領との公開討論の後に起きた。「バイクに乗った二人の男が私の車に機関銃を発砲しました。幸い、車は防弾処理を施したばかりだったので、暗殺は未遂に終わりました。4回の暗殺未遂で、私は友を一人失い、また沢山の人々が負傷しました」。

学生活動家として数年を過ごしたあと、ルチョは、カリの公共サービス労働組合SINTRAEMCALIの執行委員として8年過ごした。それから副委員長になり、さらに、アレクサンデル・ロペスから引き継いで委員長になった。彼はウリベ政権の私営化政策に対する率直な批判者として知られている。サービス提供は、SINTRAEMCALIの要綱のトップにある。「サービスが国有で、人々に責任を負うことは根本的に重要です。公営と私営の間には大きな違いがあります。そして現在、開発途上国でことを行なっているのは企業なのです」。

社会の最貧層は、何も持っていないと彼は言う。「多くのコロンビア人が、機会も仕事も手にしていないのです。髪を切るお金さえありません。贅沢など全く手が届かず、いつも考えているのは、子どものための食料なのです」。これを考慮し、SINTRAEMCALIは、カリの最も貧しい地域で、コミュニティ・ベースの月例保健教育プロジェクトを開始した。「私たちが無料中等教育プロジェクトであるSINTRAEMCALIインスティチュートをはじめてから、1500人の子どもが卒業したのは、誇りに思っています」とルチョは言う。ウリベ政権の中には、貧しい人々に必要なサービスを提供する努力は全く存在しない。けれども、コロンビアの人々の態度は変化している。「1997年、私たちは、仲間が必要だと気づき、キャンペーンを拡大しました。私たちは、組合員からだけでなく、コロンビアのより裕福な地域からも資金を集めました」。

私営化、とりわけ水の私営化は、コロンビアでは発火点である。「多国籍企業は、貧しい地域には行きません。利益を上げることができるとわかっている裕福な地域の水道設備を買い上げ、そこで水を供給します。カリでは、30%水を過剰生産しています。けれども、そこから10分離れたところでは、非衛生的な井戸からくみ出した水以外には、全く水が無いのです」。こうした人々は水をもらえるかどうか求め、買いたいとさえ言ったが、そうした要求は繰り返し拒絶されたと彼は言う。これが問題の核心であるとルチョは言う。「多国籍企業は社会投資を考慮せず、価格をつり上げます。実際、コミュニティに何か還元する責任など負わないことを確実にするために、多国籍企業は積極的に法廷を使うのです」。

SINTRAEMCALIがサービス私営化の波に抵抗しているため、コロンビア政府との関係はぎくしゃくしている。夏前、組合の執行委員会はカリの基本公共サービスを提供するEMCALIのオフィスを占拠する抗議行動を組織した。EMCALI私営化という極めて不人気な政策が実行されたあとのことである。ルチョを含む組合員60人がすぐさまクビになった。国際労働機構はコロンビア政府にこの解雇を調査するよう要求し、「公共サービス・インターナショナル」はEMCALIの財政問題を調査するよう求めた。

けれども、コロンビアでは、解雇は「柔らかい」選択肢である。先月明らかにされた最高機密諜報文書には、アレクサンデル・ロペスやSINTRAEMCALI人権部門の責任者ベレニセ・セレイタ、ルチョなどの労働組合指導者の名がリストされていた。この文書は暗殺リストであり、そこに名を挙げられた人々は「竜作戦」として知られるようになった作戦の標的とされると恐れられている。

ルチョは、このリストに名前があることが彼と彼に近しい人々にとって何を意味するか、知っている。「奴らはあなたのあとをつけ、家族を脅迫します。私の子どもたちまでもが、電話で脅迫を受けました」。あまりの恐怖のために、5年前、彼は外出をやめたと言った。「私は、友人や家族といつも出掛けていたものでした。けれども、生き続けたいなら、外出をやめなくてはならないと気付いたのです」。私は家族の苦しみとそれが彼の活動継続の動機に及ぼす影響について話を向けた。「妻と子どもたちに影響しました。休息が欲しいときにはカリを立ち去り街から遠くへいかなくてはならないのです。そのときさえ、私は護衛たちを連れていました。あらゆる街角に私を殺そうと待ちかまえる人々がいるのです」。家族と一緒の旅は、年2回に限られていると彼は言う。

この状況について妻はどう考えているか訊ねた。「コロンビアの闘いは、私の血の癌みたいなものです。妻は私に輸血をしてもらいたがっています!」と彼は微笑む。「こうした障害、竜作戦、脅迫や殺害にもかかわらず、私たちはキャンペーンを続けるでしょう。家族も同僚も多くを期待していますし、コロンビアの労働者も多くを期待しています」。

ルチョはコロンビアの未来についてどう考えているだろうか?「社会正義を伴う平和」は実現可能だろうか、それとも、暗い時代が待ち受けているだろうか? 「私がキャンペーンを行うのは、建設のためです。誰もが識字と保健医療を得ることができるコロンビアに暮らしたいのです。子どもたちに、違う考えをすることが犯罪とされるような、今日のコロンビアで育って欲しいとは思いません。ウリベにはこう言いたいのです。『私たちはみな、生きたいのです。なぜコロンビアでは生きることができないのでしょうか?』」

ジョン・コヴェントリーは英国のNGO「欠乏への闘い」のキャンペーナ。


経団連が武器輸出禁止の解除を求めたことについて、公開質問状と要請書がこちらに掲載されています。「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン2004」は11月26日夕方、武器輸出解禁を求める経団連に反対するデモを行なったとのこと。

日本軍の性奴隷だった女性の言葉がこちらにあります。ぜひお読み下さい。辺野古の状況は、こちらを。

色々書きたいことはあるのですが、時間がとれず、また、いざ書こうとすると混乱ぎみなので、リンクだけです。
益岡賢 2004年12月7日

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