メディアは厚顔に米の麻薬戦争を支持

ギャリー・リーチ
2004年9月27日
コロンビア・ジャーナル原文


9月27日付AP通信のフアン・パブロ・トロによる「コロンビア警察は麻薬取引を粉砕しようとしている」と題する記事は、米国の主流メディアが米国政府の外交政策の宣伝隊長として振舞っているもう一つの例である。ほとんどの米国メディアが国際ニュースについては通信社の配信する記事に頼っていることを考えると、APは米国市民への主要情報提供者の一つであると言える。この「麻薬戦争」記事は、米国がコロンビアで進めている「対麻薬作戦」の印刷宣伝のようなもので、トロは、読者に、扱われている出来事を適切な視点から見るために必要な文脈の分析も実質的に全く提供していない。

コロンビア警察は麻薬取引を粉砕しようとしている」という記事は、情報源として政府筋の公式情報に依存することの問題を示している。この記事を書くために、トロは、コロンビアの対麻薬警察によるコロンビア南部のコカ精製所への突撃捜査に同伴することを許された。APの写真家とともに、トロは、コロンビアの「対麻薬戦争」で、米国納税者のドルがどう使われているか祖の目で見るために、米国が提供した作戦ヘリの一機に乗って移動した。

こうしたアクセスを提供してもらったお返しに、トロは律儀に、「成功した」作戦を劇的に描き出し、「7機の戦闘ヘリが急な山を行き、突撃捜査者の一人が投げた爆弾の煙を目印に、コカイン精製所に急降下した」と書いている。彼は、自分自身と写真家を物語りの一部に織り込んで話を続ける:「騒音をたてるローターの風が周囲のコカを横倒しにしている中、ドアガンナーが手で合図をし、乗っていた者たちに飛び降りるよう命じた。ジャーナリストたちと捜査者は地上に飛び降りた。警察は、攻撃ライフルを構えて、すぐに散らばった。『我々はFARCのコカイン帝国にいる』と、回りをチェックしながら[アルバロ]ベランディア大佐が言った」。

それからトロは地上での行動について描いている:「その間、警察の爆発物専門家が麻薬ラボと金鉱(宝の山)に爆発物を並べて設置していた。警察はすばやく突入して撤退したかった。FARCの第29前線が反撃に到着する前に」。APのトロは、それから、精製所の破壊を色彩豊かに描き出す:「警察は離れてたち、爆弾が爆発するのを見ていた。その音は山あいにこだました。精製所の建物の断片が空高くはね飛んだ。金鉱は崩れ落ちた」。

トロは標的地域からの撤退というクライマックスを最後にもってきている:「到着してから約3時間後、突撃部隊はヘリに再び乗り込んだ。ドアガンナーの一人が地上に銃口の光を見つけ、発砲した。マシンガンの弾倉一つ分の薬莢がチョッパーの床に落ちた。チョッパーは、作戦計画が開始されたパスト市の基地に戻っていった」。

この記事に書かれたミッションには、何の文脈も呈示されていない。コロンビアの対麻薬警察の副隊長が、今年これまでに100以上のコカイン・ラボを破壊したと主張していることを、トロが取り上げていることを除けば。過去4年間に費やされた米国納税者の30億ドルを越える金が、米国へのコカイン流入を減らすことができなかったことへの言及はない。コロンビア政府が何十年もの間遺棄してきたことで合法作物栽培では生き延びるのが難しくなったため麻薬取引に依存する----コカ作物を栽培したり精製所で働いたり----コロンビア南部の農民たちが被っている社会経済的帰結についても何も述べられていない。

このAP記事が米国全土の数十の新聞に掲載された2日前、欧州の通信社インタープレス・サービスが、ラウル・ピエーリによる「国境地帯全般で対麻薬農薬散布への抗議が激化」という記事を発表した。この記事は、コロンビア・エクアドル国境地帯のコミュニティに「麻薬戦争」がもたらす社会的影響を分析したものである。つまり、米国がスポンサーとなって行われている「麻薬戦争」作戦が、実際に人々にどんな影響を与えているかを扱っている。2つの記事の違いは一目で明らかになる。ピエーリは公式情報源----エクアドルの副外相----を引用しているが、同時に、国際人権団体、エクアドルの先住民連合、カンペシノの組織、環境問題グループといった別の情報も用いている。ピエーリはまた、この地域における米国の「対麻薬」戦略全般と資金提供、使われる手段を説明することで、歴史的背景を提供している。

インタープレス・サービスの記事は、優れたジャーナリストの仕事がそうであるように、論争点について様々な観点を提供することで、答えと同じくらい多くの疑問を提出している。とりわけ重要なのは、「対麻薬戦争」を実行している関係者から発せられるコメントとは異なる見解を提供しようとしていることである。それとは全く対照的に、トロとAPは、米国国務省ご執筆でも通じるような記事をただ発表しているだけである。



それぞれの記事を読まないと、詳細はわかりにくいかも知れません。ごく大まかに背景をまとめると、米国は「対麻薬」戦争と称してコロンビアのコカ栽培地域の一部を対象に毒薬の空中散布を続け、また、コカ精製所の破壊等を進めてきたが、(1) 麻薬の米国への流入は減らず[実際、麻薬対策として最も有効なのは、麻薬を求める条件を受容者側で無くし対麻薬教育や中毒者への治療を進めることという報告が、米国の保守的シンクタンクの報告でも示されています]、(2) コカ栽培も減らず、(3) 環境は破壊され、また、毒薬散布対象となった地域の人々は社会的・健康上等に大きなダメージを受けています。

さらに、この作戦は、対麻薬戦争の名を借りた対FARC戦争の色彩を帯びていること、実際にはFARCよりも、米国が支援するコロンビア軍と結びついた準軍組織AUCの方が麻薬への関わりはより深いこと、コロンビア軍そのものの中でも、また政府内でも麻薬に深く関与しているものがいること、など、極めて捻れたものです。

フアン・パブロ・トロの取材は、イラクで「軍属お抱え記者」がやっているのと同様の取材で、米軍やコロンビア軍当局発表をそのまま繰り返すだけなので、本来、どこにいたってできることなわけですが、バグダードのホテルから外に出ない記者よりは、現地に赴いただけ「マシ」ということになるのでしょうか。

ここに描かれている取材の形式、記事の組立と文脈の欠如は、日本でも、現在の大手メディアの少なからぬ部分に、そのままあてはまりそうです。


次のような集会がありますので、ご案内致します。

ストップ!女性への暴力キャンペーン
連続講演会第4回
アムネスティ・インターナショナル日本

聞こえますか? 日本へ人身売買された女性たちの声
日本で売春を強いられる女性たち

日時 10月19日(火) 午後7時〜9時(午後6時半開場)

場所 文京シビックセンター 5階 研修室A/B
    (東京都文京区春日1丁目16ー21)
  東京メトロ丸の内・南北線 後楽園駅 徒歩1分
都営地下鉄三田・大江戸線 春日駅 徒歩1分
JR総武線 水道橋駅 徒歩8分

参加費 500 円

講師●大下富佐江さん●
1992年に人身売買被害者のタイ人女性の支援に関わって以来、移住女性の支援の仕事に従事している。日本で暮らすフィリピン人のための支援活動を行なうNGOカパティラン(1988年発足)で、ケースワーカーとして電話でのカウンセリングを中心に、ニーズに応じて役所や病院等へ付き添って手続きをお手伝いするなどしている。現在、人身売買禁止法の制定を目指す活動に特に精力的に取り組んでいる。

●「人身売買」はどこか遠い国で起こっていることだと思っていませんか?●
 日本は、2004年に米国務省により、人身売買を防ぐための法整備や被害者保護が「最低限の基準を満たしていない」として「監視対象国」に指定されています。このような国際社会からの厳しい批判をうけて、ようやく日本でも人身売買禁止の法制度化をめぐる動きが活発化してきています。
 今回は、1992年から日本の人身売買の被害者たちを支援する活動を続けてきた大下さんに、日本で性産業労働者として働く被害者たち―特にフィリピンとタイの女性―の状況を赤裸々に報告して頂きます。また、なぜ女性たちは人身売買の被害者になってしまうのか、彼女たちの出身国の状況―特にフィリピン―から考えていきます。そして、女性を性産業労働者として「輸入」する日本社会において、私たちと彼女は何が違い、何が同じなのか。彼女たちと私たちはどのように繋がっていけるのか?などについて、会場の皆さんと一緒に考えていきます。

主催、お問い合わせは、
アムネスティ・インターナショナル日本東京事務所まで
〒101-0048 千代田区神田司町2-7 小笠原ビル7階
電話:03-3518-6777/FAX:03-3518-6778
e-mail:stoptorture@amnesty.or.jp

コロンビアからも、多くの女性たちが日本に「人身売買」され、強制的に売春を強いられてきました。日本に着いたらパスポートを取り上げられ、500万から600万の借金があると宣言される。生理のときも、スポンジを入れて、働かされるなど。


沖縄、辺野古の情報は、こちらをご覧下さい。防衛庁への抗議が毎週行われています。

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ダルフール等、いろいろ紹介したいことはありますが、なかなか手が回りません。

アフガニスタンについて、グローバル・エクスチェンジ&平和な明日を求める9・11遺族の会編『アフガニスタン 悲しみの肖像画』(明石書店・1200円)というブックレットが出版されました。
益岡賢 2004年10月3日

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