こんな友達をもっちゃって

ニック・ディアデン
2004年9月20日
コロンビア・ジャーナル原文


イギリス人の多くにとって最近お気に入りの話題と言えば、目前に差し迫ってきた労働党の御崩御である。けれども、この度は通例と異なり、労働党のためにこれまでの生涯をかけてきた多くの大公たちに、労働党は大混乱状態にあることを確信させたのは、その外交政策、とりわけジョージ・W・ブッシュ米国大統領[ママ]との関係であった。ブレアが、世界中で、好んで右翼の友達をつくりがちなことは、彼の任期を通して報じられてきた。中でも、単なる気まずさから大きな困惑へと変わりつつある交友関係として、コロンビア大統領アレバロ・ウリベ----社会正義の追求ではあまり目立っていない政治家----との友情がある。

先月、コロンビア軍はコロンビアの労働組合員3名を暗殺した。コロンビアでの労働組合員殺害は、ほとんど驚くに値しない。というのも、コロンビア以外の世界を合わせたよりも、コロンビア一国でのほうが、多くの労働組合員が殺されているのだから。それにしても、豊富に石油を産するアラウカ州で犯されたこの殺害は、とりわけ大きな困惑のもととなっている。この殺害を行なったのは、コロンビアの正規軍であった。コロンビア国家の正規軍が、責任を持って、保健労働者および農業労働者組合の代表、そしてコロンビア最大の労組中央労働者連合(CUT)の地方会計担当を殺害したのである。

英国外務省にとって、この出来事は赤面モノだった。外務省のラテン・アメリカ担当公使ビル・ラメルが、その数週間前に、英国の労働組合関係者に対して、コロンビアでは「人権状況の改善に進捗が見られる」と語っていたばかりだったのである。

けれども、ウリベ政権のコロンビアでは、進捗はほどんどない。副大統領は、殺害犠牲者をゲリラと決めつけた。国防省は犠牲者を「不良分子」であると語った。「コロンビアでテロリズムの大勝利」を求めているとアムネスティ・インターナショナルを非難した大統領を擁する国の出来事である。むろん、我らがトニーは、こうしたファナティックな弁士たちの一部と親しくしている。

昨年、コロンビアでは、約7000人が、政治活動をしていたために、暗殺された。殺し屋たちはほとんど全く処罰されていない。一方、多くの労働組合員が政府転覆罪で告発され----とはいえそもそも告発された場合であるが----刑務所で悲惨な生活を送っている。そうしている間も、英国政府は、納税者の善意により、コロンビアに軍事援助を提供し続けている。先月の殺害を行なったまさにその軍隊に対して。ガーディアン紙記者によると、英国は、コロンビアという紛争ばらみの国に対する第二の軍事援助国であるという。ブレア政府が英国民に対し、この援助の内容はどのようなもので、何のためなのか説明していないことは、援助の怪しさを示している。

英国の対コロンビア関係とは対照的に、スペインの新政府----最近の選挙でブレアのもう一人の右翼友達を負かして政権の座についた----は、ウリベ政権への戦車売却契約をキャンセルして、社会民主主義的色彩を示した。スペイン政府は、その理由として、コロンビアとベネスエラの間で起きうる軍拡競争により地域全体が不安定化する恐れがあると述べた。

イラクでと同様、英国は、米軍司令官のもと、米軍中尉としての役割を演じている。主な仕事はPRだが、汚れ役もそれなりにやる気であることを示している。英国は暗い道を米国に追従して行っている。本当に暗い道を。「政治囚と連帯するコロンビア委員会」によると、ウリベ政権の最初の2年間で、6590人が政治的理由で拘留された。この中には、24人の労働組合指導者、29人の人権活動家、13人の先住民活動家、261人の学生活動家、38人の宗教関係者が含まれている。

ウリベ自身も、もちろん困惑の種である。ウリベは国内外の人権団体について、どうしても口を閉じていることができない。1年前、広い範囲の人権団体を「テロリスト・シンパ」の「弱虫」と呼んだ。さらに悪いことに、7月後半、機密解除された1991年の米国諜報報告は、ウリベとコロンビアのメデジン麻薬カルテルとの関係について詳細に報じており、悪名高い麻薬王パブロ・エスコバルとウリベは親しい友人だったと述べているのである。

けれども、ブレアの党にいる者たちにとってさらに困るのは、ウリベの社会ビジョンであろう。世界的な「対テロ戦争」に対するウリベの献身----ちなみにコロンビアのマルクシスト・ゲリラはアルカーイダとは何の関係もないのだが----は、一連の過酷なネオリベラル経済政策とセットになっている。最近、広範にわたる「経済引き締め」政策の一環として100億ドル相当の価値のある国有企業売却を発表したが、こうした政策は、コロンビア軍以外のすべてに影響を与えている。

どんな影響が出ているか? 国連開発計画(UNDP)とコロンビア政府自身の財務局は、最近、コロンビアの経済発展は1997年以来下向きであり、現在ではコロンビア人の67%が貧困ライン以下の暮らしをしていると発表している。一部の者に言わせると、経済は成長しているが、実際のところ、大多数のコロンビア人の生活は、坂を下り落ちているのである。

労働党活動家は、ブレアが米国大統領選で民主党候補ジョン・ケリーよりもブッシュに近いところにいることを見せつけられている。ケリーはジョン・エドワードおよび20人の上院議員とともに、最近、ブッシュ大統領に対してコロンビアでの「民間人に対する暴力が引き続いており」、コロンビア指導者に軍と準軍組織「死の部隊」----国をスポンサーとする暴力のほとんどを実行する実働部隊----とのあらゆる関係を絶つよう求める手紙を書いている。

ほとんど問題を起こさないだろうと思っていたらしい国が突然注目を集めてしまったことに困惑気味の英国外務省のビル・ラメルは、7月21日に、次のように断言した:「断固として言うが、我々は軍事援助の撤回を考えてはいない」。というわけだ。

とにかく一度だけでも、英国は米国ではなく欧州に、共和党ではなく民主党に、最右翼政治家ではなく社会民主主義者に、目を向けるべきだ。これらのグループは、この混乱を整理する方法を知っているかもしれないし知らないかもしれない。いずれにせよ、現在の友達よりはましであろう。

ニック・ディアソンは「War on Want」のキャンペーナ。翻訳は、一部、成句と文字通りの意味をかけてある部分など、文字通り的に訳しています。



関東周辺は、大分秋らしくなってきました。

最近の報道や、定期的に目を通しているウェブ情報への書き込みなどで、改めて気付かされたこと----あたりまえのことなのですが----があります。

いつの間にか、まるで、「戦争をしないこと」を主張するときに理由が求められるような流れが出てきていること。「人殺しをしないこと」を主張するとき(これは「人殺しをしてはいけない」という一般論とは違います)に理由が求められ、「人殺しをすること」には理由はいらない、という状況は、控えめに言っても、あまり好ましいものであるとは思えません。

イラク侵略・占領に反対することに対して「代案はあるのか」、「そんなんだからテロはなくならない」、「平和ボケ」という奇妙な反論、そして「何で反対なんだ」という、立証責任のすり替え。立証責任のすり替えを受け入れてしまうと、戦争に、人殺しに反対することに理由が必要である、という異様な社会の現出に、はからずも加担してしまうことになってしまいます。

イラク侵略・占領。大量破壊兵器がなかったこと(この重要な問題も大手メディアでは十分に扱われていないとの感がありますが)は、戦争や人殺しを正当化する人々の立場を批判的に検討するために持ち出すのは重要ですが、侵略戦争に反対する立場を擁護するために持ち出すのは、前述の点から、問題があることになります。

侵略戦争は、大量破壊兵器の有無とはかかわりなく、侵略戦争であるという理由で拒否されるべきものなのですから。

単純なこと。米国にも日本にも、侵略戦争を行う権利などないこと。

これは、説明を要する主張ではなく、その上でまともな文化的社会(と言ったとたんに私自身この言葉に反感を持つのですが、あえて、オヤジの権威主義的押しつけではない意味で、この言葉を救出したいと思います:成功するかどうかは別として)が構成される、近現代社会が膨大な犠牲の上にようやく学び取った公理と考えます。

サダム・フセインは悪党だったではないか! その通り。

けれども、それは侵略を正当化する理由にはなりません。

米英のイラク侵略・不法占領と日本の加担を支持あるいは容認すると同時に、サダム・フセインが悪党だった、という人たちは、たとえて言うと、自らがストーカー行為の相手としている人が、たまたま家庭内で虐待されているのをいいことに、ストーカー行為を激化させ正当化する人物に似ています。

サダム・フセインの場合のように、追放される以前は米国と大の仲良しで、米国の援助と容認のもとで、イラクの人々を弾圧していたとなると・・・・・・

これはもう、ストーカーとDVの加害者が結託してDVの被害者をストーキングする中で、ストーカーが、DV加害者の悪行を喧伝してDV加害者を追い出せば、被害者を自分のストーキング行為に独り占めすると同時に自分の行為は正当化できると考えて、DV加害者を追い出したというのと同じです。

都合の良いことに、このストーカーは、自分が被害者に害をなしているとは全く考えていない(むろんストーキングはそこに成立します)。

かくして、ストーカーたちは、サダム・フセインやらザルカウィやらアルカーイダやら、DV加害者を一生懸命捜して、それをプロパガンダに活用していくことになります。自らの行為を隠蔽し正当化するにこんな便利なものはないのですから。

そんな中、たとえば、バグダードで9月12日に起きたハイファ・ストリートの群衆に対する米軍ヘリのミサイル攻撃による虐殺をめぐって、次のような発言が現れたりします。
イラクで何が起きているの
フセイン政権が米軍によって倒され、
その後、日本敗戦時のような処理が行われると・・・期待していました。
しかし、一体全体どうなってるの!って感じでニュースを見ています。
私に理解できないことは、米軍や新政権に対する、テロ攻撃に歓喜するイラク市民の反応です。
特にファルージャは、その元凶です。
これに対して、当然、米軍が攻撃しないはずはありません。
燃えた米軍戦車の上でバンザイをしている少年達は、虫けらのような存在に見えるでしょうね。
私には、攻撃ヘリからこの少年達を銃撃する兵士の気持ちが分かるような気がします、自分たちが命がけで平和をもたらそうとしているのに、一体、何を望んでいるのか、、全く分からないのです。
完全にストーカーと同化した目線。このコメントが単なる嫌がらせのコメントではなくそれなりに真面目なもので、このような目線を意識さえしない前提としているとすると、それは本当に恐ろしいことです。

少しコメントしておきましょう。
イラクで何が起きているの:米英による侵略と不法占領、そのもとでの民間人に対する弾圧と人権侵害が起きています。つまり、悪辣なストーカー行為を米英が行い、日本はそれに加担しているのです。

フセイン政権が米軍によって倒され、その後、日本敗戦時のような処理が行われると・・・期待していました。:いったいいかなる根拠でそのようなことを期待したのでしょうか? DV加害者がDV被害者にストーキングを行なっているものによって追放されたとき、ストーカーによってDV・ストーカーの被害者に幸福がもたらされるという根拠は? 無根拠の主観的期待が、何故にその後の問いと判断の出発点を構成しうるのでしょうか。

しかし、一体全体どうなってるの!って感じでニュースを見ています。:ニュース以外はみないのでしょうか?

私に理解できないことは、米軍や新政権に対する、テロ攻撃に歓喜するイラク市民の反応です。:自分がDVとストーカーの二重被害にあっていたとしましょう。さて、ストーカーがDV加害者を追い出して家に入り込んできた。しかも、自分がDV加害者を追い出したことを宣伝して、おおっぴらにストーキングを行い、被害者を拷問し強姦している。しかも、それ以前はDV加害者と結託して被害者を虐待していた。イラクでの状況は、そのようなものです。そのとき、被害者はストーカーに感謝しろとでも?

特にファルージャは、その元凶です。:家から庭に出たというだけで非武装の老人を射殺し、国際人道法に違反して救急車を狙撃し、早産しかけている女性を救いに行った人道活動家の救急車を撃って、300人以上の女性と子どもを含む700人もの人々を殺害したストーカーに対して、抵抗するのは、悪辣な行為なんでしょうか?

これに対して、当然、米軍が攻撃しないはずはありません。:ストーキングの論理から言うと、その通りですね。たとえば、女子高生を拉致して監禁した人々。この女子高生が反抗的だ、という理由で暴行を激化させていきました。監禁した側の一人は、自分は被害者女性と心が通じていたはずなのに裏切られたと、暴行を激化させた心情を語ったことがあります。そうした心情を当然と考え、拉致され監禁された犠牲者が加害者に感謝しないという理由で犠牲者を拷問することが当然だと考えるならば、確かに「米軍が攻撃しないはずはありません」という判断は成立します。

燃えた米軍戦車の上でバンザイをしている少年達は、虫けらのような存在に見えるでしょうね。:同、上。もちろん、ストーカーにとって被害者が抵抗すればするほど、被害者は許し難い存在に見えてきます。「僕がこんなに善意で、命を懸けて(ストーキングを完遂するために仕事をないがしろにして)君を守ってるのに」って? きっと、ストーキングの相手を殺してしまったストーカーたちは、相手を虫けらのように考えていたのでしょう。相手を人間と考えていれば、殺せないはずですから(顔を見れば殺せないと言ったのはレヴィナスでした)。ちなみに、私には、虫けらのような存在には見えませんし、そう見えることもわかりません。生活があり、楽しみも悲しみもあり、家族も友人もある、あたりまえの人に見えます。

私には、攻撃ヘリからこの少年達を銃撃する兵士の気持ちが分かるような気がします、自分たちが命がけで平和をもたらそうとしているのに、一体、何を望んでいるのか、全く分からないのです。:もしかして、あなたも立派なストーカー候補者ですか? だから、勝手にイラクに乗り込んで人々を攻撃ヘリから銃撃する米兵の気持がわかる一方、イラクの少年達の気持が分からないのでしょうか。しかも、「何を望んでいるのか、全く分からない」。

ストーカーの気持はわかるような気がして、犠牲者の望みは全くわからない、ということについて議論され、解明されるべき問題は、徹頭徹尾、イラクの人々やイラクの少年達にではなく、ストーカーの気持はわかるような気がして、犠牲者の望みは全くわからないという人の側にあります。

quod erat demonstrandum.
こまったことに、これに類するコメントは、少なからずあります。

殺人を拒否するのに理由はいりません。侵略戦争を拒否するのにも、レイプを拒否するのにも。ましてや、レイプを否定するために、レイプされる側がその理由を提出しなくてはならないなどということがあるべきではないでしょう。

「俺はこれからお前を殺す。殺されたくなければ、その理由を俺に納得させよ」。

これに類する言説が、じわじわと社会に染み込みつつあります。

さて、どうするか。平凡ですが、たとえば:
  • 自分でウェブ(ブログだと簡単)を立ち上げ、立証責任を負う者のすり替えを拒否してそうしたすり替えを行う人々に立証を求めるような問いを立てていくこと。ちなみに、戦争に反対して外務省を辞めた天木直人さんのウェブに「戦争は議論する対象ではない。許してはならない絶対的暴力だ」と題するエッセイがあります。
  • 同じ様な観点から新聞を読みテレビニュースを判断して、投書・投稿・記者やデスクへの意見表明を丁寧に行うこと。
いつの間にか茹であげられていたカエルにならないために。

ここで紹介した記事(「こんな友達をもっちゃって」のことです)でも言及されているスペインのサパテロ首相が、国連総会演説で、次のように言っていました。
われわれが永年のテロとの闘いで学んだことは、そのために自由を制限したり先制攻撃を行ったりすることがテロリストの勝利につながることだ。

〔・・・・・・〕

戦争に勝利することは、平和を構築することよりも容易である。平和を創るためには、戦争よりも大きな勇気と勇敢さと決断が必要なものだ。

9月25日(土)午後5時から東京は宮下公園で、辺野古のボーリング調査に反対する集会およびデモが予定されています。詳細はこちらをご覧下さい。

国連大学前でジャマルさんが不当逮捕されました。公安関係者とおぼしき人が、ジャマルさんの隣に倒れ込んで(フェイク)それを口実にジャマルさんが逮捕されたとの情報も入っています。関係記事はこちらをご覧下さい。

イラク関係情報と分析の紹介は、主としてこちらでやっています。二人でやっているので、かなり頻繁にアップデートしています。最近、少しアクセスが軽くなりましたので、是非ご覧下さい。
益岡賢 2004年9月23日

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