エリック・フィチトル
2004年8月30日
コロンビア・ジャーナル原文
空路でコロンビア南部のプツマヨ州プエルト・アシスに行くとき目に付くのは、広大なジャングルの密林である。飛行機が降下するにつれ、あちこちに開墾地や牧場、農地が濃い緑の光景の中に切り開かれているのが目に付く。その回りを取り囲む密林が延々と水平線まで続いている。着陸直前に、町そのものが視界に入ってくる。木々の中に作られたコンクリートとレンガのオアシス。活動的で俗っぽい商業主義に満ちたオアシス。その大部分は、コカイン交易センターとしてプエルト・アシスにもたらされる金に支えられている。2004年2月、私と同僚は、ここ数年プツマヨの空に降り注がれた、米国の資金による空中農薬投下の影響を調べていた。未開拓のジャングルの中に点在する農夫たちの土地に農薬と化学添加物の混合品が投下され、合法作物も非合法作物も根絶し、また、動物や人間の健康に危害を与えていると報じられている活動である。
農薬散布作戦は、米国政府がプラン・コロンビアを引き継いでコロンビアと結んだ反麻薬協定の中で非常に大げさに宣伝されているもので、これまで4年間にこれによってコロンビアに33億ドルが提供され、コロンビアは世界で第3位の米国軍事援助の受取手となった(イラクを数に入れるとすると第4位)。戦闘ヘリの支援を受けて農薬噴霧機により行われる空中からの農薬散布は、供給サイドでの不法なコカ栽培に対する戦いとして、米国とコロンビア政府にとって目玉商品とされているはずのものである。けれども、プツマヨ州の現地で観察される証拠、そして米国諸都市の路上で見られる証拠は、農薬散布キャンペーンが途方もない失敗であることをはっきりと示している。
私の同僚と私は、プツマヨでやすやすとコカ栽培地を見つけることができた。コロンビア軍基地があるサンタナ町のちょっと外にある、プツマヨ川に架かる軍の警備を受けた橋を渡って、私たちは一人の農夫とともにカヌーに乗り込んだ。川を少し下ったところで泥岸をのぼり歩いていくと、熱帯雨林の天蓋が切り開かれた土地で日光を浴びるコカ栽培地にたどり着いた。ジャングルの小道をさらに歩くと、また別のコカ栽培地に出くわし、さらにその後もう一つに出くわした。結局、全部で5箇所の畑を見たが、どれもコカが一面に植えられていた。
農薬散布はどうなっているのか、と私たちは農夫に訊ねた。「6カ月前に奴らは我々に農薬を散布したが、コカはすぐにまた育つ。先週植え付けをしたばかりだ。数日遅かったね」と彼は答えた。彼はまた、異なるコカの苗種----ペルアナ、ボリビアナ、ティンゴ、プンタ・ロハ、ボリビアナ・ブランカ----を植えることで、作付け根絶作戦に抗して作物をちゃんと実らせることができると説明した。彼はまた、ボリビアナ・ブランカ種は9フィートにもなり、他のコカより2倍背が高いとも語った。この種はとりわけ農薬に対する抵抗力が強く、農薬を散布されてから数日のうちに、もう新たな緑の葉を芽生えさせると教えてくれた。
ザ・スコッツマン紙8月27日号で、BBC特派員ジェレミー・マクダモットは、コロンビア北端の諸州でも同様のことが起きていると書いている(New Super Strain...を参照)。この記事では新たな、遺伝子操作された農薬への耐性の強いコカ混合種で、単位面積あたり従来種の4倍の生産性を持つ「超品種」について説明している。コロンビア対麻薬警察のディエゴ・カイセド大佐は、「我々が発見したのは灌木ではなく木だ」と述べる。マクダモットはまたプツマヨ州のコカ栽培者ともインタビューしているが、この栽培者は、品種改良により農夫たちはこれまでよりも小さな畑に作付けを行いこれまで以上の収穫を得ることができると述べている:「農薬散布機は、3ヘクタールの標的規模を要すると我々は知っている。それに対して我々は今、コカをもっと集中的に育てるより小さな畑を持っている」と。新たな「超品種」がプツマヨ州でも作付けされたかどうかは確認されていないが、私の同僚と私が数カ月前に見たコカはその品種だったのかも知れない。確実に高生産性品種ではあった。
空中からの農薬散布キャンペーンが有効でないことを示すもう一つの兆候として、コロンビアの対麻薬警察が薬剤散布を行なったコカ作物の85%がすぐさま植え直されると推定していることがあげられる。そうできないカンペシノの多くは、散布機が農薬を散布することのできない国立公園のような地域、あるいはコロンビアのアマゾン地域の奥深くで農薬散布機が通常行けないところに移動する。
8月初頭、ホワイトハウスの麻薬統制政策局長ジョン・ウォルターズがコロンビアを訪問し、「対麻薬戦争」の進捗を観察した。農薬が散布されたコカ畑の上空を航空機で視察したあと、この麻薬ツァーは「供給サイドで我々が望んでいたこと、すなわち麻薬入手可能性の削減を、これらすべての努力のあとでさえまだ実現できていない」と認めた。その1週刊後、どうやらホワイトハウスのボスにたしなめられたらしいウォルターズは、次のように発表して前言をとりなそうとした:「今後12カ月で、我々は麻薬の入手可能性について変化を目にすることとなるだろう----恐らくはまず純度低下として、ついで価格の上昇として」。
「米国では、このようなプログラムを完全にやりきらない伝統がある」とウォルターズは述べ、コカ根絶は望ましい生産削減をもたらしてはいるが、麻薬商人たちは膨大なコカインのストックを保有しており供給を維持するために今もそれを用いているとして、コロンビアで予定を継続することを勧告した。ウォルターズは、コロンビアにおけるコカ生産は過去2年で3割減少したと主張し、ボリビアとペルー----米国がマヤク戦争の成功例として誇大宣伝してきた国々----でコカ生産が増大しているにもかかわらず「潰した風船効果」が生じている証拠など無いと言う。ウォルターズが言及しなかったエクアドルでは、プラン・コロンビアが始まって以来コカ栽培が根を下ろしてきている。
けれども、カトー研究所のテッド・ギャレン・カーペンターがウォルターズの日和見錯乱に対する応答で述べているように、2000年にクリントン政権がプラン・コロンビアを開始したのち、「数カ月のうちに米国政府関係者は、空中からの農薬散布キャンペーンが撲滅しているコカの量について得意げに話し始めた。同様の成功物語は最近まで続いている」。この、「入手可能性を減らすことが出来ないにもかかわらずこのまま続けよう」メンタリティは、政権党がどの党であるかにかかわらず、米国の麻薬戦争政策の要石となっているのである。実際、ワシントンによる栽培禁止の試みが数十年にわたって失敗している中で、ウォルターズが、あと一年やれば麻薬取引に打撃を与えることができると主張するのは、ドナルド・ラムズフェルド米国国防長官がイラク侵略前に米軍は笑顔と花をもって迎え入れられるだろうと主張したことと比べてさえ、うつろに響く。
けれども、メビウスの輪の中で御錯乱申し上げた政治家はウォルターズだけではない。8月25日付ワシントン・タイムズのコメンタリーの中で、米国国務省の国際麻薬法執行問題局次官補ロバート・チャールズは、『ナショナル・ジオグラフィック』誌2004年7月に掲載された調査報告記事「コカインの国」をめぐって同誌編集人とチリ人フォトジャーナリストのカルロス・ヴィジャロンを非難している。3年にわたる調査に基づくヴィジャロンのフォトエッセイと簡潔な報告は、コロンビア最大のゲリラであるコロンビア革命軍(FARC)の統制下にあるコロンビアの約4割の地域に暮らす多くのコロンビア人の生活に関する、得難い貴重な証言となっている。この記事は、同誌の伝統であるバランスの取れた民族誌学的ジャーナリズムによく適合している。
けれどもチャールズ次官補にとって、『ナショナル・ジオグラフィック』誌の編集者たちは「毎年2万1000人以上の米国人を殺す麻薬を提供し我が西半球でテロリズムに資金を与える者たちに信憑性を与えるものと見なされかねないことを知っておくべきだった」ということになる。同誌がFARC統制地域について報じたことを非難して、チャールズは、米国国務省の海外テロリスト組織(FTO)リストについて仄めかしている。FARCはそこに名を挙げられている組織の一つである。論説の中でチャールズはヴィジャロンの記事がFARCを「計り知れない邪悪」としてではなく「慈善的」と描いていることを強く攻撃し、ヴィジャロンが爆弾事件や誘拐、麻薬取引をはじめとする様々な犯罪にFARCが関与していることを「憂うべきにも」省略していることで有罪であると非難している。こうした犯罪行為にFARCが関与していることを否定する者はほとんどいないが、ヴィジャロンの記事が主題として扱っているのがそうしたことではないことは、はっきりしている。
それにもかかわらず、FARCの犯罪をものものしく反復し、『ナショナル・ジオグラフィック』誌の記事に「それについて不可解なことにほとんど説明がない」と主張したチャールズは、その議論を全国レベルに広め、その中で自分自身、言語道断の省略を行なっている。チャールズの一方的な弾劾演説からは、国務省FTOリストに名を連ねるもう一つの組織、コロンビア自警軍連合(AUC)への言及があからさまに抜け落ちている。この右派準軍組織は、FARCの犯罪と少なくとも同じように凶暴な犯罪を繰り返し犯してきた。チャールズ自身が属する国務省は、コロンビアにおける人権侵害の7割はAUCが犯していると推定しており、米国麻薬取締局のカレン・タンディは最近議会で、AUCは「麻薬取引に完全に関係している」と語っている。謎のように姿を消したAUCの元指導者カルロス・カスタニョは、AUCの資金の7割が麻薬取引から来るものであると認めたことがあり、米国はAUCの現在の指導陣数名に対して麻薬をめぐる訴追と身柄引き渡し要求を行なっているのである。
チャールズ次官補は、FARCに信憑性を与えるとして由緒正しい雑誌を叱りつけることができると考えているようなので、ボゴタにいるワシントンの「反麻薬」お仲間が大目に見た次のような行為が、AUCに信憑性を与える行為以外にどう考えることができるか見てみよう。7月28日、AUC司令官のサルバトレ・マンクソ、ラモン・イササ、イバン・ロベルト・デュケはコロンビア空軍機でボゴタに飛び、そこから政府の車両が彼らをコロンビア議会に連れていって、そこで彼らは、コロンビアで自分たちが行なった「英雄的」行為について長々と話をした。この出来事はアレバロ・ウリベ大統領が認めたもので、ウリベ大統領は彼ら3人が複数の逮捕請求と身柄引き渡し請求により逮捕されないですむよう、2日間の身柄安全保障を与えたのである。
この3人の司令下にあるAUCが殺した無実の民間人の数を考えるならば、これはブッシュ大統領がオサマ・ビン・ラディンとその幹部を米国議会で演説させるために招待し、それから海外の避難場所に送り返すようなものである[しかしブッシュが殺したそれより遙かに数の多い人々についてはどこへ行ったのでしょう]。コロンビア政府が逮捕状の出ている犯罪者に迎合したことについて非難の声をあげるどころか、ブッシュ政権は現在、ウリベお手盛りの「和平交渉」(コロンビア最大のゲリラFARCを含めないことで平和を達成しないことが見込まれている)の一環としてAUC戦闘員数千人の恩赦と武装解除に必要な資金を米国納税者から1億5000万ドル分捻出しようと検討しているところである。ワシントンは書類上、AUCをFARCやアルカーイダと同じようなテロ組織と見なしていることを考えるならば、こうした政策は、「我々とともにあるかテロリストとともにあるか」とのたまったブッシュという大統領をどこに位置づけることになるのだろうか?
コロンビアの事態が明示しているように、栽培している場所で麻薬と戦うことは無益な行為であることが証明されている。けれども、歴史が示唆するところを見るならば、こうした事実がワシントンのイカレ者たちに影響を与えるなどと期待することはできない。そしてこの間、ブッシュ政権は、国務省の海外テロリスト・リストのグループとの交渉を選択的に支持することで、自らの対テロレトリックを矛盾におとしいれている。対麻薬戦争と対テロ戦争の矛盾はますます明らかになってきている。
エリック・フィチトルは『コロンビア・ジャーナル』の編集委員。
辺野古のボーリング調査強行をめぐる情報が、たとえばこちらにあります。
また、次のようなメッセージがありました。転送・転載歓迎とありましたので、転載。
*辺野古沖ボーリング調査着手に抗議する「緊急連日FAX送信」のお願い*
(転送・転載歓迎)
「辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会」からのお願いです。
去る4月19日に那覇防衛施設局がボーリング調査を開始しようとして以来、辺野古沖への基地建設に反対する人たちが調査開始を実力で阻止するとともに、その後140余日辺野古漁港に座り込み、沖縄防衛施設局への説得、監視活動を継続してきた。また、東京をはじめ各地で座込みに連帯してボーリング調査計画の撤回を求める運動が実施されてきていた。また、全国100名近くの弁護士が結集して座り込みを側面から支援し、世界自然保護基金(WWF)をはじめ世界中の環境団体からも基地建設反対の声が上がっている。
しかしながら、9月9日に防衛施設局は、卑劣にも闇討ち的に辺野古港とは別の港から調査船を出し、ブイを数個浮かせ、報道陣を海に招いてそれを見せ、ボーリング調査着手の報道をさせ、ボーリング調査着手を既成事実化した。
海上基地建設は、59年間沖縄に押しつけてきた米軍基地をさらに拡充するものであり、辺野古住民の生活と環境を破壊し、ジュゴンを絶滅させ、さんご礁を破壊するばかりでなく、長年基地の縮小・撤退を待ち望んできた沖縄の人々の心を踏みにじる暴挙であり、断じて許せない。
辺野古では、辺野古港で必至の座込みを続けて、沖縄防衛施設局による本格的ボーリング調査の阻止行動を継続している。それに対して、沖縄防衛施設局が機動隊を導入してテント村の排除を目論む可能性がある。
このような状況下で、辺野古の座込みに連帯して、下記3点からなる要請文を連日FAX送信することを皆さんに呼びかけます。是非ともご協力願います。
<抗議要請内容>
(1)辺野古住民の反対を押しきってボーリング調査を開始したことに抗議する!
(2)辺野古の座込み排除を目的とした機動隊導入に反対する!
(3)辺野古沖の海上基地建設計画を白紙撤回せよ!
<送り先>
那覇防衛施設局 西局長殿
FAX:098―866―3375(TEL:098−868−0174)
〒900-8574那覇市前島3丁目25−1
防衛庁長官 石破茂殿
FAX:03―3502―5174(TEL:03―3268―3111)
info@jda.go.jp 〒162-8861東京都新宿区市谷本村町5−1
防衛施設庁長官 山中昭栄殿
FAX:03―3502―5174(TEL:03−3268−3111)
info@dfaa.jda.go.jp 〒162-8861 東京都新宿区市谷本村町5−1
<FAX送信行動期間>
辺野古の座込みが継続する間。特に9月11日〜18日までの1週間。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(抗議文案例)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
那覇防衛施設局 西局長殿
防衛庁長官 石破茂殿
防衛施設庁長官 山中昭栄殿
〜〜(注意)ここから自由にご自身の思いをお書きください。〜〜
海上基地建設は、59年間沖縄に押しつけてきた米軍基地をさらに拡充するものであり、辺野古住民の命と生活と環境を破壊し、ジュゴンを絶滅させ、さんご礁を破壊するばかりでなく、長年基地の縮小・撤退を待ち望んできた沖縄の人々の心を踏みにじる暴挙である。
〜〜(注意)ここまで自由にご自身の思いをお書きください。〜〜
私は、次の3点をを訴える。
(1)辺野古住民の反対を押しきってボーリング調査を開始したことに抗議する!
(2)辺野古の座込み排除を目的とした機動隊導入に反対する!
(3)辺野古沖の海上基地建設計画を白紙撤回せよ!
2004年9月
お名前 ご住所
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(抗議文案例終り)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本に難民申請をしてUNHCR前で座り込みをしているクルド人2家族についてのキャンペーンがあります。
イラク関係の情報は、馬鹿げてつながりにくいですが、Fallujah, April 2004ブログで更新中です。