ギャリー・リーチ
2004年8月2日
コロンビア・ジャーナル原文
米国は当初、アレバロ・ウリベ大統領による右派準軍組織コロンビア自警軍連合(AUC)との交渉を支持してきたが、駐コロンビア米国大使ウィリアム・ウッドの最近のコメントと準軍組織指導者への麻薬による起訴状の発行は、交渉の足を引っ張っているようである。ワシントンが当初この「和平交渉」にお墨付きを与えていたのは、強化されたコロンビア軍に対する過度に楽観的な期待と、当時大統領に選ばれたばかりだったウリベに対する政治的支持とに基づくものだった可能性が高い。けれども、交渉が進むに連れて、ワシントンの支持は弱まった。これは、おそらくは、準軍組織の解散により軍事的跳ね返りがある可能性を認めたからかも知れない。現在準軍組織の統制下にある地域のすべてをコロンビア軍が実際的に統制できないことはますますはっきりしてきた。すなわち、右派準軍組織の解散は、コロンビアの左派ゲリラが領土を手にする可能性が高いことを意味しているのである。
AUCは、ウリベ政権と交渉する準備として、2002年12月に一方的停戦を宣言した。準軍組織は繰り返し停戦に違反したにもかかわらず、準軍組織の解散を目的とする交渉は、2003年7月に公式に開始された。2003年を通して、米国とコロンビアの政府は、AUCがコロンビア全土で非武装の民間人を殺し続けているという事実から目をそむけてきた。ウリベは、軍事的装いの中に平和の印をつけたがっていたようである。
しかしながら、「平和」を達成しようというウリベの戦略は、コロンビア軍が準軍組織を解散したことで生じる空白を埋めることができるという言われなき信頼に基づいていたことを示唆している。米国政府はウリベを支持し、準軍組織が続ける人権侵害を無視し、以前AUCの指導者カルロス・カスタニョとサルバトーレ・マンクソに対して身柄引き渡し請求を出していたにもかかわらず、準軍組織による麻薬取引も無視した。一方、二人の準軍組織指導者はコロンビア政府に恩赦を出すよう求め、ブッシュ政権に身柄引き渡し請求を撤回するよう求めた。そうしなければ、「和平交渉」は危機に陥ると主張して。ブッシュ政権はウリベの和平政策を支持し、AUC兵士たちの解散補助資金として300万ドルを提供した。さらに、AUCは米国国務省の海外テロリスト組織リストに名前が挙がっているにもかかわらず、2003年5月には、米国大使館職員が、AUCの特使と面会して交渉について会談を持ちさえしたのである。
しかしながら、2004年前半に、ワシントンは態度を変え始めた。何年にもわたり、米国政府は主に、左派ゲリラのコロンビア革命軍(FARC)を麻薬取引に結びつけるプロパガンダを続けてきた。AUCのほうが遙かに多く麻薬取引に関与してきたことや、AUCの重大な人権侵害については、米国政府関係者はほとんど言及してこなかった。けれども2004年2月、ウッド米国大使は、AUCに対するプロパガンダ・キャンペーンを開始し、1年以上にわたってほとんどのコロンビア人にとって自明だったことを認めた:「準軍組織が停戦の約束を完全に果たしていないことは明らかである」。
それ以降、ブッシュ政権関係者は、公に、麻薬取引に対するAUCの関与を批判しはじめた。実際、これまでではじめて、ワシントン発のレトリックで、右派準軍組織が麻薬取引に関与していることを、コロンビア左派「麻薬ゲリラ」への批判と同じくらいたくさん批判している。米国政府関係者はまた、準軍組織兵士達が解散して市民生活に戻るためにACU指導者への身柄引き渡し請求を取り下げはしないとの態度をますます強硬に示している。
6月16日、新たな解散交渉が始まり、政府の交渉担当がコロンビア北部の特別「集中地帯」で準軍組織の指導者10人と会った。それから2週間もたたないうちに、ウッド米国大使は、「和平プロセスが、米国で起訴されているコロンビア人の身柄引き渡し、および重大な人権侵害を犯した者たちや主要な麻薬商人を裁判にかける必要性に影響を与えないことが大切である」と強調した。ウッドはまた、コロンビアの雑誌カムビオと準軍組織について論じ、「彼らのプログラムはただ一つ、麻薬=テロである。アジェンダはただ一つ、破壊である」と述べた。7月22日には、米国は交渉に参加している準軍組織指導者の二人----ディエゴ・フェルナンド・ムリージョとビセンテ・カスタニョ----を、麻薬取引の罪で起訴した。これにより、解散交渉はさらに複雑化した。
ワシントンによる最近の準軍組織批判は、これまでの一方的なゲリラの悪魔化と比べるならば、これまでワシントンがコロンビア内戦について描き出してきた構図に対して遅れに遅れたバランスを与えるものだったが、米国がAUCを非難したタイミングは、控えめに言っても興味をそそる。準軍組織「死の部隊」とのつながりについて多くの記録があるコロンビア軍に何十億ドルもの援助を与えたのち、そしてAUC兵士たちが日常的に犯している人権侵害残虐行為に見て見ぬふりを続けてきたのちに、ワシントンは何故、突然、右派準軍組織への批判を始めたのだろうか?
その答えは、コロンビアが現在陥っている軍事的膠着状態にあるのかも知れない。米国とコロンビアの政府関係者は、繰り返し、軍が状況を有利に運び、FARCは劣勢であると主張してきたが、これまで戦場で大きな勝利を収めてきたわけではなかった。専門家の多くは、FARCは----恐らく2006年のウリベの任期終了を待って----戦術的撤退を行なっているが、軍事的にひどく弱体化されたわけではないという意見を持っている。言葉をかえると、コロンビア内戦は現在膠着状態であり、いずれの側も勝利を達成できずにいるのである。FARCが未だに巨大な部隊であることは、米国がムリージョとカスタニョを起訴したと同じ7月22日、FARCの200人のゲリラがコロンビア南部の重警備されていた橋を襲撃し13人の兵士を殺したことで示された。
コロンビア軍が強化されたことにより軍は多くの地域に駐留地点を拡張しはしたが、いまだにコロンビアの多くの地域でゲリラを封じ込めているのは準軍組織である。準軍組織が解散したら、撤退した地域の多くを制圧するのはFARCとなる可能性が高い。とりわけ、ゲリラの制圧地域でコカ撲滅を最近進めることができたことを考えると、これはブッシュ政権にとって問題を引き起こす。準軍組織の解散がFARCの地域的制圧範囲を広げることとなるならば、ゲリラの軍事的強化とコカ栽培による資金量の増大を招く可能性も高い。
こうしたことを考えるならば、米国政府関係者が最近準軍組織を批判していることは歓迎すべきではあるが、それを米国の政治的・軍事的戦略の根本的変化と見なすべきでは必ずしもない。20年以上にわたって、ワシントンは準軍組織が麻薬取引や重大な人権侵害に関与してきたこと、米国の支援を受けたコロンビア軍と結びついてきたことを無視してきた。というのも、準軍組織はFARCに対する対ゲリラ作戦に役立ってきたからである。全く同じ目的のもとで、米国政府は、戦略を変えて、これらの問題を強調しているのかもしれない。
準軍組織に対する米国政府の批判と身柄引き渡しの圧力は、準軍組織解散交渉の失敗に貢献するかも知れない。準軍組織の人権侵害者たちはその人権侵害をめぐり処罰されなくてはならないことはもちろんだが、米国のコロンビア関与の歴史を見るならば、ブッシュ政権が最近取っている反準軍組織の態度はそれによるものではないことが伺える。もっとありそうな理由は、準軍組織にFARCとゲリラシンパと疑われた人々に対する汚い戦争を準軍組織に続けさせたいという欲求である。ブッシュ政権にとって、これは負けなし状況である。解散交渉の足を引っ張ることにより、準軍組織の活動を永続化させることができ、一方で、人権を提唱している身振りをすることができるのだから。
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