またさらに40年?

ギャリー・リーチ
2004年6月7日
コロンビア・ジャーナル原文


2004年5月、コロンビア最大最古のゲリラであるコロンビア革命軍(FARC)は40周年記念を祝った。農民たちの一団がFARCを結成したのは1964年5月27日、南中部コロンビアに自分たちが作ったマルケタリアの「独立」村を、軍が陸空から攻撃したときであった。FARCは、国家がスポンサーとなった暴力によりあらゆる反対派---とりわけ自由党員と共産主義者---が標的とされていた、弾圧の中で生まれた。当時、米国は対コロンビア政策を冷戦イデオロギーの枠組みでとらえ、共産主義者そして共産主義者と疑った者たちを標的とすべく、コロンビア軍に武器と訓練とを提供していた。

今日のコロンビアを見ても、ほとんど状況は変わっていない。コロンビアの農民や労働組合員、人権活動家、コミュニティの指導者たちの多くはゲリラへの協力者と見なされて、コロンビア軍とその同盟者である右派準軍組織から標的とされる。米国はここ数年コロンビアでの軍事的役割をエスカレートさせた。まずは麻薬に対する戦争と称して、そして2001年9月11日以降は、対テロ戦争と称して。一方、さらに事態を悪化させることとなったのは、FARCがますます民間人を標的としたことである。過去10年の間に、FARCのイデオロギー的目標は、軍事的目標の後ろに追いやられてしまったようである。このため、FARCは、コロンビアの中・上流階級に対してだけでなく、政府や準軍組織に共感していると見なした農民に対しても攻撃を加えるようになった。

2001年8月大統領に就任して以来、ウリベは、コロンビアの多くの場所を軍事化した。コロンビア軍は労働組合指導者や人権活動家のことをゲリラに共感していると非難して、大規模な「狩り出し」を行なってきた。ますます多くの組合指導者や人権活動家が政府の治安部隊により「失踪」させられている。2003年3月の国連報告は、ウリベ政権下でコロンビア軍は以前よりももっと直接人権侵害に関与するようになったと述べている。昨2003年9月、ウリベ大統領は、公に、NGO職員とりわけ人権擁護活動家のことを、コロンビアのゲリラ・グループの肩をもつテロリストであると述べた。人権活動家たちをこのように非難していたとき、ウリベ大統領は同時に、コロンビア最悪の人権侵害者である準軍組織に恩赦を提案していた。ウリベ大統領の主要な標的は、ゲリラだけではなく、その治安・経済政策に反対する人々のすべてであることは、明らかである。

ブッシュ政権は、ウリベの権威主義的政策をおおっぴらに支持してきた。米軍の援助を増大させ、米軍特殊部隊をコロンビアに派遣して、ロサンゼルスに本社を置くオクシデンタル石油のパイプラインの防衛に当たらせた。ブッシュ政権のもとで、世界的にテロと戦うという名のもと、人権は後ろに追いやられたのである。米国国務省の外国テロリスト・リストに名を連ねる武装集団と戦っていると称してあからさまに市民社会を標的としているコロンビア政府を、米国が支持し続けていることからも、これは明らかである。

40年前FARC結成の理由となった社会経済的不平等と政府の弾圧は、今日のコロンビアでも蔓延している。今日、コロンビア人の64%が貧困生活を送っている。悲劇的なことに、可能な代替を提供するかわりに、FARCの戦略は、コロンビアでの社会的不正の問題を悪化させている。しかしながら、ブッシュとウリベの両政府が我々に何を信じさせようとしたとしても、FARCは問題の根ではなく、問題から生まれた症状に過ぎない。そして、コロンビア紛争の根にある巨大な不平等と政府の弾圧の問題に実効性のあるかたちで対処しないならば、FARCはもうあと40年、コロンビアに存在し続けるであろう。


コロンビアの記事です。FARCは問題から生まれた症状であり、問題の根ではない。問題の根は巨大な社会的不平等と大多数の人々の貧困、そして公正と民主主義、人権を求める人々に対する政府の弾圧にある。米国は「対テロ戦争」の名のもとで、コロンビアの強権政府を強く後押ししており、それは武力紛争を悪化させるだけでなく、農民や人権活動家、労働組合員、ジャーナリストたちへの弾圧につながっています。

右派準軍組織は虐殺や拷問・人権侵害をコロンビア軍に替わって行っている組織で、いわば軍による弾圧の下請け団体のような位置づけでもあります。準軍組織の人権侵害がコロンビア全体の約75%を占め、対抗するFARCやELNの人権侵害が20%ほど、政府軍・治安部隊は弾圧を準軍組織に「外注」しているため、人権侵害は5%程度といった感じです。

「外注」と言えば、コロンビアではディンコープ社という米国の傭兵会社が活動しています。イラクでのブラックウォーター社と同様、契約傭兵を提供している会社です。

正体不明のグループに斬首されて殺されたニック・バーグ氏の父親マイケル・バーグ氏は、次のように書いています(TUP速報さんより):
ジョージ・ブッシュは、一度も私の息子の目を見たことがありません。ジョージ・ブッシュは、私の息子を知りません。それが、彼をことさらに冷酷にしているのです。ジョージ・ブッシュは、彼自身人の親でありながら、私の苦しみや私の家族の苦しみを感じることはできず、ニックのために嘆く世界の苦しみを感じることができません。たんなる政策立案者であって、自分の行為の結果を担わなくてもよいからです。ジョージ・ブッシュは、ニックの心も、アメリカ民衆の心も、見ることはできず、まして、彼の政策が日夜死なせているイラクの人々の心など、見えはしないのです。

ドナルド・ラムズフェルドは、イラクの捕虜に対する性的虐待の責任は取ると言いました。しかし、行為の結果が自分の身に返ってこないのに、どうして責任がとれるというのでしょうか。ニックが、その結果を引き受けたのです。

息子の命を奪った殺人者たちにもまして私にとって耐えがたいのは、多くの人の命を絶ち、なお生き続ける人たちの生活を破壊する政策を、安閑と坐って立てている者たちです。

〔・・・・・・〕

ジョージ・ブッシュの役に立たない指導性は、ひとつの大量破壊兵器であり、それがいくつもの出来事の連鎖反応を可能にした結果、私の息子は不法に拘束され、エスカレートする暴力の世界に沈められてしまったのです。
本当に暴力を止めたいのか、「対テロ戦争」を叫んで自分の目的を暴力的に果たすのではなく、真面目にテロリズムを止めたいのか。それならば、症状を通して原因を見つめなくてはならない。マイケル・バーグ氏のメッセージは、一読に値します。

イラクのアブグレイブにおける米軍による拷問をめぐって、アイルランドのシン・フェイン党党首が私も拷問写真に写ったことがある――アブ・グレイブはアイルランドのリパブリカンにとっては驚くべきものではないという記事を書いています。ぜひ、お読み下さい。とりわけ訳者のいけだよしこさんが紹介しているファルージャについての小川さんの記事(『月刊現代』)は、ヒステリックに「対テロ戦争」を叫ぶのではなく、事態の原因をきちんと見つめる目、という点でバーグさんの記事にも通じています。

日本政府は、「対テロ戦争」(それがおぞましい拷問や強姦、殺害により利権を確保するための隠れ蓑に過ぎないことはますます明らかになってきていますが)の推進を前提として、昨年成立した武力攻撃事態法を実働させるために、日米物品役務相互提供協定の改定など、有事7法案の今国会成立をねらっています。一方、世界的な流れについてはこちらによくまとまっていますので、ご覧下さい。
益岡賢 2004年6月9日

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