トム・フェイリング
2004年5月24日
コロンビア・ジャーナル原文
コロンビア大統領アレヴァロ・ウリベは、自らも認める右派である。最近のコロンビア大統領の多くと違って、ウリベは土地所有者階級の出身で、父アルベルト・ウリベから大規模な農場を受け継いだ。父親のアルベルト・ウリベは、1983年に殺されるまで、麻薬取引の罪状で米国から身柄引き渡しを求められていた。アルベルト・ウリベを殺したのは、左派コロンビア革命軍(FARC)だと言われている。アレヴァロ・ウリベはファビオ・オチョアの子どもたちと一緒に大きくなった。オチョアは、パブロ・エスコバルのメデジン・コカイン・カルテルの3人の中心人物の一人である。
ウリベ大統領の経歴は非の打ち所がない。ハーバードとオックスフォードで教育を受け、頭が切れ、非常に有能な官僚である。26という若さでコロンビア第二の都市メデジンの市長に選出された。1980年代のメデジンのエリートは金持ちで腐敗しお互いに癒着しており、若いウリベを愛した。けれども、新市長ウリベは、たった3カ月で、麻薬マフィアとの公然たる関係に当惑した中央政府により、市長辞任を余儀なくされた。ウリベはそれから文民航空局長となり、自分の権限を使ってパブロ・エスコバルの軽飛行機の一団にパイロット・ライセンスを与えた。これらの飛行機は、定期的に米国にコカインを運び入れていた。
1995年、ウリベはアンティオキア州の州知事となった。メデジンは同州の首都である。アンティオキア州は、現在ウリベが大統領として推進している準軍組織の体制化の試験場となった。Convivirと呼ばれる政府主導の農民組織が「コロンビア軍のもとに民間人を結集させるため、特別なプライベートの治安と監視サービス」を行うために結成された。
ウリベ州知事のもと、治安部隊と準軍組織は告訴から免責され、この免責を利用してアンティオキア州でテロ・キャンペーンを行なった。何千人もの人々が、殺され、「失踪」し、拘留され、追放された。たとえば、サン・ホセ・デ・アパルタドでは、Convivirの指導者の3人はよく知られた準軍組織兵士でもあり、コロンビア軍第17旅団から訓練を受けていた。1998年には、200以上のConvivir組織の代表が、人殺しの指導者カルロス・カスタニョ率いる準軍組織コロンビア自警軍連合(AUC)に合流すると発表した。
ウリベが大統領候補として選挙キャンペーンを開始したとき、ウリベが準軍組織と結びついていたために、多くのジャーナリストが、麻薬ギャングとウリベ一家の関係について掘り下げることを避けた。テレビ局カナル・ウノ(1チャン)で時事問題を扱う番組ノティシアス・ウノは例外だった。2002年4月、この番組は、ウリベとメデジンの麻薬カルテルとの関係についてシリーズで報じた。番組が放映されたあと、誰だかわからないも者たちから局に電話がかかって来始め、番組のプロデューサである target="_blank">イグナシオ・ゴメス、ディレクターのダニエル・コロネル、そしてコロネルの3歳の娘を殺すと脅迫し始めた。この娘はその直後に国外に避難し、ゴメスもコロンビアを離れることを余儀なくされ、現在亡命生活を送っている。
ノティシアス・ウノは、1997年に米国麻薬取締局(DEA)がサンフランシスコに停泊している船から5万キロの過マンガン酸カリウムを押収したことを報じていた。過マンガン酸カリウムはコカイン製造に使われる科学薬品で、この積荷はGMPケミカル・プロダクツ社という名の会社に向けてコロンビアに送られる途中だった。GMPの所有者はペドロ・モレノ・ヴィジャGMPで、ウリベの大統領選でマネージャーを務めた人物である。押収された化学物質は、150億ドル相当のコカイン生産を可能にする量であった。DEAは、1994年から1998年まで、GMPはコロンビア最大の過マンガン酸カリウム輸入者であることを確認したが、この時期は、ウリベがメデジンの州知事で、モレノ・ヴィジャが彼の参謀長だったときである。
大統領選がたけなわになるにつて、記者達は、メディアのボスたちが編集の独立性をますます脅かすようになったことを心配し始めた。政治エスタブリッシュメントとつながりを持つ二大ビジネス・グループがRCNとCaracolというコロンビア最大のテレビとラジオのネットワークを所有している。記者たちの心配は、ウリベがサントス一家---コロンビアで最も影響力の大きい日刊紙を所有している---のメンバーを副大統領候補に選んだことでさらに高まった。
準軍組織や麻薬カルテルとの関係にもかかわらず、ウリベは大統領選に勝利した。けれども、ウリベの勝利を地滑り的と呼ぶことは---コロンビア内外でしょっちゅうそう呼ばれたが---事実をひどくねじ曲げている。ウリベは有効投票数の53%を獲得したが、有権者で投票した者はたった25%だったのである。内戦からは割と安全なところにいるコロンビア都市部の中流階級の多くは、アンドレス・パストラナ大統領が進めていた和平プロセスに深く幻滅しており、強行派のウリベを支持したが、選挙は公正だったとはいいがたい。
マピリパンは今日までで最悪の準軍組織による虐殺が犯された地の一つであるが、住民の多くが「準軍組織」候補ウリベに投票した。投票日にマピリパンにいた、コロンビアの人権団体「正義と平和」のハビエル・ヒラルド神父は、「莫大なイカサマがあった。パラミリタリーが投票ブースにいた。また、破棄された投票が沢山あった。これはオンブツマンに報告されたが、何もなされなかった」と述べている。選挙のイカサマと蔓延した準軍組織による脅迫---選挙戦の際に他の候補全員から批判されたことである---そしてその前10年に左派が完全に縮退したことといったすべてが、ウリベの勝利につながった。
ウリベは自分の「民主的治安」政策がコロンビアのすべての人々に平和と安全をもたらすと約束したが、メデジンの労働組合学校が出した統計は、労働組合員や人権活動家への脅迫が続いていることを示している。2003年に殺された労働組合員の数は「たった」90人に減少したが、これは準軍組織がわずかに封じ込められたことを示している。けれども、殺害脅迫は20%増加し、労働組合員の家族に対する殺害脅迫は30%増加した。警察の襲撃捜査、大量拘留、強制「失踪」は、すべて、前年より増加した。
ウリベは反対派弾圧を強化する一方、さらにワシントンの共和党ホワイトハウスにすり寄っている。南米諸国の中でジョージ・W・ブッシュ米国大統領のイラク侵略を支持した指導者はウリベだけである。当時、彼は米国にコロンビアを侵略するよう招待しさえしていた。ウリベはコロンビア軍の規模を倍増させようとしており、米国にさらに多くのヘリを求め、情報収集などさらに広範に関与するよう要請した。ブッシュ政権の多くのスタッフは、米国政府が「プラン・コロンビア」への数十億ドル規模の軍事投資を拡大することを望んでいる。たとえば米軍のジェームズ・T・ヒル准将は、最近上院委員会に次のように語った:「コロンビアで民主主義が失敗するならば大きな痛手となるだろう。私をかの地に行かせる必要がある」。
けれども、その前に、米国はウリベに、不法な同盟者である準軍組織を統制するように圧力をかけている。ウリベが開始した、農民民兵と100万人からなる情報提供者ネットワーク創生は、準軍組織戦略を体制に取り込んで確立する方法である。大統領になったとき発令した「社会不安事態」のもとで、警察と軍にはゲリラを支援しているとわずかでも疑いがあれば、証拠がなくても市民を弁護士なしで拘留する権利を与えられ、住宅に捜査令状なしで入り込む権限が与えられた。
ブッシュとウリベがくり返しくり返し述べたように、「対テロ戦争」においては、中立的なものなどいない。ウリベ大統領は、武力紛争に対して中立的な立場を採ると主張するNGOのことを、「テロリズムに奉仕する政治扇動屋、人権の名のもとに身を隠す卑怯者」と決めつけた。政府よりのゲリラにだけ反対するNGOだけが、干渉されずに活動を許される。
ウリベの戦略は、戦争を公然化し、社会組織を不法と宣言し、軍と警察を使って直接社会活動を弾圧し、その一方で、準軍組織とは「交渉」する、というものです。ウリベが喜んで使うだろう致死的な戦略を考えると、労働組合活動家や人権活動家がどうして意気消沈しているかはよくわかる。これを考えると、また、米英の政府がウリベに疑問なしに提供している支援が、どれだけ不道徳なものであるかも、わかる。
トム・フェリングは英国のJustice for Colombiaのキャンペーン担当。
コロンビアの記事です。最後の方は、日本で起きていることと重ねて読むことができ、ビミョーです。
2004年6月8日付新コロンビア通信社(ANNCOL通信)は、ウリベ大統領のもとで拷問と殺害が増えたことについての人権団体のインタビューを掲載していますので紹介します。拷問と殺害は米国が後押しする大統領のもとで倍増したPublicityというメルマガに、「有事関連7法案」についてわかりやすいまとめがあります。米英のイラク不法占領と日本の占領加担等については、イラクからの自衛隊の即時撤退を求め、憲法改悪に反対する意見広告運動第三期が進行中です。
2004年6月8日(ANNCOL)---コロンビアのアラウカ州では検察局が軍事化されている。コロンビア軍第18旅団の兵営地の中にあるオフィスから、社会指導者たちへの告発を行なっている。
人権活動家イェンリ・メンデスは米国に本社を置く多国籍石油企業Oxy[オクシデンタル石油]とスペインのREPSOLが検察局に資金提供をしており、そして検察局が先住民グループと農民を石油の豊富な地域から追い出すために法的な謀略を使っていると述べた。
「ウマニダード・ヴィヘンテ」はコロンビアの人権アドボカシー・チームで、ソーシャル・グループや人権侵害の犠牲者に付き添う活動をしている。このグループは法的助言、人権トレーングと組織支援を行い、人権を尊重する民主社会構築に貢献しようとしている。
イェンリ・アンヘリカ・メンデスは「ウマニダード・ヴィヘンテ」チームのメンバーで、ANNCOLが、アラウカ州の人道的危機をめぐって彼女にインタビューした。
問:アラウカ州ではこんにち何が起きていますか?
答:アラウカの住民にとって、人権状況はますます危機的になってきています。コロンビアの現政府が、いわゆる「民主的治安」政策の「試験場」としてアラウカを選んだためです。
他の場所と同様、これは、米軍の介入のもとで軍を増強することを意味しています。2002年末、アラウカを訪問した米国大使は、9800万ドルを第18旅団に寄付すると発表しました。カニョ・リモン石油パイプラインを防衛するためです。さらに、60人以上の米軍海兵隊がアラウカにいて、コロンビア軍兵士を訓練しています。
現政権が発足してからアラウカ州での人権侵害は100%増加しました。主な犠牲者は社会運動で、現在10名以上の指導者が刑務所に送られています。これらの人々は妥協せず人権侵害に抗議をしてきたこと、そして政府の政策もイニシアチブもない中でオルタナティブな開発のモデルを推進しようとしてきたことで知られる人々です。
これらの指導者が、2002年11月、2003年8月、2004年2月に大規模に投獄されたためにいなくなって、犠牲者の声が窒息させられ、また、人権侵害の増大と司法の不処罰の増加がもたらされました。逮捕の目的が果たされたことになります。
問:コロンビアのこの地ではどの準軍組織が活動していますか?
答:アラウカでの準軍組織の戦略は何度もの侵略とそれによる地歩固めですが、コミュニティが動員されて行動したため準軍組織は確固たる立場を得られずにいます。
1998年軍兵士たちが準軍組織の紛争をしてタメのサン・イグナシオとラ・カチャマ周辺に進出してきました。彼らは数人を暗殺しました。その一人は妊娠中の女性でした。少なくとも一人の士官を含む軍が関与していたことは、法廷で証明されました。
同じく1998年、準軍組織がConvivirといういわゆる私営治安組合を通して自らを合法化していたとき、その一つがアラウカ州に創設されました。2カ月の活動期間中に、約100人が暗殺されました。その多くが愛国同盟の党員と社会的に周辺化された人々でした。
この事件によりコミュニティが大規模に動員され、犯罪が批判され、Convivirの正確が明らかにされました。Convivirは準軍組織の性格をもち、政府の治安組織がその活動に参加しているということです。
現在、アラウカは、ウリベ大統領自身が任期の最初に述べた「民主的治安」政策の実験場になっており、その結果もたらされたことの一つは、アラウカに7つある市の一つタメで準軍組織が地盤を固めたことです。アムネスティ・インターナショナルは、この地に関する報告の中で、最近、準軍組織の結成が行われたと述べています。
問:米軍兵士たちは人権侵害に関与しているのですか?
答:米国はアラウカ州での人権侵害に大きな役割を果たしています。その理由は、主として、米国は「民主的治安」政策を推進しそれに資金を提供していること、また、すでに述べたように米国がアラウカ州のコロンビア軍第18旅団にかなりの支援を提供していることにあります。この援助は、人権侵害を犯した部隊に援助を行うことを禁ずる米国の条項に違反して行われています。この旅団は多くの人権侵害に関与しており、米国の援助はこれを続けるために使われています。
また、米軍兵士が、コロンビア軍を訓練するために、アラウカ州に駐留しています。アラウカの民間人と社会運動はこの訓練により日々苦しめられています。
けれども米国が人権侵害に関与した最大の例は、1998年12月タメのサント・ドミンゴ村爆撃でしょう。このとき、婉曲的に米国の「契約私企業」と呼ばれるところの操縦士が米国機を操縦し、村を爆撃していたコロンビア空軍ヘリに戦略情報を提供していたのです。9人の子どもを含む17人が殺されました。
問:外国の石油企業が果たす役割はどういったものですか?
答:Oxyは20年にわたりカニョ・リモン油田の採掘を続けており、環境の深刻な劣化を引き起こしています。リパ湖は完全に汚染され、この湖を聖地としていたグアヒバ・インディアンのコミュニティはそこを放棄せざるを得なくなりました。アラウカ州の住民の尊厳よりもOxyのために石油資源の安全を確保することを優先したことが、この地方への攻撃の原因です。
スペイン企業Repsolもアラウカ州に姿を現し、タメにあるカパチョスとして知られる新たな油田の採掘を行なっています。タメでは最近準軍組織が足場をつくりつつあります。この会社そしてOxyからの資金が、「民主的治安」政策の一環として作られた「インフラ支援検察」を支援しています。これは、検察局の軍事化を意味するのです。
軍の第18旅団駐屯地の中にあるこのオフィスから、社会指導者への立件が行われています。経済・司法上の便宜と引き替えに「ゲリラに関する有用な情報」を提供する、元ゲリラたちの証言に依拠してこれが行われます。
こうした状況のため、検察局の公平と独立はゼロになっています。ですから、こうした立件は、人権侵害を批判したり責任者を名指したりすることを止めさせる目的で行われる司法の陰謀だと言うことができます。
JANJANに、渡邉修孝さんが語るイラクの連続記事があります。また、「国民保護法案」をめぐる基本説明と緊急アクションのページ、緊急・必見です。